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2017年3月30日木曜日

JAMIE LIDELL 「Building A Beginning」


兄貴からパパへ。2016年作、六枚目。
Warpを離れ、Kobalt Label Servicesのケツ持ちで興した自己レーベル:Jajulinより。その由来はJamie、Julian(愛息)、Lindsey(愛妻)の短縮形。

聴き手の機先を制する上で大事な一曲目からいきなりしっとりバラード。伏し目がちに、悲哀を噛み締めるように歌い上げる様が目に浮かぶようだ。
以後、家族の写真を印刷した年賀状のような愛息賛歌(その愛息が声で〝参加〟もしている)のM-02のような明るい希望に満ちたファンクナンバーや、やけに呑気な異色のレゲエ風ナンバー:M-06よりも、リデルの更に磨き上げられた歌唱を湿っぽい形で表す曲が目立つ。
かと言って一本調子さはなく、如何にもリデル謹製なエレクトロファンク曲:M-07や08。ピアノ! ハモンドオルガン! 女声コーラス! でゴスペルさながらの荘厳な盛り上がりを見せるM-10。ハープや擦弦楽器を用いて幻想的に仕上げたM-13など、多角的な手は打っている。

『オレ俺アンド己』であえて創った前作や、『俺とベックと(GRIZZLY BEARのクリス)テイラーと』だった前々作よりも一歩先を行く、『俺と名うてのセッションパーソンたち(モッキーも居るよ)』になったことで、職業的なソロアーティストとしての色合いが益々強まった。
詰まるところ、守備範囲は広げつつも、極めてオーソドックスな創りのブルーアイドソウル作品だと思う。
最早街角でイキりながら青々とした髭を剃る、ぎらっぎらに尖がった十年前の彼の面影はない。齢四十を越えたのだから当たり前だ。
ココから聴こえるのは、乳児の息子の発する声をサンプラーへ取り込み『はっはー! これでお前も歌手デビューだ!』とはしゃいだり(想像)、デザイナー上がりの奥さんと膝を突き合わせてラヴラヴな歌詞を紡ぎ上げたりする、命を賭して守るべきものが出来たリダーデイル(本名)家の主としての素の姿だ。
そのキモを踏まえて聴けば、曲の良さも相俟って如何に本作が情感の籠ったリアルな逸品かと理解出来るはず。

ただ、それがこうメランコリックな路線なのだから……リデルがこの幸せへと辿り着くまでに味わったさまざまな苦悩は察するに余りある。

リデル作品のイチゲンさんが本作から入ると、ココで満足して掘り下げてくれなそうなので、まずは二枚目や前作で彼の強烈なキャラクターから来る強固な音世界を理解してからにして欲しいと切に願う。
裏を返せば、そのくらい耳にすっと入って来るリピート性を、本作は有する。

M-01 Building A Beginning
M-02 Julian
M-03 I Live To Make You Smile
M-04 Find It Hard To Say
M-05 Me And You
M-06 How Did I Live Before Your Love
M-07 Walk Right Back
M-08 Nothing's Gonna Change
M-09 In Love And Alone
M-10 Motionless
M-11 Believe In Me
M-12 I Stay Inside
M-13 Precious Years
M-14 Don't Let Me Let You
M-15 Love Me Please (Bonus Track For Japan)
M-16 You Rewind (Bonus Track For Japan)

ボーナストラックM-15、16はやや寸足らない感じはするものの、しっかり完成させて聴きたかったくらい良い出来なので、是非日本盤を。


2017年3月26日日曜日

DAY ONE 「Probably Art」


うそん! まだ演ってたん!?
呟きラッパーのフィレム、何でも屋のマシューからなるブリストルの非モテ系ヒップホップデュオ、2005年作の2枚目。

ついつい前作の印象から〝非モテ〟と書いてしまったが、あれから二人とも結婚して子供も生まれたそうな。よかったねおめでとう。ちなみに英盤(2007年リリース)のジャケに書かれた赤いタイトル文は、フィレムの息子によるモノだそうな。
だからという訳ではないが、本作から多少リア充ぽい雰囲気が漂っている。
彼らを見出したマリオ・カルダートJr.人脈からミックス・マスター・マイクベックのサポメン、かの著名ラッパー:ウィル・アイ・アムAZTEC CAMERAオリジナルドラマーなど、ゲスト陣が垢抜けたのもある。
それ以上にのっけのM-01から飛び出すコレとかアレのような、へらへらちゃらちゃらした西海岸のボーダーミュージック的爽やかさが異色になっていない点で気付くことだろう。

だが、そのような表層的な変化よりも、しっかり変わらず残っている部分に喜ぶべきかと思う。
英国人ならではの湿った、明るくなり切れない音楽性を。

模擬ストリングスを合いの手に用い、各種サンプル音や民族楽器を忙しなく散りばめたM-03。同様にサンプル音をばらまきつつ、パンチラインで金、金、金、金、と連呼して聴き手の耳にあざとく引っかけてくるM-07。こちらも連呼系パンチラインだが、各種副音の絡みが絶妙なウィル・アイ・アム参加のM-08。レコードでいうA面とB面を締めるM-06と12では、それぞれ生ヴァイオリニストと生チェリストを迎えて前作のままの寂寥感を醸し出し、なぜかほっとさせる。
お蔭でM-01、M-05、M-09、M-10のような、サビで爽やかに盛り上がる件の西海岸チックな曲が従来通りはにかんで聴こえるのだから、アルバムの流れに巧く溶け込んでいると言えるだろう。

きちんと練られた楽曲がこれ以上ない曲順で並べられることで地味に後引く、スルメ型の好盤。
音楽的成長に年輪を感じさせるのが良い。

M-01 Bad Before Good
M-02 Cosmopolita
M-03 Feet Firmly On The Ground
M-04 The Little Things
M-05 Saturday Siren
M-06 Now I'm A Little Older
M-07 Money
M-08 Give It To Me
M-09 Travelcard Traveller
M-10 Probably Art
M-11 Time To Go
M-12 Who Owns The Rain


2016年7月4日月曜日

GALA DROP 「Gala Drop」


ポルトガルの首都・リスボンのダブトリオ、2007年制作・2008年発表のデビュー作。

ぶっといベース、忙しなくあちらこちらで瞬く装飾音、抜けの良い湿った音像――レゲエの本場・ジャマイカのエンジニアによる卓遊びから発展した〝ダブ〟なる至高のトリップミュージックの延長線上に、彼らは立っている。
そんな彼ら最大の特徴は、三人が三人ともパーカッションを兼任する、トライバルな味付けであろう。
無論、それだけではない。

基本はミニマルのインスト。それぞれ主の担当楽器(ドラム、ベース、キーボード)の前に卓やらシンセを置き、手の空いた者がそれで音色を弄り、楽器に感けている者は手癖でフレーズを燻らせ、曲に引っ掛かりを生んでいくスタイル。その卓から繰り出される音色の傾向がスペイシー特化のため、コズミック・ダブ(Cosmic Dub)と呼ばれているそうな。
その一方で前述の、抜けた鳴り重視の太鼓音を含めたトライバル感覚が奇妙かつ絶妙なマッチングを見せている。
宇宙(Cosmo)の中に原始が内包されている謎空間に、聴き手は何を見出すのだろうか。

ドイツ最強のミニマリスト・CANとの共通項も感じるが、こちらはクラウトロックのキモである執拗反復を求めないところがミソ。
また、基軸であるまったりオフロードなビート曲でアルバムを進めたかと思えば、突如どったんばったんしたロック調のビートパターンの曲を呈してきたり、疾走感溢れる曲で聴き手を煽ってきたり、シンプルに四つ打ちから曲を開始したりと、酢漬けキャベツ勢とは相反したひとところに収まりたがらない気質も魅力。

見たか世界よ、コレがラテンの血だ!

M-01 Ital
M-02 Ubongo
M-03 Dabum
M-04 Frog Scene
M-05 Holy Heads
M-06 Parson
M-07 Crystals
M-08 Drop (Bonus Track For Japan)
M-09 Rauze (Bonus Track For Japan)

2011年、遅れ馳せながら日本でもリリース。その際、2010年にアナログのみで発売した「Overcoat Heat EP」より、A面2曲がボートラとして追加された。
どちらもA面だけあってカッコイイぞ。


2015年8月24日月曜日

LILACS & CHAMPAGNE 「Danish & Blue」


GRAILSの中心人物:エミール・エイモスとアレックス・ホールによるブレイクビーツユニット、2013年作の二枚目。
レーベルはダニエル・ロパーティン軒を借りる、ブルックリンのMexican Summer

彼らは特異な立ち位置に居る。
まず二人の本体:GRAILSは70年代サイケを今の世に翻案し、映像的に仕立て上げる音世界を標榜していること。
なのに打ち込み音楽とな!
ロック系とクラブ系を融合させた作品は数あれど、ロック側が求めているモノは常にクラブ側の先進性(ちなみにクラブ系がロックに求めるモノは、ほぼ衝動性)。レイドバックした作風で打ち込みを求めるケースは稀。
字面だけなら悪食に等しい音楽性である。

だがこのユニットはコロンブスの卵と言って良い。
キモは底に敷いたブレイクビーツという手法が、ボトムの溶解化進む現代のクラブミュージックシーンに於いて旧世代の方法論になりつつある点。
ビートは定番:Akaiのサンプラー(エイモスがMPC2500、ホールがMPC1000)とターンテーブルを使用し、BPM100前後でまったりかつシンプルに。言うまでもなく、彼らは本体でも存分に打ち込み機器を扱っているので手慣れたものだ。
一方の上モノは、ギターやシンセを有機的に用い、妖しくもたゆたう流れで。モーグやメロトロンのようなプログレ/サイケでは常套句な古臭い音色も平然と持ち込む。
そこへ、男声のポエトリーディングというかモノローグというか(架空)シーンの抜粋が作中のそこかしこで挿まれる、と。
これらを十一篇に分けてアルバム一枚で表現した、フィルムノワールな創りだ。無論、踊るには適さず、チルアウトとして用いるが最適。
結果、思ったよりアクもそつもなく、かつ合理的な出来となっている。
クラブカルチャーも歴史を持つようになった今、このような方法論の連中が続々と増えてくるのではなかろうか。

あざといまでの過去への憧憬を軸に、二つの異なるジャンルを繋ぎ合わせた、用の美を象徴するかのような作品。
二人の広い視野が成せる業。

M-01 Metaphysical Transitions
M-02 Sour/Sweet
M-03 Le Grand
M-04 Better Beware
M-05 Alone Again And...
M-06 Police Story
M-07 Hamburgers & Tangerines
M-08 Honest Man
M-09 Refractory Period
M-10 Danish & Blue
M-11 Metaphysical Transitions II


2015年8月22日土曜日

Mr.SCRUFF 「Friendly Bacteria」


今回も自作のお絵かきが可愛いぜ!
英国北西部・チェシャー州出身のアンディ・カーシー、久々の五枚目は2014年。
言うまでもなく例のトコから。

曲目をご覧の通り、歌モノの彩が強い。あと若干真面目。
メインシンガー扱いのデニス・ジョーンズも、ヴァネッサ・フリーマンも単独作を有す一廉のシンガーだし、ロバート・オーウェンズに至ってはヴォーカルとしても評価が高いが、ハウスDJとしての名の方が知れたクラブミュージック界の大家だ。
以上、カーシーの実力に即した良好なプロダクションで、本作も望めていることが改めて分かる。
さすがNinjaの屋台骨。

だが本作は七年前と比べて若干トラックをチープに仕立てている、意図的に。
というのも、最近のクラブ系の傾向は安っぽくてもシンプルに、より扇情的なトラックを標榜しているため。本職はDJ、と自負する彼も自ずとそちらへシフトする。
クラウドの反応がなによりの御馳走なDJが、流行りに敏感じゃなくてどうするのさ?
よってビートも四つ打ちっぽくシンプルに。打ち方が微妙にダブステップっぽかったり、さり気なくグライムっぽかったり。いや、TR-808っぽいベースラインでアシッドハウス臭さを出しているトラックまである。
つまりこれまで以上にノリが良くなった訳だ。

――と思いきや、終盤は激渋な流れで締めにかかる、ジャジーなフレイヴァーで。
M-11、12でレーベルメイトであるシネオケのバンマス:ウッドベース弾きのフィル・フランスを迎え、打ち込みのボトム対生音の上モノで芳醇なクラブ系ジャズサウンドを展開する。
M-12に至っては、フランス以外のゲストメンバーが非シネオケにも関わらず、それっぽい空気を漂わせてにやにやさせられる。フランスによるグリップの利いたウッドベースや、巧くトラックに食い込んでいるジョーンズのアコギも然ることながら、やはり単独作のあるマシュー・ハルサルのトランペットがトラックに、ひいてはアルバムに心地よい余韻を齎す、最後に相応しい好トラックだ。

蛇足ながら、カーシーは本作からこの可愛いイラストを止めたかったらしい。
思い留まらせたNinjaの社長、有能。

M-01 Stereo Breath feat. Denis Jones
M-02 Render Me feat. Denis Jones
M-03 Deliverance
M-04 Thought To The Meaning feat. Denis Jones
M-05 Friendly Bacteria
M-06 Come Find Me feat. Vanessa Freeman
M-07 Where Am I?
M-08 He Don't feat. Robert Owens
M-09 What
M-10 We Are Coming
M-11 Catch Sound feat. Denis Jones
M-12 Feel Free
M-13 Get Down (Bonus Track For Japan)

ボートラはノリノリのビートに恐らくフリーマンがノリノリの合いの手を入れる御機嫌なトラック。如何にもボートラっぽいけど、楽しいから筆者的に大アリ。


2015年6月28日日曜日

LAL 「Warm Belly High Power」


カナダはトロント出身の女性ヴォーカル+男性トラックメイカーデュオ、2004年作・二枚目。

音世界をド直球に説明すると、カナダ産のブリストル系アブストラクト――そうそう、トリップホップ(笑)。レゲエやダブを血肉とした、薄暗いブレイクビーツ。
いや、そこで『なーんだ、典型的トリップホップ編成の没個性出遅れ組(デビューは2000年)かー』と流してしまうのは、ちと了見が狭い。そもそも今までこのブログで紹介してきた男女アブストラクト系デュオはどれもこれも曲者ばかりだったではないか。
毎度書くが、良い音をくださる人々を型にはめるのは絶対に良くない。

アルバムの全体像はシンガーのレジーナ・カジーの声質から、メロウでアンニュイでほんのりレゲエっぽい。そこへ、彼女の弾くハーモニウム(リードオルガン)などの鍵盤系や、トラックの根幹を成すぶっといベース、ギターや鉄琴などのオーソドックスな楽器、タブラやヴィーナやサーランギーといった中東系民族楽器を生音色として乗せ、トラックメイカーのニコラス・マーリーが打ち込み音色を取り混ぜて統括する。中でも中東楽器はトラック内で扱いが良く、ココら辺がLALの個性を担っているようだ。
さて、下の曲目をご覧の通り、本作は四季が織り込まれている。前半の秋冬はしっとり切ない空気を漂わせ、後半の春夏はアンニュイな中にも躍動感を感じる。ボトムにBPM早めの四つ打ちを敷いたトラックもあるからか。夏編でメロウなトラックを演られても、潮風が顔を凪いでいるようにしか聴こえないのだから巧く並べたモンである。

で、ここからが彼らの本領。ヘッドフォンで聴けば分かるのだが、音数が異常に多い。しかも彼らの音楽性がダブの影響下にあるため、それらが平気であちらこちらに散る。
具体的に書けば、表現力に長けた一廉のシンガーであるカジーの声すら一パーツと解釈され、オーヴァーダブにより主音である歌メロを取り巻いて、副音としてあちこちで瞬き続ける。トラックの底辺を支えるビートをサビだけ右耳の外れに追いやりつつ、役目だけは果たさせるといった苛烈なトラック構成も平然と執る。
無論、ダブの素養があるのだから、音数に埋もれてトラックをごちゃつかせる訳がない。必要ない時はばっさり切り落とし、後々必要なら伏線として音量を絞ってさりげなく置き、ここぞの場面で効果的に聴かせる。
あえて大げさに言い切らせてもらうが、ここまで全使用音色を組織立たせるトラックメイカーもそうそう居ない。

あえて難点を挙げれば、フェイドアウトが雑なくらい。
もしかしてこの界隈でこの男女デュオ編成が多いのも、この方面の音を出したいからこの編成にする訳ではなく、優れた者たちだからこそこの編成を敷くのではなかろうか――なんて考えてしまうくらい彼らも出来人。
筆者はこの編成での外れ音源を知りたい。

Fall
M-01 Orange
M-02 Brown Eyed Warrior
M-03 Forget To Say
Winter
M-04 Pale
M-05 Creep
M-06 Saturn
Spring
M-07 Raindrops
M-08 Faithful
Summer
M-09 Musty City
M-10 Shallow Water
M-11 Dancing The Same
M-12 Invincible
(Bonus)
M-13 B.E.W. Epilogue...Think...Bloodlines
(Bonus Track For Japan)
M-14 Dancing The Same (Nu Era vs Somatik Remix)
M-15 Brown Eyed Warrior (Moonstarr remix)


2014年10月2日木曜日

MASSIVE ATTACK v MAD PROFESSOR 「No Protection」


二枚目(1994年作)を、あへあへダブおじ(い)さん:マッド・プロフェッサーがダブヴァージョン(リミックス)化! ありそでなかったこの一枚。
翌、1995年発表。

ぐう(の音も出ないほど)ダブ。おしまい。
いやいや待て待て!
もこもこ内に籠っているようで抜けの良い音像。過度に掛けるフィルター、エコー、ディレイ。気まぐれで定める一部音色への偏愛。流動的な鳴らす位置。大胆な音色の抜き差し。
これぞ、まごうことなきダブである。
ただ、元よりマッシヴはそんなダブを血肉としているユニット。これ以上ダブダブしくする必要があるのだろうか……? なんて疑問もあろうが、ここまで徹底してダブのメソッドに当てはめたモノを聴かされれば、聴き手はぐうの音も出ないはず。
本編では二曲ずつ宛がわれしトレイシー・ソーンのしなやかな、ニコレットの可愛い歌声も、クレイグ・アームストロングの感傷的なピアノも、ぶっつぶつのぎったぎた斬り。
この辺の主音への苛烈な扱い、正しくダブ。
なお男声――トリッキーとホレス・アンディが歌っているトラックは一つずつしか選ばれていない上、ヴォーカル音色を一切用いず、文字通り〝抜いて〟いるので注意。
これもダブ特有の音色偏愛の一端であろうか。

あと、クラブ系さんサイドからダブを眺めているだけの筆者からすれば、ダブと言えば(涼しげな音像と)低音の過剰な強調! が最大の特徴かと思っていたら、場合によってはベース音色も平気で抜くんだと本作で知った。
ぜひとも本作を入り口に、この加減算の妙を味わって欲しい。
ひんやりしててきもちいよv

M-01 Radiation Ruling The Nation (Protection)
M-02 Bumper Ball Dub (Karmacoma)
M-03 Trinity Dub (Three)
M-04 Cool Monsoon (Weather Storm)
M-05 Eternal Feedback (Sly)
M-06 Moving Dub (Better Things)
M-07 I Spy (Spying Glass)
M-08 Backward Sucking (Heat Miser)


2014年9月14日日曜日

QUAKERS 「Quakers」


7STU7ことステュアート・マシューズ、KATALYSTことアシュリー・アンダーソン、FUZZFACEことジェフ・バーロウ――以上三名のトラックメイカーによるヒップホップユニット、2012年作。
本作は二枚組で、Disc-2はまるまるDisc-1のインストとなっている。お・と・く。

100%サンプラーを用いて創られたような、愚直なヒップホップ。音の触感としてはニュースクール辺りの、ヒップホップがしっかりメインストリームに根差した頃を思わせる。
フィーチャリングラッパーの記述がないトラックは全て1分弱のスキット(寸劇)かインタールード(間曲)。それ抜きでも多い曲数から察せられる通り、一曲一曲は短め。ヒップホップは通りすがっただけな筆者のような聴き手としては、各トラックがあっさり終わって食い足りないかなーと思わなくもないが、矢継ぎ早にトラックが飛んで来るのでミックステープのような小気味良さがある。
そもそもヒップホップという音楽の構造上、単調さを覚えず各トラックを長くするにはMCの高難度なスキルとトラックへの過剰な工夫が必要となってくるので、これで良いのだ。

一方の作風だが、ホーンセクション使いが目立つ――いや、ホーンセクションは目立つ。あのド派手な音色を巧く用いれば、大ネタ使いばりの強烈なトラックが組めるのだなあ……と、ほとほと感心した。
例えばラップといえばギャング(スタ)だが、威風堂々としたホーン群でマフィアの風情を醸し出したM-03や10。高らかに鳴らすことで映画のテーマ曲のような達成感が得られるM-17や36や40。またM-26のようにファンキーに鳴らすことで王道感を出すことも出来る。
金管楽器は反則。
あとはトライバル風だったり、シンセをわざと安っぽく用いて時代性を出したり、SANTANAばりのきらびやかなギターを立てたりと、ヒップホップという狭い狭い狭い枠組みの中でいろいろ演っている。ただし、録り方を前述のニュースクール風の音質で統一しているので、散漫さは微塵もない。
またNASJURASSIC 5あたりのフレーズをサンプリングしたりと偉人へのリスペクトも忘れない。(蛇足ながらJFKのあの名言を茶化したりもしている)

好きなんだなあ、ヒップホップが。
これを温故知新と見るかパロディと見るかで、聴き手の音楽的スタンスが分かるっちゅーかバレるっちゅーか……モニュモニュ……。

Disc-1 (Rhymes)
M-01 Intro
M-02 Big Cat (feat. SYNATO WATTS)
M-03 Fitta Happier (feat. GUILTY SIMPSON、M.E.D.)
M-04 Smoke (feat. JONWAYNE)
M-05 The Lo
M-06 Russia With Love (feat. COIN LOCKER KID)
M-07 What Chew Want (feat. TONE TANK)
M-08 Flapjacksmm
M-09 Jobless (feat. QUITE NYCE)
M-10 Sidewinder (feat. BUFF 1)
M-11 Mummy (feat. DIVERSE)
M-12 Belly Of The Beast (feat. EMILIO ROJAS)
M-13 Up The Rovers
M-14 The Turk (feat. KING MAGNETIC)
M-15 There It Is (feat. THE CHAMPS)
M-16 RIP
M-17 I Like To Dance (feat. KRONDON、GENERAL STEELE)
M-18 Dark City Lights (feat. FRANK NITT)
M-19 The Beginning (feat. COIN LOCKER KID)
M-20 Kreem
M-21 War Drums (feat. PHAT KAT、GUILTY SIMPSON)
M-22 R.A.I.D. (feat. LYRIC JONES)
M-23 Fresh
M-24 Something Beautiful
M-25 Chicken Livers (feat. FC THE TRUTH)
M-26 Rock My Soul (feat. PRINCE PO)
M-27 Lost and Found (feat. ESTEE NACK)
M-28 My Mantra (feat. DAVE DUB)
M-29 Hunnypots Of Beeswax
M-30 TV Dreaming (feat. BOOTY BROWN)
M-31 Don't Make It Worthless
M-32 Soul Power (feat. DEAD PREZ)
M-33 Glide
M-34 Get Live (feat. COIN LOCKER KID)
M-35 Sign Language (feat. ALOE BLACC)
M-36 Earth Quaking (feat. AKIL)
M-37 You're Gonna Be Sorry
M-38 Outlaw (feat. DEED)
M-39 The Tax Man (feat. SAREEM POEMS)
M-40 Chucky Balboa (feat. SILVERUST)
M-41 Oh Goodness (feat. FINALE)
Disc-2 (Instrumentals)


2014年8月18日月曜日

RIOW ARAI 「Survival Seven」


タイトル通り七枚目、2006年作品。

三作目あたりから見えだした己の方向性の許容範囲内で試行錯誤しつつ、その一方でじわりじわりとその音楽的テリトリーを広げて来た彼だが、今回は本質的な進化があまり感じられないように思える。
巨人丸太で拍を刻むかのような、いびつでバカデカいビート。作為的な音色でぶっとく鳴らす細切れのベースライン。ワンショットを軸に(ループがないとは言っていない)構成した、メロディを欲しがらない上モノ。忙しなく左右にちらつかせる音響工作。イントロ(M-01)で開けて、メロウな曲調でアウトロ(M-11)のように閉めるアルバム構成。
M-06のようなインターリュードを初めて組み込んだからとて、新機軸と触れ回るほどではないでしょうに。

ただ本作はこれまでの〝アルバムをリリースするという研究〟の成果を総括した作品であると考えれば合点がいく。
三作目のような音割れ上等のビートで攻め、四枚目のように聴き込むとより楽しい工夫が仕込まれ、五枚目のようにその効果を分かりやすく向上させ、六枚目のようにヒップホップフォーマットに近付いてノリを良くしたアルバムがコレ。
正しくコレ、良いトコ取り。
うわコレ、もしかして最高傑作じゃね!?

――と、皆に思われていないらしく、地味な扱いを受けている(よう見受けられる)本作。各トラックの出来もいつもながらおしなべて良いのに。
おかしい、こんなことは許されない。
とは言いつつも、いろいろ産みの苦しみを味わいながら確実に何かを掴んでいく、彼の他の作品の方に魅力を覚えていたり。逆に比較的安定感のある彼は、本作のようにあるべきだと思ってみたり。

M-01 Intro
M-02 Slide Slender
M-03 Electro Smash
M-04 Plus Alpha
M-05 Death Breaks
M-06 Mid-Day
M-07 Fundamental
M-08 Criminal Groove
M-09 BeatCast Yourself
M-10 Survival seven
M-11 Over Circle
M-12 Dead Or Alive (Inst.Version)

M-12は前年に発表したNONGENETIC(SHADOW HUNTAZ)とのコラボ作品収録曲のインスト。一応、ボートラという枠組みだが、日本盤しかフォーマットがない


2014年8月10日日曜日

DEATH GRIPS 「Money Store」


HELLAのクレイジービーター:ザック・ヒルと、ココでもツルんでるアンディ・モリンの2トラックメイカー、怪人:ステファン・バーネットの1MCからなるイカレヒップホップトリオのデビュー盤、2012年作はメジャーのEpicから。
ジャケはご覧の通り、HENTAI文化などのキワモノ系題材を嬉々として弄り倒す露悪趣味な作風のスア・ヨー。(セクシャルマイノリティ擁護のメッセージ? 知らんよ)

安くて鬱陶しい音色を撒菱の如く散りばめる、ライヴではシンセ担当のモリン。M-02ではいつもの詰め込み過多なビートを披露しているが、全体的にはタメを利かせたそれに終始している、ライヴでは生ドラム担当のヒル。この二人が耳障りでブリーピーな音色を、寄って集ってエフェクト掛けまくり、ディレイしまくり、フィルター掛けまくる――無論、バーネットのラップへも。おまけに無配慮なワンショットも、明らかにラップの邪魔をするタイミングでぶち込みまくる。
以上、聴き手の脳裏にこびり付けるためには手段を選ばない、並のラッパーなら存在が消し飛んでしまうくらいがちゃがちゃした上モノとボトムに対し、この見るからにヤバそうなタトゥー塗れの狂犬は、渡り合うどころか完全に手の内に入れているのではないかと思えるほど馴染んでいる。
何なんだこの存在感は。
そんなバーネットのラップスタイルは基本、オラオラ系。あまり韻にはこだわらず、リリックの内容も特に意味はない。だが抜群の声量と栄えるトーンから繰り出されるフロウは、ボクサーのような彼の肉体同様に強靭かつ、押し殺した声色で目先も変えられるしなやかさも有している。

はちゃめちゃなようで、本人はきちっと第三の目で自我を見つめている。本作が意外とバランス感が取れていて分かりやすいのも、彼が突き抜け過ぎていないお蔭かも知れない。(突き抜けていたらこのアルバム、どうなってたか……)
よくこんな逸材を拾って来れたな、と言わざるを得ない。(イメージが崩れるので伏せ文にするけど、彼はヴァージニア州のハンプトン大学で視覚芸術を学んだ知性派でもある)

三者三様のうっざいうっざい個性が三位一体となって共存共栄し、聴き手の耳へ波状攻撃を仕掛けてくる奇跡の一枚。
激烈なインパクトから勢い任せに聴こえるので、各々の背景より漂うアート臭さが相殺されているのも良い。

M-01 Get Got
M-02 The Fever (Aye Aye)
M-03 Lost Boys
M-04 Blackjack
M-05 Hustle Bones
M-06 I've Seen Footage
M-07 Double Helix
M-08 System Blower
M-09 The Cage
M-10 Punk Weight
M-11 Fuck That
M-12 Bitch Please
M-13 Hacker


2014年8月6日水曜日

PORTISHEAD 「Third」


二枚目が発売されたのは1997年。ライヴ盤が発売されたのは翌年の1998年。
三枚目の本作は2008年発表。何やってんの!
その間、メンバーはそれぞれ、別活動をしたり、レーベルを立ち上げたり、誰ぞのプロデュース客演をしたり、誰ぞのトリビュートアルバムに参加したりしていた。貢献度の高いサポートメンバーを正式加入させたりもしていた。

お陰で十年も経てば音楽性も変わるわな、と思わせるに十分なアルバムとなった。

一言で語れば〝より器楽的になった〟。
元からリズム楽器以外は一通りこなす、晴れて正式メンバーとなったエイドリアン・アトリー(メイン楽器はギター)が居る。司令塔のジェフ・バーロウも生演奏に熱心だ。シンガーのベス・ギボンズはデビュー前、パブでアコギを抱えてブライアン・アダムスの弾き語りをしていた過去を持つ。あと他に、ライヴではおなじみのジョン・バゴット(Key)やジム・バー(Ba)やクライヴ・ディーマー(Ds)だって居る。
アルバム全体像が、おそらくバーロウがドラムセットに向かって叩いたビート(ちなみにあんまり巧くない)をループさせる手法を採っているのだから、彼らがブレイクビーツ音楽から一歩踏み出したと考えるべきだ。
(その一方でわざとらしいほどに打ち込み臭いM-08をリーダートラックに据える、一所に収まりたがらない食えなさも健在)

ならどのような形で、PORTISの持ち味を損なうことなく器楽的になったのか。
まずは、ブレイクビーツという反復音楽とは意外にも好マッチングを見せる、ドイツが生んだ音楽魔境・クラウトロックへの接近だ。メロディに頓着しない音色や、単音旋律の多用、機と見るに意地でも反復を維持する(オスティナート)やり口はココから拝借したようである。
その一方で、聴き手が仰天するほど意外なカードも含ませてきた。バーロウがライヴを観て『PUBLIC ENEMY以来の衝撃だった』と語るSUNN O)))、EARTH、OMなどの重低音サウンドを能くするバンド群からの影響である。
M-02、05、09、11のようなダウンチューニングのギターを、曲の立ち上がりでどろーんとぶち込んでくる恐れ知らずな手法は、陰鬱さをモットーとするPORTISと絶妙な相性を醸し出す。線の細い声質ゆえにバックに力負けするかと思われたベス姉さんの歌唱も、儚さを以って対抗することで、インスパイア元に依存しない新たな魅力も獲得出来た。
バーロウ、慧眼! と言わざるを得ない。(蛇足ながらベス姉さんは彼よりも年上である)

ただし、非常に地味でとっつきの悪いアルバムなのは否めない。ただでさえ暗い音楽性なのに、クラウトロックやスラッジコア色を入れてみましたでは人を選ばない訳がない。一聴で聴き手をがつんと持って来れない。
恥ずかしながら筆者も発売当初、『コレ、練り過ぎでパッション失われてね? つかコレで一番良い曲ってウクレレ一本で歌われる小曲のM-07じゃね』とか公言していた輩であった。
だが生み出した二枚のオリジナルと一枚のライヴ盤全てが傑作と謳われるような才の持ち主が、何の工夫もない如何にもし難い凡作を長い長い長い長い期間掛けて創るはずがないだろうと。
つまり旨味のじっくり染み込んだ、かったいかったいスルメなので、強靭な顎を以って何度も何度も噛んでくださいと。

筆者の顎と掌はもうがくがくデス。

(2011/5/11執筆文を大幅改筆)

M-01 Silence
M-02 Hunter
M-03 Nylon Smile
M-04 The Rip
M-05 Plastic
M-06 We Carry On
M-07 Deep Water
M-08 Machine Gun
M-09 Small
M-10 Magic Doors
M-11 Threads


2014年7月12日土曜日

S.E.V.A. 「S.E.V.A.」


カリフォルニア出身:MUMBLESことマシュー・フォウラーと、GONE BEYONDことダーヴィン・ブガスからなるブレイクビーツデュオの2005年作品。
地元の有力インディーズ:Mush Recordsより。

ユニット名は〝Spirit Evolves Via Awareness(魂は意識により発展する)〟の略。また〝Seva〟だとサンスクリット語で〝献身的な奉仕〟を意味するらしい。
おまけにインナーのサンクスリストでは、二人とも真っ先にそっち方向の導師を挙げている。
スピリチュアル系っすなあ! カリフォルニア産はこんなんばっかだ。
これで自己啓発的なリリックを乗せたヒップホップでも演らかしてくれちゃったら即フリスビーなのだが、インスト系なので大丈夫! ご安心を。

となればどんな音世界か、予想も絞れてくるはず。
ダビーで湿ったアブストラクトど真ん中の音像に、中東風(ボートラのM-14はさり気なく和風)の音階や楽器が幅を利かす。トラックによってはタブラなどの打楽器が副音として効果的に働いているので、トライバルな雰囲気もある。
その一方でMUMBLESの父がジャズミュージシャンということもあってか、ジャジーな彩が強いトラックも多い。
その異なる二色がトラックごとに塗り分けられ、たまに混じったりしながら、淡々とアルバムは進んでいく。(当たり前のことだが)録り方は統一されているので、音楽性剥離による違和感は全くない。それどころかMUMBLESの背景とバックボーンが一枚に封じ込めているがゆえに、両者の食い合わせは非常に良い。
よって、いつの間にか約一時間のランタイムが過ぎていることだろう。

スピリチュアルでジャジー、となれば自ずと地味な作風になるが、それも旨味であると。
オーソドックスなブレイクビーツ音楽は今となっては古臭いが、それも旨味であると。
聴き手がたたずむ空間で流しておいても邪魔にならないクォリティこそ、この手の音楽に求められる品質なのだろうと。

M-01 Spirit Evolution
M-02 Event Horizon
M-03 Suspended Animation
M-04 In The Tiger's Mouth
M-05 The Eternal Self-Knowledge
M-06 Stonehenge
M-07 The Tides Of Titan
M-08 Sun Shining / Eclipsed
M-09 Love & Devotion
M-10 Collective Thoughts
M-11 Soul Surgery
M-12 Awareness Is Openness
M-13 Balet Mechanique (Bonus Track For Japan)
M-14 Sleeping Beauty (Bonus Track For Japan)


2014年6月10日火曜日

REMINDER 「Continuum」


THE ROOTSからTOWN AND COUNTRYまで、縦横無尽にシーンを駆け回るジャズベーシスト:ジョシュア・マイカ・エイブラムズの一枚目。2006年作。
多作家:スコット・ヘレンが一枚咬んでいるEastern Developmentsより。

1曲目から彼の主楽器であるウッドベースのまろやかなフレーズが耳に心地良いジャジーなトラックだが、ほぼイントロ扱い。本作を象徴していない。
基本線はボトムにブレイクビーツを敷いたインストだが、M-05と06ではゲストラッパーを迎えている。しかもM-05は奥まった場所に配置しているラッパーから、初期THE ROOTSを想起させるトラック。逆にM-06ではその彩をまるで感じさせない、少年声のラッパーに合わせた音色使いが何となくひょうげたトラック。
また、M-03では今を時めくタイヨンダイ・ブラクストン(元BATTLES)が例の多彩な声ネタ多重録音で参加している。
更にM-04と10は、後にエイブラムズとマズレク大将のプロジェクトで共闘するフルートのニコール・ミッチェル、クラリネットのマット・ボウダー(M-04のみ)を招いて、トラックの良きスパイスとしている。(余談だが、ミッチェルとボウダーはやはり後ほど、タイヨンダイ・ブラクストンの父・アンソニーのプロジェクトにお呼ばれしている)
その一方でM-12など、やけにジャズジャズしいブレイクビーツで、しかもどっかで聴いたことがあるギターフレーズだな……と思っていたら、やはりマズレク大将周りで大活躍する現TORTOISEのジェフ・パーカーのソロ作から〝Toy Boat〟をチョイスし、リミックス(+改題)した代物。

つまり、雑多だと。

ただ、ほぼ全曲にブレイクビーツを敷くことで〝いろいろ演れるトラックメイカー〟と印象付けられてるのが本作の強み。本職はウッドベース弾きなのに。
いや、ベース弾きだからこそ、ボトムラインが非常に野太いのも本作の強み。
多彩だけど芯のしっかりしたトラックが組めて、多彩で豪華なゲストが呼べるのも、多才なエイブラムズならでは、ということ。

M-01 New Spells
M-02 On Rooftops
M-03 Of Light
M-04 Tranqui
M-05 Leave What You Come With
M-06 Pinheiros Message
M-07 Telepathic Part I
M-08 Spectral Robbery
M-09 Ten Paces
M-10 As Its Falling
M-11 Now I Disappear
M-12 Terradactyl Town
M-13 Dri
M-14 Untitled (Bonus Track For Japan)


2014年6月6日金曜日

FILA BRAZILLIA 「Dicks」


2004年九月に発表された、十作目で最終章。自家醸造
『何ておげふぃんなタイトルざましょ!』と顔を顰めた貴方はいかんでしょ。フランス語で十を表す〝Dix(ディス)〟を英語読みにしただけデスヨ。ただ、ケース表面に貼ってあるステッカーには〝You Have Fila Brazillia's Dicks In Your Hand〟なんて刻まれているので、そういう方の意味もあるんデスケドネ。

内容は相変わらずの、ちょっぴりもこっとした音像で鳴らされる、気にならない程度にダサいブレイクビーツ系ジャズファンク。やけに曲数が多いのは間曲を含んでいるため。その上、各曲も若干短め。また、前作同様トラックギャップがなく、DJミックスのような聴き方も出来る。
さて、その前作からたった三か月しか経っていないこの作品。音楽性など変わりようがないだろう、と言う傾向論、一理ある。
だが、そうでもなかったりする。

本作は何となくヒップホップっぽい。
ブレイクビーツ音楽はヒップホップから派生したものだ、なんて身も蓋もない意見は捨て置いて、ヒップホップやエレクトロの彩が強い。
先述のDJミックスっぽさや、声ネタなどワンショットの安易な挿み方、皿をスクラッチする音(おそらく模擬音)、ヴォイスパーカッションを用いたトラック、上モノとボトムのベタな絡ませ方など、ヒップホップ様式にすり寄った創りとなっている――
あくまでFILA流を残したまま。
こうなったら間曲もスキットぽくして、メーンメーンファックファック喚き合って――しまっては英国紳士の矜持はどうした! という話になってしまうので、何でも演り過ぎは良くない温いのは身体に良いなんて結論に落ち着く。

ただ、何でこうしてしまったんだろう? なんて疑問も浮かぶ。

あくまで憶測だが、前作制作時あたりでメンバーのスティーヴ・コビーとデイヴィッド・マクシェリーとの間に深刻な音楽的溝が生まれてしまったのかも知れない。
コンビ解消秒読み段階だが、二人で創ったマテリアルは中途半端に残っている。一トラックとして成立していないモノも多い。
ならミックスCDっぽく繋ぎ合わせて半端っぽさを拭い、とっととリリースしてしまうことで、お疲れさん今までありがとなまたクラブで会ったら酒でも飲みながらバカ話でもしようぜ、って意味なのかも知れない。
もう一度書くが、これはあくまで憶測だ。

このような語り口だと〝どうでも良い作品〟扱いを受けてしまいかねないが、小粒なもののFILA的守備範囲内でヴァラエティに富んでいて、出来はすこぶる良い。
むしろ未発表曲集にするより、よっぽどクラブ系っぽいやり口ではなかろうか。

最後に、本作の装丁デザインはかのThe Designers Republic。この簡素っぷりが終焉を浮き彫りにする。だってブックレットを開くと五ページ〝(書くこと)Nothing〟だぜ?
ちなみに上の画像は裏ジャケにあたる。ブックレットになっている本来のジャケは、同様のピンク地で収録曲のタイトルが羅列されているだけなのでお察し。

M-01 An Impossible Place
M-02 Sidearms And Parsnips
M-03 Shellac
M-04 D'Avros
M-05 The Great Attractor
M-06 Kiss My Whippet
M-07 Ballon
M-08 Lullaby Berkowitz
M-09 The Cubist News
M-10 The Goggle Box
M-11 Heil Mickey
M-12 Doggin'
M-13 708-7606-19
M-14 ...And Flesh
M-15 Curveball For The 21st Century
M-16 The Hull Priests
M-17 Sugarplum Hairnet
M-18 Furball Shindig
M-19 The 3rd Tendril Of The Squid
M-20 We've Almost Surprised Me
M-21 V.D.
M-22 Nutty Slack
M-23 Septentrion


2014年5月22日木曜日

HOMELIFE 「Flying Wonders」


アシッドハウスの巨人:808 STATEグレアム・マッセイが名を連ねるアブストラクト系バンド、2002年作の三枚目。
Ninja Tuneと、過去二作を出していた自己レーベルMad Waltzの共同リリース。

どうやらこのバンドを仕切っているのはアンソニー・バーンサイドなる人で、マッセイは一参加メンバーに過ぎないようだ。(後にマッセイはココの参加メンバーを軒並み引っこ抜いて、TOOLSHEDを結成する)
さてその音世界はラウンジ風(当然ジャジー)な人力ブレイクビーツ。〝あぶすとらくと〟でタグを括ったが、特有の暗さはない。日光の射し込む室内音楽といった趣き。
また、アジアンテイストの強い曲調だが、それ系の楽器はシタールくらい。むしろコンガやボンゴやマリンバやティンバレスやウクレレのようなラテン系楽器を用いたトロピカル風味も能くする。もちろん曲によっては打ち込みも絡める。

要はラウンジミュージックを軸に、勝手気ままに創ってみました! という印象。無論、土台はしっかりしているので散漫さはかけらもない。完成度も非常に高い。
惜しむらくは、オトナでハイセンスな雰囲気漂う耳触りの良い音楽性のお蔭で、聴き込むには物足りなさが残る点か。
実は、鼓膜を弾く打ち込み臭いキックを含むエディット感満載なラウンジ曲のM-07や、続く間曲代わりのM-08では、ターンテーブルを用いた生音素材の打ち込みトラックなど、面白いコトもちょぼちょぼ演っていたりする。
なお、気に留められることはあまりない模様。

ただこのさらっとした楽曲群が必要最低限の自己主張しかしないせいで、アルバムリピート率は恐らく高くなるものと思われる。BGMにもってこい。
聴き疲れしないからこそ、聴きたくなる。〝オサレ〟も悪くないモンだぜ。

M-01 Flying Wonders
M-02 Buffalos
M-03 Try Again
M-04 Seedpod
M-05 Fairweather View
M-06 Steps-Tone
M-07 Fruit Machine
M-08 D.Ex. 1
M-09 Mai Beshe Peeinal Dosta
M-10 Too Fast
M-11 Wonderley


2014年4月10日木曜日

RED SNAPPER 「Our Aim Is To Satisfy」


倫敦のアブストラクトスリーピース、2000年作の三枚目。

いつも通りと言えばいつも通り。
ドラムのリッチ・サイアーが、たまにターンテーブルで皿をピシュピシュこすっているが。ウッドベースのアリ・フレンドが、エレクトリックベースでスラップを披露しているが。ギターのデイヴ・エイヤーズのギターがあんま聴こえねーぞ、と思ったらキーボードの方に比重を置いてたりするが。ゲストの金管楽器がサックスではなくトロンボーンだったりするが。男声ゲストは前作同様MCデット(M-02、05、08)だが、女声はものすげー胸した二世シンガーのカリーム・ケンドラ(M-03、06)に替わったが。
あえて今までと目立って違う点を挙げるとするなら、より肉感的になった。ダンサブルになったやら。フロアユースになったやら。
それにより、吸い寄せられるようにマイナーチェンジをする個所も出て来る。

まずは高速ブレイクビーツ、人力ドラムンベースを止めてみた。だが元々はミッドテンポでのグルーヴ感が売りのバンドで、その手の曲はアルバムのアクセントに留めていたのだから、特にどうこう言われる筋合いがない。グルーヴ特化と考えよう。
次にシンガーやラッパーを〝音色〟と割り切るようになった。具体的に書けば、頭から尻尾まで意味のある歌詞を歌わせず、ワンフレーズを反復させたり切り張りしたりしている。サンプリング感を出してノリやすくした、と考えよう。
最後に今まで以上にデジデジしい部分も増えた。別に人力に固執している訳ではないので、その割合が若干減っても生っぽさを維持してさえいれば良い訳で。UKテクノ系最高峰のレーベルに所属しているのだから、この流れも致し方ないのかも知れない。

いろいろ差異を挙げてみたが、結論は冒頭の通り。そもそも音楽的土台が揺るぎないバンドなので、何を演っても許容範囲に収まる懐の深さがある。
またバンドとしての土台も、サイアーとフレンドの強力無比なリズムセクションが居れば問題など起こりようがない、安定感もある。
だから! エイヤーズ、頑張ろうよ……。もっと一枚目の時みたいに目立とうよ……。

M-01 Keeping Pigs Together
M-02 Some Kind Of Kink
M-03 Shellback
M-04 Don't Go Nowhere
M-05 The Rake
M-06 The Rough And The Quick
M-07 Bussing
M-08 I Stole Your Car
M-09 Alaska Street
M-10 Belladonna
M-11 They're Hanging Me Tonight


2014年4月6日日曜日

DELL + FLUGEL 「Superstructure」


ドイツはフランクフルトのメガネ系DJ:ローマン・フリューゲル(ALTER EGO)が、同国・ダルムシュタット出身の鉄琴奏者:クリストファー・デルと組んだ2006年作。

ジャズ畑なデルが鉄琴と、たまにローズピアノ担当。クラブ系のフリューゲルがボトムや背景音、装飾音の打ち込み担当。それらにちょぼちょぼ、金管楽器系や弦楽器系の音がピンポイントで挿入される。ノークレジットなのでサンプリングかと思われる。
実はこの二人、ほぼ初対面だそうな。
そんな急造コンビから生まれし音は、エレクトロニクスを巧みに利用したジャズ。即興っぽい部分も多いことから、フリージャズの要素が強い。そのためか、ニカニカしさよりもダビーで音の隙間がある、アブストラクトっぽい音像だ。

音符を型にはめることで成り立っている打ち込み音楽が、音符を型にはめないよう善処するフリージャズと融合するなんて画期的じゃないですか!

とは言うものの、双方の音楽の構造上、妥協点が生じるのは致し方ない。制作の基本線はフリューゲルのトラックに、デルが鉄琴なりエレピなりを乗せる形を取っている。両者がリアルタイムで好き勝手に持てる音を鳴らせるのは、M-03のような小曲で限界だろう。
ゆえに、フリューゲルがデルに合わせたトラックを組んでやる必要が出て来る。即興性を高めるためには、気分良くデルに演奏させねばならないからだ。
ただしフリューゲルも然る者。M-02のような変則ブレイクビーツや、M-04のような三拍子や、M-05やM-07のような完全にクラブ仕様のキックが強い四つ打ち(しかもシンプルに四つ打たない)などをにやにやしながら差し出す挑戦的な態度が堪らない。そこで従順なベーシックトラックを渡しては、デルの作家性が失われてしまうからだ。
ならばと、ここでデルが対抗意識むき出しで叩き倒してしまっては、この共演が台なしになってしまう。まさしく、デルのソロに手を貸したフリューゲル、になってしまう。
そこら辺の立場をわきまえて、自我を制御するプレイはさすがジャズの人。時にはトラック構成上の一パーツに徹し、相手の音を立てることで、信頼関係を楽曲から醸し出すことに成功している。

フリューゲルの背景から想像するよりもデジデジしくなく、デルの出所を踏まえてみたよりも難解ではない。
それもこれも、飽きの来ないシンプルな音像のお蔭。いやいや、お互い敬意を持ち、思いやる、ミュージシャンシップの賜物。

M-01 Superstructure
M-02 Urban Practise
M-03 Miniaturisation
M-04 Wolkenbügel
M-05 4 Door Body Cell
M-06 Perspective, Moscow
M-07 Study For A Skyscraper
M-08 Habitation
M-09 Dirty Realism


2014年3月26日水曜日

DAY ONE 「Ordinary Man」


ラッパーのフェリム・バーンとマルチプレイヤーのマシュー〝ドニー〟ハードウィッジからなるブリストル産日常系ヒップホップデュオ、2000年のデビュー作。
MASSIVE ATTACK運営のVirgin傘下Melankolicより。

ドラムから鍵盤系まで、あらゆる楽器をハードウィッジが演奏。クラスの目立たなくて大人しい男子のようなバーンがぼそぼそライムを並べる。そこへPORTISHEADのツアメン:クライヴ・ディーマー、MASSIVEのアレでベースを弾いていたボブ・ロック、コレでロックと共に曲創りで参加していたティム・ノーフォークなどのブリストル界隈や、BEASTIE BOYSBECKとの仕事で著名なマリオ・カルダートJr、翌年にDFA Recordsを興すティム・ゴールドワーシーらがちょぼちょぼ手を貸す形を取っている。
曲創り自体は、ハードウィッジとバーンがセッションしながら組み立てていくらしい。
もう一度書くが彼ら、ヒップホップデュオである。

さてアルバムは、マッシヴ人脈らしいダウナーな曲調で淡々と進んでいく。明るそうな曲もあるが、どこかはにかんでいる。
M-03は模造ストリングスを背景に垂れ込み、ジャジーなギターへ小気味良いブレイクビーツを敷いていても、なぜか倦怠感漂うトラック。M-06は本物のストリングスを総勢七名呼んだナンバー。M-08など木枯らし吹き荒ぶヴァイオリンと、物悲しい旋律のピアノと、時折切り替わる乾いたリムショットが身を切るような寂寥感を演出する。
筆者として特筆したいのは終いのM-11。ほぼピアノ独唱のひっそりしたタイトル曲なのだが、『毎日、街を行く彼女を眺めていた。でもダメなんだ。掛ける言葉がない』から『もしボクがルックス良くて可愛い顔していたら』と続き、『ボクは単なるフツーの男だよ』と締める歌詞、強烈な非モテ臭がする。物凄く悲しくなってきた。

この通り、色々な面でヒップホップっぽくない。全てにおいてUKロックの触感がする。
くどいようだが彼ら、ヒップホップデュオである。
でも、形から入りたがるこの手の輩とは違い、ジャケを見ての通りのフツーの非リアあんちゃんが形(や身なり)に拘らず創っているからこそ面白い。目新しさはあまりないが、柔軟なアプローチが非常に新鮮だ。
まあそのゥ……今となってはちょっと古臭い音かも知れないが、非モテはダサくて当たり前だろう! だからこそ(音楽的に)美味しいのだ、と筆者は口を酸っぱくして力説したい。真似事でイキってもちっともヤバかねんだよ!!

M-01 Waiting For A Break
M-02 Bedroom Dancing
M-03 Walk Now, Talk Now
M-04 In Your Life
M-05 Trying Too Hard
M-06 I'm Doing Fine
M-07 Autumn Rain
M-08 Truly Madly Deeply
M-09 Love On The Dole
M-10 Paradise Lost
M-11 Ordinary Man
M-12 Fibonaccis Number (Bonus Track For Japan)

ボートラM-12は、シングルカットされたM-01収録曲。


2014年3月12日水曜日

HINT 「Daily Intake」


出ました、クラブ系のび太くん! 英国はサセックス出身のジョナサン・ジェイムズ、2012年作の三枚目。
レーベルは引き続き、ブライトンのTru Thoughts

いきなり、ジャマイカのダンスホールシンガーを呼んだそれモンのトラックが飛び出して来たので、『ですよねー』と深く納得した。
四つ打ちやバウンスビート全開! クラブのバックステージにてビロード張りのソファへ目深に腰掛けて、左右にブーティなエボニーちゃんを侍らせその肩を掻き抱いて、『やっぱオンナはケツだよねー、デカくてぷるぷるっとジューシーなさあ。ところで源サンって和尻だよね(笑)』とかほざいてそうなくらい、この音世界に馴染んでいる。
彼特有の(機材的な)安っぽさが、グライムやダンスホールやベースミュージックのような、あえて純金ではなく金メッキであるべき音楽性と上手く折り合った形とも言える。
二枚目でも器用でセレブな音創りを垣間見せていたが、よくもまあM-05やM-10のような、パンチラインで男声R&B系シンガーに歌わせて爽やかな風を吹かせるオサレなトラックを組めるようにまでなったよなあ、とも思う。
全く、のび太のクセに生意気だ。

もう一枚目の頃のような、細々とブレイクビーツ音楽を創っていたインドア派の彼は帰って来ないのか。

このように、すっかりチョーシこいてるのび太くん。きっとしずかちゃんなら寂しげな微笑みを添えて、こう告げるであろう。
『のび太さん、変わったね』
そこでのび太、M-11のようなブレイクビーツをボトムに敷いて各種鍵盤系ループを織り交ぜた、一枚目期を思わせるメランコリックなチューンを流す。
だがあの頃(の音)とはどこか違う。ビートが堂々としている。上モノの和え具合が格段に進歩している。各音の抜けが非常に良い。
そう、もう後戻り出来ない――いや、『昔のボクじゃないんだ』と言ったところか。

一枚目から五年を掛けてじっくりと一足飛びの成長を果たした二枚目。それから更に四年を経た本作では逆にじっくりと熟成し、正当進化した。
もう迷う段階ではない。あとはキラーチューン待ちかも知れない。

M-01 Crash And Burn feat. Natalie Storm
M-02 Lock The Door feat. Zed Bias
M-03 Watch The Media feat. Profisee
M-04 Tape Pack
M-05 Give It Up feat. Josie Stingray & 1-O.A.K.
M-06 Aliens Enter feat. T-Fly
M-07 Physical Stamina
M-08 Pretty Stable
M-09 Peter and I feat. T-Fly
M-10 Find Yourself feat. Josie Stingray & 1-O.A.K
M-11 Upper Echelon
M-12 Mad Nervous


2013年8月26日月曜日

RED SNAPPER 「Key」


Warpな人力アブストラクト四人組の復活作。四枚目、2011年発表。
一応メジャーのV2 Beneluxより。

曲の運転手たるウッドベースのアリ・フレンド、タイトなビートをカマしてくるドラムのリッチ・サイアー、湿乾自在の音色(ねいろ)で彩を与えるギターのデイヴ・エイヤーズに、クラリネット/メロディカ/サックスを使い分ける便利屋のトム・チャレンジャーが加わった。
それによる変化は、特になし。今まで通りの多角的な人力アブストラクト。
強いて挙げれば、サイアーのビートパターンがちょっぴり複雑化したかなとか、若干ループを頼る傾向が出てきたかなとか。フレンドがウッドベースだけでなく、M-07のようにエレクトリックベースも弾くようになったとか。
――あ、本作からフレンドがちょくちょく歌うようになった!
最大の変化はコレかもしれないが、元々歌入り曲はアルバム構成のアクセントに過ぎないバンド。フレンドがRED SNAPPER解散後に組んだCLAYHILLより連れて来た渋い声のギャヴィン・クラーク(M-04、06)と、ハスキーな声色の女性ソロシンガー:イライザ・カーシー(M-03、08)も当たり前の顔をして流れに溶け込んでいる。
――いや、M-08はパワフルなビートとスペイシーなギターフレーズの上へカーシーおばさんの熱唱が被さる中、チャレンジャーがサックスでベッタベタな合いの手を入れるという、80年代の臭い漂うダサさ紙一重の強烈な曲が一際異彩を放っている。
ただ、今まで彼らはこのような妖しい変化球をアルバム毎にしれっと含ませてきた食えないバンド。この異色ぶりも計算の内だろう。

このように、いつも通りなようで、十年も経てばちっとは作風も変わるわな、と思わせといてやっぱり根っ子の部分はどっしり御柱、という安定性が魅力。
そんな中、今までゲストで賄ってきた金物系パートをチャレンジャーで固定出来たのは大きい。彼のフレーズワークは若干ベタな傾向はあるが、現時点で最良のピースかと思われる――バンド自体がアクの強さを売りにしている訳でもないし。
――じゃあ何を売りに、彼らは音楽を演っているのかって?
こんな演奏が手堅く巧くて、四人のアンサンブルも完璧で、しかもフロアを縦にも横にもロッキンさせられるバンドが、ふらっと立ち寄ったライヴハウスで演ってたらどうよ? カッコ良過ぎて、しっびれるぜー?

M-01 In Your Backs
M-02 Chimee
M-03 Biffa Bacon
M-04 Jack
M-05 Spiky
M-06 Architectronic
M-07 Take Your Medicine
M-08 Loveboat
M-09 Eye Liner Stab
M-10 Great First Touch
M-11 Racing Snake
M-12 Off Balance
M-13 Fat Roller
M-14 You Read My Cards Wrong