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2014年3月16日日曜日

LITURGY 「Aesthethica」


ブルックリン出身、ハンター・ハント・ヘンドリクス(テメエ、明らかに芸名の元ネタトリプルHだろ!!)率いる〝新世代ブラックメタルバンド〟2011年作の二枚目。

はっきり申し上げて、彼らに〝ブラックメタル〟のタグを下げるのは良くない。
共通する点はトレモロ奏法とブラストビートくらいだ。スタジオ衣装はほぼ普段着だし、白塗りもしていない。厨二っぽいが、(形だけでも)悪魔崇拝者ではない。大手インディーに移籍して、録音状態も格段にクリアになった。
メタルと言うカルトなジャンルの極北にあたる、更に選民意識の強いジャンルなのだし、異端は排除してあげた方が真正ブラックメタルさんサイドにとっても、彼らやDEAFHEAVENさんサイドにとっても有益なんじゃなかろうか。

なら代わりに彼らをどんなジャンル名で括れば良いのか?
〝マスメタル(Math Metal)〟で良いんじゃないっすかー? (鼻ホジー

冗談はさておき、彼らの音楽性はまず例の(利き手はひたすら連続ピッキングして、もう片方の手は運指を複雑に動かす)トレモロリフと(キックとスネアとハイハットを同時に高速で叩く)ブラストビートありき。
その一方でキメがやたら多い。あまりにキメを多用し過ぎて、ループさせているんじゃないか? と勘繰りたくなるくらい多い。このことから、テクニック至上であることが伺われる。
音像は左右にそれぞれギターを配置。共に高音部を担う。中央をドラムが高速ビートで貫き、トレモロリフとの相乗効果で物理的速度を構築する。ベースは同じく中央に侍り、ひたすらギターにユニゾンすることで、高音パートがリズムパートと剥離しないよう吸着する役目を司る。その両者の平均高低差が高いためか、この手の音楽としては幾分かベースパートが聴き取りやすい。インストはおしなべてこんな調子。
あとは、自分より強い敵を野生の本能で察知してビビっている豺狼のような声で吼え散らかすHHHのヴォーカルを、ドラムの更に後ろから背景音のように鳴らすくらい。歌詞はちゃんとあるが、まず判別出来ないので内容などどうでも良い。
無論、同じコトばっかり演っては飽きられるので、M-03・M-05・M-07・M-11のような間曲を挿むことでアクセントを付けている。
それでも足りないと、M-09のようなミッドテンポのドゥームナンバーを演ってみたり。ごく稀にハードコアでお馴染みのDビートでボトムを支えてみたり(注:ブラストビートもハードコア系派生)。ギターのトレモロリフが錐揉み逆噴射の末に天高く広がり、シューゲイザー化したり。いろいろ伏線を引いて今後に繋げようと足掻く姿勢は高く評価したい。
中でも、M-07のようなトレモロで鳴らすべき音をしょぼい打ち込みで展開したら何だかバロック調に聴こえてきたり、M-11のように人声を重ねて聖歌っぽく聴かせてみたりする中世っぽい試みは、見るからにナルちゃんなHHHの雰囲気と見事に合致するので、この彩を本チャンの楽曲でもっと滲み出せれば……。

なお、本作はあのシカゴの大手インディー:Thrill Jockey Recordsよりリリースされた。
あー、OOZING WOUNDとかTHE BODYとかTRANS AMとか抱えるラウド系レーベルですもんねー。(棒

Disc-1
M-01 High Gold
M-02 True Will
M-03 Returner
M-04 Generation
M-05 Tragic Laurel
M-06 Sun Of Light
M-07 Helix Skull
M-08 Glory Bronze
M-09 Veins Of God
M-10 Red Crown
M-11 Glass Earth
M-12 Harmonia
Disc-2 (Bonus Disc For Japan)
M-01 (Untitled)
M-02 Immortal Life
M-03 Life After Life
M-04 Everquest I
M-05 Everquest II
M-06 No More Sorry
M-07 Vessel Of Everthirst

Daymare Recordingsから出た日本盤は、かのレーベルお得意のゲートフォールド紙ジャケ仕様二枚組となっている。
さてそのおまけ盤(Disc-2)は、OVAL(もちろんドイツのあの音遊びおじさんだよ!)との同年リリースしたスプリットLPから、約20分ものインスト大曲M-01。あとデビューEP「Immortal Life」をまるごと、という内訳。
すべて既発曲だが、一枚目と併せれば彼らの活動が総括出来る便利盤だ。


2013年3月16日土曜日

CHICAGO UNDERGROUND DUO 「In Praise Of Shadows」


ロブ・マズレク大将の加減算フリージャズプロジェクト、二人組では四枚目。2006年作。
例の場所で例のマッケンさんが録り、例のレーベルで発売。

このプロジェクトの面白いところは〝人員が減れば自由度が増す〟点にある。
普通は、人員が増える→楽器(音色)が増える→表現の幅が広がる→自由度が増す、とされているが、おそらく大将の発想は逆を行っている。
『(同時に鳴る)音数が切り詰められても、小回りが利くじゃない』と。
要は大将と、その相方:チャド・テイラーがフットワーク軽く動き回り、1+1を3にも4にも5にもしてしまえば解決するという話。

基本、大将=コルネット、テイラー=ドラムのパート構成だが、前作以上に各々の担当楽器数が多く、それだけでもフットワークの軽さを感じさせる。いやそれどころか、今まで以上に大将が、ユニットを睥睨する不動の主楽器に頓着していない。
実際、かの大正義金管楽器が鳴っているトラックはM-01、02、04、06と、10くらいなもの。むしろピアノを始めとした鍵盤楽器の含有率が高い。
テイラーの撥捌きが冴えるM-05など、今までならコルネットがフリーキーに吹き荒ぶところ、オルガンを砂塵の如く鳴らしてノイズ曲に仕立て上げている。M-03に至っては大将が傍観し、テイラー独りでムビラ(俗に言う〝親指ピアノ〟)と鐸と拍を取るためのバスドラムをこなす人力アンビエント風の曲も。
とは言え、鳴れば瞬時に耳を惹く、如何にも大将らしいコルネットのフレーズは健在。こうなると音の派手な金管楽器は強い。
だからこそエースに頼らず、他の音でも勝てるよう模索し始めたのかも知れない。

〝フリー〟ジャズだからこそ、いろいろ演ってみる。
ただしM-02の前半や07のように、切り詰めた音符を即興で置いて行く曲もあるので、聴きやすさは前作より減退したのも確か。
ゆえにオーソドックスなQUARTETORCHESTRAや、主音のはっきりした前作で耳慣らしをしてから、本作の聴き応えを試す方が良いかと。

M-01 Falling Awake
M-02 In Praise Of Shadows
M-03 The Glass House
M-04 Cities Without Citadels
M-05 Pangea
M-06 Funeral Of Dreams
M-07 The Light In Between
M-08 Stratus (Bonus Track For Japan)
M-09 Cumulus (Bonus Track For Japan)
M-10 Cirrus (Bonus Track For Japan)
M-11 Nimbus (Bonus Track For Japan)



2013年1月22日火曜日

TOWN AND COUNTRY 「Up Above」


全手動ミニマル四人組、2006年の五枚目。

彼らが、長音を多角的に絡めていく雅楽風な音世界を確立したのが前作。あの時点の拙文ではあえて〝洋風雅楽〟と称したが、本作では更に斜め上の発展を遂げている。
前作までに用いてきたヴィオラ、アコギ、ウッドベース、チェレステなどの洋風楽器に、タイのケーン、インドのタンブーラ、北アフリカのゲンブリ、日本の尺八などの民族楽器を平然と混入し始めたのだ。
しかもM-06、07では最強の音色・人声を出来損ないのホーミー(モンゴル)という形で初披露。
その音色総数、二十四。
三作目までは爪弾かれた音色を紡いでいく手法が、前作で長音を折り重ねていくそれへの移行を画策し、本作ではそれを多種多様な楽器で実行していこう、となった訳だ。

ただしコレにより、何となーく引っ掛かる点が生まれてしまった。
単に難解化した。それだけ。
洋風楽器に各国の民俗楽器をエキゾティック要素目的ではなく、音色の多角化のみの理由で投入した。如何にもこの界隈の連中らしい妙案だと思う。
ただコレ、演り過ぎると輸入盤ラストのM-10や日本盤ラストのM-12のような、情報が錯綜して聴き手側がリラックス出来ない状態に陥るのだ。
こうなるともう、快楽原則に法って音を出しているのか疑わしくなる。

だがこの据わりの悪さと似たような方向性の音楽ジャンルもあったりする。
ずばり、ノイズミュージックだ。
〝ハーシュ〟と呼ばれる耳垢をすっ飛ばす破音が分散して襲って来る音像だと考えれば、不思議と難しく考えずに受け入れられるはず、ノイズ耐性があれば

じ・つ・は、そこまで強烈な音像の曲ばかりでもなかったりする。前作の踏襲程度で、ドローンっぽくだらーっと聴き流せる曲だったり。M-09のようにほぼアコギ一本だけど三作目以前とは違う鳴らし方の曲だったりする。
脅かして申し訳ないが、割とハードルが高めのアルバムだと思うのであえて。
だからこそ、ありのままを受け入れる逆転の発想を。音楽なんざ、頭で考えて聴くだけ損なんだぜ!

M-01 Sun Trolley
M-02 Fields And Parks Of Easy Access
M-03 Phoney Fuckin' Mountain
M-04 Bee Call
M-05 Cloud Seeding
M-06 Blue Lotus Feet
M-07 King Of Portugal
M-08 Belle Isle
M-09 Almost At White Glass And Sun
M-10 Up Above
M-11 Sun Trolley Part 2 (Bonus Track For Japan)
M-12 Up Above The World (Bonus Track For Japan)

M-06はエルヴィスやジョージ・ハリスンも傾倒したヨガの導師:パラマハンサ・ヨガナンダの、M-07はポルトガルの賛美歌のカヴァー。


2012年12月6日木曜日

BILL DIXON with EXPLODING STAR ORCHESTRA 「Bill Dixon With Exploding Star Orchestra」


毎度お馴染みジャズ大将:ロブ・マズレクが統べるフリージャズ楽団と、60年代〝ジャズの十月革命〟を主催したフリージャズ発展の功労者:ビル・ディクソン、奇跡の邂逅。
Thrill Jockey産、2008年作。
今回、マッケンさん(録音と木琴)は不在。よって録音はSOMAではなく、スティーヴ・アルビニ所有のElectrical Audioで行われた。(当然、アルビニは本作に関与していない。意外とマッチしそうなんだけど)

大将が敬愛するディクソンを招いたことで、本作は彼の彩が強くなった。それはもう、一曲まるまる統括をお願いし、それをM-01、03と二分割して大将自身が仕切るトラック:M-02へ挟み込むくらいの熱い暑いリスペクトぶり。
よって焦点を絞り、ディクソンのトランペットと大将のコルネットが共闘する場面を際立たせた創りとなっている――前作は総勢十四名のプレイヤー各自が弾けられるよう、見せ場を均等に与えられていたのが。
まあそれは致し方ない。
かと言って主賓がでしゃばって他楽団員を奴隷化する、幼稚な創りな訳でもない。総員各自、奥に引っ込まずに脇から盛り立てる、美しい接待ぶり。
それに応えてM-02など、ディクソン翁(当時八十二歳)が渾身のブロウをかましており『おいジジイ、大丈夫か!? 』と手の汗握る熱量も有している。この楽団ならではの、全プレイヤーが秩序を持って一斉に音を激発(Exploding)させるパートも然り。

それにしても、偶発要素の高いフリージャズでよくもまあこれだけ大人数の、しかも個性の際立ったプレイヤーを統括出来るもんだ、と感心させられる。
だからこそ卓加工の匙加減が決め手――
と思いきや! 本作、オーヴァーダブなしの一発録りだそうな。すげえ! (ますますアルビニに録らせて欲しかった!)

M-01 Entrances / One
M-02 Constellations For Innerlight Projections (For Bill Dixon)
M-03 Entrances / Two


2012年11月16日金曜日

TRANS AM 「Futureworld」


あほやで!
たまに牙を剥くメリーランドの張り子狼、1999年作の四枚目はやはりThrill Jockey産。

まあ、へなちょこと熱血の狭間と言うか……いつも通りの分裂症路線。真顔で脱力系のジョークをのたまい、汗だくでも飄々と。
具体的に書けば、如何にも彼ららしい人力テクノのM-07もあれば、M-04のようなごりごりハードロッキンな曲も。M-06の何もかもが胡散臭いエレクトロモンド風も、M-09のような人力ミニマル路線もあり。締めのM-10ではじわじわと盛り上げていく、ダイナミックかつドラマチックな創りも。
そんな中、M-02、03、05、07で本作から正式にヴォーカルも披露。ただしヴォコーダーを噛ませているのはシャイと言うか、KRAFTWERKの遺伝子と言うか……。しかもM-02ではヴォコーダー越しのシャウトなる、世にも珍しい試みが。

さすが曲者、一筋縄ではいかぬわ。
ただ、生真面目に音楽に接するタイプの方とは、この音は相性が悪いかと思われる。何せ音楽性の焦点など、まるで定める気がないのだから。
そこを「みんなを戸惑わせるような言動(音楽性)は慎みなさい!」と口やかましく説教するよりも、「おまえ、あほやなー」と弄ってやった方が楽しい、と筆者は言いたい。
奇を衒い過ぎるくらい衒ってはいるが、音の解釈は至ってストレートなのは事実。ベタですらある人懐っこいフレーズを恥ずかしげもなく用いる、正に裏の裏を突いた音楽性が彼らのキモであり、聴いていて微笑ましくもなる要因なのだから。

さて、〝キモ〟ということは是、音世界の統一感を意味し、それは彼らならではの特色ということになるまいか?
ほらもう! こーゆう奴らなんだ、と許容してあげようよ。
いじいじ重箱の隅を突付くより、豪快にもう一重おかわりしようじゃないのさ。

M-01 1999
M-02 Television Eyes
M-03 Futureworld
M-04 City In Flames
M-05 Am Rhein
M-06 Cocaine Computer
M-07 Runners Standing Still
M-08 Futureworld II
M-09 Positron
M-10 Sad And Young

日本盤は:
M-11 Alec Empire Is A Nazi/Hippie
M-12 Am Rhein (Party Mix)
M-13 Woffen Shenter
M-14 Thriddle Giggit Dream
M-15 Ardorth Marketplace
:と、五曲もボートラがあるお得仕様――も、現在廃盤。しかも翌年発表の編集盤に収められたM-11と12以外はココでしか聴けない。
ただし、M-11のしょうもない曲タイトルを含め、どれも真顔でおちゃらけるジョーク曲の彩が強い。つまり、別にあってもなくても良い。


2012年10月22日月曜日

THE SEA AND CAKE 「Oui」


なにげにシカゴ界隈の猛者が集まったスーパーグループ、2000年発表の五枚目。
ジャケ写は当バンドの看板、Vo&Gのサム・プレコップ自身が撮った。

鼻歌のような気持ち良い抜け方をする独特の歌唱法を持つプレコップからして、このバンドの音像は爽やかなイメージがある。
ただしM-01のような例のマッケンさん(当然、本作のスタジオワークも兼ねる)が先導する軽快なビートに柔らかく沿わせる上モノ、という曲調からしてそれっぽいのだが、本作は全体的にどちらかというとメロウでウェットだ。アルバムが後半に進むにつれそれが顕著となる。
だからといってキモであるプレコップの歌がミスマッチとなる訳などまるでなく、メロウでウェットならその分、彼の歌声も憂いを秘めて聴こえてくるのだから不思議だ。別段、唱法を替えた訳でもないのに。

やはり看板はそのくらい芯が太くないといかん。ふにゃふにゃな声質なのにね。
ただ、他が何の工夫もなくその看板の裏に隠れているようでは、誰もこのバンドを「実力者が集うスーパーバンド」などとは呼ばん。

中でもいぶし銀の活躍をしているのが、この中では些か経歴の地味なエリック・クラリッジ(B)。深みのある低音で常に存在感を露にしている。彼の芳醇なベースラインを耳で追っているだけでも琥珀色の蒸留酒が恋しくなるほど。
また見逃されがちだが、マッケンさん謹製の音響工作作品とあって、M-02のようにサビでアコギの旋律をループっぽく重ね、その一音符毎にスピーカーの左右に振り分けるなんて小癪なコトを平然と執り行っていたりする。
またM-04をはじめとする、管楽器の単体導入もさり気なくて好印象だ。

このように、1+1+1+1を10倍の800にするのが実力派集団の正しい形。
それが4にすらなってない連中も居るのは、一体全体どういうコトかね? 金かね? どいつらとは書かんが、猛省したまえ! 彼らを見習いたまえ!

M-01 Afternoon Speaker
M-02 All the Photos
M-03 You Beautiful Bastard
M-04 Colony Room
M-05 Leaf
M-06 Everyday
M-07 Two Dolphins
M-08 Midtown
M-09 Seemingly
M-10 I Missed the Glance
M-11 Props Of Upper Class (Bonus Track For Japan)
M-12 Pitch Direct (Bonus Track For Japan)


2012年10月4日木曜日

CHICAGO UNDERGROUND TRIO 「Slon」


シカゴのジャズ大将、コルネット吹きのロブ・マズレク率いる加減算ジャズプロジェクト、トリオ編成では三枚目。2004年作。
前作のややこしい編成から、今回は大将、テイラー(Ds)、クーパースミス(Double B)のトリオに戻る。しかもきっちり、三人で演奏を賄っている。
録音とミックス担当はバンディ・K・ブラウン。BASTROやらGASTR DEL SOLやらTORTOISEやらにも
在籍したことがある凄い人なのだが、現在フリー(苦笑)。

今回はTRIO版初のThrill Jockey Recordsリリースともあって、人力ジャズとエレクトロニクスの折衷作となっている。
M-01こそ如何にも大将っっ! なコルネットから始まるらしい曲だが、続くM-02、03と大将やクーパースミスが組んだいびつな打ち込みを軸に構成。M-02など、エレクトロニカさながらのビート音色に、大将の抑えたコルネットとクーパースミスのまろやかなベースが渋く絡む、耳を疑わんばかりの創りだ。
後はインプロありの、各音色を点で捉えてそこからまちまちの線を引くような音響曲(伝わらなければM-06を参照)ありので、雑多な印象を受けるかも知れない。

だがそれは、演っていることが三人編成のジャズなんだ、という基本線を忘れた認識なのではなかろうか。打ち込みに意識が向き過ぎなのではなかろうか。
現に本作の全体像は、三人の担当楽器を固定し、そこへ必要に応じて打ち込みを噛ませる、といったヴィジョンで徹底している。それだけM-02が、曲としては地味な部類なのにインパクトが絶大だったという結論に至る
そこら辺をいつものマッケンさんレコーディングなら、巧くキモを理解して打ち込みを溶け込ませる手法が取れたのかも知れない。ブラウンという腰の落ち着かない何でもありな嗜好の持ち主だからこそ、このような煩雑さが滲み出てしまったのやも知れない。
もちろん筆者は前者が正解で、後者を取った本作が失策だとは微塵にも思わない。
逆に、真っ当なジャズへぴりりとスパイスを効かせた作品、と評するべきなのでは。

最後となって恐縮だが、本作は9.11の犠牲者に捧げられている。
黙祷。

M-01 Protest
M-02 Slon
M-03 Zagreb
M-04 Sevens
M-05 Campbell Town
M-06 Kite
M-07 Palermo
M-08 Shoe Lace
M-09 Pear


2012年6月2日土曜日

TRANS AM 「Red Line」


メリーランド州出身、Thrill Jockey Recordsきっての曲者トリオ、2000年作の五枚目。

どっかでぼそっと彼らの名を挙げたが、はっきり言ってマトモなバンドではない。
へんてこな音色(ねいろ)を奏でるシンセや、人を食ったようなヴォコーダー声でテクノちっくな雰囲気を醸し出していたかと思えば、突如としてドラムが鋭い決めのビートを叩き込んで来る。
かと思えば、M-07やM-20のような70年代ハードロック風のダイナミックな曲を平然と演ってくるこのセンスにもあきれ――

いや、痛快! と思わないと付いていけないよ、我々音の享受者は。

要は「何でもアリ」なバンドな訳で。ひっそりぽそぽそ音を置いていくような曲もあれば、前述のようにハードロッキンな曲もある。それらを平然とアルバム内に同居させて聴き手を煙に巻く――いや、開き直っている。
「コレが俺たちの好きな音だから。俺たちの音が好きなお前らも当然、好きだろ?」と言わんばかりの俺サマ節ゴリ押しぶり。
この手のバンドは興味を持つか持たないかの問題で、一聴して「何が演りたいの? 意味分かんね!」と切り捨てる方に、彼らの俺サマ節は全く効果がない。「何か面白ーい!」とわくわくどきどきしてくれる方だけに通用する〝殿様商売〟をやっているのだ。
おっと、こんな趣深い音を上の一文で「偉っそうなバンドだ」と曲解されては敵わない。もっと入り込みやすい窓口の一言を受け売りで付け加えねばならない。

こんなあほバンドを真面目に聴くだけなんてもったいない!

彼らの演っているコトなんてネタなのさ。
HPからして毎回「お前らあほやろ」と苦笑させる写真をトップに持ってくるようなバンドである。聴き手はアーティストが放ってきた音楽を真正面から受け止めて云々、みたいな高尚な聴き方、彼らにネタにされるだけだよ?

M-01 Let's Take The Fresh Step Together
M-02 I Want It All
M-03 Casual Friday
M-04 Polizei (Zu Spat)
M-05 Village In Bubbles
M-06 For Now And Forever
M-07 Play In The Summer
M-08 Where Do You Want To Fuck Today?
M-09 Don't Bundle Me
M-10 Mr. Simmons
M-11 Diabolical Cracker
M-12 I'm Coming Down
M-13 The Dark Gift
M-14 Air And Space
M-15 Talk You All Tight
M-16 Lunar Landing
M-17 Bad Cat
M-18 Slow Response
M-19 Getting Very Nervous
M-20 Ragged Agenda
M-21 Shady Groove


2012年3月24日土曜日

CHICAGO UNDERGROUND QUARTET 「Chicago Underground Quartet」


シカゴのジャズ大将:ロブ・マズレクの加減算プロジェクト、四人組では唯一の音源。2001年作。CHICAGO UNDERGROUND系(以下CU系)としてはコレの次にリリースされた。
今回はいつものThrill Jockeyからのリリース。いつものSoma Studiosでいつものマッケンさんが録る〝恒例行事〟と書いて〝おやくそく〟と読む体制。

メンバーはマズレク(コルネット)、チャド・テイラー(ドラム)、ノエル・クーパースミス(ダブルベース)、ジェフ・パーカー(ギター)……って、TRIOと同じ編成じゃないですかー、やだー!
だが今回は〝QUARTET〟だからして、四人フルの演奏が満喫出来る。三人しか同時に鳴らせない制約などない、フルコンタクトなプレイが売り! と思っていただきたい。
だからか、今回は割とバラエティに富んでいる。
どっぷりジャズな曲もあれば、パーカーが大活躍するTORTOISEっぽいギターフレーズをフィーチャーした曲もある。水墨画のようなポストロック的テクスチャーをジャズで翻案した曲もある。如何にもフリージャズ然とした、ポリリズミックな曲だってある。アルバムが終了し、暫しの空白後に起こるどっきり仕掛けだってエキサイティングだ。
メンバーそれぞれ自作曲を提供して編んだのが、この多様化の要因である。

それらを締めるのが、四人の真ん中にどんと聳え立つ野太いジャズの御柱であり、バンマスのマズレク大将が鳴らすコルネットの音だろう。
不動の軸さえあれば何を演ったって許される。おまけに我々下々の者どもにも分かりやすく咀嚼される付加価値も生まれる。

そうなれば本作が、CU系の音世界を一望出来る総決算アルバムだと言い切ってしまえ、この先の締め文への展開が楽になる。
CU系全主要構成員が、己の我を出すべく各々が曲を持ち寄り、結果として多角的な作品となり、でもジャズとしか言いようのない作風を貫き、マズレク大将ありきの、気持ち良い曲ばかりが詰まった高品質アルバム。
CU系に興味が沸いたのなら、まずはコレ! と言わんばかりの見本市。

M-01 Tunnel Chrome
M-02 Four In The Evening
M-03 A Re-Occurring Dream
M-04 Welcome
M-05 Three In The Morning
M-06 Total Recovery
M-07 Sink, Charge, Fixture
M-08 Wo Ist Der Kuchen, Meine Frau
M-09 Nostalgia
M-10 Dance 99 (Bonus Track For Japan)



2012年3月2日金曜日

TORTOISE 「TNT」


説明不要の亀さん、三枚目。1998年作品。

バンドの首魁〝マッケンさん〟ことジョン・マッケンタイア(Dsなど)が、自らの根城・Soma Studiosに籠もり(M-03とM-08の録音のみ、別のスタジオにて)粛々と執り行ったそのレコーディング、何と1996年11月より開始の1997年11月終了。丸一年も費やしている。
その間、ギターがデイヴッド・パホ(元SLINT。後に自らのプロジェクト・PAPA Mを結成)からあのマズレク大将(本作にも堂々参加)ユニット常連で亀さんメンバー唯一のジャズ畑プレイヤー、ジェフ・パーカーに代わっている。そりゃ誰か飽きるわ。
それはもう難産だったろうさ。苦しかったろう。しんどかったろう。

だが皆さんは少年少女の頃、ゲームに夢中になるあまり、夜更かし、徹夜、あまつさえ学校をサボったりしなかっただろうか?

今では誰もが使っているハードディスクレコーディングシステム〝Pro Tools〟。マッケンタイアの実践投入はSTEREOLAB「Dots And Loops」の方が先だが、TORTOISEでのレコーディングはコレが初。しかも当時、普及しているとは言えず〝魅惑の箱〟扱いだった。
雇われ仕事なら期日はあるが、自分たちの作品なら好き勝手に時間を費やせる!
そりゃもう、レアアイテムゲットやらレベルカンストやらディープダンジョンや裏ルートやらを攻略する勢いで、録音された音(素材)を弄り倒すでしょうよ。Pro Toolsという恰好の玩具を使って、嬉々として。
実はつらくも苦しくもなかったはずさ。楽しんでやがる!

こうして出来上がった作品は非常に端正なモノとなった。
生音を基調としているが、ところどころ打ち込みも噛ませてある。その音色に少々チープな素材を用いているのは、艶も特徴もあるメンバーの演奏と対比させるためであろうか。
This Is TORTOISE!! とも言うべき西部劇ちっくな弦楽器や、シロフォンなどの看板音色を引き立たせるべく、あちこちで打ち込み/生音ない交ぜにした装飾音で聴き手の耳のあちこちをくすぐり続ける。
その生音使いも、いったんハードディスクに取り込んでからループさせたり織り重ねたり鳴らす場所を散らしたりするなど、今では常識となったPro Toolsの編集機能を縦横無尽に使いこなし、嫌味なく構成している。
また、ドラムンベースちっくなビートパターンを組み込むなど、既存の方法論から逸脱するような動きも。
微に入り細を穿つような。

もしかしてこう操れるまで、一年もの実験期間を要したのかも知れない。
そんな地道な完コンプ実験が、後世の録音技術に多大な影響を与えている。与えているからこそ、本作は今でも色褪せぬ超名盤として崇められている訳だ。
いろんな意味で教科書盤。一家に一枚、是非。

M-01 TNT
M-02 Swing From The Gutters
M-03 Ten-Day Interval
M-04 I Set My Face To The Hillside
M-05 The Equator
M-06 A Simple Way To Go Faster Than Light That Does Not Work
M-07 The Suspension Bridge At Iguazu' Falls
M-08 Four-Day Interval
M-09 In Sarah, Mencken, Christ And Beethoven There Were Women And Men
M-10 Almost Always Is Nearly Enough
M-11 Jetty
M-12 Everglade
M-13 TNT (Nobukazu Takemura Remix) (Bonus Track For Japan)

ボートラM-13は原曲のツボをきちんとを捉え、自らの持ち味は最大限に引き出す好リミックスなので、ぜひ日本盤を。


2012年1月10日火曜日

BROKEBACK 「Looks At The Bird」


おおゥ、素敵ジャケ……!
THE SEA AND CAKEの(奇しくも)ベーシスト、エリック・クラリッジ画伯によるアートワークが秀逸な、ツインベースデュオの2002年作・二枚目。
メンバーはまず、現TORTOISEで他にELEVENTH DREAM DAYやPULLMANなどを平行して稼動させている六弦ベーシスト、ダグラス・マッカム。元々、この人のソロプロジェクトとして当ユニットは活動を開始した。
相方は、前音源から正式参加のノエル・クーパースミス。CHICAGO UNDERGROUND系でいぶし銀の活躍を見せるダブルベース使いだ。
レーベルは例のトコで、録音技師はいつものマッケンさんがいつもの自分のトコで。

音色は違えど、ベース二本という画期的な編成による制約と、二人の高濃度な人脈を踏まえれば「ゲスト参加者が超豪華!」となるのが筋。
いちいち詳細を記していたらきりがないので簡単に。マッケンさんや〝大将〟はもちろん、大将の相方(つまりクーパースミスの同僚)やSTEREOLABの歌い手両名、竹村延和が主宰するChildisc所属の日本人シンガーソングライター(米盤ではThrill Jockey所属)と、まあよくココまで集まったなと言わんばかりの面子がずらり。
だが彼らはあくまで脇役。装飾音として曲に貢献する、分を弁えたプレイはさすが辣腕ども。ポストロックはバランス感覚が命です。

さて、肝心のベーシスト二人なのだが……ご想像通りマッカムの弾くTORTOISEの代名詞・西部劇ちっくなベースラインを主音に、ダブルベースらしい芳醇な音色でクーパースミスが付かず離れずボトムを支える――コレが基本線。クーパースミスが曲によってボウ奏法をしている点が、個人的には美味しい。
だが二人、さほどベースという楽器に頓着しておらず、クーパースミスは卓弄りに余念がなかったり、マッカムがM-04やM-05でギターを持ち出し、ツインベース編成に唾するような行動も。これはもう、全て二人だけでアルバムを賄えてしまうのでは。
いやいや「音色を機能的に扱う」ことに長けた連中が集うこの界隈。たった二人で演るなら演るなりのメソッドで、大勢集めるのならそれらを生かした音創りになる。

音色が多いに越したことがない。それが名の知れたプレイヤーから出されるのなら願ってもない。それらを売りにするつもりはない。それらの持ち味を殺すほど愚かでもない。
シカゴの音キチたちはこうして音を日々、研鑽していくのだ。

M-01 From The Black Current
M-02 Lupé
M-03 Name's Winston, Friends Call Me James
M-04 Everywhere Down Here
M-05 In The Reeds
M-06 50 Guitars
M-08 The Wind-Up Bird
M-10 Noel 1 (Bonus Track For Japan)
M-11 Doug (Bonus Track For Japan)
M-12 Noel 2 (Bonus Track For Japan)

日本のみのボートラは曲名の者が担当するソロインプロ。間曲として入っているのならアリとは思うが、ボートラとしてなら正直要らん出来。


2011年10月14日金曜日

CHICAGO UNDERGROUND DUO 「Axis And Alignment」


毎度おなじみシカゴ音楽シーンの立役者、ロブ・マズレクの流動的プロジェクト、三枚目。2002年作。レーベルはいつものトコスタジオもエンジニアもいつも通り。
前からコレを書きたかったのだが、このプロジェクトを紹介する上で必要な前置きが面倒臭い(上に筆者はジャズに精通していない)ため、先延ばしにしてきた。
さ、頑張るか。

〝CHICAGO UNDERGROUND〟の冠名が付くプロジェクトは四つある。まずはマズレクありき。そこから一人、二人、と人員を継ぎ足していく構成だ。
まず今回の〝DUO〟。二人ゆえにフットワークが軽く、一番作品を残している。
次に〝TRIO〟。三人だが、コレが曲者。
あと〝QUARTET〟。四人。すごく……真っ当です……。
で、まずはココから始まったクインテット、じゃなくて〝ORCHESTRA〟。
以上、簡潔に。
TRIOのややこしい編成は、いづれ書くであろうTRIO紹介の際に追々。

さて本作はDUO。マズレクの相方はタイコ叩きのチャド・テイラー
どうせベースレスでひたすらビートとコルネットのアンサンブル――ばかりかと思いきや、ベースパートをマズレクの組んだ安い音の打ち込みに頼ったり。マズレクがそっとコルネットを吹いている際、テイラーがひっそりヴィブラフォンを添えてみたり。そのヴィブラフォンの音を取り込んで、ヴァーチャル三重奏をしてみたり。マズレクがピアノを弾き、テイラーのヴィブラフォンと音響バトルを繰り広げたり。
手を替え品を替え。

でもこの手のフリージャズ系? 即興っぽい意味不明なプレイ、苦手なのよねえ。小難しくて付いて行けないわあ……とお悩みの奥様に朗報。
今までの〝DUOはそうでもなかったのだが、本作はいつも以上にマズレクのコルネットが派手に鳴って、我が主役! と高らかに宣言しているため、非常に取っ付きやすい。あんさんのプロジェクトなんだから、いつもこうしてくれたら良いのに……。
その中でも出色なのが、マズレクのコルネットとテイラーのドラムの火花散るせめぎ合い。コレをアルバムの真ん中辺に配置しているトコロがミソ。そろそろ油断し始める頃に、がつっと持って行かれる。

これもいつも書いているコトだけど、あんま頭を使ってウチのブログで扱っているような音楽を聴くべきじゃないと思うのだなあ。音楽に浸る多幸感が目減りするじゃない。
マズレクのおっさんはそんな聴き手の痒いトコを考えて音を創ってくれるジャズマンなので、筆者は門外漢ながら何とか必死に食らい付いているのだ。

M-01 Micro Exit
M-02 Lifelines
M-03 Particle And Transfiguration
M-04 Exponent Red
M-05 Average Assumptions And Misunderstandings
M-06 Lem
M-07 Two Concepts For The Storage Of Light
M-08 Memoirs Of A Space Traveller
M-09 Rotation
M-10 Access And Enlightenment
M-11 Noon


2011年9月24日土曜日

RADIAN 「Juxtaposition」


以前書いたTRAPISTでもドラムを担当しているマーティン・ブランドルマイヤーのメインバンドがこちら。他のメンバーもレーベルオーナー(シンセサイザー)、ライヴハウス付のエンジニア(ベース)と、一筋縄ではいかない音響野郎で脇を固めている。
本作は2004年作品の三枚目。
エンジニアはThrill Jockey Recordsと言えばこの人、Soma Studiosの引き籠り職人:ジョン・マッケンタイア。

えと、あの、非っ常ーゥに言いづらいコトなんですがァ……別にRADIANで演っているコトをTRAPISTへ持ち込んでも、音の素人である我々聴き手にはさほど違和感もないという。その逆もしたり。
現に日本盤のみのボートラ(M-10、11)のマスタリングは、TRAPISTのギタリストが手掛けていたりする。
え? ほんとにもしかして、鍵盤と六弦楽器の違いだけ?
まあまあまあ。それだけ両バンドの首魁・ブランドルマイヤーには、誰にも譲れない、確固たる音楽的ヴィジョンがあると思いねえ。
だからと言って『メンバーが違うから別バンド』なんて落ちでもなさそうな。

そこで両作品を聴き比べること数時間。
どちらも2004年作品なので、比較対象としてはこれ以上ない素材だ。

メロディをほぼ排除したシンセによる長音の鳴り。抜けの良いブランドルマイヤーのビート。それらに付かず離れずのベースラインと、その他に使用される楽器。加えて、副次的に発生する雑音(グリッチ)――
これらがやけに組織立って鳴っている上に、加工品としか思えない質感の音パーツも鼓膜に響いてくる。
漠然とだが、まずはざっくり鳴らしてから細部をちょこちょこ色付けしていくのがTRAPISTだとすれば、細部を(グリッチですら!)卓に持ち込んで徹頭徹尾弄り倒すのがRADIANなのかも知れない、と筆者は結論付けることにした。
もはやRADIAN側の三人が弾いている音など、パーツに過ぎないのだ!
分家の方がバンドっぽいのも変な話だが、本家は明らかに手間隙が掛かっているという点で、メインを張る意味がある。

けど、そんなコトをわざわざ踏まえてまで聴いても、気持ち良くなれないよ!
やはりぽーっと鳴らし、ほけーっと聴くべき音楽だと改めて気付かされる。

てんかい? ぎこう? りろん? なあにそれェ。きもちいのォ?

M-01 Shift
M-02 Vertigo
M-03 Rapid Eye Movement
M-04 Transistor
M-05 Helix
M-06 Ontario
M-07 Tester
M-08 Tiefenscharfe
M-09 Nord
M-10 Axon (Bonus Track For Japan)
M-11 HLx2 HLx2 (Bonus Track For Japan)


2011年7月22日金曜日

EXPLODING STAR ORCHESTRA 「We Are All From Somewhere Else」


シカゴ音楽シーンを華麗なフットワークで牛耳るコルネット吹き、ロブ・マズレクが結成した十四人編成の文字通りジャズオーケストラ、2007年発表の初アルバム。
ジョン・マッケンタイアを始めとするTORTOISEのメンバーが三名、マズレクの別ユニットISOTOPE 217°のメンバーが一名参加しているが、その他のメンバーの素性は筆者のジャズシーンの不勉強により、分からない。申し訳ない。
スタジオは例のトコ。エンジニアはもちろんマッケンタイア。当然、プロデュースはマズレクとマッケンタイアの連名。

まずはM-01、ジャジーなビートがマリンバと共に推進し、そこへ軽快なフルートが被さった刹那、(筆者を含む)ジャズ一見さんは「コレってもしかして物凄え作品……!?」と息を呑むことだろう。一方の生粋のジャズリスナーはどう思うかって? 知らんよ。「いやいや本物のジャズは云々……」講釈垂れんじゃね? アタマがっちがちだし。
それはさて置き、最大十四もの音が時には協力し、時には音を別ち、時には影に入り、時には日向に転じ、爆裂(Exploding)に向けてテンションを高めていく様は圧巻だ。
その爆裂パートもただドガチャカ演るのではなく、時間軸を入れ替えて爆裂後の景色を器楽化してみたり。ただどーん! と爆発するのではなく、打ち上げ花火のような多くの爆発を束ねて形取る、統率の行き届いた音像を展開するのだから恐れ入る。しかも曲のハナからどかーんと演ってから、時系列を追うかの如く丁寧に曲を逆算させたりもする。花火と言えば、打ち上げではなく線香花火のような可憐でささやかな爆裂をそっと提供してくれたりもする。
手を変え品を変え。

それにしてもジャズならではの即興部分も、明らかに鳴らし方がジャズではなく、音響派どもが演ってきた気持ち良い音を抽出するメソッドを用いているのだから、バンマスのマズレクも食えぬ奴よの、と。

筆者はジャズのことをあまり理解出来ていないが、そんな聴き手をあっという間に取り込み、このアルバムは凄えな気持ち良いなかっけーなと脊髄反射を起こさせる即効性はまさしく買い。
それでいて、じっくり聴き込んでも深みが増す。
試聴で惚れて衝動買いしても一生の付き合いが出来る、本作はそんな名盤。

Sting Ray And The Beginning Of Time
   M-01 Part 1
   M-02 Part 2
   M-03 Part 3 (Psycho-Tropic Electric Eel Dream)
   M-04 Part 4
M-05 Black Sun
Cosmic Tomes For Sleep Walking Lovers
   M-06 Part 1
   M-07 Part 2
   M-08 Part 3
   M-09 Part 4 (Fifteen Ways Towards A Finite Universe)
   M-10 Part 5
M-11 Luminous Galaxy (Bonus Track For Japan)
M-12 Dark Water (Bonus Track For Japan)

日本盤のみのボートラのM-12には、STEREOLABのレティシア・サディエールがフランス語のポエトリーディングで参加。コレだけでも日本盤を選ぶ価値はあるかと。


2011年7月6日水曜日

TRAPIST 「Ballroom」


欧州随一の音響立国:オーストリアはウィーンの三人組による2004年発表の、厳密には二枚目。(初作品はメンバーの連名)
米国はシカゴの音響系総本山:Thrill Jockeyより。

実も蓋もないが、多くの文字情報を詰め込んで聴く音楽ではない。
ドラムのマーティン・ブランドルマイヤーが、同じくThrill Jockey所属のRADIANでも撥を振るっていることぐらい知っておけば、それで事足りる。
多くなればなるほどこのバンドの、この作品の、この音世界の邪魔になる。

一聴、ハードルが物凄く高い音楽である。
ドラムとアップライトベースとアコギによる即興演奏を軸に、さまざまな音色パーツをスタジオに持ち込んで重ねる手法。
ここら辺の〝音響系〟と呼ばれる輩が演る即興は、ただでさえ受け入れづらい即興という手法をこねくり回して聴き手に提供するので、まるで音に〝イチゲンさんお断り〟の札が下がっているように聴こえてしまう(おそらくジャズのDNAゆえだろう)。ストーナーやサイケ連中のように、安易に垂れ流してくれないのが難点だ。
だがココで逆に考えてみよう。この手の音響派連中の即興は、音に一定の理性を介在させて聴き手の快楽中枢を意図的に擽ってくるのだ、と。(演奏者たちだけ楽しんでるインプロは自慰だぞ! そんなの表現じゃないんだぞ!)
更にこのTRAPISTは、スタジオでその即興演奏をわざわざ編集して、より痒い音に仕立て上げてくれるばかりか、もっとむず痒い思いをさせようと、気持ち良い音をわざわざ書き加えてくれているのだ、と。
問題はその音の鳴らし方が聴き手にとって気持ち良かったか、なのだ。

たまにその音がパーツの一片をそっと五線譜の上に置いただけの、旋律にすらなっていない曲もある。リズムにすらなっていないボトムの曲もある。
何コレ、音楽じゃない! と拒否反応を示す前に、その奥で何が鳴っているのかを気にして欲しい。そこには予期せぬ音(グリッチ)を含めた、聴き手の予想だにせぬ副音が細菌のように蠢いているから。

ざーっと粗塗りした幽玄な背景に、きちっと音色を細部まで書き込んだこの音世界は、まるで水墨画のような。
とにかくだらーっと浸って欲しい。頭を使うだけムダ。

M-01 Time Axis Manipulation (Part 1)
M-02 Time Axis Manipulation (Part 2)
M-03 Observations Took Place
M-04 The Meaning Of Flowers
M-05 For All The Time Spent In This Room
M-06 Hello Again (Bonus Track For Japan)

日本盤は6分にも渡るM-06を追加収録。


2011年6月28日火曜日

ISOTOPE 217° 「The Unstable Molecule」


シカゴフリージャズ界の御大将、コルネット吹きのロブ・マズレクがTORTOISEのメンバーやらを掻き集めて組んだユニットの一枚目。1997年作品。
レーベルはシカゴ音楽シーンを牽引するThrill Jockey Records

何かもう……最初の一行で説明が終わってしまう音。
TORTOISEがジャジーになった音。コルネットをフィーチャーしたTORTOISE。音頭取りのマズレクも意図してメンバーを呼び寄せたのではなかろうか、と思うくらい。
実際、M-03は後にTORTOISEの方で“Jetty”として翻案されているし。
じゃあ、そのまんま感が嫌だって? とんでもない!

ちょうどジャズとポストロックの間を取った心地良さ。
フレーズはジャズなのに、質感はポストロック――若干ロックっぽいトコを残した、何か。
TORTOISE味のジャズが聴けて、何だか得した気分。
そうやってこのアルバムは味わうモンなのかなあと。

根なし草のようで、びっしりと深く広く根差している。あっちふらふらこっちふらふらしているようで、周囲から爪弾きにされている訳ではない。自ら語る言葉は少ないものの、その一言一言に含蓄がある。
ポストロックという一筋縄ではいかないジャンルを象徴するような音だと思う。
だからきっと、コレについてくどくど薀蓄垂れるより、コレを漠然と肌で感じるだけの方が幸せな音楽ライフだと思う。
難しく考えなくていいんだよ、ありのままに受け止めてよ、と。
だからこれ以上、だらだらと書き連ねる必要などないと思う。

M-01 Kryptonite Smokes The Red Line
M-02 Beneath The Undertow
M-03 La Jetee
M-04 Phonometrics
M-05 Prince Namor
M-06 Audio Boxing

(追記)
日本盤には:
M-07 Ode To Philophony
M-08 Expedition Rhombus
:なる二曲のボートラが収録されている。
中でもM-08は弛まぬ緊張感にひりひりする10分越えの名演なので、買うならこちらが絶対にお得。たぶんライヴテイクか一発録りだと思う。


2011年6月10日金曜日

TORTOISE 「Beacons Of Ancestorship」


説明するまでもない人々の2009年作、六枚目。日本盤は何とエイベックスから!

単刀直入に書くと、今回は創りが荒っぽい。
かと言って1stのように〝荒い〟訳ではない。4thのようにざらざらとした質感で、しかも更にダイナミックな仕上がりになっている。
ポストロックだってロックなんだ!
しかもM-06では、メンバーのジョン・マッケンタイアがかつて在籍したジャンクハードコアバンド、BASTROを髣髴とさせる暴れっぷりを聴かせていて、ついにやにやしてしまった。
かと言って全編ロッケンロー! な訳はない。M-04のように変な楽器を導入してみたり、M-05のようにヒップホップのウワモノっぽいコトを演ってみたり、M-11のようにどこかずれたような違和感を抱かせたまま最後まで演り切ってみたりと、節操がない。
ポストロックだから実験するんだ!

もう何を演っても許される域に、彼らは至っていると思う。

現に今回、TORTOISEのほぼ代名詞であるシロフォンの音が全く入っていない。例の西部劇のような弦楽器のメロも押さえ気味。
それなのに本作はどうしようもなくTORTOISEだ。
「もう何を演っても~」と言う以前に、ジャーマンロックからヒップホップまで、さまざまな音楽を吸収し、撹拌し、濾過するTORTOISEに既成概念を押し付ける筋合いがない。

筆者は絶対に守りに入らぬ一方で、柔軟に何でも許容する彼らの姿勢が大好きだ。
これからも好き勝手やって欲しい。

M-01 High Class Slim Came Floatin' In
M-02 Prepare Your Coffin
M-03 Northern Something
M-04 Gigantes
M-05 Penumbra
M-06 Yinxianghechengqi
M-07 The Fall of Seven Diamonds Plus One
M-08 Minors
M-09 Monument Six One Thousand
M-10 De Chelly
M-11 Charteroak Foundatio
M-12 High Class Slim Came Floatin' In (Eyeremix) (Bonus Track For Japan)

あーそうだー。ボートラM-12で、ボアダムスのEYEが要らんコトリミックスしてまース。


2011年6月2日木曜日

TOWN AND COUNTRY 「5」


見て! この素敵ジャケ。シックでいいなあ。
シカゴの人力ミニマルアンビエント四人組の、こんなタイトルだけど四作目。2003年作品。なぜ「5」かは、ミニアルバム扱いのコレをカウントに入れているため。

このバンドは日本の音楽に強く影響を受けている。
もちろんジャパコアでもない。ノイズ系でもない。V系でもなければテクノでもない。
ずばり〝雅楽〟である。
彼らは雅楽の、長音を幾重にも塗り重ねる手法に感銘を受けた。前作「C'mon」までは出し殻のようにひっそりと鳴らす生楽器の音を、なるべく最小音数で荒縫いし、反復してきた。
本作でもその色は残している。元々が一音一音に自己主張を籠め過ぎないさりげなさで、すっと聴き手の心に寄り添う淑やかな音像が持ち味のバンドである。
で、M-04。いきなり静粛を劈くヴィオラの音、掻き鳴らされるアコギで、このバンドが新機軸を打ち出そうとしているのに気付くであろう。

各楽器がポリリズミックに鳴らされようとも、曲中で同士討ちせずに共存するこの質感。それを即興ではなく全て理詰めで演奏するこのメソッドこそ、彼らが目指した洋風雅楽なのではなかろうか。

本作発表後、教会にて演った来日公演で手応えを掴んだ彼らはこれ以降、雅楽色を更に強めてしまう。それもそれで良いのだが、この分岐点にあたる本作はひっそり人力ミニマルと洋風雅楽、正に双方の良いトコ取り。
気持ち良い音たちが、気持ち良く織り重ねられ、気持ち良い湯加減で、気持ち良く耳に馴染んでくれる。
至福だなあ。

M-01 Sleeping In The Midday Sun
M-02 Aubergine
M-03 Nonstop Dancer
M-04 Lifestyled
M-05 Old Fashioned
M-06 Shirtless
M-07 I'm Appealing (Bonus Track For Japan)
M-08 Lost And Found (Bonus Track For Japan)


2011年5月16日月曜日

THE SEA AND CAKE 「One Bedroom」



シカゴの名門インディーズ・Thrill Jockey産の、ポップで素朴な歌モノポストロックバンド、2003年作の六作目。

鼻歌は楽しい。声量や技量を気にせず、好き勝手に歌えるから。
風呂場で鼻歌を歌うのは楽しい。声が反響して、エコー掛かって聴こえるから。
この気持ち良さを音源やライヴで聴かせられないものだろうか。
もう耳障りな高音とか、ビブラートをかすれさせて儚さを醸し出してるつもりとか、どっかで習ってきたような声の出し方している奴らばかりでうんざりだ。
せっかく“声”という、扱う者によって音色が千差万別する高スペックな楽器を用いているのに、工夫しないのはもったいないでしょうが。

THE SEA AND CAKEはスーパーバンドだ。
メンバー四人が一流のプレイヤーで、十分な実績を持ち、バンド以外の課外活動も一定以上の評価を受けている、出来杉くんの集まりだ。
それを束ねるのがおそらく実績最上位の、TORTOISEを先導し、プロデューサーとしてSOMAスタジオを切り盛りする(もちろん本作でも辣腕を振るっている)ジョン・マッケンタイア(Ds)――ではなく、Vo兼Gのサム・プレコップである。

彼の“声”なくして、THE SEA AND CAKEは語れない。

鼻腔から発声しているかのような気の抜けた柔らかい、それでいて甘ったるくなく、どこか芯を感じる独特の発声法で聴き手の鼓膜を擽っていく。
その一方でバックは主役を立てて大人しくポップソングをしているのかと思えば、然に非ず。ところどころビートを崩していたり、ベースがほどよくうねっていたり、シンセの使い方が風変わりだったり、アコギだったギターがいつのまにかエレキでファズっていたりと、さすがは手だれども。素直に己を殺しちゃいない。
それでも誰もプレコップを押し退けて主役を張ろうなんざ思っちゃいない。
そこら辺のバランスの取り方はさすがマッケンタイアプロデュース。彼は手掛けるアーティストのキモを熟知し、それを立てて音を構成するので、出来上がった作品は非常に焦点が絞れている。

アルバム全編に漂う雰囲気がからりと爽やかなので、耳障りは非常に良い。
暑くない晴天のドライヴに最適。海岸線だと尚良い。

M-01 Four Corners
M-02 Left Side Clouded
M-03 Hotel Tell
M-04 Le Baron
M-05 Shoulder Length
M-06 One Bedroom
M-07 Interiors
M-08 Mr. F
M-09 Try Nothing
M-10 Sound & Vision