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2014年8月8日金曜日

BEAK> 「Beak>」


PORTISHEADのジェフ・バーロウが満を持して発動させた3ピースのデビュー盤。コレから一年(半)後の2009年発表。
レーベルはもちろんバーロウのトコ。また、米盤はパットン将軍のトコでお世話になっている。嫌な繋がりだなあ(ニヤニヤ)。

他のメンバーはGONGAやCRIPPLED BLACK PHOENIXなどに顔を出していたキーボード奏者:マット・ウィリアムス、FUZZ AGAINST JUNKのベーシスト:ビリー・フラー。どちらもInvadaで厄介になっていた面々だ。
なお、バーロウはドラムを担当しているらしい。いずれもクレジットはないが、ともかく各々のメイン楽器はこんな感じらしい。
そんな彼らが鳴らす音は、ブリストルらしいダビーで薄暗いトリップ音楽。しかも上記の通り、バンドサウンド。
一口にトリップ音楽と言ってもいろいろあるが、軸は反復反復アンド反復のクラウトロック。単音でねちっこくまとわり付くベースラインが如何にも酢漬けキャベツ。そこへたまにパターンを崩すが(モタっているという説がある)一切難しいことをしないシンプルなドラムが這い、カビが生えたような音色のハモンドオルガンが乗る。コレが基本路線。
おおむねインストだが、M-02、03、10、11のようにぼそぼそっと歌う曲もある。誰によるものかさだかではないが。
ただ、この路線を貫徹する訳ではなく、M-03、M-11のようなOMばりにベースにファズをかけたギターレスなゴリゴリスラッジ曲を演ってみたりもする。M-05のようなギターサイケデリア舞い散るシューゲイザーっぽいこともする。M-07みたいに即興風味の効いたサイケ曲も演る。M-09のようにガピーガピーうるさいハーシュノイズ曲もある。最後を飾るM-12など人力ミニマル曲だ。ちなみに、たぶんフラーがウッドベースを弾く曲もある。
節操がない、と言うのは簡単だが、どれも聴き手や演り手が音を媒介して陶酔するためにプレイする類の音楽に終始しているので、語弊はあるが統一感がある。

と言うかこんなダビーな音像で、それほど演奏技術を追い求めず、不気味でエッジの立ったバンド、あったなあ……。
そうそう、THE POP GROUP!! ブリストル出身の!

M-01 Backwell
M-02 Pill
M-03 Ham Green
M-04 I Know
M-05 Battery Point
M-06 Iron Action
M-07 Ears Have Ears
M-08 Blagdon Lake
M-09 Barrow Gurney
M-10 The Cornubia
M-11 Dundry Hill
M-12 Flax Bourton


2013年5月22日水曜日

DALEK 「Abandoned Language」


ターンテーブリストのスティルが脱退。ラッパーのMCダイアレックとトラックメイカーのジ・オクトパスのデュオとなった四枚目、2007年作。
代わりのターンテーブリストは、大半のトラックでモーティヴが、M-03と10ではかのバトルDJチーム・THE X-ECUTIONERSの元メンバー:ロブ・スウィフトが手を貸している。準メンバーのジョシュア・ブースもちゃんと参加。
レーベルは引き続きパットン将軍のトコ

のっけのM-01から10分トラック。しかもその低音パートはキックでもベースラインでもなく、ブーーーーンと響き続ける重低ドローン――
相変わらずBの流儀をせせら笑う、DALEK独自のヒップホップ道が展開されている。
だがその一曲目から、聴き手はびっくりさせられること請け合い。
何と、今まで『俺たちの表現軸だ!』と言わんばかりに上モノとして垂れ込めてきた、エフェクターでぐしょぐしょに掻き乱すあのギターノイズを一切排してしまったのだ。お陰でジョシュア・ブースのパートが奪われ、本作では共同ソングライターのクレジットのみ。

無論それは彼らの今後を考えれば絶妙手だったと、声を大にして言いたい。

前作はちょっと意固地になってたんだろうと思う。
ヒップホップ界きっての異端児の名を以って肩を怒らせ、他のクルーが真似すらしないことをあえて演り、自己を確立したは良いが、足元を見ていなかった。
ギターを歪ませてフィードバックさせればノイズの一丁上がり! なんてそんな安易なモンじゃないのだよ、音の魑魅魍魎蠢くあの界隈は。

不穏な音色をシンセで選り、長音でひり出す演り方は明らかにドローンを意識している。M-05のような擦弦楽器で創る混沌とした音世界のインストも、スキット以上の効果を生んでいる。M-07のヴァースで調子っ外れでフリーキーなクラリネット(?)を挿す、突飛な音色使いも今まで見られなかった傾向だ。これまでとは乗せ方を変えた、ギターでひり出すハーシュノイズも、アルバム末尾(M-11)に置かれたとなると曰くありげだ。
一方、もう一つの懸念材料だった、MC一人によるフロウのマンネリ化は、マイメンを呼んで合いの手を付けさせたり、自身の声に過度の変格を加えたりと、試行錯誤している様子。それが成功しているかは聴き手各自の判断に委ねるとして(リリックが判明出来ないくらい、もこもことフィルターを被せて何の意味があるのだろうか?)、己と向き合うべく1MCを貫いているらしいので、その方向性を維持しつつもいろいろ手管を模索するのは良い傾向かと思う。

ジャンル問わず、こういう音に真摯な連中は作品毎にきっちり成長した姿を聴かせてくれるのでスルー出来ない。
もっとこんな努力が金銭で報われれば良いんだけどねえ。

M-01 Abandoned Language
M-02 Bricks Crumble
M-03 Paragraphs Relentless
M-04 Content To Play Villain
M-05 Lynch
M-06 Stagnant Waters
M-07 Starved For The Truth
M-08 Isolated State
M-09 Corrupt (Knuckle Up)
M-10 Tarnished
M-11 (Subversive Script)

日本盤は:
M-12 What I Knew Then
:を追加収録。DALEKらしさとはやや違う方向性の変態トラックだが、なかなか面白い出来なので、あえてこっちを買うのもありかと。


2013年4月22日月曜日

ISIS 「Celestial + SGNL>05」


当ブログでやたら名の挙がる、Hydra Head Recordsオーナー:アーロン・ターナー率いる五人組ヘヴィネスバンド。RED SPAROWESのブライアント・クリフォード・メイヤーも在籍。
本作は2000年にEscape Artist Recordsから出した初フルアルバムと、その連作に当たるNeurot Recordings(NEUROSIS運営)より切った翌2001年発表のミニアルバムを合わせ、日本のみの二枚組便利盤仕様(同2001年発売)にしたもの。それが、リマスターとボートラのライヴ音源を加えて2010年に再発された。
ジャケデザインは当然、ターナー自身。

この界隈に蔓延る〝BLACK SABBATH症〟とも言うべき籠もったダウンチューニングのヘヴィリフではなく、モダンへヴィネス以降の低音ブーストした音密度の圧縮リフを振り下ろす、よくよく考えてみれば珍しいタイプ。曲調はミッドテンポを堅持。ターナーのモノトーンな咆哮ヴォーカルはあくまでおまけ。
そこへ強弱法を多用し、音のメリハリをつけていく一方、手を替え品を替えた音工作をさり気なく絡めていくのが彼らのメソッド。
M-02では、前半でインダストリアルちっくなループを被せ、目を見張らせたかと思えば、その後半で後にメイヤーがRED SPAROWESで大々的に展開する叙情的なパートへとシフトする、大胆巧みな構成が光る。
またギターの鳴り方にも相当気を配っており、静のパートではただ弦を爪弾くだけでなく、聴き心地良さそうな音をリアルタイムで模索するようなサイケデリックな音色を耳一杯に広げる場合もある。完全インストのM-06では、オケヒットならぬバンドヒットを執拗に連発する中、ギターがフィードバックでそれにシンクロさせ、躍動感のみでは留まらぬ妙な酩酊感を齎すことにも成功している。

なるほど、〝Thinking Man's Metal〟と呼ばれただけはある。

ただしこれ以降、考え過ぎと言うか根っ子のハードコアを忘れたカナリアと言うか、それなりにヘヴィで適度に練って鳴りを重視し、ポストロックを思わせる作風へと〝進化〟していく。
だが筆者はこの、メーターを振り切った破壊的な動の力と、音の粒が芽吹く再生的な静の心が高度で備わった本作こそ傑作だと思うのだが、如何であろう。
つか以降は中途半端で子供騙しだと思うけどなー。録音状態もトリップ感を視野に入れているクセに、音像の内側でもこもこしてて気持良くないしー。何でかなー、おかしいなー。

Disc-1 「Celestial」
M-01 SGNL>01
M-02 Celestial (The Tower)
M-03 Glisten
M-04 Swarm Reigns (Down)
M-05 SGNL>02
M-06 Deconstructing Towers
M-07 SGNL>03
M-08 Collapse And Crush
M-09 C.F.T. (New Circuitry And Continued Evolution)
M-10 Gentle Time
M-11 SGNL>04
M-12 Glisten (Live)
M-13 Gentle Time (Live)
Disc-2 「SGNL>5」
M-01 SGNL>05 (Final Transmission)
M-02 Divine Mother (The Tower Crumbles)
M-03 Beneath Below
M-04 Constructing Towers
M-05 Celestial (Signal Fills The Void)
M-06 CFT (Live)

US盤は「Celestial」単体売りで2013年、後のバンド解散(2010年)まで所属したIpecac Recordings(マイク・パットン将軍主宰)にて再発されている。


2013年3月10日日曜日

DALEK 「From Filthy Tongue Of Gods And Griots」


レペゼンニュージャージー、MCのダイアレック、トラックメイカーのジ・オクトパス、ターンテーブリストのスティルからなるヒップホップトリオの、2002年作・二枚目。
言うまでもなくマイク・パットン将軍率いる変態音楽集合体、Ipecac Recordingsより。

ずっしりくるボトム、吹き荒ぶノイズストーム、ドスを利かせるラップ。その三点倒立を堅持する形で、DALEKは成り立っている。
ビートの音色を変えれば音が軽くなる。ノイズを捨てればオレらのアイデンティティに関わる。フロウのスタイルはオレそのものだから変える訳がない。
――頑固一徹、腕を組んで肩を怒らせる、そんな姿が見えるようだ。
ただし彼ら、思ったより偏狭ではない。
単調になりがちな作風を、焦点を絞ったままどう変化を付けていくか。そんな命題を常に自問自答している、音に真摯な連中だと思う。

そこであえて、流れを遡っていこう。

次の作品は些か凝り固まっていたように感じる。自らの軸を定めるべく、ノイズ、ノイズ、ノイズと全編に垂れ込めた挙句、変化に乏しくなってしまった。
そこで本作。実質初アルバム(5トラック・30分強しかない一枚目をミニ扱いする資料もある)だけあって、確立していないはずの表現軸に捉われず、比較的伸び伸びトラックを組んだ感もある。

M-06はド迫力の生ドラムソロをフィーチャーしたスキットなのだが、そこからブリーピーな各種ノイズを拡散させ、ノンビートでMCダイアレックのポエトリーディングを乗せていくM-07は何と、12分もの大曲。
M-09はシタールに加え、ブク(韓国の打楽器)とタブラ(この二つを叩いているのが、ジ・オクトパスの父でジャズドラマーのラヴィッシュ・モミン)を用いるアジアンテイスト仕様。
M-10などジ・オクトパスと第四のメンバー:ジョシュア・ブースを中心にバンドを組んだ、ストイックな爽やかさのあるラヴソング、なんて驚きの機軸も。

このように不動の軸を振り回しつつもいろいろ演り、今後の伏線を張っておいた方がアルバムを通して聴く我々の耳にも、彼らの音楽活動にも良いはず。
ゆえに筆者は、まず三枚目で耳を慣らしてから本作へ戻ることを薦める。

M-01 Spiritual Healing
M-02 Speak Volumes
M-03 ...From Mole Hills
M-04 Antichristo
M-05 Hold Tight
M-06 Heads
M-07 Block Smoke Rises
M-08 Trampled Brethren
M-09 Voices Of The Ether
M-10 Forever Close My Eyes
M-11 Classical Homicide


2012年3月14日水曜日

ZU 「Carboniferous」


イタリアはローマ市内の港町・オスティア(M-01の曲タイトルになってるね)出身の激烈サックストリオ、2009年作の単独名義としては四枚目。異形の音楽をこよなく愛すマイク・パットン将軍設立のIpecac Recordingsより。
もちろん将軍はとっても出たがりなので、M-06に例の躁鬱ヴォーカルで自ら出陣。M-10では〝声〟という音色使いを披露。おまけにM-02ではレーベル看板バンド:THE MELVINSのギター兼ヴォーカル、バズ・オズボーンも参戦。なお、このギターテイクを録音したのが〝メルヴィンズ第五のメンバー〟トシ・カサイ
イピカックファミリー全面バックアップ。

サックスプレイヤーのルカ(きゃわわな女のコじゃないよ。ごっついおっさんだよ)が吹くのはバリトンサックス。それをベースのマッシモとドラムのジャコポが支える重低世界。野太い音塊が地を這う鈍牛サウンドを想像される方も多いと思う。
だが予想に反して、M-01からいきなりかっ飛ばす、もうがっつーんと。
ジョン・ゾーンばりにイカレたブロウをかましたがるルカ。印象的なフレーズでド低音を徹底して堅守したがるマッシモ。リズムキープは裏打ちばかりな上、キメは小節の末端まで音符を盛り込みたがるジャコポ。
いわゆるマスロック――いや、音の質感からマスコア(日本ではカオティックコアと呼ばれている)の類で扱われることだろう。(ちなみに〝マスロックと〝マスコアは出所が全然違うので注意しようぜ。〝エレクトロニカと〝エレクトロ以上に異なるのさ)

とにかく混沌。複雑怪奇。聴き手の脳裏にずっしり重低音。

だが彼らは、ただ複雑であればいい、テクを駆使して中身がないのをごまかせば良い、なんてちょけた変態バンドでは一切ない。そんなポーザーを変態音楽界の大家、パットン将軍が見込む訳がない。
彼ら最大の長所は〝サックスハードコア〟という唯一無二の編成や高度な演奏技術以上に、どんな相手とも巧く共存共栄出来るスマートさにある。
例えばM-02ではそこはかとなく、バズが所属するMELVINSのカラーを滲ませている、自分たちがこのヴェテランに食われない程度に。M-06は誰と演っても唯我独尊の将軍なので些か分が悪いが、このインストヴァージョンである日本のみのボートラ・M-11を別個の楽曲として成立させている(ルカと将軍のキーが噛み合わなかったらしい)、単なるカラオケに堕せず。
また彼らは、ヒップホップ界の反逆児・DALEKや、元CANの和製ヒッピー・ダモ鈴木や、日本が世界に誇る電子音響の匠・竹村延和など、全く畑違いの相手とコラボを繰り広げる猛者でもある。
そこに飽くなき音楽への探究心と揺るぎない己があるからこそ、誰と組んでも当たり負けしない強靭さを持ち得るのだ。

ヘヴィで、アクが強いのに順応性があり、なおかつ音楽IQが高い。コレがIpecac移籍後初アルバムとは思えないほどレーベルカラーにフィットしている。
スリーピースって良いよね。個性漲るって感じでさ。

M-01 Ostia
M-02 Chthonian
M-03 Carbon
M-04 Beata Viscera
M-05 Erinys
M-06 Soulympics
M-07 Axion
M-08 Mimosa Hostilis
M-09 Obsidian
M-10 Orc
M-11 Vexilla (Bonus Track For Japan)



2011年10月12日水曜日

FANTOMAS 「The Director's Cut」


マイク・パットン将軍と愉快な仲間たちの二枚目。2001年作。
お付きのイカレどもはバズ・オズボーン(G:MELVINS)、トレヴァー・ダン(B:Mr.BUNGLE) デイヴ・ロンバード(Ds:SLAYER)。

ご覧の通り、映画/ドラマ音楽のカヴァー集。元ネタに怪奇系や猟奇系が多いのは、将軍の趣味らしい。(マイナー系多くて調べるの苦労した……)
面子の通り、ヘヴィに変態音楽を演るコンセプト。ならばと、重いリフにロンバードお得意のツーバスどこどこが全編繰り広げ――られません。
のっけのM-01から来るぶっ飛ばしぶりに騙されてはいけない。ところどころがつんと襲う展開によりぐっとなれるよう、引きも目立つ。変態音楽ですしおすし。
元々がパットン将軍、誰かサンみたいにアキャアキャ喚いているだけの猿シンガーではない。シナトラばりに朗々と歌い上げるコトも出来る。ニヒルな低いトーンで凄むコトも出来る。子供をあやすような幼児声も出せる。女声にだって化けられる。

これだけ自身が変幻自在なら、演奏陣の引きの方に力を入れねば単なるこけおどしで終わることくらい、変態音楽のマエストロたる将軍は存じ上げているのである。

本作のあり方にしてもそう。
カヴァーアルバムなのだから、まずはオリジナルありき。変態音楽だからと、元ネタを溶解して原曲破壊を繰り広げるのは甘え。「オリジナルで演ればァ!?」の一言で片付けられる。
それではこの試みの意義がまるでない。
〝映画音楽〟という比較的格式の高いお上品な音楽をあえて踏まえて、なおかつ壊す――この斜に構えた落差が本作のキモである。

一聴、はちゃめちゃ演っているようで、緻密な脳内計算を元に動いている。弾ける時は後先を考えて、イケると判断した瞬間、徹底的に破壊する。
同じ能力を持つ獣なら、より知性を持っている方が恐ろしいに決まっている。
マイク・パットンは〝インテリジェント・モンスター〟なのさ。

M-01 The Godfather
M-02 Der Golem
M-03 Experiment In Terror
M-04 One Step Beyond
M-05 Night Of The Hunter (Remix)
M-06 Cape Fear
M-07 Rosemary's Baby
M-08 The Devil Rides Out (Remix)
M-09 Spider Baby
M-10 The Omen (Ave Satani)
M-11 Henry: Portrait Of A Serial Killer
M-12 Vendetta
M-13 Untitled
M-14 Investigation Of A Citizen Above Suspicion
M-15 Twin Peaks: Fire Walk With Me
M-16 Charade

(追記)
本作を踏まえたDVD作品が2011年九月に発売された。音源発表十周年記念! とでも言いたいのであろうか。(いや、素直に欲しいです、欲しいですってば!)
ちなみに当ライヴ映像のドラムはデイル・クローヴァー(MELVINS)に代わっている。


2011年9月30日金曜日

HELLA 「There's No 666 In Outer Space」


ザック・ヒル(Ds)とスペンサー・セイム(G)によるカリフォルニアのイカレポンチ、2007年発表の大問題作。四枚目。

彼らと言えば〝東のLIGHTNING BOLT、西のHELLA〟と並び称されるハイパーマスロックデュオである。
それがヴォーカルとベースともう一人ギターを継ぎ足した五人編成となった時点で、『俺はデビュー当時から奴らを云々』抜かす1001的な輩が黙っていない、不穏な空気が漂う。
しかも出来上がった作品がTHE MARS VOLTAやSYSTEM OF A DOWNという、ツアー帯同の際に可愛がられた兄貴分から多大な影響を受けた作風になっていた。
お陰で〝聴きやすくなった〟そうな。

以上、本作を問題作たらしめている部分である。
で? 何が問題なの? レーベル、あのIpecacだよ? 変態音楽の酸いも甘いも知り尽くしたマイク・パットン将軍のレーベルだよ?

〝聴きやすくなった〟のは整合感が増したから。おそらくレーベルカラー。今までのラフでロウな〝投げっぱなしジャーマン〟ではなく、しゃきっと〝ジャーマンスープレックスホールド〟になった訳だ。よりマスロックらしく理路整然としている。
その点は好みの問題だし、賛否両論あって良い。ただ、はちゃめちゃ躁展開は今まで以上だし、キモであるヒルの自由闊達なドラミングとセイムの奔放なフレージングは健在とあれば、長所特化を好みがちな筆者はこちらを選ぶ、ってだけ。
つかさあ……空気が類似品っぽいから批判するのではなく、変わらない部分を見つけて満足しなさいよ。似てる似てないなんて一時の問題なのにさ。
で? えっと……デュオ編成崩した? ベース(兼キーボード)のカーソン・マクライター、終始ぶきぶき歪んだ印象的なフレーズ鳴らして頑張ってるじゃない。つか彼、本体二人の別プロジェクトの常連なんだけど。
表現の幅を広げるため、たかが人を増やしただけじゃない。他のメンバーにも言えるコトなんだけど、これだけ本作に貢献しているのに、サポート扱いは酷でしょ。

とまあ、筆者がこれだけ難癖に噛み付くのも、本作の出来栄えが好みだから。Ipecacらしい変態性と彼らの異常性が巧くマッチした快作だと思う。
悪かったら庇わないってば。アーティストは創った音で勝負すべきなんだから。

今後、何度でも書くよ。『素晴らしい音をくれる方々を、型にはめるのは良くない』。

M-01 World Series
M-02 Let Your Heavies Out
M-03 The Ungrateful Dead
M-04 Friends Don't Let Friends Win
M-05 The Things That People Do When They Think No Ones Looking
M-06 Hand That Rocks The Cradle
M-07 2012 And Countless
M-08 Anarchists Just Wanna Have Fun
M-09 Dull Fangs
M-10 Sound Track To Insecurity
M-11 There's No 666 In Outer Space

ジャケのデザインはヒルの手によるもの。
M-01、06、11で強烈なサックスを吹いているのはCRITTERS BUGGINのスケリック。人選がエグいんだか的を射てるんだか……。


2011年9月16日金曜日

DALEK 「Obsence」


1トラックメイカー、1MC、1DJからなる異形のヒップホップクルー〝ダイアレック〟の三枚目。2004年作品。
レーベルはマイク・パットン将軍(とそのマネージャー)が所有するIpecac Recordings

だいたい100BPMくらいのゆったりとしつつもアタックの強いブレイクビーツに、説教臭いラップが乗るハーコースタイルが持ち味。
それをハーコーならぬハードコアたらしめているのが、フランジャーでぐしょぐしょに崩しまくったようなインダストリアルっぽいギターノイズを上モノに使うセンス。DJのコスりネタまでそのノイズを使う曲もある。
コレだけでBボーイのみを相手に音楽してないな、と気付く。(本人たち曰く、客層にはちゃんとBも居るそうな)
だからこそIpecacのような何でもアリなレーベルに所属している訳だし、ガッチガチ保守層に守られたヒップホップの裾野を広げるべく奮闘しているのは伝わる。

ただし、ノイズという実体を持たない音をフィーチャーしている以上、キラーチューンという金看板を建てづらい修羅の道が待っている。それは覚悟の上だろうし、前衛的になり過ぎて聴き手を置いてけぼりにしないようバランス感覚を保つ配慮も見え隠れする。
貫いていない、という意味ではない。どうやったら自分たちのスタイルを崩さずに、より多くの聴き手を得られるか。きちんと己の出す音世界に向き合っている真面目な人々、という印象を強く受ける。
ただ残念ながら、それにより裏目に出た決定的な短所がアルバム全体をどす黒く覆っている点を指摘せねばならない。

キャラ立ちすべくDALEKしかない音の軸にノイズを選んだ結果、アレもコレもノイズノイズと、アルバム全体を通して変化がない。
空気が張り詰めているために緊張感は高いが、どのトラックも抱く印象は一緒なのだ。ラッパーのMC DALEKが頑張れば頑張るほどその単調さが顕著になる。
ヒップホップがなぜ〝Featuring~〟みたいにオトモダチを誘って仲良くマイクリレーをするのか、クルー内にMCを複数人抱えるのか、ソロMCはトラックメイカーを使い分けるのか。単なるマイメン自慢ではないはずだ。
彼ら自体それは把握しているようで、ジャーマンロックの雄:FAUSTや、バキバキエレクトロニカ野郎:KID 606、ヘヴィ音楽界の才人:ジャスティン・ブロードリックというまったく違う畑から共演者を選ぶ異端児っぷりを発揮しているが、それを別枠扱いでEPやアルバムにするのではなく――

てめーントコのオリジナルアルバムにちりばめろよ、と。

とまあ、まるで褒めているようには思えない感想をキモに据えてしまったが、筆者はこのアルバムが好きだ。
初聴で『何コレかっけえ!』とハートを鷲掴みに出来るインパクトは十二分にあるし、聴けばがつんと前のめりに力が入る。
その点が、何だかヒップホップじゃないよなあ、と思う。いや、だからこそヒップホップなのか? PUBLIC ENEMYとかRUN DMCあたりのヒップホップ過渡期のような?

M-01 Distorted Prose
M-02 Asylum (Permanent Underclass)
M-03 Culture For Dollars
M-04 Absence
M-05 A Beast Caged
M-06 Koner
M-07 In Midst Of Struggle
M-08 Eyes To Form Shadows
M-09 Ever Somber
M-10 Opiate The Masses