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2014年5月14日水曜日

SKERIK 「Left For Dead In Seattle」


泣く子もにやつくシアトルのサックス吹き、2006年発表のソロ作。

よく映画で〝構想十年!〟やら〝制作期間十年!〟やら大仰なタタキ文を目にするが、要はその企画が配給会社に売れなかっただけ。つまり、年数掛けた意味などない。
一方、音楽アルバムの本作は、1993年から2003年までに録り溜めていた音源を蔵出しした作品でしかない。日本盤以外は自主制作盤なのもやむを得ない。

さて、あえて上記のデータを踏まえずに聴いていただきたい。

ゲストは多彩。
相方のマイク・ディロンはちょろっと(M-02でパーカッション)だけ参加。他に筆者の知っている名前では、SUNN O)))やEARTHを手掛けたシアトルの録音技師:ランドール・ダン。同じくシアトル系録音技師のメル・デトマー。本作のアートワークも手掛けるマウリース・コールドウェルJr。別プロジェクト:CRACK SABBATHの仲間(伝説のスラッシュコアバンド:THE ACCUSEDの再結成メンバー含む)。同じく別プロジェクトのSYNCOPATED TAINT SEPTETの仲間。平然と、CRITTERS BUGGINのマット・チェンバレン。シアトルの裏スーパーバンド:MAD SEASONのジョン・ベイカー・ソーンダースあたり。
共通項は〝シアトル周り〟なだけで非常に節操のない面子だが、内容もかなりアレ。
M-02など真っ当なくらいスケリックっぽい多重録音のサックスが大活躍するジャズファンクなのだが、後はもう滅茶苦茶。
ヴォコーダーが大活躍する似非ソウルのM-03。ナメくさったヴォーカルが妙にイラつくヘンテコファンクのM-04。10分にも亘るポエトリーディング風ヒップホップ曲M-05。ヴァイオリンとスケリック自身が叩くヴィブラフォンを立てたポストロック風のM-06。声楽を茶化したM-07。前半でヒップホップの、後半でハードロックのだっさいところをわざと凝縮させたサンタクロース礼賛曲M-09と10――

……まあ、まとまりがなさ過ぎてしょーもない作品なのは確か。だがお茶目なスケリックのキャラも相俟って、その散漫さも許せてしまうはず。
そうなれば蔵出し編集盤っぽい臭いも感じられないはずだし、そもそもアウトテイクにしては趣深い曲ばかり揃えており、聴き手の覚えもよろしいはず。
なら如何にもスケさんのソロアルバムっぽいよな、と御納得いただけるはず。

あんまり深く考え込まない方が良い。それほど深いコト考えてなさそうだから。

M-01 Black Bong
M-02 BMF
M-03 Colon Pile
M-04 Touch Of Tenderness
M-05 Invisible Bowl
M-06 Et Tu Koko
M-07 Nightmare Before Circus
M-08 Psycho Circus
M-09~10 Must Be Santa
M-11 BMF Reprise
M-12 The Nappy Triangle


2014年4月12日土曜日

GARAGE A TROIS 「Outre Mer」


ドラムのスタントン・ムーアのソロから端を発した、よくよく考えればスーパーバンドの二枚目。2005年作。

引き続き、例の似非モノラル録音。
左耳から固定で、チャーリー・ハンターが爪弾くギター。主に右耳から、鉄琴好きパーカッション叩きのマイク・ディロンと、場合によっては定位置の真ん中から割り入って来るスケリックのサックス。で、ド真ん中にはムーアのドラム……と、ベース音っ!?
メンバーは四名。ゲストはゼロ。だが、同時に鳴っている音は五つ。オーヴァーダブはあるが、サックスを被せたのみ。打ち込みはなし。
どォゆうコト!?
実はハンターのパートは〝八弦ギター〟。ギター五弦とベース三弦が同フレットにまとまった特注ギターを、フィンガーピッキングで同時に弾いてしまう謎テクジャズギタリストなのでした。(頭こんがらがらないのかしら)
念のために要らんコト書くと、ベースラインはそこまで複雑ではない。

音世界は予想通り、Pre-GARAGE A TROISに鉄琴かパーカッションが加わった感じ。ジャズのような、ファンクのような、ロックのような、インストのアレ。
ただ、バンドなので、あの時のようにムーアのドラムありきではない。彼もある程度抑えて、あの特徴的なバカテクビートを叩き出している。
一方、スケさんとディロンのコンビは相変わらずのアクの強さ。金管楽器は鳴れば一瞬で主役を取れる、その傲慢さを十二分に生かして幅を利かす。ディロンはディロンでお得意の二楽器を横に並べて併用し、副音の分際でぐいぐい迫る。たまにハンターの領域である左耳まで音が出張する。
で、ハンターはギターさえ鳴らせればご機嫌な、典型的バイプレイヤータイプの奏者なのだが(ソロプレイヤーに向かってなんてコトを言うのか)、思ったより自己アピールが出来ている。つまり曲を左右するくらい印象的なフレーズが弾けている。M-05のトロピカルな雰囲気は彼のギターがなければ出せなかったはず。スケさんがミュートしている時、主音は彼が担っていると言って良い(ディロン、お前じゃないからな!)。

以上が生々しく、輪郭のはっきりした、非常に良好な音像で鳴っているので、聴き心地はとても爽やか。彼らにとって定番かつ安定の音創りなれど、きっちり四者四様の音がせめぎ合うスリリングさも持ち合わせている。
そんな本作、同タイトルのフランス製未発表映画のサントラだそうな。

M-01 Outre Mer
M-02 Bear No Hair
M-03 The Machine
M-04 Etienne
M-05 Merpati
M-06 The Dream
M-07 Antoine
M-08 Circus
M-09 Needles
M-10 The Dwarf
M-11 Amanjiwo


2013年7月30日火曜日

PONGA 「Psychological」


NY地下音楽シーンの猛者:ウェイン・ホロウィッツ(Key)とボビー・プリヴァイト(Ds)が、シアトルのイカレサックス吹き・スケリックを誘い、そのスケリックが連れて来たデイヴ・パーマー(Melodica、Key)を加えて結成した四人組の二枚目。2000年作品。
日本の大手インディー・P-Vine Recordsからの正式リリース――ということはコレ同様、元々は自主制作盤。

スケさん関連というコトで、例の如く〝ジャズっぽい何か〟。
CD帯記載の叩き文〝PONGA Is Improvised,No Overdubs〟通り、プレイヤー同士が演奏中に抜き差しならぬせめぎ合いを繰り広げるジャム。ゆえにスタジオ音源とライヴ音源が混在しても、何ら違和感もない。
また、各プレイヤーの担当楽器は上記で固定。普段はピアノ演ったり鉄琴演ったり移り気なスケさんも、当プロジェクトではひたすらサックスを吹き散らしている。
他、プリヴァイトはジャズ畑らしいオフロードなビートを叩き出し、ホロウィッツはかの鍵盤プログレトリオばりの粘っこい音をひねり出し、パーマーは同パートのホロウィッツと競りつつも得意のメロディカでセピア色の雰囲気を醸し出したりもする。

この通り、今回は真剣と書いてマジだ。各々の目が血走っているくらいマジだ。

だが即興一本槍とは言え彼らは、内容のないセッションを意味付けるべく真剣面を貼り付けて、前衛ぶった溶解フレーズで演奏を引き伸ばすようなセコい連中ではない。
メンバー曰く、当プロジェクトは各々がDJ視点で生演奏を自己統制しているそうだ。
つまり、各自が気持ち良いと思ったフレーズを持ち寄り、各自の判断に任せてぶっ込んでいくスタイル、と考えて間違いない。
その象徴がM-04の終盤。スケリックのサックスが即興の末、明確にキャッチーなフレーズを曲調から剥離上等で選択している点に垣間見える。シンバルから火花が散るくらい激しいプリヴァイトのドラミングと対比させた、チンドン屋のような可笑しなフレーズを。
ただだらーっと音を反復させて気持ち良がってるのではない、指癖を逆手に取った攻めの姿勢、と例えるべきか。
こんな風に各自、アルバムの随所で反復の魔力に溺れず、持続の堕落に呑まれず、フレーズを揺らがせ、擦り込んでいく。ループ感などどこ吹く風で。

〝即興演奏〟と言うと取っ付きづらくて小難しい印象もあろうが、聴き手にとって気持ち良いコトを重要視した即興は分かりやすく、こんなにも楽しいよ、と理解出来る一枚。
そんな意味でも〝DJ視点〟だと思う。

M-01 Riviera
M-02 Psychological
M-03 Dental Melodica
M-04 Hagro
M-05 Nubile
M-06 Sabado Gigante
M-07 Show Me The Ponga


2013年6月12日水曜日

STANTON MOORE 「All Kooked Out!」


かのバカテクジャズファンクバンドGALACTICから、ストーナーロックとハードコアの間を取り持つCORROSION OF CONFORMITYまで、予断を許さない活動履歴を誇るニューオーリンズのグルーヴ神が、〝スケさん〟ことシアトルのサックスプレイヤー:スケリックと八弦ギタリストのチャーリー・ハンターらを誘って創った、1998年の初ソロ。

音世界は語るべくもなく、ジャズっぽい何か。
締めのM-13で、ようやくド真面目にしっとりジャズを演っているものの、例の如くジャムから発展したような曲構成。それでいてひりひり弛まぬ緊張感よりも、アットホームな空気が強い。スケリックも奇声を発してご機嫌だ。
それより何より、左の耳からでしゃばりなスケリックのサックスが、右の耳からたまにオルガンと見紛うような音色(ねいろ)を出すハンターの八弦ギターが、全曲不動の配置で鳴る極端な音像に、まずは驚かされる。
無論、そのど真ん中にはムーアのスウィンギンでシンギンなビートが! 彼のソロだからなんて以上に、彼の特徴的なビート構成が弥が上にも耳を惹く。
スネアのヒット一音一音がくっきりしているどころか、ロールを小節のギリギリまでその粒を揃えて叩き切れる歯切れの良さ。しかもグルーヴィーな曲では、まるで歌うように表情豊かなビートパターンを、当たり前のようにビートの裏を取りつつ、メトロノームばりに正確なタイム感で刻んでくれる。
よくジャズに耽溺している音楽ファンに『ジャズドラマーは何でも出来る化け物揃い。メタルドラマーなんてまだまだ』などと放言をかます(巧いならジャンル問わず巧いで良いじゃねえかバカ!)性質の悪い輩が居るが、しれっとこの次元の演奏をリラックスムードで叩けてしまう奴が存在するのだから、そう自慢したくもなるわな、と。(でもオマエが凄え訳じゃなくて、ドラマー様が凄いんだからな。偉そうにすんなバカ!)

きっとライヴではにこにこしながら叩いてるんだろうなー。俺、スケさんファンだけど、たぶんずーっとこの人のプレイを口を半開きにしたまま眺めて悦に入ってるんだろうなー、なんて想像出来るくらい生々しくて気持ち良いビートだらけ。
カッコ良いビートは正義!

なお後日、この三人にスケさんの相棒でヴィブラフォン大好きパーカッション叩き:マイク・ディロンを加え、GARAGE A TROISが結成される。
そのお披露目盤扱いにするにはもったいないムーディーな逸品。

M-01 Tchfunkta
M-02 Common Ground
M-03 Green Chimneys
M-04 Blues For Ben
M-05 Kooks On Parade
M-06 Nalgas
M-07 Witch Doctor
M-08 Boogaloo Boogie
M-09 Nobodys Blues
M-10 Stanton Hits The Bottle
M-11 Farmstead Antiques
M-12 Angel Nemali
M-13 Honey Island

日本盤は:
M-14 Kirotedo
M-15 Obopa Bebop
:を追加収録。共にボートラ以上の出来なので、こちらの方がお得。



2012年3月12日月曜日

THE DEAD KENNY G'S 「Operation Long Leash」


とうとう三人で立つ!
ちっとも動けない本体・CRITTERS BUGGINに業を煮やし続ける、スケリック(サックス)、ブラッド・ハウザー(ベース)、マット・ディロン(打楽器類)が、再びマット・チェンバレン(ドラム)を省いて結成した場繋ぎバンドの2011年作品、二枚目(一枚目は自主流通盤)。ブルックリン発、へんてこ新興ジャズレーベルThe Royal Potato Familyからのリリース。
録音は例のStudio Litho(オーナーはPEARL JAMの人)にて、技師はSUNN O)))EARTHを手掛けたランドール・ダン、という泣かせるシアトル人脈。

つか何なのよこのバンド名。ゲートフォールドの紙ジャケを開いて嘲笑して欲しい、もちろんあのカーリーヘアのサックス吹きではなく、コイツらを。

M-09では作曲クレジットにも名を連ねているし、チェンバレンとはケンカ別れではないと思いたい……セッション活動が相変わらず多忙なだけで
代わりにドラムセットへ向かったのは、言うまでもなくディロン。もちろんパーカッションも、最近の定番になりつつあるヴィブラフォンも兼任。
と来ればアレ。『TORTOISEみたいなコトやってみっか!』。M-01が露骨に最近の亀さんぽくて苦笑してしまうこの曲、盛り上がるに連れて何とブラストビートが飛び出す奇天烈さ。さすがに〝TORTOISEの甲羅〟たるマッケンさんもココまではっちゃけない。
以後、ちょくちょくブラスト放ってみせたり。いつもより盛んにサックスがブロウしてたり。展開が無節操にごろごろ変わる変態曲演ってみたり。一瞬だけごりごりっとハードコアになってみたり。いやむしろサックス入りハードコア演ってたり。ディロンがへなちょこラップかましてみたり。一変、びっくりするほどド真面目にムーディなジャズを演ってみたり。
まあ忙しないことで。

ココらでこう思われる方も居らっしゃるかも。「ディロン、いやに頑張ってね?」と。
その通り、前回ですっかり主役のスケリックを食う勢いだった彼が更に図に乗ったのが本作。ドラムながら六曲も作曲に関わっている。
風貌からして如何にも陽気でガサツでパワフルなアメリカンドラマーの彼。その雰囲気が、作中で時折漂うあほっぽさを引き出しているのだろうか。参加直後のクリバギ作品も可笑しな空気が内包された怪作だったので、さもありなん。
とはいえ真面目に演れることを証明している連中なので、本作もきちっとアレンジを練って――いや、どうなのか……? 結構行き当たりばったりに曲を展開させている節も……。

そんないい加減なトコも彼らの魅力っ。
ほら、バンド名がDEAD KENNEDYSのモジリですから。パンクですから。ノーフューチャーにデストロイしなきゃ――って本来、クリバギってこんな風にテキトーだしィ。

M-01 Devil's Playground
M-02 Black Truman (Harry The Hottentot)
M-03 Melvin Jones
M-04 Black Budget
M-05 Black Death
M-06 Bucky Balls (Spherical Fullerene)
M-07 Luxury Problems
M-08 Black 5
M-09 Sweatbox
M-10 Jazz Millionaire

M-02ではスケリックの別プロジェクト・GARAGE A TROISにメンバーとして名を連ねる八弦ギタリスト、チャーリー・ハンターがゲスト参加している。
ちなみにGARAGE A TROISは本作と同じThe Royal Potato Family産。



2012年2月10日金曜日

CRITTERS BUGGIN 「Stampede」


BLACK FRAMESを経て久々再開の2004年作・六枚目。
前作「Amoeba」が1999年だから、約五年ぶり。比較的リリーススパンの短い彼らとは思えない、この間の開きよう。ソレもコレも、マット・チェンバレン(Ds)がセッションワークで忙しいから……。

さて、月日は音楽性も変えるもので、似非ジャズ(1st)からトライバルなイカレジャム(2nd以降)へと移行した彼らの新章は……ポストロック風味だった!
つまりBLACK FRAMESからの流れを引き継いだ作風になっている、と。
中途採用のマイク・ディロンが例の鉄琴(ヴィブラフォン)専任奏者となり、生き生きと撥を振るっている。我が主役! と言わんばかりに。しかも今まで以上に本職のパーカッションの音も冴えまくっている。
一方、主役のスケリックのサックスは……思ったより抑えている印象。管楽器は音がド派手だけ、さすがに鳴れば一発で耳を惹くようになっている。もちろん、ピアノやシンセなどの他楽器導入も今に始まったことではない。

だが、いつもと触感が違う。やはり月日が音楽性を変えたのか?

彼らは今まで、割と好き勝手に音を出していたように思える、特にサックスの男が。そのことにより、このバンドはジャムバンドとして扱われるようになった。
ジャムが〝好き勝手〟とは言わないが、曲の全体像を考えて創る音楽ではない。
そこへきて、本作で〝考えて鳴らす〟ようになった。ココはこう鳴らした方がかっけーんじゃね? とか、ソコはコレとこう絡ませるとアレが引き立つよな、とか。
元々はセッションワークで身を立てていた者どもの集まり。楽曲至上主義になるのはお手の物だ。

実力者が真正面からバンドという共同体に挑んだだけあって、本作は今までのようなおちゃらけた空気が一切ない。その分、凄腕同士の醸し出す緊張感が堪らない。
そこで思い知らされたのが『チェンバレンとブラッド・ハウザー(Ba)あっての、主役のスケリックなのだな』ということ。
M-09のようなライヴさながらのド迫力ビートを叩き出せるかと思えば、M-06のような人力ドラムンベースもスネアの音の粒を揃えて叩き切れる実力のチェンバレン。
どんな曲調にもスマートに対応し、さまざまな彩のグルーヴを生み出せるハウザー。
この二人がしっかりしているからこそ、本作でディロンもはっちゃけられたし、今までスケリックも好き勝手に演れたのだろう。

〝フリーフォームなジャムバンド〟という方向性は後退したが、実力者が曲のアンサンブルをきっちり練って創っただけあって、非常に聴き応えのあるアルバムとなった。
焦点を絞ることなく、今までのキャラに頼ることなく、自我を押し切れた稀有な傑作。

M-01 Hojo
M-02 Panang
M-03 Cloudburst
M-04 Hot Blast Of Concept
M-05 Sisa Boto
M-06 Persephone Under Mars
M-07 We Are New People
M-08 Toad Garden
M-09 Punk Rock Guilt
M-10 Nasty Gnostic
M-11 Dorothy
M-12 Open The Door Of Peace

M-08では元レーベルオーナーであり、彼らだけでなくさまざまな有名アーティストに利用されているStudio Lithoのオーナーでもあるストーン・ゴッサード(PEARL JAM)がシンセでゲスト参加している。この人は本当に友達思いな良い人だ……。


2011年12月4日日曜日

BLACK FRAMES 「Solar Allergy」


CRITTERS BUGGINのスケリック(Sax)とブラッド・ハウザー(Ba)と4th「Bumpa」から参加したマイク・ディロン(Percussion)が、セッションワークで多忙のマット・チェンバレンを放置し、他のメンバーを迎えて創った2002年作品。
日本盤以外は自主流通盤。唯一の音源。チェンバレンの代わりが、これまた数多のアルバムで叩いているセッションドラマーのアール・ハーヴィン――以上を踏まえて考えれば、本作の立ち位置が透けて見えるはずだ。

さて本作はいつもテキトーに演っているようにしか思えない彼らが、珍しく明確なコンセプトを持って録ったアルバムである。
その内容を知って、筆者の眉間に皺が寄った。

「TORTOISEっぽいコトを俺らなりに演ってみよう!」

……げんなりするところを踏みとどまって、ふと思考。
黙ってパクりインスパイアを受けずに、自ら公言してしまうなんて可愛いじゃないですか。ちゃんとTORTOISE側に敬意を示している訳だから。
で、そのパクりインスパイア具合はと言えば……ハウザー以外のメンバーがマリンバやらヴィブラフォンを用いている――この時点でああなるほどTORTOISEだな、と。
だがはっきり言って、亀さんとの相似点はコレだけ。使い方を真似ているのではなく、あまりに象徴的な音ゆえ、こうでしか当てはめようがない楽器なのだ。

こうなると彼らの独壇場。
音の濃淡をくっきり描き分けられるスケリックのサックス。決して奥に引っ込まないハウザーのベース。有効な装飾音をくれるディロンのパーカッション。チェンバレンとは違う、黒人ならではのグルーヴ感を持つハーヴィンのドラム。
――と、木琴・鉄琴。
コレを使っただけでポストロックっぽく聴こえるって、どれだけエゴの強い楽器だよ。

本体から一音色増えて得した気分になれれば、本作はきっと楽しいはず。
本作が後の彼らの活動に少なからず影響を与えている事実を結果論で悟れば、きっと聴き逃せないはず。
なのに日本のみ、正規流通ですかい……。

M-01 25 Billion Stars Per Human
M-02 French Farse
M-03 Harfta
M-04 Sonic Vapor
M-05 Mullet Cut
M-06 Turbulence
M-07 White Envelopes
M-08 Gophers
M-09 Lucky Dog

どーでもいい話になるけど、このジャケットの黒人男性、ドラムのハーヴィンかと思いきや、LaMar Seymourなる人らしいよ。
誰? つか何で?


2011年10月24日月曜日

CRITTERS BUGGIN 「Guest」


グランジシティ(笑)・シアトルが生んだ、ジャムキチジャジーロックバンドの記念すべきデビュー作。1994年作品。
レーベルはかのPEARL JAMのギタリスト、ストーン・ゴッサードが運営したLoosegroove Records。ゴッサードは本作のプロデューサーとしても名を連ねている。

でまあ、コイツらと言えば変態サックス奏者のスケリックの名がすぐに想起されるだろうが、本作で吹いているのはナルガス・シン・カーン。
……スケリックの変名なんだけどな。
それに、PEARL JAMやらフィオナ・アップルやらクリスティーナ・アギレラやらフェイス・ヒルやらデイヴィッド・ボウイやらリサ・ローブやらメイシー・グレイやらで叩いた辣腕セッションドラマーのマット・チェンバレンを始めとする、エディ・ブリッケルのバックバンドメンバーが揃ったのがこの変態バンド。

どのくらい変態かと言えば、三時間もステージ時間を与えたら丸々、延々とジャムセッションを演っていそうなくらい。

でも、本作はデビュー作。まだ本領と言うか本性を現わしていない。コンパクトにかちっとまとまったジャズ風味の強いインストロックをプレイしている。
もちろん、あくまで〝ジャズ風味〟であって、CD屋でジャズの棚に収められて然るべき品ではない。ベースのブラッド・ハウザーとチェンバレンのリズム隊がロック然としたコンビネーションでボトムを固めているからか。
ならスケリックは何演ってるのかと聴けば、割と曲調に沿った真面目なプレイに徹しているようで、時には嵐を巻き起こすトリックスター的なポジションを既に獲得しているこの如才なさ。『俺が主役だ!』と言わんばかりに。
M-02のように、サックスをエフェクターで歪ませてギターのような音に変えるなんて芸当、そうそう真似する同業者も居ないぞ!

とまあ『ジャズのようでそれほどジャズでもないけど何だかジャズっぽくてカッコイイ』本作だけど、ジャムが好き過ぎて堪らない超個性を発揮するのはコレ以降。
ただし、本作の微妙な立ち位置がヌルくて取っ付きやすいのも事実。
ゴッサードの友人で、チェンバレンもゲスト参加したことがあるSATCHELのショウン・スミスを迎えた、作中唯一のヴォーカル曲M-08も完全に浮いている。それどころかSATCHELとしか聴こえないのも、本作のヌルさを暗喩しているかのようだ。

脊髄反射で『コレ、カッコイイ!』と飛び付けるけど、実態は何だか良く分からないのに、本人たちは自信を持って高度なコトを演っている、そんな意味の分からないバンド。
正にド変態。

M-01 Shag
M-02 Kickstand Hog
M-03 Critters Theme
M-04 T-Ski
M-05 5/4 F.T.D.
M-06 Fretless Nostril
M-07 Double Pot Roast Backpack
M-08 Naked Truth
M-09 Los Lobos


2011年9月30日金曜日

HELLA 「There's No 666 In Outer Space」


ザック・ヒル(Ds)とスペンサー・セイム(G)によるカリフォルニアのイカレポンチ、2007年発表の大問題作。四枚目。

彼らと言えば〝東のLIGHTNING BOLT、西のHELLA〟と並び称されるハイパーマスロックデュオである。
それがヴォーカルとベースともう一人ギターを継ぎ足した五人編成となった時点で、『俺はデビュー当時から奴らを云々』抜かす1001的な輩が黙っていない、不穏な空気が漂う。
しかも出来上がった作品がTHE MARS VOLTAやSYSTEM OF A DOWNという、ツアー帯同の際に可愛がられた兄貴分から多大な影響を受けた作風になっていた。
お陰で〝聴きやすくなった〟そうな。

以上、本作を問題作たらしめている部分である。
で? 何が問題なの? レーベル、あのIpecacだよ? 変態音楽の酸いも甘いも知り尽くしたマイク・パットン将軍のレーベルだよ?

〝聴きやすくなった〟のは整合感が増したから。おそらくレーベルカラー。今までのラフでロウな〝投げっぱなしジャーマン〟ではなく、しゃきっと〝ジャーマンスープレックスホールド〟になった訳だ。よりマスロックらしく理路整然としている。
その点は好みの問題だし、賛否両論あって良い。ただ、はちゃめちゃ躁展開は今まで以上だし、キモであるヒルの自由闊達なドラミングとセイムの奔放なフレージングは健在とあれば、長所特化を好みがちな筆者はこちらを選ぶ、ってだけ。
つかさあ……空気が類似品っぽいから批判するのではなく、変わらない部分を見つけて満足しなさいよ。似てる似てないなんて一時の問題なのにさ。
で? えっと……デュオ編成崩した? ベース(兼キーボード)のカーソン・マクライター、終始ぶきぶき歪んだ印象的なフレーズ鳴らして頑張ってるじゃない。つか彼、本体二人の別プロジェクトの常連なんだけど。
表現の幅を広げるため、たかが人を増やしただけじゃない。他のメンバーにも言えるコトなんだけど、これだけ本作に貢献しているのに、サポート扱いは酷でしょ。

とまあ、筆者がこれだけ難癖に噛み付くのも、本作の出来栄えが好みだから。Ipecacらしい変態性と彼らの異常性が巧くマッチした快作だと思う。
悪かったら庇わないってば。アーティストは創った音で勝負すべきなんだから。

今後、何度でも書くよ。『素晴らしい音をくれる方々を、型にはめるのは良くない』。

M-01 World Series
M-02 Let Your Heavies Out
M-03 The Ungrateful Dead
M-04 Friends Don't Let Friends Win
M-05 The Things That People Do When They Think No Ones Looking
M-06 Hand That Rocks The Cradle
M-07 2012 And Countless
M-08 Anarchists Just Wanna Have Fun
M-09 Dull Fangs
M-10 Sound Track To Insecurity
M-11 There's No 666 In Outer Space

ジャケのデザインはヒルの手によるもの。
M-01、06、11で強烈なサックスを吹いているのはCRITTERS BUGGINのスケリック。人選がエグいんだか的を射てるんだか……。