2017年5月6日土曜日
STARLICKER 「Double Demon」
流離のコルネット吹き:ロブ・マズレク大将が、TORTOISEでどっちかというと太鼓を叩いている人:ジョン・ハーンドンと、お髭の鉄琴叩き:ジェイソン・アダシェヴィッツ――つまりコレでゲストに呼んだ連中と組んだ2011年作品。
1953年設立! 大将懇意のシカゴ発老舗ジャズレーベル:Delmarkより。
結論から書けば、大将関連作品中で相当聴きやすい部類に入る。
まず音色はたった三つ。大将のコルネット、ハーンドンのドラム、アダシェヴィッツのヴィブラフォン。ベースなし、サンプラーによる装飾音なし、ゲストなし。徹頭徹尾スリーピースに拘った、スリーウェイジャズマッチだ。
よって音像がシンプルで各音色が把握しやすい上に、いづれも等価で存在をアピール出来る。おまけにフリージャズにありがちな、音感頼りのはちゃめちゃな崩しプレイ(俗に言うインプロ)がほぼない。
重ねて曲調が終始アップテンポ。ドラムもヴィブラフォンもがんがん打ち込む。
ハーンドンは演れる時は殺る人なので平常運転なのだが、アダシェヴィッツまで『俺も打楽器だ!』と言わんばかりに四本の撥を駆使して瀑布の如き鬼神プレイを見せる。この両名の向こう見ずなイケイケっぷりが、アルバムに一本筋の通った緊張感を齎している。
鉄琴は透明感のある落ち着いた音色が特色と思い込んでいたら、こういうアッパーな用い方もあるんだと筆者は目から鱗が落ちた次第。TORTOISEでどっちかというと鉄琴を叩いてるジョン・マッケンタイアさん、こんなん如何ですか?
で、主役。
普段はド派手な音で聴き手の注目を掻っ攫う金管楽器使いのマズレク大将。こんなアグレッシヴな二人に釣られて、ブロウかましまくりのエフェクターかけまくりの肩肘張ったコルネット裁きを聴かせているのかと言えば、そうでもない。
思ったより我関せず、素の音で当ブログでいうところの〝マズレク節〟を飄々かつ朗々と吹き鳴らしている。
そもそも大将はコンポーザー志向の勝ったジャズメン。我を抑えて仲間を立てるのはお手の物。加えて、一聴三名が好き勝手鳴らしているようで要所ではキメを揃えたりと、仕切っている大将のコンポーザー頭と各プレイヤーの高音楽IQの賜物により、楽器を鳴らしながら音楽を創る過程を垣間見せてくれる。
ココまで聴き手側に歩み寄っていただけるなんてほんと、感無量デス。
ねえ、ちょっと小難しいジャズ聴いてみたいなあ……なんてイケナイ好奇心を抱いてしまったそこのア・ナ・タ。マニアが推すよー分からん太古の名盤なんか後回しにして、まずはここらへんから足を踏み入れてみませんかィ……?
M-01 Double Demon
M-02 Vodou Cinque
M-03 Orange Blossom
M-04 Andromeda
M-05 Triple Hex
M-06 Skull Cave
2015年7月8日水曜日
SAO PAULO UNDERGROUND 「Tres Cabecas Loucuras」
今度は思ったより真っ当だぞ!
流離のコルネット吹き:ロブ・マズレク大将率いるブラジリアンジャズカルテット(ちゃんと裏ジャケにもう一人居るから大丈夫。仲間外れじゃない!)、2011年発表の三作目。
大将以外のメンバーは前作より固定。一枚目から組んでいるマウリーシオ・タカラ、ロック上がりらしいヒカルド・ヒベイロ、すっかりブラジル移転後の大将作品常連と化しているギリェルメ・グラナードの三太鼓叩き。
だが本作は、前作での三太鼓vsコルネットという妖しい図式に拘らず、より多角的なブラジリアンジャズを標榜している。ドラムをヒベイロで固定し、残りの二太鼓がカヴァキーニョ(ブラジルのウクレレみたいなの)やキーボードのような和音楽器も兼ね、ゲストにジョン・ハーンドンやジェイソン・アダシェヴィッツらを迎えることで、色鮮やかになった。
もう一度書くが、前作がアレ過ぎたお蔭で本作は一聴するに真っ当。音質もクリアだし、ビートを一本化することで曲が整頓されたのも大きい。
もちろん大将のコルネットも絶好調。M-02のブリープノイズまで織り交ぜてのサウンドチェックっぽいアレで聴き手に肩肘を張らせる出だしから、This Is 大将! な金管楽器の高らかな鳴りで各音色を統べるところなど秀逸。まるで大将が譜面台を叩いて総員に開始を促す指揮者のようだ。
また、M-04ではキコ・ディヌッチを迎えてのアンニュイなボサノヴァナンバーも披露。無論、初のヴォーカル入り。後半よりロマンチックに入る大将のコルネットがこれまた絶品。
おおゥ、真っ当……!
ただそれは薄皮一枚の見栄え良い外身。内側は相変わらずえげつない。
編集編集アンド編集の異端ジャズなのは相変わらずだが、主音すら情け容赦なく卓で歪ませる苛烈なエフェクトは少々控え気味。その一方で、どの曲も数多の音色が蠢いていて、妖しさは感じられる。だがそれだけではない。
実は始終音が揺れている。
一曲中のどれかの音色が左右連続パンされ、ふやけている。副音だけでなく、ヴォーカルや大将のコルネットといった主音級さえもその標的たりうる。
ヘッドフォン装着でその音を追っていると、ちょっとした妖しい思いが出来てしまい、困る。
大将はシカゴに残ろうがブラジルへ行こうが、あくまで気持ちイイ音楽を創ることに余念がない、妖しくも一本貫いたかっけーオッサンだ。
なお、後に大将は本作参加のタカラ、グラナードにアダシェヴィッツ、ハーンドンをピックして、その名もロブ・マズレク八重奏を立ち上げる。
そういう意味でもコレは重要作。麻薬にも良薬にもなる妖しい処方箋。
M-01 Jagoda's Dream
M-02 Pigeon
M-03 Carambola
M-04 Colibri
M-05 Just Lovin'
M-06 Lado Leste
M-07 Six Six Eight
M-08 Rio Negro
2013年5月16日木曜日
CHICAGO UNDERGROUND ORCHESTRA 「Playground」
全てはココから始まった。
シカゴのジャズ大将:ロブ・マズレクの加減算プロジェクト、1998年作品。地元の老舗ジャズレーベル・Delmark Recordsより。
この作品は本来、大将のソロアルバム扱いから始まっているのはジャケを見ての通り。
メンバーは大将(主にコルネット)、テイラー(ドラム)、パーカー(主にギター)の常連に、クリス・ロペス(ベース)、サラ・P・スミス(主にトロンボーン)のクインテット。
M-01ではTORTOISEのジョン・ハーンドンとダン・ビットニーがそれぞれコンゴとボンゴで参加。録音技師はそのTORTOISEを辞めたばかりのバンディ・K・ブラウン。
M-01はハービー・ハンコックの、M-04はデューク・エリントンのカヴァー。
――と、今回はやけに作品の背景説明が多いのにも訳がある。
はっきり申し上げて、書くコトがない! から。
本作は後の大将系列作品のように、打ち込みを織り交ぜたり、エキセントリックな曲調に足を踏み入れたり、音符を感性で置いていったりする逸脱行為のない、直球ど真ん中のジャズアルバムだ。
その一方で、自身の特徴的なコルネットのフレーズを立てつつ、他のパートの連中にもきちんとスポットライトを当てることで音世界の広がりを醸し出す、彼らしい立憲君主制のジャズアルバムだ。
まずコレを足掛かりにCHICAGO UNDERGROUND系だけでなく、マズレク大将作品を聴き進めていくのが無難かとは思うが、あまりに衒いのない創りのため、聴き手が近作の一筋縄ではいかない作風まで掘り続けてくれるかどうか疑問だ。
裏を返せば、ココで留まっても十分楽しい。
筆者は、アップテンポでスリリングなプレイの中、スミスかパーカーがリコーダー(縦笛)を闇雲に吹き散らすM-06が楽しくて仕方がない。蛇でも呼ぶつもりかよ、と。
要は、あんま頭使わず片意地張らず、ジャズ聴いてまったりしてーなー、なんて気分にうってつけのアルバム。
M-01 Blow Up
M-02 Flamingos Dancing On Luminescent Moonbeams
M-03 Boiled Over
M-04 Le Sucrier Velours
M-05 Components Changes
M-06 Playground
M-07 Jeff's New Idea
M-08 The Inner Soul Of H
M-09 Whitney
M-10 Ostinato
2013年3月16日土曜日
CHICAGO UNDERGROUND DUO 「In Praise Of Shadows」
ロブ・マズレク大将の加減算フリージャズプロジェクト、二人組では四枚目。2006年作。
例の場所で例のマッケンさんが録り、例のレーベルで発売。
このプロジェクトの面白いところは〝人員が減れば自由度が増す〟点にある。
普通は、人員が増える→楽器(音色)が増える→表現の幅が広がる→自由度が増す、とされているが、おそらく大将の発想は逆を行っている。
『(同時に鳴る)音数が切り詰められても、小回りが利くじゃない』と。
要は大将と、その相方:チャド・テイラーがフットワーク軽く動き回り、1+1を3にも4にも5にもしてしまえば解決するという話。
基本、大将=コルネット、テイラー=ドラムのパート構成だが、前作以上に各々の担当楽器数が多く、それだけでもフットワークの軽さを感じさせる。いやそれどころか、今まで以上に大将が、ユニットを睥睨する不動の主楽器に頓着していない。
実際、かの大正義金管楽器が鳴っているトラックはM-01、02、04、06と、10くらいなもの。むしろピアノを始めとした鍵盤楽器の含有率が高い。
テイラーの撥捌きが冴えるM-05など、今までならコルネットがフリーキーに吹き荒ぶところ、オルガンを砂塵の如く鳴らしてノイズ曲に仕立て上げている。M-03に至っては大将が傍観し、テイラー独りでムビラ(俗に言う〝親指ピアノ〟)と鐸と拍を取るためのバスドラムをこなす人力アンビエント風の曲も。
とは言え、鳴れば瞬時に耳を惹く、如何にも大将らしいコルネットのフレーズは健在。こうなると音の派手な金管楽器は強い。
だからこそエースに頼らず、他の音でも勝てるよう模索し始めたのかも知れない。
〝フリー〟ジャズだからこそ、いろいろ演ってみる。
ただしM-02の前半や07のように、切り詰めた音符を即興で置いて行く曲もあるので、聴きやすさは前作より減退したのも確か。
ゆえにオーソドックスなQUARTETやORCHESTRAや、主音のはっきりした前作で耳慣らしをしてから、本作の聴き応えを試す方が良いかと。
M-01 Falling Awake
M-02 In Praise Of Shadows
M-03 The Glass House
M-04 Cities Without Citadels
M-05 Pangea
M-06 Funeral Of Dreams
M-07 The Light In Between
M-08 Stratus (Bonus Track For Japan)
M-09 Cumulus (Bonus Track For Japan)
M-10 Cirrus (Bonus Track For Japan)
M-11 Nimbus (Bonus Track For Japan)
2012年12月6日木曜日
BILL DIXON with EXPLODING STAR ORCHESTRA 「Bill Dixon With Exploding Star Orchestra」
毎度お馴染みジャズ大将:ロブ・マズレクが統べるフリージャズ楽団と、60年代〝ジャズの十月革命〟を主催したフリージャズ発展の功労者:ビル・ディクソン、奇跡の邂逅。
Thrill Jockey産、2008年作。
今回、マッケンさん(録音と木琴)は不在。よって録音はSOMAではなく、スティーヴ・アルビニ所有のElectrical Audioで行われた。(当然、アルビニは本作に関与していない。意外とマッチしそうなんだけど)
大将が敬愛するディクソンを招いたことで、本作は彼の彩が強くなった。それはもう、一曲まるまる統括をお願いし、それをM-01、03と二分割して大将自身が仕切るトラック:M-02へ挟み込むくらいの熱い暑いリスペクトぶり。
よって焦点を絞り、ディクソンのトランペットと大将のコルネットが共闘する場面を際立たせた創りとなっている――前作は総勢十四名のプレイヤー各自が弾けられるよう、見せ場を均等に与えられていたのが。
まあそれは致し方ない。
かと言って主賓がでしゃばって他楽団員を奴隷化する、幼稚な創りな訳でもない。総員各自、奥に引っ込まずに脇から盛り立てる、美しい接待ぶり。
それに応えてM-02など、ディクソン翁(当時八十二歳)が渾身のブロウをかましており『おいジジイ、大丈夫か!? 』と手の汗握る熱量も有している。この楽団ならではの、全プレイヤーが秩序を持って一斉に音を激発(Exploding)させるパートも然り。
それにしても、偶発要素の高いフリージャズでよくもまあこれだけ大人数の、しかも個性の際立ったプレイヤーを統括出来るもんだ、と感心させられる。
だからこそ卓加工の匙加減が決め手――
と思いきや! 本作、オーヴァーダブなしの一発録りだそうな。すげえ! (ますますアルビニに録らせて欲しかった!)
M-01 Entrances / One
M-02 Constellations For Innerlight Projections (For Bill Dixon)
M-03 Entrances / Two
2012年10月4日木曜日
CHICAGO UNDERGROUND TRIO 「Slon」
シカゴのジャズ大将、コルネット吹きのロブ・マズレク率いる加減算ジャズプロジェクト、トリオ編成では三枚目。2004年作。
前作のややこしい編成から、今回は大将、テイラー(Ds)、クーパースミス(Double B)のトリオに戻る。しかもきっちり、三人で演奏を賄っている。
録音とミックス担当はバンディ・K・ブラウン。BASTROやらGASTR DEL SOLやらTORTOISEやらにも
在籍したことがある凄い人なのだが、現在フリー(苦笑)。
今回はTRIO版初のThrill Jockey Recordsリリースともあって、人力ジャズとエレクトロニクスの折衷作となっている。
M-01こそ如何にも大将っっ! なコルネットから始まるらしい曲だが、続くM-02、03と大将やクーパースミスが組んだいびつな打ち込みを軸に構成。M-02など、エレクトロニカさながらのビート音色に、大将の抑えたコルネットとクーパースミスのまろやかなベースが渋く絡む、耳を疑わんばかりの創りだ。
後はインプロありの、各音色を点で捉えてそこからまちまちの線を引くような音響曲(伝わらなければM-06を参照)ありので、雑多な印象を受けるかも知れない。
だがそれは、演っていることが三人編成のジャズなんだ、という基本線を忘れた認識なのではなかろうか。打ち込みに意識が向き過ぎなのではなかろうか。
現に本作の全体像は、三人の担当楽器を固定し、そこへ必要に応じて打ち込みを噛ませる、といったヴィジョンで徹底している。それだけM-02が、曲としては地味な部類なのにインパクトが絶大だったという結論に至る。
そこら辺をいつものマッケンさんレコーディングなら、巧くキモを理解して打ち込みを溶け込ませる手法が取れたのかも知れない。ブラウンという腰の落ち着かない何でもありな嗜好の持ち主だからこそ、このような煩雑さが滲み出てしまったのやも知れない。
もちろん筆者は前者が正解で、後者を取った本作が失策だとは微塵にも思わない。
逆に、真っ当なジャズへぴりりとスパイスを効かせた作品、と評するべきなのでは。
最後となって恐縮だが、本作は9.11の犠牲者に捧げられている。
黙祷。
M-01 Protest
M-02 Slon
M-03 Zagreb
M-04 Sevens
M-05 Campbell Town
M-06 Kite
M-07 Palermo
M-08 Shoe Lace
M-09 Pear
2012年7月2日月曜日
STEREOLAB 「Cobra & Phases Group Play Voltage In The Milky Night」
仏国人のレティシア・サディエール含む女声ツインヴォーカルを軸に、英国人のティム・ゲインが統括する、五人組おしゃれバンドの七枚目。1999年作品。
ジャケは言わずもがな、ジュリアン・ハウス。
某まんがのせいかは分からないが、このバンドを「オサレな輩がファッションでBGMにするスカしたバンド」と思っている方も居るのではなかろうか。
まあ、それも良い。
ただ、それだけじゃないのよ、と。もっともっと音楽に対して真摯なのよ、と。
元々がラウンジやモンドやクラウトロックのような、今となっては古めかしくて妖しい響きの音楽を自らの血肉にしたバンド。(そんなトコが、サブカル≒オサレ扱いされる所以か)
そこへ、ブラジル音楽の要素を本格的に取り入れてきたのが本作。
ハナのM-01から、南米特有の肉感的なビートを敷き、ゲスト参加のロブ・マズレク大将が気泡のようなコルネットを鳴らし(他、M-02、06、08、13でもプレイ)、そこへヴィブラフォンとギターのカッティングを重ね、女声二色のスキャットを絡める――そんなわくわくする曲から始まる、今までの彼らでは味わえなかった「ドーンときてガシャーンとやられる感覚」は特筆モノ。
一夜漬けのイッチョカミでは湧き上がらない抜群の咀嚼/吸収力と、この作品で演りたいコトが迷わず具現化出来ている点、そこが大きい。
その一翼を担っているのがやはり、前々作よりプロデュースするジョン・マッケンタイア。時折、顔を覗かせるヴィブラフォンや、おかしな手数のドラムは彼のプレイによるもの。
そんな彼が指揮する曲はM-01、02、04、06、08、10、13、15。
では他のM-03、05、07、09、11、12、14はと言えば……何とあのジム・オルーク。M-05やM-11から12などの落ち着きのなさや酩酊感は如何にも。
未だ在籍しているのか外部からの助力なのか分からないショーン・オヘイガン(HIGH LLAMAS)を含めて、これだけの辣腕に支えてもらえるのも偏に、七枚ものオリジナルアルバムを重ねてきた実績と、その実が伴った本人らの力量と、自己を確立しても尚、貪欲に新たな音を取り込もうとする努力に他ならない。
本物だからこそ〝おしゃれ〟なのだな。
M-01 Fuses
M-02 People Do It All The Time
M-03 The Free Design
M-04 Blips Drips And Strips
M-05 Italian Shoes Continuum
M-06 Infinity Girl
M-07 The Spiracles
M-08 Op Hop Detonation
M-09 Puncture In The Radax Permutation
M-10 Velvet Water
M-11 Blue Milk
M-12 Caleidoscopic Gaze
M-13 Strobo Acceleration
M-14 The Emergency Kisses
M-15 Come And Play In The Milky Night
M-16 Galaxidion (Bonus Track For Japan)
2012年5月6日日曜日
SAO PAULO UNDERGROUND 「Principle Of Intrusive Relationships」
コルネット奏者、ロブ・マズレク大将がプラジリアンジャズメンと組んだ渾身のプロジェクト二枚目。2008年作品。レーベルは前作同様、Aesthetics(音量注意)。
編成は大将と相方のマウリーシオ・タカラに加えて、二名のパーカッショニストを迎えている。つまり太鼓三段構えだ。さすがはビートを最重要視するラテンの血/地か。
さて……以前書いた通り、本作は相当エグい。マズレク音源中、図抜けたエグさ。他の音源とはダブルスコアつけて聴きづらい。はっきり言ってコレを大将入門盤にして欲しくない。もっと他にも良いのありますよって。
何がエグいのかと言えばその極端な録音状態。
まずハナのM-01から前作同様、フリージャズちっくなポリリズム曲(つか公開リハーサル)で既にこれからかっ飛ばすぞ! という無用な意気を感じる。
明らかに前作から劣化した、もわもわもこもこした音像の中、一本のコルネットを取り囲むように三基の太鼓が好き勝手に鳴らされる訳である。門外漢からすれば、こんなのわけがわからないよ、と匙を投げたくもなるわ、と。
ただこの曲、途中から存在感を顕わにしてきたベースに引きずられて、徐々にメンバー四点のピントが合い出すこの兆しがめちゃめちゃカッコイイ。
以後、ダビーなんだか偶発セッションなんだか悟れない、如何にもし難い音像が繰り広げられる。時にはばっきばきの音割れも辞さない。M-03やM-08など、大将自慢のコルネットの響きが、安っぽいサンプラーによる加工で聴くも無残に溶解している。M-04は各楽器のバランスが一切取れていない、まるでシャツのボタンを掛け違えたまま街を歩くような珍曲。M-06に至っては周波数の合わないラジオを聴いているかのようだ。
で、誰かに「こんなの聴いて面白いの?」と訊かれたら、筆者は満面の笑みを呈してうんっ、と頷くだろう。変なモン聴いて悦に入ってる俺は人とは違うぜ愚民ども! みたいなキモチワルイ上から目線ではなく、純粋に。
演るコト成すコト極端で、この音像に慣れてくると痛快に聴こえるのだ。
四十代半ばに差し掛かった中年太りのオッサンが、ココまで尖がった音を創るのかと。このオッサン、還暦過ぎてもぎらぎらした音楽創ってそうと(おまけに二十代の情婦も抱えてそう)。
マズレク大将というミュージシャンは、象徴的なコルネットの吹き方からして、常に気持ち良い音を念頭に置いて音楽を創ってくれる人だ。
本作もその表現軸は変わっていない。相変わらず一音一音に痺れる。
ただ今回に関しては、その聴かせ方があまりに異常なだけだ、と思おう。
M-01 Final Feliz
M-02 Barulho De Ponteiro 1
M-03 Barulho De Ponteiro 2
M-04 Pulmões
M-05 Entre Um Chão E Outro
M-06 Cosmogonia
M-07 Imã
M-08 Só Por Precaução
2012年3月24日土曜日
CHICAGO UNDERGROUND QUARTET 「Chicago Underground Quartet」
シカゴのジャズ大将:ロブ・マズレクの加減算プロジェクト、四人組では唯一の音源。2001年作。CHICAGO UNDERGROUND系(以下CU系)としてはコレの次にリリースされた。
今回はいつものThrill Jockeyからのリリース。いつものSoma Studiosでいつものマッケンさんが録る〝恒例行事〟と書いて〝おやくそく〟と読む体制。
メンバーはマズレク(コルネット)、チャド・テイラー(ドラム)、ノエル・クーパースミス(ダブルベース)、ジェフ・パーカー(ギター)……って、TRIOと同じ編成じゃないですかー、やだー!
だが今回は〝QUARTET〟だからして、四人フルの演奏が満喫出来る。三人しか同時に鳴らせない制約などない、フルコンタクトなプレイが売り! と思っていただきたい。
だからか、今回は割とバラエティに富んでいる。
どっぷりジャズな曲もあれば、パーカーが大活躍するTORTOISEっぽいギターフレーズをフィーチャーした曲もある。水墨画のようなポストロック的テクスチャーをジャズで翻案した曲もある。如何にもフリージャズ然とした、ポリリズミックな曲だってある。アルバムが終了し、暫しの空白後に起こるどっきり仕掛けだってエキサイティングだ。
メンバーそれぞれ自作曲を提供して編んだのが、この多様化の要因である。
それらを締めるのが、四人の真ん中にどんと聳え立つ野太いジャズの御柱であり、バンマスのマズレク大将が鳴らすコルネットの音だろう。
不動の軸さえあれば何を演ったって許される。おまけに我々下々の者どもにも分かりやすく咀嚼される付加価値も生まれる。
そうなれば本作が、CU系の音世界を一望出来る総決算アルバムだと言い切ってしまえ、この先の締め文への展開が楽になる。
CU系全主要構成員が、己の我を出すべく各々が曲を持ち寄り、結果として多角的な作品となり、でもジャズとしか言いようのない作風を貫き、マズレク大将ありきの、気持ち良い曲ばかりが詰まった高品質アルバム。
CU系に興味が沸いたのなら、まずはコレ! と言わんばかりの見本市。
M-01 Tunnel Chrome
M-02 Four In The Evening
M-03 A Re-Occurring Dream
M-04 Welcome
M-05 Three In The Morning
M-06 Total Recovery
M-07 Sink, Charge, Fixture
M-08 Wo Ist Der Kuchen, Meine Frau
M-09 Nostalgia
M-10 Dance 99 (Bonus Track For Japan)
2012年3月2日金曜日
TORTOISE 「TNT」
説明不要の亀さん、三枚目。1998年作品。
バンドの首魁〝マッケンさん〟ことジョン・マッケンタイア(Dsなど)が、自らの根城・Soma Studiosに籠もり(M-03とM-08の録音のみ、別のスタジオにて)粛々と執り行ったそのレコーディング、何と1996年11月より開始の1997年11月終了。丸一年も費やしている。
その間、ギターがデイヴッド・パホ(元SLINT。後に自らのプロジェクト・PAPA Mを結成)からあのマズレク大将(本作にも堂々参加)ユニット常連で亀さんメンバー唯一のジャズ畑プレイヤー、ジェフ・パーカーに代わっている。そりゃ誰か飽きるわ。
それはもう難産だったろうさ。苦しかったろう。しんどかったろう。
だが皆さんは少年少女の頃、ゲームに夢中になるあまり、夜更かし、徹夜、あまつさえ学校をサボったりしなかっただろうか?
今では誰もが使っているハードディスクレコーディングシステム〝Pro Tools〟。マッケンタイアの実践投入はSTEREOLAB「Dots And Loops」の方が先だが、TORTOISEでのレコーディングはコレが初。しかも当時、普及しているとは言えず〝魅惑の箱〟扱いだった。
雇われ仕事なら期日はあるが、自分たちの作品なら好き勝手に時間を費やせる!
そりゃもう、レアアイテムゲットやらレベルカンストやらディープダンジョンや裏ルートやらを攻略する勢いで、録音された音(素材)を弄り倒すでしょうよ。Pro Toolsという恰好の玩具を使って、嬉々として。
実はつらくも苦しくもなかったはずさ。楽しんでやがる!
こうして出来上がった作品は非常に端正なモノとなった。
生音を基調としているが、ところどころ打ち込みも噛ませてある。その音色に少々チープな素材を用いているのは、艶も特徴もあるメンバーの演奏と対比させるためであろうか。
This Is TORTOISE!! とも言うべき西部劇ちっくな弦楽器や、シロフォンなどの看板音色を引き立たせるべく、あちこちで打ち込み/生音ない交ぜにした装飾音で聴き手の耳のあちこちをくすぐり続ける。
その生音使いも、いったんハードディスクに取り込んでからループさせたり織り重ねたり鳴らす場所を散らしたりするなど、今では常識となったPro Toolsの編集機能を縦横無尽に使いこなし、嫌味なく構成している。
また、ドラムンベースちっくなビートパターンを組み込むなど、既存の方法論から逸脱するような動きも。
微に入り細を穿つような。
もしかしてこう操れるまで、一年もの実験期間を要したのかも知れない。
そんな地道な完コンプ実験が、後世の録音技術に多大な影響を与えている。与えているからこそ、本作は今でも色褪せぬ超名盤として崇められている訳だ。
いろんな意味で教科書盤。一家に一枚、是非。
M-01 TNT
M-02 Swing From The Gutters
M-03 Ten-Day Interval
M-04 I Set My Face To The Hillside
M-05 The Equator
M-06 A Simple Way To Go Faster Than Light That Does Not Work
M-07 The Suspension Bridge At Iguazu' Falls
M-08 Four-Day Interval
M-09 In Sarah, Mencken, Christ And Beethoven There Were Women And Men
M-10 Almost Always Is Nearly Enough
M-11 Jetty
M-12 Everglade
M-13 TNT (Nobukazu Takemura Remix) (Bonus Track For Japan)
ボートラM-13は原曲のツボをきちんとを捉え、自らの持ち味は最大限に引き出す好リミックスなので、ぜひ日本盤を。
そんな地道な
いろんな意味で教科書盤。一家に一枚、是非。
M-01 TNT
M-02 Swing From The Gutters
M-03 Ten-Day Interval
M-04 I Set My Face To The Hillside
M-05 The Equator
M-06 A Simple Way To Go Faster Than Light That Does Not Work
M-07 The Suspension Bridge At Iguazu' Falls
M-08 Four-Day Interval
M-09 In Sarah, Mencken, Christ And Beethoven There Were Women And Men
M-10 Almost Always Is Nearly Enough
M-11 Jetty
M-12 Everglade
M-13 TNT (Nobukazu Takemura Remix) (Bonus Track For Japan)
ボートラM-13は原曲のツボをきちんとを捉え、自らの持ち味は最大限に引き出す好リミックスなので、ぜひ日本盤を。
2012年2月8日水曜日
SAO PAULO UNDERGROUND 「Sauna: Um,Dois,Tres」
居住地をブラジルはサンパウロに変えたシカゴジャズシーンの顔役、ロブ・マズレク大将が、太鼓叩きのマウリーシオ・タカラと組んだ2006年初作品。
レーベルはシカゴのAesthetics(音量注意)。
クレジットには古馴染みのジョシュ・エイブラム(TOWN AND COUNTRY、THE ROOTSなど)やチャド・テイラー(CHICAGO UNDERGROUND系)の名も見られるが、ほとんど現地のブラジリアンミュージシャンで固めている。
いや、〝固めている〟という表現はこのプロジェクトを語る上で適切ではない。クレジットにおけるテイラーのパートが〝Short Drum Sample〟な点で何となく察して欲しい。
何しろ、ゲストプレイヤーなど音のパーツでしかないのだから!
卓! 加工! エディット! ミックス! オーヴァーダブ!
大将はご親切にもタイトル曲のM-01でさっそく、このアルバムのあり方を示している。ヘッドフォンをご用意を。
サウンドチェックのような声から、ぱらぱらとタカラのドラムと大将のコルネットが鳴り始める、左右のチャンネルで別々の音が。フリージャズどころの話ではない。ポリリズムにすらなっていない。二人の捻り出す〝音色ども〟が聴き手の脳内のあちこちで揺さぶりを掛け、混沌の坩堝へと落とし込む。
いいかい? 〝演奏〟じゃなくて〝音色〟だよ、と。
それがようやく霧散し、全ての音が止んだ後……一発で誰が吹いているか分かるコルネットが響き、ラテンの肉感的なビートがそれを後押しするM-02が弾けた瞬間、聴き手毎の本作における評価が決まると思う。
ただしこの曲は二層構造で、中間部に編集の賜物であるドローンノイズを噛ませてある。そこから再び肉感的なビートとコルネットがフェイドインで戻って来て締める、まるで楽団が町内一周パレードしたような素敵曲! と思える方は、おそらく本作を気に入っていただける方なのではなかろうか。
以後、アンサンブルでは味わえないテクスチャの妙を存分に堪能出来る。
ビート感が明らかにラテン風味なので、CHICAGO UNDERGROUND系とはきちんと差別化が計れているし、エディット感はこちらの方が強いくらいだ。
マズレク大将がジャズを多角的に視ているコトが分かる秀作。
ただし! 次はエグいよ。本作が洗練されている、と言いたくなるくらいね。
M-01 Sauna: Um, Dios, Tres
M-02 Pombaral
M-03 The Realm Of The Ripper
M-04 Olhosss...
M-05 Afrihouse
M-06 Black Liquor
M-07 Balao De Gas
M-08 Numa Grana
M-09 O Armarinho (Bonus Track For Japan)
M-10 FSY (Bonus Track For Japan)
日本盤は、ボートラのM-09が本編であるM-07の終いから続くへんてこな声ネタループを引き継いで大将の寂しげなコルネットが乗る連動性のある曲なので、ちょっとしたお徳盤。ないよりあった方が良い程度だけど、筆者はこちらを薦める。
M-10もアレだしね……。
2012年1月10日火曜日
BROKEBACK 「Looks At The Bird」
おおゥ、素敵ジャケ……!
THE SEA AND CAKEの(奇しくも)ベーシスト、エリック・クラリッジ画伯によるアートワークが秀逸な、ツインベースデュオの2002年作・二枚目。
メンバーはまず、現TORTOISEで他にELEVENTH DREAM DAYやPULLMANなどを平行して稼動させている六弦ベーシスト、ダグラス・マッカム。元々、この人のソロプロジェクトとして当ユニットは活動を開始した。
相方は、前音源から正式参加のノエル・クーパースミス。CHICAGO UNDERGROUND系でいぶし銀の活躍を見せるダブルベース使いだ。
レーベルは例のトコで、録音技師はいつものマッケンさんがいつもの自分のトコで。
音色は違えど、ベース二本という画期的な編成による制約と、二人の高濃度な人脈を踏まえれば「ゲスト参加者が超豪華!」となるのが筋。
いちいち詳細を記していたらきりがないので簡単に。マッケンさんや〝大将〟はもちろん、大将の相方(つまりクーパースミスの同僚)やSTEREOLABの歌い手両名、竹村延和が主宰するChildisc所属の日本人シンガーソングライター(米盤ではThrill Jockey所属)と、まあよくココまで集まったなと言わんばかりの面子がずらり。
だが彼らはあくまで脇役。装飾音として曲に貢献する、分を弁えたプレイはさすが辣腕ども。ポストロックはバランス感覚が命です。
さて、肝心のベーシスト二人なのだが……ご想像通りマッカムの弾くTORTOISEの代名詞・西部劇ちっくなベースラインを主音に、ダブルベースらしい芳醇な音色でクーパースミスが付かず離れずボトムを支える――コレが基本線。クーパースミスが曲によってボウ奏法をしている点が、個人的には美味しい。
だが二人、さほどベースという楽器に頓着しておらず、クーパースミスは卓弄りに余念がなかったり、マッカムがM-04やM-05でギターを持ち出し、ツインベース編成に唾するような行動も。これはもう、全て二人だけでアルバムを賄えてしまうのでは。
いやいや「音色を機能的に扱う」ことに長けた連中が集うこの界隈。たった二人で演るなら演るなりのメソッドで、大勢集めるのならそれらを生かした音創りになる。
音色が多いに越したことがない。それが名の知れたプレイヤーから出されるのなら願ってもない。それらを売りにするつもりはない。それらの持ち味を殺すほど愚かでもない。
シカゴの音キチたちはこうして音を日々、研鑽していくのだ。
M-01 From The Black Current
M-02 Lupé
M-03 Name's Winston, Friends Call Me James
M-04 Everywhere Down Here
M-05 In The Reeds
M-06 50 Guitars
M-08 The Wind-Up Bird
M-09 Pearl's Dream
M-10 Noel 1 (Bonus Track For Japan)
M-11 Doug (Bonus Track For Japan)
2011年12月28日水曜日
THE CHICAGO UNDERGROUND TRIO 「Flamethrower」
当ブログではすっかりお馴染み(だよね?)のジャズ大将、ロブ・マズレクによる変則プロジェクト、2000年作品。前回『曲者』と書いたトリオ編成では二枚目。
レーベルはいつものトコ……ではなく、地元シカゴで創業1953年よりの老舗ジャズレーベルDelmark Records。
さあ、注目すべき点はメンバーの数。ジャケをご覧あれ。
リーダーのマズレク(コルネット)。大将ですから! 彼が居ないと始まらない。
DUOでも行動を共にするチャド・テイラー(ドラム)。ほぼ大将の相方状態。
BROKEBACKでも活躍するノエル・クーパースミス(ベース)。赤シャツ。
現TORTOISEで大将のプロジェクト常連であるジェフ・パーカー(ギター)。黒ぶちメガネ。
……あれ? トリオだ、よ、ね?
そこで大将の詭弁が始まる。
「同時に四人鳴ってませんからー! だからトリオなの! 一粒で何度も美味しいの!」
テイラーのビートにクーパースミスが併せ、大将が乗っている時はパーカーはミュート。そこへパーカーが割り入った時は大将がミュートするか、クーパースミスかテイラーが引いて大将とパーカー、主音同士の鍔迫り合いを傍観するか。
これにより、トリオだから三人という既成概念をぶち壊し、制約を課すことによって曲単位でどう動くのか、抜き差しならぬ緊張感を醸し出す目論見だったのであろう。
確かにその効果はある。鳴っている音を脳内で把握しながら「あ、変わった。また変わった」と聴くのも楽しいモンだ。
でも頭使って音楽聴くの、疲れるじゃない。
だからいつも、そんなマズレク大将の画策した小細工をハナから無視して、筆者はだらーっと本作を聴いている。
Delmarkだからか、いつもよりジャズっぽさが強めだと思う。そんな中、パーカーが突如フリーキーなギターフレーズを織り込んだり、大将がオーヴァーダブでコルネット三重奏を演じるなど聴き逃せないツボも。
まあ、大将作品は相変わらず、大将ならではの気持ち良い音をくれるんです。
M-01 Quail
M-02 Fahrenheit 451
M-03 Warm Marsh
M-04 Antiquity
M-05 Flamethrower
M-06 Woman In Motion
M-07 Triceptikon
M-08 A Lesson Earned
M-09 Arcweld
M-10 Elroy
M-11 Number 19
M-12 504
M-13 The Tungflec Treaty
M-14 The World Has Changed
M-15 Elray
M-14 The World Has Changed
M-15 Elray
2011年10月14日金曜日
CHICAGO UNDERGROUND DUO 「Axis And Alignment」
毎度おなじみシカゴ音楽シーンの立役者、ロブ・マズレクの流動的プロジェクト、三枚目。2002年作。レーベルはいつものトコ。スタジオもエンジニアもいつも通り。
前からコレを書きたかったのだが、このプロジェクトを紹介する上で必要な前置きが面倒臭い(上に筆者はジャズに精通していない)ため、先延ばしにしてきた。
さ、頑張るか。
〝CHICAGO UNDERGROUND〟の冠名が付くプロジェクトは四つある。まずはマズレクありき。そこから一人、二人、と人員を継ぎ足していく構成だ。
まず今回の〝DUO〟。二人ゆえにフットワークが軽く、一番作品を残している。
次に〝TRIO〟。三人だが、コレが曲者。
あと〝QUARTET〟。四人。すごく……真っ当です……。
で、まずはココから始まったクインテット、じゃなくて〝ORCHESTRA〟。
以上、簡潔に。
TRIOのややこしい編成は、いづれ書くであろうTRIO紹介の際に追々。
さて本作はDUO。マズレクの相方はタイコ叩きのチャド・テイラー。
どうせベースレスでひたすらビートとコルネットのアンサンブル――ばかりかと思いきや、ベースパートをマズレクの組んだ安い音の打ち込みに頼ったり。マズレクがそっとコルネットを吹いている際、テイラーがひっそりヴィブラフォンを添えてみたり。そのヴィブラフォンの音を取り込んで、ヴァーチャル三重奏をしてみたり。マズレクがピアノを弾き、テイラーのヴィブラフォンと音響バトルを繰り広げたり。
手を替え品を替え。
でもこの手のフリージャズ系? 即興っぽい意味不明なプレイ、苦手なのよねえ。小難しくて付いて行けないわあ……とお悩みの奥様に朗報。
今までの〝DUO〟はそうでもなかったのだが、本作はいつも以上にマズレクのコルネットが派手に鳴って、我が主役! と高らかに宣言しているため、非常に取っ付きやすい。あんさんのプロジェクトなんだから、いつもこうしてくれたら良いのに……。
その中でも出色なのが、マズレクのコルネットとテイラーのドラムの火花散るせめぎ合い。コレをアルバムの真ん中辺に配置しているトコロがミソ。そろそろ油断し始める頃に、がつっと持って行かれる。
これもいつも書いているコトだけど、あんま頭を使ってウチのブログで扱っているような音楽を聴くべきじゃないと思うのだなあ。音楽に浸る多幸感が目減りするじゃない。
マズレクのおっさんはそんな聴き手の痒いトコを考えて音を創ってくれるジャズマンなので、筆者は門外漢ながら何とか必死に食らい付いているのだ。
M-01 Micro Exit
M-02 Lifelines
M-03 Particle And Transfiguration
M-04 Exponent Red
M-05 Average Assumptions And Misunderstandings
M-06 Lem
M-07 Two Concepts For The Storage Of Light
M-08 Memoirs Of A Space Traveller
M-09 Rotation
M-10 Access And Enlightenment
M-11 Noon
2011年7月22日金曜日
EXPLODING STAR ORCHESTRA 「We Are All From Somewhere Else」
シカゴ音楽シーンを華麗なフットワークで牛耳るコルネット吹き、ロブ・マズレクが結成した十四人編成の文字通りジャズオーケストラ、2007年発表の初アルバム。
ジョン・マッケンタイアを始めとするTORTOISEのメンバーが三名、マズレクの別ユニットISOTOPE 217°のメンバーが一名参加しているが、その他のメンバーの素性は筆者のジャズシーンの不勉強により、分からない。申し訳ない。
スタジオは例のトコ。エンジニアはもちろんマッケンタイア。当然、プロデュースはマズレクとマッケンタイアの連名。
まずはM-01、ジャジーなビートがマリンバと共に推進し、そこへ軽快なフルートが被さった刹那、(筆者を含む)ジャズ一見さんは「コレってもしかして物凄え作品……!?」と息を呑むことだろう。一方の生粋のジャズリスナーはどう思うかって? 知らんよ。「いやいや本物のジャズは云々……」講釈垂れんじゃね? アタマがっちがちだし。
それはさて置き、最大十四もの音が時には協力し、時には音を別ち、時には影に入り、時には日向に転じ、爆裂(Exploding)に向けてテンションを高めていく様は圧巻だ。
その爆裂パートもただドガチャカ演るのではなく、時間軸を入れ替えて爆裂後の景色を器楽化してみたり。ただどーん! と爆発するのではなく、打ち上げ花火のような多くの爆発を束ねて形取る、統率の行き届いた音像を展開するのだから恐れ入る。しかも曲のハナからどかーんと演ってから、時系列を追うかの如く丁寧に曲を逆算させたりもする。花火と言えば、打ち上げではなく線香花火のような可憐でささやかな爆裂をそっと提供してくれたりもする。
手を変え品を変え。
それにしてもジャズならではの即興部分も、明らかに鳴らし方がジャズではなく、音響派どもが演ってきた気持ち良い音を抽出するメソッドを用いているのだから、バンマスのマズレクも食えぬ奴よの、と。
筆者はジャズのことをあまり理解出来ていないが、そんな聴き手をあっという間に取り込み、このアルバムは凄えな気持ち良いなかっけーなと脊髄反射を起こさせる即効性はまさしく買い。
それでいて、じっくり聴き込んでも深みが増す。
試聴で惚れて衝動買いしても一生の付き合いが出来る、本作はそんな名盤。
Sting Ray And The Beginning Of Time
M-01 Part 1
M-02 Part 2
M-03 Part 3 (Psycho-Tropic Electric Eel Dream)
M-04 Part 4
M-05 Black Sun
Cosmic Tomes For Sleep Walking Lovers
M-06 Part 1
M-07 Part 2
M-08 Part 3
M-09 Part 4 (Fifteen Ways Towards A Finite Universe)
M-10 Part 5
M-08 Part 3
M-09 Part 4 (Fifteen Ways Towards A Finite Universe)
M-10 Part 5
M-11 Luminous Galaxy (Bonus Track For Japan)
日本盤のみのボートラのM-12には、STEREOLABのレティシア・サディエールがフランス語のポエトリーディングで参加。コレだけでも日本盤を選ぶ価値はあるかと。
M-12 Dark Water (Bonus Track For Japan)
日本盤のみのボートラのM-12には、STEREOLABのレティシア・サディエールがフランス語のポエトリーディングで参加。コレだけでも日本盤を選ぶ価値はあるかと。
2011年6月28日火曜日
ISOTOPE 217° 「The Unstable Molecule」
レーベルはシカゴ音楽シーンを牽引するThrill Jockey Records。
何かもう……最初の一行で説明が終わってしまう音。
TORTOISEがジャジーになった音。コルネットをフィーチャーしたTORTOISE。音頭取りのマズレクも意図してメンバーを呼び寄せたのではなかろうか、と思うくらい。
実際、M-03は後にTORTOISEの方で“Jetty”として翻案されているし。
じゃあ、そのまんま感が嫌だって? とんでもない!
ちょうどジャズとポストロックの間を取った心地良さ。
フレーズはジャズなのに、質感はポストロック――若干ロックっぽいトコを残した、何か。TORTOISE味のジャズが聴けて、何だか得した気分。
そうやってこのアルバムは味わうモンなのかなあと。
根なし草のようで、びっしりと深く広く根差している。あっちふらふらこっちふらふらしているようで、周囲から爪弾きにされている訳ではない。自ら語る言葉は少ないものの、その一言一言に含蓄がある。
ポストロックという一筋縄ではいかないジャンルを象徴するような音だと思う。
だからきっと、コレについてくどくど薀蓄垂れるより、コレを漠然と肌で感じるだけの方が幸せな音楽ライフだと思う。
難しく考えなくていいんだよ、ありのままに受け止めてよ、と。
だからこれ以上、だらだらと書き連ねる必要などないと思う。
M-01 Kryptonite Smokes The Red Line
M-02 Beneath The Undertow
M-03 La Jetee
M-04 Phonometrics
M-05 Prince Namor
M-06 Audio Boxing
(追記)
日本盤には:
M-07 Ode To Philophony
M-08 Expedition Rhombus
:なる二曲のボートラが収録されている。
中でもM-08は弛まぬ緊張感にひりひりする10分越えの名演なので、買うならこちらが絶対にお得。たぶんライヴテイクか一発録りだと思う。
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