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2017年2月28日火曜日

CLARK 「The Last Panthers」


同名のイギリス犯罪TVドラマ(放映開始は2015年11月。日本未放送)の劇伴を、Warpの映画部門・Warp Films絡みであのクリストファー・ステファン・クラークが担当。2016年3月にサントラとして発表したブツ。
ちなみにオープニング曲はデイヴィッド・ボウイ(遺作……)。エンディング曲はLeaf Label所属のROLL THE DICE。(いづれも当作品には未収録)

いびつでカッコイイビートを組める才にも定評があるCLARKだが、そこはオールラウンダーの彼、サントラを意識して全編ノンビートのアンビエント作品に仕上げてきた。
そもそもアンビエント曲は彼にとって、いつもオリジナルアルバム末尾(や日本のみのボートラ)に添えてきた守備範囲内の手法。あとは他ミュージシャン曲のリミックスでいつも無茶苦茶演るような、持ち前の傍若無人さがこの大事な局面で鎌首を擡げないか心配ではあったが――

まるで問題なかった。(ニッコリ

彼の近作で見られた幽玄かつ奥行きの広い音像の中、シンセやエレピを主音に用いた静謐かつ荘厳な雰囲気で、なおかつ2・3分とコンパクトにまとめる、といった劇伴のセオリーに忠実な創りで非常に好感が持てる。残念ながらドラマは未見だが、これならどんなシリアスな映像にも合いそうだ。
彼も大人になったなあ……と感慨深くなった。
ただ、アンビエントは音数を切り詰める作風ゆえにビッグネーム以外は個性が発揮しにくいジャンルなのだが、それも問題なし。各曲のそこかしこに彼が如何にも用いそうな音色が散りばめられており、打ち込み系音楽ファンに目隠しテストしてもCLARK謹製の音楽と回答するはずだ。
逆に一聴で分かる個性を有した彼に、大きくなったなあ……と感慨深くなった。

総評すれば、らしくはないし番外編なれどCLARKはCLARKだった、と。

で、実際のドラマはFoxチャンネルとかAXNとかで日本放映しないの? トレイラーを見る限り、面白そうなんだけど。
放映されない限り、本作もBeat Recordsから日本盤発売されなそうなんだけど。

M-01 Back To Belgrade
M-02 Hiero-Bosch For Khalil
M-03 Diamonds Aren't Forever
M-04 Panthers Bass Plock
M-05 Chloroform Sauna
M-06 Serbian Daffodil
M-07 Naomi Pleen
M-08 Open Foe
M-09 Strangled To Death In A Public Toilet
M-10 Cryogenic
M-11 Brother Killer
M-12 Omni Vignette
M-13 Actual Jewels
M-14 Dead Eyes For Zvlatko / Heaven Theme
M-15 Diamonds Aren't Forever II
M-16 Upward Evaporation
M-17 Hide On The Treads 1
M-18 Hide On The Treads 2
M-19 Hide On The Treads 3


2016年2月22日月曜日

ONEOHTRIX POINT NEVER 「Garden Of Delete」


おいコラ、ロパ公!
Warp移籍ですっかりチョーシコイてる一気に知名度を上げた、ダニエル・ロパーティンの七枚目は2015年作品。
ジャケ絵は自ら手掛けたもの。

前作よりはちゃめちゃ度アップ。
ライヴを頻繁に演るようになってクラウドを意識し始めたのか、本作は割とビートがある。しかもアッパー系の。
また上モノに、やはりクラウドを意識してかEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージックの略)で使われるような扇情的でぺなっぺななシンセ音を多用するようになった。
それとは逆に、ヘヴィメタルちっくなギターをちょぼちょぼトラックに織り交ぜるような、作品の方向性としては理解に苦しむ音色選択センスも聴き逃せない(まるでシュラプネル系のギターヒーローが弾いたかのようなソロもあるぞ!)

その結晶がM-04。
少年の無機質な歌声を主音に据え、チェンバロのような格式高い音色が脇を固め、彼の平常時を表現したかと思えば、やがて音色が歪み、キックが連打され、声が濁り始め……打ち込みブラックメタルばりの狂乱突貫パートに挿げ代わる。
――まるで悪魔に憑りつかれたみたいに。
パーツをぶつ切って密に転換するメソッドを用いる彼だからこそ生めた本作のハイライト。

で、気になるのはそれ以後――いやアルバム全編にわたって、はちゃめちゃ、傍若無人に暴れ狂っているのだろうか? ってトコ。
実はそうでもない。
きちんと通して聴いてよくよく考えてみると、前作で結実した、ザッピングを多用して聴き手の感受性を攪拌し、落ちどころを定めさせない〝脳内ロパーティン劇場〟が手段を多少代えて、淡々と、かつ飄々と再提示されている事実に気付く。
前述のM-04や、剽窃なのにどこか落ち着きないところが如何にも彼らしい〝ロパーティン流EDM〟のM-02やM-06など、本作のアイキャッチにしか過ぎないのだ。
目先のインパクトに騙されては奴の思う壺だ!

こういうアンテナはびんびんに張り巡らせて様々な要素を柔軟に取り入れはするけど、どれも上っ面までで留めておくこの気質、彼の胡散臭さ強固な自信の表れかと思う。
ちなみに本作、コンセプトアルバムらしい。

M-01 Intro
M-02 Ezra
M-03 ECCOJAMC1
M-04 Sticky Drama
M-05 SDFK
M-06 Mutant Standard
M-07 Child of Rage
M-08 Animals
M-09 I Bite Through It
M-10 Freaky Eyes
M-11 Lift
M-12 No Good
M-13 The Knuckleheads (Bonus Track For Japan)

日本盤ボートラは前作とは違いきちっとトラックしているのでまあ、こちらかな……?


2015年7月16日木曜日

JAMIE LIDELL 「Jamie Lidell」


Warpのファンキーソウル兄貴、2013年作の五枚目。

前作ではゲストを多数迎えて拡散志向を打ち出した訳だが、今回は焦点を絞っている。
早くも断言してしまうが、彼の脳内で思い描く音世界は完成したのだから。
自身のクセのある超個性を前面に打ち出し、卓を駆使したにもかかわらず暑苦しさ熱量も情感も伝わる変態濃厚ファンクがアルバム全編で繰り広げられている。
そろそろ世界は、このエキセントリックでスタイリッシュでホットでカリスマティックなジーニアスの存在に気付いた方が良い。
そのくらい彼がネクストレヴェルに達した作品だろうと思う。

さて、本作最大の長所だが、彼自身の声が類稀なるキャラクター性を有していることを自覚して創っている点にある。
低音に渋みがあり、中音に張りがあり、高音に艶がある。全体的にアクがある。
本作はそんなオールラウンドシンガーな彼がオーヴァーダブを駆使して全ての歌を担当している。もうこれだけでおなかいっぱい彼のカリスマ性が存分に感じられようもの。
曲後半で〝俺Featuring俺With俺コーラス隊〟な熱い暑い掛け合いが左右チャンネルに分かれて繰り広げられる、大興奮のM-02。タメの利いた装飾過多なトラックへ向けて、多重俺コーラスが更に覆い被さるM-03。モジュレイターを玩具に、人を食ったようなやさぐれヴォイスで酔っ払い感丸出しのM-06。プリ様リスペクトなねちっこいトラックにも関わらず、第一声で兄貴が来たと思わざるを得なくなるM-08など――今までの彼の音楽性よりも、巧く彼のキャラクター〝声〟を利用したトラックが耳を惹く。
創造に大切な、第三の眼で己を見られている。

俺がトラックを組んで、俺が歌って、俺が編集しているのだから俺じゃない訳がない! と胸を張って言い切れるソロ音楽クリエイターが世界に何人居るのか。当たり前のコトじゃないかと反論されるかも知れないが、虚空を見上げ思い浮かべてみて欲しい。果たして何本指が折れるだろうか。
筆者は三本目くらいで彼の名をコールすることだろう。
『タイトルを付けるのは好きじゃないだけなんだけど、コレが俺の初作品と言って良いから』と語るくらいセルフタイトルがぴったりの作品。まだまだ上がるぞ。

M-01 I'm Selfish
M-02 Big Love
M-03 What A Shame
M-04 Do Yourself A Faver
M-05 You Naked
M-06 Why_Ya_Why
M-07 Blaming Something
M-08 You Know My Name
M-09 So Cold
M-10 Don't You Love Me
M-11 In Your Mind
M-12 I'll Come Running (Bonus Track For Japan)

ボートラM-12はちゃんとトラックになってるものの、あってもなくても。


2015年5月6日水曜日

CLARK 「Clark」


Warpの二枚舌男、クリストファー・ステファン・クラークもとうとう七枚目。2014年作。
アートワークはリミックス盤に引き続き、アルマ・ヘイザー

ここにきて、ようやくセルフタイトルだ。
どうせコイツのことだからアルバムタイトルなんてどうでも良いみたいなダダイズムというか当ブログらしい表現でニカ人種っぽい思想で付けたんだろうと踏んだら、何と総決算的な内容だったので驚いた、初聴の感想から。
彼にしては着地点があまりに真っ当。何か悪いモノでも食べたのかと思った。

臓腑に響く音圧と、おそらくチューバであろう低音金管楽器が唸りを上げるイントロM-01で幕を開けたかと思えば、以降ボトムはおよそ四つ打ち。四枚目に回帰したかのようなシンプルさでキックを四つ並べる。
だが四枚目のようなぶんぶんすっ飛ばす破壊的な面は見られない。むしろシンプルなビートに繊細で浮遊感のある上モノを絡める方法論でアルバムをほぼまとめている――つまり上モノは前作っぽさを残して。前述の低音金管楽器やピアノ、鉄琴などの生音色をちょぼちょぼ用いる点も、その思いを助長させる。お蔭で、作中でアクセントを取るかの如くぽつぽつと割り込むイキの良さそうなトラックですら、どこか落ち着き払って聴こえる。締めのM-13も前作同様、穏やかでちょっぴり不穏なアンビエントトラックだ。
そこら辺で老練した彼の総決算っぽさが垣間見られなくもないが、音響的には根の深い構造が組み込まれているのを見過ごす訳にはいかない。

本作は近年のクラブ系の流行に即し、ダビーだ。
ダビーといっても、音色の加減算と拡大縮小で構築する古き良きダブメソッドを用いて組まれている訳ではない。幽玄な背景音色を垂れ込めたり、一部音色を籠らせたりノイズを塗したりして遠巻きに追いやりつつ、出来た広いスペースの真ん中で主音を奏でつつ、副音をあちらこちらで踊らせる、詐術のようなダブステップ以降の空間処理法だ。現にM-07はCLARK流ダブステップと称して憚らないトラックだ。
この現代的なダビーさが本作のキモだ。前作でもそれっぽさはあったが、世相と巧みに折り合いをつけて自分なりに深化させてみせたのはコレが初めてなのだから、結局は何をしでかすか分からない彼なりに奇を衒っていることとなる。
そうか、そう来たか。

コレを成長と見るか、迎合と見るか、老練と見るかは人それぞれ。
ただ前作でちょっとだけ窺わせた借り物臭さを、間に挟んだミニで修正し、本作できっちり払拭している点を指して、聴き手はどう感じるのだろうか。
筆者的聴きどころは、あちらこちらで瞬く電子音色を歪ませたピアノ音色が切り裂くM-03から、風の強い草原で遠巻きに鳴らされる流麗な長尺ピアノループを軸としたM-04へ進み、やがて曇天となり雷を呼び、力強い四つ打ちキックを取り巻くようにエコーがかった攻撃的な音色が雪崩れ込んでくるM-05の流れ。

M-01 Ship Is Flooding
M-02 Winter Linn
M-03 Unfurla
M-04 Strength Through Fragility
M-05 Sodium Trimmers
M-06 Banjo
M-07 Snowbird
M-08 The Grit In The Pearl
M-09 Beacon
M-10 Petroleum Tinged
M-11 Silvered Iris
M-12 There's A Distance In You
M-13 Everlane
M-14 Treat (Bonus Track For Japan)

M-14のボートラは、BOCみたいなうねうねした古臭いシンセ使いのノンビートトラック。ぶっちゃけ単調だわ、大した余韻もなくフェイドアウトするわで、特に必要は。


2014年9月24日水曜日

CLARK 「Feast / Beast」


Warpのオオカミ青年:クリストファー・ステファン・クラークの二枚組リミックス盤。2013年。
ジャケはアルマ・ヘイザー

〝ごちそう〟と題したDisc-1は座して聴くようなイメージで、〝けだもの〟と題したDisc-2はクラブで踊るようなイメージで選り分けたそうな。
彼的に韻を踏みたかったらしい。(そういや〝Beast Feast〟なんてラウド音楽イベント、あったよね)

で、まあ……あのCLARKだし、容易に予測出来た結果なのだが――
相変わらず原曲を踏まえる気が更々ない。
具体的には、BATTLES流爆走ナンバーのDisc-2:M-02が、タメの利いたデジデジしい触感のトラックに挿げ代わっていたり。Disc-2:M-06に至っては、歌モノなのにヴォーカル音色をハナから無視した上、代わりに自分で歌っていて、ただただ愕然とした。
リミックスをしてくだすっているBIBIOやネイザン・フェイクら友人は、ある程度テメーの原曲を踏まえて己の色を出してくれているのに、この勝手気ままさ。
リミックスをしてくれた友人のトラックは彼にとって〝ごちそう〟で、一切元ネタに配慮しないオマエは〝けだもの〟そのものとちゃうんかい。
いや〝けだもの〟なこの野郎にとって、各クリエイターの捧げてくれた元ネタこそがなによりの〝ごちそう〟なのかも知れない(生贄的な意味で)

ただ、CLARK謹製としか思えないトラックが三十曲・二時間超分詰まっている――それこそがCLARKファンにとって〝ごちそう〟だと考えれば如何であろうか。
しかも彼の音楽には定着化した〝CLARKテイスト〟なんてものが存在せず、APHEXチャイルドと騒がれてた一枚目二枚目期、生音に色気を見せ始めた三枚目期、衝撃のフロアユース化で度肝を抜いた四枚目期、騒がしい上モノを整わない拍で引っ掻き回す五枚目期、生音回帰で(悪)夢見心地な六枚目期――と、各々をくっきり分別出来るコトが本作で更に浮き彫りとなった。
――人の創ったトラックを踏み台にして。(その割には原曲より遥かに凝った創りをしているモノばかりだったりする)
ゆえに、リミックスアルバムを指してこう評すのは不適切かと思うのだが……『未発表曲で編んだコンピレーションアルバム』である、と。

なお、CLARK当人は『コレを機に、もうリミックスしない』とかまたテキトーなその場限りの発言をほざいている模様。
そら(原曲踏まえぬリミックス曲など)、そう(自作のトラックと変わらん)よ。

Disc-1 (Feast)
M-01 THE BEIGE LASERS - Smoulderville (Clark Remix)
M-02 DM STITH - Braid Of Voices (Clark Remix)
M-03 AMON TOBIN - Kitchen Sink (Clark Remix)
M-04 NATHAN FAKE - Fentiger (Clark Remix)
M-05 CLARK - Alice (Redux)
M-06 KUEDO - Glow (Clark Remix)
M-07 BARKER and BAUMECKER - Spur (Clark Remix)
M-08 SILVERMAN - Cantstandtherain (Clark Remix)
M-09 RONE - Let's Go (Clark Remix)
M-10 NILS FRAHM - Peter (Clark Remix)
M-11 GLEN VELEZ - Untitled (Clark Remix)
M-12 CLARK - Absence (Bibio Remix)
M-13 CLARK - Ted (Bibio Remix)
M-14 VAMPILLIA - Sea (Clark Remix)
M-15 PRINCE MYSHKIN - Cold Caby (Clark Remix)
M-16 CLARK - Absence (Switchen On Barker Revoice) (Bonus Track For Japan)
Disc-2 (Beast)
M-01 MASSIVE ATTACK - Red Light (Clark Remix)
M-02 BATTLES - My Machines (Clark Remix)
M-03 LETHERETTE - D&T (Clark Remix)
M-04 CLARK - Growls Garden (Nathan Fake Remix)
M-05 AUFGANG - Dulceria (Clark Remix)
M-06 MAXIMO PARK - Let's Get Clinical (Clark Remix)
M-07 THE TERRAFORMERS - Evil Beast (People In The Way) (Clark Remix)
M-08 CLARK - Suns Of Temper (Bear Paw Kicks Version)
M-09 HEALTH - Die Slow (Clark Remix)
M-10 DEPECHE MODE - Freestate (Clark Remix)
M-11 Mr. BOGGLE - Siberian Hooty / Fallen Boy (Clark Remix)
M-12 DRVG CVLTVRE - Hammersmashed (Clark Remix)
M-13 MILANESE - Mr Bad News (Clark Remix)
M-14 FEYNMAN'S RAINBOW -The Galactic Tusks (Clark Remix)


2014年6月8日日曜日

BIBIO 「The Green EP」


六枚目から、本人お気に入りのM-01をフィーチャーした、2014年作のEP。
EPなので、ボートラ含んでも三十分満たないランタイム。

嬉しい、M-01以外は全て未発表曲。
さて、Mush Records期を思い起こさせるM-01を立てた創りなら、後続の曲もその路線に準ずるのが〝流れ〟と言うモノだ。つまり、未発表曲を詰め込んだ安易な作品ではないと言うコトだ。
さあ、ゆったりと流れる調べに身を任せ、たゆたおう。

あのテレコ音像が強烈なレトロ感を醸し出すM-02(LETHERETTEの片割れとデビュー前に録った音源らしい)、本編の流れを汲む弾き語り曲のM-03と、本編収録曲〝Wulf〟の別ヴァージョンにあたるM-04まではあっさりとした小品。
M-05からようやく本編と言って良い、あの儚くも優しい歌声入りのトラック。終盤は歌が止み、甘いアコギの音色を愛でつつ、くぐもったトーンのビートを併せて締める。
M-06はM-02や04よりしっかりとした構成のインスト。乾いた音のエレクトリックギターや、表・裏の拍を単調に取るカウベルとタンバリン、それとは別個に存在する何となくジャジーなビート――の背後で揺らぐシンセがどんどん幅を利かせてゆく佳曲。
で、ボートラのM-07は各音色に強いフィルターを掛け、まどろんでEPを締める。
そんな流れ。

とりあえず本作が彼の今後の展開を示唆しているとは考えづらい。本人が、M-01を中心に据えるべく手持ちのアーカイブを漁り、相性重視で並べてみた、と語っている通りの内容だと思う。
だからこそ、おかわり盤としてはこのくらいあっさりしてた方が腹八分目で良いかと。
無論、コレをお試し盤にすれば、肝心の本編が気になること請け合いかと。

M-01 Dye The Water Green
M-02 Dinghy
M-03 Down To The Sound
M-04 Carbon Wulf
M-05 A Thousand Syllables
M-06 The Spinney View Of Hinkley Point
M-07 Vera (Bonus Track for Japan)

CDは日本盤のみ(ボートラ付)。輸入盤はアナログのみだが、タイトル通りのグリーンヴァイナル盤なので、得した気分になれればそちらでも。


2014年5月10日土曜日

TIM EXILE 「Listening Tree」


ベルリン在住の英国人:ティム・ショウによる2009年作のEXILE名義(苦笑)を含めて三枚目。
Warp Recordsデビュー盤だが、正確には〝コーンウォールのガリ勉野郎〟マイク・パラディナス(μ-ZIQ)率いるPlanet Mu Recordsとの共同リリースになる。

Planet Mu単独リリースの前作(2006年発表)は、クラブミュージックの極北:ブレイクコアが強いレーベルからということで、音楽的破綻も辞さぬはちゃめちゃな出来だった。
それがもう……ココまで端正な作品を創れるものかと。
きらびやかなメロディの主/副音と重厚感のある背景音を耳一杯に広げ、朗々とした低音が魅力の彼自身による歌唱をフィーチャーし、絶妙なタイム感で組まれるいびつなボトムラインに心踊らされる。
ブレイクコアの名残りは、たまに音色を崩壊させたがったりする部分やら、前述したビート構成のいびつさくらい。

ここで〝ブレイクコアを忘れたカナリア〟と叩くのは非常に偏狭な意見かと思う。
なぜなら彼は幼少期に聖歌隊に所属し、バロック音楽などクラシックの教育を受けた後、ローティーンでクラブミュージックに開眼する異端児だからだ。

それを踏まえて聴けば、この本作のムダなくらい大仰な曲調の根幹が見えてくる。
M-02やM-07の加速/減速を交えたドラマティックな構成。ニューロマ派生かと思われた自身のヴォーカルスタイルや、M-05での高音パートの絡ませ方。静かにアンビエントで締めるかと思いきや、後半でTIM EXILE AND HIS COMPUTER ORCHESTRA化する壮大なM-10など――
自分のバックボーンを今自分が一番楽しめる音楽で小出しに表せるなんて、何と芳醇な音楽環境であろうか。
なお、音響工作も込み入っており、各音色が有機的な粒子となって生き生きと鼓膜を通じ、脳内で自由に弾け回っている。
それは打ち込み派生の上モノに限らない。ワンフレーズごとに細切れにしたヴォーカルや、ビートパーツも例外ではない。取り込んだ生音を加工し倒して別物に精製するセンス(M-05の出だしのループ、明らかに音楽室の人気者:ギロだよね)も特筆すべき点だ。

音色過多を聴きやすく整えるテクスチャ面、良質な音色選択感覚、意外にも有す大衆性など、興味本位の者まで取り込めそうな秀作。

M-01 Don't Think We're One
M-02 Family Galaxy
M-03 Fortress
M-04 There's Nothing Left Of Me But Her And This
M-05 Pay Tomorrow
M-06 Bad Dust
M-07 Carouselle
M-08 When Every Day's A Number
M-09 Listening Tree
M-10 I Saw The Weak Hand Fall
M-11 Carbon Tusk (Bonus Track For Japan)


2014年4月10日木曜日

RED SNAPPER 「Our Aim Is To Satisfy」


倫敦のアブストラクトスリーピース、2000年作の三枚目。

いつも通りと言えばいつも通り。
ドラムのリッチ・サイアーが、たまにターンテーブルで皿をピシュピシュこすっているが。ウッドベースのアリ・フレンドが、エレクトリックベースでスラップを披露しているが。ギターのデイヴ・エイヤーズのギターがあんま聴こえねーぞ、と思ったらキーボードの方に比重を置いてたりするが。ゲストの金管楽器がサックスではなくトロンボーンだったりするが。男声ゲストは前作同様MCデット(M-02、05、08)だが、女声はものすげー胸した二世シンガーのカリーム・ケンドラ(M-03、06)に替わったが。
あえて今までと目立って違う点を挙げるとするなら、より肉感的になった。ダンサブルになったやら。フロアユースになったやら。
それにより、吸い寄せられるようにマイナーチェンジをする個所も出て来る。

まずは高速ブレイクビーツ、人力ドラムンベースを止めてみた。だが元々はミッドテンポでのグルーヴ感が売りのバンドで、その手の曲はアルバムのアクセントに留めていたのだから、特にどうこう言われる筋合いがない。グルーヴ特化と考えよう。
次にシンガーやラッパーを〝音色〟と割り切るようになった。具体的に書けば、頭から尻尾まで意味のある歌詞を歌わせず、ワンフレーズを反復させたり切り張りしたりしている。サンプリング感を出してノリやすくした、と考えよう。
最後に今まで以上にデジデジしい部分も増えた。別に人力に固執している訳ではないので、その割合が若干減っても生っぽさを維持してさえいれば良い訳で。UKテクノ系最高峰のレーベルに所属しているのだから、この流れも致し方ないのかも知れない。

いろいろ差異を挙げてみたが、結論は冒頭の通り。そもそも音楽的土台が揺るぎないバンドなので、何を演っても許容範囲に収まる懐の深さがある。
またバンドとしての土台も、サイアーとフレンドの強力無比なリズムセクションが居れば問題など起こりようがない、安定感もある。
だから! エイヤーズ、頑張ろうよ……。もっと一枚目の時みたいに目立とうよ……。

M-01 Keeping Pigs Together
M-02 Some Kind Of Kink
M-03 Shellback
M-04 Don't Go Nowhere
M-05 The Rake
M-06 The Rough And The Quick
M-07 Bussing
M-08 I Stole Your Car
M-09 Alaska Street
M-10 Belladonna
M-11 They're Hanging Me Tonight


2014年3月28日金曜日

JACKSON AND HIS COMPUTERBAND 「Glow」


御仏蘭西の変態王子:ジャクソン・テネシー・フォウジューが! 八年ぶりに! 帰って来た!! 2013年、二枚目。
今回はカーチャン(ポーラ・ムーアakaバードポーラ)抜き。代わりに英国の奇妙な女性トラックメイカー:PLANNINGTOROCK(M-03)、PLAIDやHERBERTと仲の良いウクレレおばさん:マーラ・カーライル(M-05)、サミー・オスタ(M-01でギター)とアンナ・ジーン(M-07、11)からなるフランスのフォークデュオ:DOMINGOなどが参加。
コレは親離れではなく子離れである。

前作は音色密度のやたら高い切り張り過多ニカを演っていたが、今回も例に違わない。相変わらず一曲に用いる音色の多いこと多いこと――無論、各音色にきちんと目配りが行き届いた巧みなテクスチャで。
ただ、解釈がストレートになったと言うか、ロックのフレイヴァーを入れたと言うか、更にダサカッコ良くなったと言うか……音楽性が幅広くなった。
凶暴なちんこ生命体が次々とグラマラス美女に襲い掛かる! 強烈なPVで股間をひゅんとさせたシングルカット曲M-04を始めとするロック――いや、ニューウェーヴっぽいダサさ紙一重のアプローチは、音楽的変態性の強い彼の彩にすっかり浸透し切っている。はっきり申し上げて、ちょっと前にロック側で流行ったニューウェーヴリヴァイバル連中の付け焼刃っぽさとはモノが違う。
それはやはり、オリジナルのニューウェーヴが模したエレクトロやディスコポップなどの要素を、フォウジューが既にバックボーンとして有していたからに他ならない。

とは言え、そればっかり演るほど先の見えていない男でもなく。
M-05のような荘厳さも、M-07のような物悲しさも、M-09のようなエレクトロポップかと思いきや模造オーケストレーションを用いた勇壮さも、上記の下世話なニューウェーヴ風味も、一枚のアルバムに収めて雑多な感じがまるでしないのは人徳か魔法か才能か。
それとも、もはやおどおど音楽性を探りながら創る時期はとうに過ぎたと言うのか、たった二枚のアルバムキャリアで。(実はデビューから足掛け15年選手だったり)

あれこれ触手(食指ではない)を伸ばしても一切ブレない、ある意味漢臭い一枚。
己も男根も仁王立ち! だが、裏で音色には細やかな配慮を尽くす――コレが音楽的変態紳士のあるべき姿哉。

M-01 Blow
M-02 Seal
M-03 Dead Living Things
M-04 G.I. Jane (Fill Me Up)
M-05 Orgysteria
M-06 Blood Bust
M-07 Memory
M-08 Arp #1
M-09 Pump
M-10 More
M-11 Vista
M-12 Billy
M-13 Junk Love Vision (Bonus Track For Japan)


2014年3月22日土曜日

ONEOHTRIX POINT NEVER 「R Plus Seven」


Software Recordsを主宰する、(ユダヤ系)ロシア移民のアメリカ人:ダニエル・ロパーティンの2013年作、六枚目。Warpデビュー盤。
ジャケはスイスのアニメーション監督(アニメではない):ジョルジュ・シュヴィッツゲーベルが手掛けた1982作のショートフィルム「Le Ravissement De Frank N Stein」 のワンシーンを借用して、ロパーティン自身がデザインしたもの。

音世界はエレクトロニカと称しても憚らないはず。ただ、今まで当ブログで扱ってきたニカ連中とは、音楽性に微妙な隔たりがある。
どう聴いても、クラブでクラウドをノらせるコトを想定してトラックを組んでいない点である。テクノ派生の音楽としては異例の存在だ。
ビートはほぼなく、荘厳に用いる長音と、小気味良く奏でてトラックの進行役を司る短音のシンセ音二種を巧みに和え、そこへサンプリングやら音色チョップやらの装飾を徹底した計算づくではめ込んでいくメソッドから、ハコの熱気を感じない。
ループはあるが、反復の快楽よりも刷り込み目的の意図を強めに感じる。加えて、浮遊音を使おうがゆったりたゆたわせてくれず、ころころ曲を展開――いや、場面を転換させるやり口ではチルアウトも望めない。
この何ともストイックな面、さすがは実験音楽(エクスペリメンタル)上がりの人である。

となると聴き手を置いてけぼりにする難解さの際立った、いちげんさんお断りの高慢な作風かと問われれば然に非ず。
今回、上モノはどれも記譜の出来そうな有機的なパーツばかり。たまに覗かせる普遍的なメロディのクセから、クラシックの素養も感じさせる。メロディを立たせると、トラックが一気に親しみを帯びるので、この手の音楽には良い処方箋だ。
また音色使いも、地味に効いてくるモノから即効性のあるモノまで、流れに沿わせたり断ち切ったり渦巻かせたり芽吹かせたりと、脳内ロパーティン劇場を余すことなく自在に卓で視覚的に再現出来ている。
それでいて、意図したいやらしい破綻も未熟であるがゆえの崩壊もなく、曲/アルバム単位で安心して身を委ねるコトも出来る。

端的に言えば、キャッチーでもあり、歯応えもある。そこら辺の匙加減の絶妙さが、本作最大の長所かと思う。
難しく考えないで、美しくて心地良い音色が匠の技で織り込まれた作品、と思えばそんなに高いハードルでもないはず。

M-01 Boring Angel
M-02 Americans
M-03 He She
M-04 Inside World
M-05 Zebra
M-06 Along
M-07 Problem Areas
M-08 Cryo
M-09 Still Life
M-10 Chrome Country
M-11 Gone (Bonus Track For Japan)

日本盤のみボートラは、間曲に使えそうな一分程度の小曲。要らないと言えば要らないが、投げっ放し感漂うこのシュールな余韻、筆者個人的には嫌いじゃない。


2014年3月8日土曜日

BATTLES 「Gloss Drop」


2011年作の二枚目。
ジャケデザインは(主に)ベース担当のデイヴ・コノプカ。

周知の通り、キャッチーな声ネタやリアルタイムサンプリングなど、バンドの根幹に値するメソッドを齎してバンドを去ったタイヨンダイ・ブラクストン――この大きな穴を、残された三人がどう埋めるかが焦点になるはずだ、聴き手にとって。
結論から断言させてもらえば、彼らはその穴を埋めなかった。
リアルタイムサンプリングはもう、彼らの血肉と化している。声ネタに関しては外から呼んだ方が、人声という至高の音色の幅が広くなる。
こうして連れて来られたのが、チリ出身だがドイツで名を馳せたクラブDJマティアス・アグアーヨ(M-02。ラテン語で歌ってマス)。まだバリバリ現役! シンセポップ英国紳士:ゲイリー・ニューマン(M-06)。イタリアンの双子男子を統べる日本のロリ声お姉さん:カズ・マキノ(M-08。BLONDE REDHEAD)。行動力と企画力だけは一流のスピリチュアルおじさん:ヤマンタカ・アイ(M-12。BOREDOMS)。
実力のある彼らだからこそ誘えた超豪華メンバーだが、明らかに多種多様な音色を求めた結果であることが容易に見て取れる。
ゆえにブラクストンの急な脱退の余波は大してなかったものと思われる、創り手としては。

ただ、聴き手たる我々からすれば、大きな問題がまだ残っている。
前作からブラクストンのソロを削ったものが本作だとするのなら、何となくあの人懐っこい音色使いが欠けているような気にさせられる点だ。
だがそれがマイナスになったとはちっとも思わない。
おそらく今回、メインの上モノ音色はイアン・ウィリアムスの担当かと思われるが、前作でも裏で暗躍していた彼のねちっこい音色センスは後を引くので、表に立とうがまるで問題ない。今までとは別の切り口で解決済みでさえある。
本作を地味、と評価する輩はブラクストンの即効性が恋しいだけだろう、と筆者は一蹴。

看板を失ったからと言って、その店の質が落ちるとも限らない。
コノプカのドライヴ感溢れるベースループを激しくハイプレッシングするジョン・スタニアーのド迫力ビートに乗っかって、ニューマンが朗々と歌う(横でウィリアムスが小賢しい茶々を入れる)M-06のような、衒いはあるけどストレートな曲が平然と切れるようになったのも、彼らが更に好きに演れるようになった証かと。
ただし、次作はかなり難儀するのではなかろうか。何せ、革新性で売ってきたバンドは常に大逃げを打たねば、世論や評価に潰される傾向がある。

もしや『本作を地味』と評価した者は、彼らの中で思ったより本作が〝逃げを打っていない〟コトを危惧しているのやも知れない。

M-01 Africastle
M-02 Ice Cream (feat. Matias Aguayo)
M-03 Futura
M-04 Inchworm
M-05 Wall Street
M-06 My Machines (feat. Gary Numan)
M-07 Dominican Fade
M-08 Sweetie & Shag (feat. Kazu Makino)
M-09 Toddler
M-10 Rolls Bayce
M-11 White Electric
M-12 Sundome (feat. Yamantaka Eye)
M-13 Sundome (Instrumental) (Bonus Track for Japan)

日本盤のみボートラM-13は、ぶっちゃけアイの声ネタを抜いただけのカラオケなのだが、特に必要なかったのが良く分かる代物。
……え? 何が〝必要なかった〟って? 言わせないで下さいよー。(ニッコリ


2014年2月28日金曜日

TYONDAI BRAXTON 「Central Market」


まずはこのタイヨンダイ・ブラクストンという人のバックボーンを知る必要がある。
1978年、NYC生まれ。父はシカゴを根城に大活躍したジャズサックス奏者:アンソニー・ブラクストン
幼少期はクラシックばかり聴かされていたようだが、物心ついた頃には(音楽的)反抗期からか、普通にロックやクラブミュージックへと傾倒していく。
その一方で、ハートフォード大学にてきちんと作曲法を学んでいたりもする。

そんな彼がBATTLES在籍時の2009年にリリースした、単独ソロ名義二枚目。
無論、Warpより。

いきなりだが、本作にBATTLESの曲調を期待しない方が良い。バンドとソロは別物なのに、『思てたんと違ーーう!!』なんてちゃぶ台をひっくり返すのは行儀が悪い。
返す返す申し上げるが、彼はきちんとクラシックの教育を受けた音楽家なのだ。きちんと創り手の人となりを理解せず、少しでも己の抱くイメージにそぐわないと断罪するのは、いつも語っているが絶対に良くない。
その通り、前半四曲はロックですらない。楽団をまるごと呼び、同じようなバックボーンを持つもあえてクラシック側で根を下ろしたケイレブ・バーンズにタクトを振らせた、ブラクストン流のクラシックに仕上げてしまっている。
〝流〟だからして、まんまクラシックをしている訳ではない。そこに彼らしい工夫が随所に込められているのがミソ。
「Mirrored」の初っ端を飾ったあの口笛の音など、BATTLESでも散見された人懐っこい音色使いや、声を加工してオーケストラルヒット(略してオケヒット)を生成したりや、クラシックっぽくないビート感と装飾音をセオリー無視で忍ばせたりや、既成の規制を取り払った自由な音楽を期成しようと心血注いでいるのが十二分にも伝わる。

ほら、そろそろ、(思てたんと違うけど)許せてきたでしょう?

そこで後半、ぐいっと聴き手を引き寄せる。
ドローンアンビエントのM-05を経たM-06では軽快なビートの背景にヴァイオリンを垂れ込め、歯切れの良いギターや朗々とした歌声を立てていく、逆にクラシックフレイヴァーを持ったBATTLESでも演れそうなヘンテコロックを平然と。M-07も生オーケストラなど絡ませつつ、聴き手に落としどころを悟らせない変態曲。
これで巧く大団円。こーゆーの求めてたんでしょ? と言わんばかりに。
(日本盤のみボートラは、声ネタを重ねていくブラクストンが得意な手法でのノンビート曲。コレでも良い締め)

『あー、やっぱこの人は別次元だなー』と思わせる何かを、彼は持っている。
だが、『一所に収まりそうもない奴だなー』という感じも、大いにする。

M-01 Opening Bell
M-02 Uffe's Woodshop
M-03 The Duck And The Butcher
M-04 Platinum Rows
M-05 Unfurling
M-06 J. City
M-07 Dead Strings
M-08 Ex Cathedra (Bonus Track For Japan)


2014年2月26日水曜日

BATTLES 「Mirrored」


スーパーマスロックバンド、満を持してのデビューフルアルバム。2007年作。

パワー、タイム感、グルーヴ感の三拍子揃った、クラッシュシンバルの異様な高さも魅力なシーン屈指の凄腕ドラマー:ジョン・スタニアー。
経歴からすると四番目のメンバー扱いになってしまうが、ここぞという場面でごりっとしたベース音を聴かせ、存在感を誇示するデイヴ・コノプカ。
遊びさながらに様々なへんてこ音色を無責任に五線へと置いていく、お茶目なギターのお兄さん:イアン・ウィリアムス。
最年少ながらクラシックの素養を持つマルチプレイヤーかつ、ヴォイスパーカッションも得意とする全方位音楽野郎:タイヨンダイ・ブラクストン。
――この通り、センスと技量と名声が伴った近年稀に見る存在の彼ら。まだまだ小難しいとか、スカしているとか、偏見を持たれている方も居るような気もする。
それらとはほぼ真逆の存在なのに、と筆者は思う。

確かに展開がごろごろ変わって掴みどころのないM-06は難解なのかも知れない。
だがそういう曲はこれくらいなもの。しかもその曲順は〝In〟で始まり〝Out〟で閉まるアルバムのど真ん中。おまけに曲タイトルが七色の色彩を持つ〝Rainbow〟。
あと他の曲は四人の感性に基づいて、それぞれの音を重ね合わせるモノばかり。
――え? それが難解なんだって? 聴き手のこっちもあまり深いコト考えず、心地良い音色の絶妙な絡みを漠然と楽しんでいれば良いだけなのに?

それを今回、上手に伝えやすく提供している妙薬が、全楽器界最強の音色である人声。主にブラクストンが担当する声ネタや歌である。
もヴォイパなどをさり気なく使ってきた訳だが、彼らはインストバンド、まさか大々的に歌など使う訳がない邪魔なだけだろ、と思わせておいて先行シングルM-02をズドン。人を食ったようなロボ声ヴォーカルをフィーチャーした激ポップなキラーチューン。
その後も、声楽をバカにしてるとしか思えない素っ頓狂な裏声を主音に据えた、続くM-03。ノリだけで発したへなちょこな歌紛いが、中盤以降のダイナミックなバンドサウンドと巧く対比されているM-04と、効果的に声/歌が使われている。
無論本人たちからすれば、難しく考えず、ただ面白いから、カッコイイから、気持ちイイから演ってみよう! の快楽原則に則っているだけのはずだ。

何せこの手のバンドにとって、声も歌も音色パーツに過ぎないのだから。

だが我々大衆は歌合戦やらのど自慢やらカラオケやら、歌を至高の音楽表現として身近に接している。誰もが音楽の授業では口を大きく開いて合唱する。
それを逆手に取ったのか、茶化しているのか、大衆受けを狙ったのかは分からないが、より一般的な表現を大々的に用いて音色の魅力を伝えた結果ポップとなった、他とは一味違う奇妙な図式のアルバム。
まるで数学(Math)の証明問題のようだ。

M-01 Race: In
M-02 Atlas
M-03 Ddiamondd
M-04 Tonto
M-05 Leyendecker
M-06 Rainbow
M-07 Bad Trails
M-08 Prismism
M-09 Snare Hangar
M-10 Tij
M-11 Race: Out
M-12 Katoman (Bonus Track For Japan)

日本盤のみボートラのM-12は二分弱のおまけ感ありありなドローンアンビエント曲なので、特に聴く必要性もないかと。


2013年7月26日金曜日

BOARDS OF CANADA 「Tomorrow's Harvest」


Warp以前の自主音源はカウントしない不文律なので、四枚目。2013年作品。

あらかじめ記しておこう。本作は地味である。
ボーカナBOCはああ見えてキャッチーだ。聴かせたい音色を印象的な鳴らし方で、副音がそれを盛り立てる形のテクスチャで、トラックを組んでいる。
例えばヴィンテージっぽいアナログシンセだったり、幼児のはしゃぐ声だったり、アンプ直結のギターだったり。
本作は主音が魅力不足、とはこれっぽっちも思わないが、そこまでフィーチャーしたテクスチャではない。
しかもBOCがBOCたらしめていた、幼児の声ネタという反則に近い主音使いを控えた。だから、追憶に浸らせるあの音世界も減退した。前作で導入し、大好評だった生音との折衷策に至っては一切排した。
ゆえに地味扱いを受けている。

何だか筆者は解せない。
元々派手な作風じゃないのだから、地味なら地味で良いのに。早くもM-02から、出し殻のようなキックと、ほんのり鳴ってる背景音で引っ張るような地味ーィなトラックを当ててくる時点で〝キャッチー〟なんて似合わない言葉を鼻で笑う構成だろうと。
しかもこのトラック、中盤あたりからじわじわ音色が増えてくるのだが、ビートがさり気なくディレイする、ひっそり新機軸でちょっぴり今風のトラックだ。
またM-04では、単調なハンマービートへ各種浮遊音を惜しげもなく散らす、今までちょこちょこ演ってきたポリリズミックトラックの総決算的出来栄えな秀曲だ。
このように、音色の編み方――つまりテクスチャ面を強化した印象が強い。
言葉は極端だが、絶対的に音色を聴かせていたのを相対的に聴かせる方向へと切り替えたのだから、地味に感じるのも致し方ない。

ただ、全編籠もった音像と、BOCらしい古臭いシンセと、概ねまったり刻むブレイクビーツで構成された音世界は相変わらずブレない。
それなのに、本作で追憶のセピアカラーを減退させた結果、荒涼とした大地で打ち捨てられた基地跡のような情景が音から想起されるのは意外だった。今まではもっと人の息吹が感じられたのに。
その一方でM-15のような、レトロフューチャーなサスペンス劇で使って欲しい、渋くてカッコ良いトラックも忍ばせてある。

おや? 愚直で不器用な音世界のイメージがあるBOC、意外と何でも出来そうじゃない。なら次は元同僚のようにサントラ、やってみようか。
元々音が映像的だし、ユニット名の由来があるショートフィルムからだし、イケると思うんだけどなあ。

M-01 Gemini
M-02 Reach For The Dead
M-03 White Cyclosa
M-04 Jacquard Causeway
M-05 Telepath
M-06 Cold Earth
M-07 Transmisiones Ferox
M-08 Sick Times
M-09 Collapse
M-10 Palace Posy
M-11 Split Your Infinities
M-12 Uritual
M-13 Nothing Is Real
M-14 Sundown
M-15 New Seeds
M-16 Come To Dust
M-17 Semena Mertvykh


2013年6月10日月曜日

BIBIO 「Silver Wilkinson」


ステファン・ウィルキンソン本人によるデザインの、色取り取りのビビオ(毛針の一種)が舞う秀麗ジャケが印象的な、2013年作の六枚目。

相変わらず〝Everything By Stephen James Wilkinson〟状態。
だが、M-01から聴き手の首を傾げさせる。三枚目まで所属していたMush Records時代の〝追憶的なフォークサウンド〟の音像が飛び出して来るからだ。
『いやいや、のっけだからイントロ扱いでしょ。良くある手法だよねー』と高を括っていたら、続くM-02も追憶フォーク。『今更、あの方法論で演り残したコトなどないでしょうに』なんて思っていると、インターリュードっぽい流れを挿み、やはりとろーんと始まるM-04の後半でようやく、Warp期に導入された古臭いデジタル音色が。
そこから一気に耳慣れたWarp路線へ。
続く、晴れの日に庭で創ったM-05など典型の曲。M-07はCOMMODORES〝Just To Be Close To You〟をサンプリングし、地味な出だしながらもヴォーカルチョップしまくり始めてからが本番のブレイクビーツチューン。M-10は彼を発掘したBOARDS OF CANADA最初期の影響が強い、シンセが幅を利かすインストナンバー。

序盤のMushMushした雰囲気は何だったのか。

Warp移籍以降、大手インディーらしい環境の良さから、もうレアでロウな音質で録る必要性がなくなったと思っていた、筆者は。
ややや、そこで今回。ウィルキンソンは自宅にあるレンガ造りの物置へ機材を持ち込み、風雨吹き荒ぶ中で数曲の録音を敢行したという。アルバムの随所で、雨音という自然の齎すグリッチが聴こえてくる仕掛けだ。
あえて制限のある環境で録られたこの音像、強烈に追憶を――いや、Mush期を呼び起こさせる。同時に良好な音質のWarp期っぽい曲と、上手く表裏一体になっている。
コレは〝原点回帰〟などではない。Mush期とWarp期の折衷策だ。

アルバムはMush路線なアコギの弾き語りで(日本盤はそれと連動させた、幽玄なアカペラの小品で)優しくそっと閉じる。
意図さえ分かれば、もう安定のBIBIO謹製レトロフォークニカ。ほっとするね。

M-01 The First Daffodils
M-02 Dye The Water Green
M-03 Wulf
M-04 Mirroring All
M-05 A Tout A L'heure
M-06 Sycamore Silhouetting
M-07 You
M-08 Raincoat
M-09 Look At Orion
M-10 Business Park
M-11 You Won't Remember
M-12 But I Wanted You (Bonus Track For Japan)



2013年4月16日火曜日

JAMIE LIDELL 「Compass」


おれたちのジェイミー兄貴がな、な、何とあのBECK全面協力の下、創った作品。2010年四枚目。もちろんWarpより。
BECKだけでなく、レーベルメイトでブルックリンのバンド・GRIZZLY BEARのクリス・テイラーだって全面参加なのを忘れてもらっては困る

おっとなー! な路線の前作よりも拡散志向。
いつも通り、お得意のヒューマンビートボックスを駆使したM-01も、しっとりファンクネス曲のM-03も、PRINCE様リスペクトのディフォルメファンクチューン:M-04も、パワフルナンバーのM-07もある。
ただやはり、M-05のようなシンセを巧く使った古臭いポップセンスの曲(蛇足ながら、東京生まれの女性米国人シンガー:ニッカ・コスタ参加)や、アコギとオーケストラとカスタネットに後半のトライバル風ヴォーカルが異国情緒と哀愁を誘うM-10や、まんまBECKがメインを歌っても(コーラスではテイラーと共に参加)おかしくないM-13や、ラストに相応しい厳粛なM-14など、今までとは毛色が違うトラックも外部のインプットあってのこと。
また、活きの良いファンクナンバーにおける、女性がおもわず腰をくねらせてしまうであろうぶっといグルーヴ感も今までに欲しかった部分であり、彼がこの路線で更に上昇する上で不可欠な要素を取り込んだことになる。

この通り、既存のスタイル、新風を巻き込んだ部分、どちらも美味しくマイルドブレンドされている上、どの曲も粒揃いでおしなべて質が高い。
今まで互助関係だったMOCKYと別の道を歩み、活動拠点をパリからNYCに変え、新たな一歩を踏み出したリデルにとって良いターニングポイント作となったことだろう。
無論、彼自身のアクの強さ個性が、他の誰と組んでも当たり負けしない強靭さを有していた証明にもなっている。
そろそろ、UK変態ファンクアイコンとしての兄貴を称えるべきでしょうよ!

……いや、作中のところどころ、BECKの書く歌メロと自身のキーが合わず、声が出切ってない部分も……あったりね。
それは彼が、まだまだ上を目指せるアーティストだから、ってことデスヨ!?

M-01 Completely Exposed
M-02 Your Sweet Boom
M-03 She Needs Me
M-04 I Wanna Be Your Telephone
M-05 Enough's Enough
M-06 The Ring
M-07 You Are Waking
M-08 I Can Love Again
M-09 It's A Kiss
M-10 Compass
M-11 Gypsy Blood
M-12 Coma Chameleon
M-13 Big Drift
M-14 You See My Light
M-15 Black Hole Man (Bonus Track For Japan)

日本盤のボートラM-15はココだけでしか聴けないが、テキトーに組んだいい加減な曲なので特に頓着する必要はナシ。輸入盤で十分。
それよりもUK特別盤には:
M-01 I Turn It Around
M-02 Lies Inside
M-03 Your Sweet Boom Dub
M-04 Pat's Compass
M-05 Lies Inside Cold Dub
:と、本作メイキング映像が収められた二枚組となっている。けどタイトル見る限り、M-03以降が今までの日本盤に付けてきた押し付けボートラ臭いんだよなあ。





2013年2月14日木曜日

BIBIO 「Mind Bokeh」


お茶目な好漢、ステファン・ジェイムズ・ウィルキンソンの2011年、五枚目。

Warp二作目のオリジナルアルバムは、前作よりも更にデジデジしく、間曲扱いのM-09と恒例の締めインストM-12(とボートラM-13)以外は全て歌モノだ。
だが〝デジデジしさ〟はあくまで〝音色〟という名のパーツ。十七種もの楽器を自ら演奏した〝音色〟も等価で卓編集していく手法は、何らMush時代と変わっていない。しかもアートワークまで自身が手掛けているのだから、俗に言う〝Everything By Stephen James Wilkinson〟状態。
一方で曲調は、米男性R&Bシンガーに提供したいくらいお洒落な(のに、ところどころクセのある加工を忍ばせた)M-03から、小気味良いエレクトリックギターをフィーチャーしたデジタル風味ロック曲のM-06まで、冒険したいのにさせてくれなかった(としか思えない)Mush期の鬱憤を晴らすかのような音楽性の拡散ぶり。

やはりこの男も〝一所に納まりたがらない〟ニカ気質だ。

ただし、好きに演らせれば必ず面白いモノを創ってきてくれる人だけど、誰かさんと違って自分の本分を分かっている人なので、毎度毎度作風をがらりと変貌させるような暴挙は起こさないはず
こちらは何の心配もせず、雛鳥のように口を大きく開けて彼のリリースを待つだけで毎回美味しい思いが出来る安定株だ。
ならば優等生なのかと思いきや、ビートを作為的に大モタりさせたり、なぜかスクラッチを模した音をトライアングルで出そうとしたり、子供のように牛乳瓶やワイングラスや酒瓶をちんちん鳴らしたり、オーソドックスな洋風楽器ばかり用いている中でビリンバウ(弓に瓢箪つけてびんびん弦を弾くブラジルの楽器)だけぽつんと導入してたりと、落ち着きがない。
彼の人柄が偲ばれる。

本作はイングランド中部・ウルヴァーハンプトンのテラスハウスにて宅録された。
インナーに『(うるさくして)近隣住民のみなさん、すまんな』とクレジットする彼は本当に憎めない奴だ。
(常に良い作品を提供してくれれば)ええんやで。

M-01 Excuses
M-02 Pretentious
M-03 Anything New
M-04 Wake Up!
M-05 Light Seep
M-06 Take Off Your Shirt
M-07 Artists' Valley
M-08 K Is For Kelson
M-09 Mind Bokeh
M-10 More Excuses
M-11 Feminine Eye
M-12 Saint Christopher
M-13 Vertical Helical Stan (Bonus Track For Japan)


2013年1月24日木曜日

BATTLES 「EP C / B EP」


遅っそ! 今更かよ!
HELMETのジョン・スタニアー、DON CABALLEROのイアン・ウィリアムス、LYNXのデイヴ・コノプカ、ソロ活動をしていたタイヨンダイ・ブラクストンによるスーパーマスロックカルテット、2006年作・二枚組編集盤。
詳細は、Monitor Recordsより発売された「EP C」Dim Mak Records「B EP」へそれぞれ、Cold Sweat Records「Tras」を割り振り、例のWarpで発売したもの。

BATTLESは珍奇なバンドだと思う。
〝反復の快楽〟なる魔物が、音楽には棲んでいる。演奏者ならリフ/聴き手ならループ、という反復音をひたすら演り/聴き続けるとあらどうでしょう、頭から脳汁ドバーときもちよくなっちゃうアレ。
彼らはプレイヤーなのだから演奏でそれを演れば良いのに、しない。例えば八小節くらいの演奏をシーケンサーか何かでリアルタイムで録り込んで、後はキーをぽちっとな。酷い時になるとたった音符一音だけのために録り込む。
フロント三人がそう楽(!?)するのとは逆に、シーン屈指のドラマー:スタニアーはひたすら人力で、細密かつ絶妙なタイム感と粒の揃った恐ろしい手数のビートを70年代の真面目学生のような服装で、まるで顔色を変えず叩いているのだ。
何とまどろっこしい、非効率なシステムだろうか。

だがコレ、よくよく考えると逆転の発想からくる妙手である。
ビートをループさせると演奏中に手心が加えづらく、応用が利かない。一方、上モノをリアルタイムでサンプリングすることで、気持ち良いフレーズをプレイヤーが感性の趣くままに抜き・挿し・重ねるコトが出来る。
このシステムは演奏者の自慰行為とは相反する、聴き手側視点の快楽だと思う。
ただし、ドラムには御柱となれるほどの強烈なビート感覚が要されるわ、フロントメンバーには臨機応変に他のメンバーとの調和を取っていく紙一重の鋭いセンスが試されるわで、安易に真似ると痛い目に遭うこと受け合い。

さて本作は、これでもまだ〝前夜〟的な雰囲気。後に獲得する奇妙なポップセンスはまだそれほど表れていない。
だが上記の〝リアルタイムサンプリングと超絶ビートのアンサンブル〟から繰り出される何でもアリ精神は既に完成されており、如何にも彼らっぽい曲に、成り行き任せで牙を剥くドローン曲やヒューマンビートボックスに一味加える曲などを、平然とアルバム中で共存させて聴き手を煙に巻いていく。
それはもう、『俺たちが一音出したとたんにBATTLES!』と言わんばかりに。

Disc-1 「EP C」
M-01 B + T
M-02 Uw
M-03 Hi / Lo
M-04 Ipt-2
M-05 Tras 2
M-06 Fantasy *
M-07~M-15 Untitled *
Disc-2 「B EP」
M-01 Sz2
M-02 Tras 3
M-03 Ipt2
M-04 Bttls
M-05 Dance
M-06 Tras *

*印のトラックが、件の「Tras」収録曲。
蛇足ながらDisc-1のM-07から15は無音――かと思いきや、打ち込みのキックを一発ずつ録ったもの。何だか変な余韻。


2012年12月30日日曜日

BIBIO 「The Apple And The Tooth」


ステファン・ウィルキンソン、2009年リリースラッシュの掉尾を飾る編集盤。
アートワークは彼自身によるもの。

M-01から04までは未発表曲――いや、新曲。このクォリティをアウトテイクにするなんてバチが当たる! くらいイカした四曲。
曲調の路線は当然、「Ambivalence Avenue」と同系統。生音とブレイクビーツの素朴な絡み。ただしM-04はかなりデジデジしい加工が施されており、以降の作風の方向性を示唆している――なんて後出しの深読みも可能。
筆者としてはM-03の、ひたすら安定しない拍を挟むワイヤーブラシが気になって仕方がない。

M-05からはリミックス。CLARKが原曲をほぼ無視して「Totems Flare」路線の落ち着きないキックでかっ飛ばし、前述のデジデジしい締め方を巧く引き継ぐ幕開け。自身のラップ風声ネタまで挿入しているくらいだから、大・大・大好きなビビ夫たんのため、彼なりに相当気合入っていると思われる。おおきもいきもい。
とは言え、こんなはちゃめちゃリミックスを渡す鉄面皮はコイツだけ。後はきちっと原曲の良さを自分なりに翻案する空気を読んだ仕様。人選は地味だが、後にNinja Tuneで花開く紆余曲折の男・ESKMOなど、今後のニカシーンを担う面子を揃えたと思う。
中でも個人的に注目したいのがM-09、フィンランド出身のクウッカ兄弟。「Ambivalence~」でも一・二を争う叙情的なトラックを、自身らの弾く楽器と絡めて感傷的に仕上げる長所特化の好リミックス。
それに負けじとウィルキンソン自身のM-12も、寂寥感溢るる弾き語り風の原曲よりも音色を増やして更に目頭を熱くさせるメロメロ改変。
コレでアルバムを締めるのはずるい!

この通り、企画盤だからと侮れない一枚。「Ambivalence~」だけしか聴いていないのならコレも是非。
リミックス盤って良いよね。視野が広がる気がするよ。

M-01 The Apple And The Tooth
M-02 Rotten Rudd
M-03 Bones & Skulls
M-04 Steal The Lamp
M-05 S'vive (Clark Remix)
M-06 Sugarette (Wax Stag Remix)
M-07 Dwrcan (Eskmo Remix)
M-08 Lovers' Carvings (Letherette Remix)
M-09 Haikuesque (The Gentleman Losers' Whispers In...mix)
M-10 All The Flowers (Lone Remix)
M-11 Fire Ant (Keaver & Brause Remix)
M-12 Palm Of Your Wave (Bibio Remix)


2012年12月16日日曜日

LFO 「Sheath」


もはや某妖しいババァの片腕と化しているマーク・ベルのメイン活動はこっちですよ!
2003年作、三枚目。相方:ジェズ・ヴァーレイと袂を別ち、ソロプロジェクトになってからは初。(アルバム単位のリリースがある他ソロ名義としては、よりクラブ志向のSPEED JACKがある)
つか、さーんーまーいーめ! 1988年活動開始なのに、たった! 

このユニットのもはや代名詞と化しているブリープテクノ。〝Bleep=ブザー音〟というコトで、無機的な音色を何の衒いもなく織り交ぜるものぐさな潔いジャンルの総称だが、本作もきっちりその路線を堅持している、と早くも断言しよう。
ただ、M-02、04、08(と、ボートラM-13)のような、今までにないほど尖がり猛ったトラックがあるのも見逃せない。更に付け加えるならば、テクスチャも現代的な工夫が成されている上、素直にビートを四つ打たず、常にひとひねりが加えられている。
無論、デビュー作から即、結果が伴った彼(ら)が同じようなコトをしたいだけなら、作品を頻発してとっとと散っているだろうし。こうして初アルバムまで三年→五年後→七年後と緩やか過ぎる活動を続けている以上、進化はもはや責務。
とは言え丸ごとアップデートしていたら、ヴァーレイ不在でLFOの金看板を背負う必要性がない訳で。そこかしこに微笑ましささえ覚える、今となってはちょっぴりダサっちい音色使いが残されており、そこに老舗の味わいを堪能出来るはず。
また、無機的な音色だけでなく、有機的に聴こえる柔らかいトーンの音色を無機的に用いて自らの土俵に立たせるやり口もならでは。
個人的にはM-11の、優しい音色使いで嫌味のないたおやかな締め方が堪らなく好きだ。(もちろん、M-12を経て13で騒がしく終える日本盤の流れだって悪くない)

時流に踊らされず、巧くそれを取り入れつつも自我は保つ。ベルはそこら辺の匙加減を熟知した、クレヴァーな創り手だと思う。
だからさあ……ねえ、ベルさん? コレから早、十年経とうとしているけど……その後のアータはどのような聴かせ方でLFOの看板を守ってくれるのさー? (チラッチラッ

M-01 Blown
M-02 Mum-Man
M-03 Mokeyllps
M-04 Snop
M-05 Moistly
M-06 Unafraid To Ligner
M-07 Sleepy Chicken
M-08 Freak
M-09 Mummy, I've Had An Accident...
M-10 Nevertheless
M-11 Premacy
M-12 Millionaire Dogs (Bonus Track For Japan)
M-13 Butterslut (Bonus Track For Japan)