2015年7月8日水曜日
SAO PAULO UNDERGROUND 「Tres Cabecas Loucuras」
今度は思ったより真っ当だぞ!
流離のコルネット吹き:ロブ・マズレク大将率いるブラジリアンジャズカルテット(ちゃんと裏ジャケにもう一人居るから大丈夫。仲間外れじゃない!)、2011年発表の三作目。
大将以外のメンバーは前作より固定。一枚目から組んでいるマウリーシオ・タカラ、ロック上がりらしいヒカルド・ヒベイロ、すっかりブラジル移転後の大将作品常連と化しているギリェルメ・グラナードの三太鼓叩き。
だが本作は、前作での三太鼓vsコルネットという妖しい図式に拘らず、より多角的なブラジリアンジャズを標榜している。ドラムをヒベイロで固定し、残りの二太鼓がカヴァキーニョ(ブラジルのウクレレみたいなの)やキーボードのような和音楽器も兼ね、ゲストにジョン・ハーンドンやジェイソン・アダシェヴィッツらを迎えることで、色鮮やかになった。
もう一度書くが、前作がアレ過ぎたお蔭で本作は一聴するに真っ当。音質もクリアだし、ビートを一本化することで曲が整頓されたのも大きい。
もちろん大将のコルネットも絶好調。M-02のブリープノイズまで織り交ぜてのサウンドチェックっぽいアレで聴き手に肩肘を張らせる出だしから、This Is 大将! な金管楽器の高らかな鳴りで各音色を統べるところなど秀逸。まるで大将が譜面台を叩いて総員に開始を促す指揮者のようだ。
また、M-04ではキコ・ディヌッチを迎えてのアンニュイなボサノヴァナンバーも披露。無論、初のヴォーカル入り。後半よりロマンチックに入る大将のコルネットがこれまた絶品。
おおゥ、真っ当……!
ただそれは薄皮一枚の見栄え良い外身。内側は相変わらずえげつない。
編集編集アンド編集の異端ジャズなのは相変わらずだが、主音すら情け容赦なく卓で歪ませる苛烈なエフェクトは少々控え気味。その一方で、どの曲も数多の音色が蠢いていて、妖しさは感じられる。だがそれだけではない。
実は始終音が揺れている。
一曲中のどれかの音色が左右連続パンされ、ふやけている。副音だけでなく、ヴォーカルや大将のコルネットといった主音級さえもその標的たりうる。
ヘッドフォン装着でその音を追っていると、ちょっとした妖しい思いが出来てしまい、困る。
大将はシカゴに残ろうがブラジルへ行こうが、あくまで気持ちイイ音楽を創ることに余念がない、妖しくも一本貫いたかっけーオッサンだ。
なお、後に大将は本作参加のタカラ、グラナードにアダシェヴィッツ、ハーンドンをピックして、その名もロブ・マズレク八重奏を立ち上げる。
そういう意味でもコレは重要作。麻薬にも良薬にもなる妖しい処方箋。
M-01 Jagoda's Dream
M-02 Pigeon
M-03 Carambola
M-04 Colibri
M-05 Just Lovin'
M-06 Lado Leste
M-07 Six Six Eight
M-08 Rio Negro
2015年7月2日木曜日
TUSSLE 「Kling Klang」
サンフランシスコの個性派四人組、2004年発表のデビュー作。
レーベルは、USがGROWING、BLACK DICEから、ISIS、EARTH、HARVEY MILKまで居た、ニュージャージーのTroubleman Unlimited。
EUが地元の英雄:JAGA JAZZIST周りから、ネナ・チェリー、ビョルン・トシュケ、にせんねんもんだいまでひしめく、ノルウェイはオスロのSmalltown Supersound。
日本でのP-Vineが真っ当に見える不思議。(いや、ココも、十分、妖しいんだけど)
何が〝個性的〟なのかと言えば、そのバンド編成。
まずはベースありき。音像のど真ん中にふてぶてしく居座り、指弾きの太くてねちっこいベースラインでファンキーに存在感をアピールする。何とコレが主音。
次にドラムだが……何と二人居る。シンプルでノリやすい四つ打ちちっくなミニマルビートでボトムを固める一方、装飾音色をも担っている。しかも双方のキャラ付けも出来ており、片方はクラベスやカウベルのような〝楽器〟。もう片方はビン・バケツ・自転車のホイールのような〝楽器じゃない何か〟。しかもその両者がシンクロして叩くのではなく、キック・スネア・ハイハットというビート根幹パーツをあえて各々で割り振り、後は件の装飾音色をお互いの感覚任せで乗せていくユニークなスタイルを執っている。
最後の一人はギターやキーボードのような和音楽器でしょう! と思いきや、何とサンプラー。曲の飾りにしかなり得ない電子音っぽいワンショットやループ、ドラム二人が叩き出したビートや装飾音を、エフェクターでエコー処理して耳のあちこちへと忙しなく飛ばす、ダビーな音遊びを担当。よって、バンドの最終ラインを統括しているのはココ。
メロディ? ああ、もしかしてそれ、俺の担当かなあ……と、首を傾げながらベースが手を挙げるくらい普遍的な要素排除。
言うまでもなく、もう一つの普遍的な要素・ヴォーカルもなし。声はサンプラーに取り込んだワンショットくらい。純然たるインスト。
これだと何だか小難しそうな音出してそうだな、と思われるかも知れない。だが実際聴くと、そうでもない。むしろ取っ付きやすく思える。
ミニマルなビートと、運指が良く動くベースライン。そこへエフェクター掛かった各種装飾音がサイケちっくに音像全域で瞬く――ディスコちっくで、ドイツ産サイケ音楽〝クラウトロック〟ちっくで、ダビーである、がゆえにポストパンクちっくでもある――彼らの一種独特な折衷音楽を自然と楽しんでいる聴き手がそこに居るはずだ。
それもこれも、無駄を一切省いて各要素の重要部分だけを抽出し、彩り豊かな曲に仕立てられる卓越したセンスが織りなす業だろう。
なお、本作の録音技師はM-03、07、09がNeurot Recordings周りで暗躍するサンフランシスコのデズモンド・シェイ。M-01、02、04、05、08、11はかのへんてこハードロッキンテクノバンド・TRANS AMのギターとか弾いている人:フィル・マンリー。
なるほどねい!
M-01 Here It Comes
M-02 Nightfood
M-03 Eye Contact
M-04 Ghost Barber
M-05 Comma
M-06 Disco D'Oro
M-07 Decompression
M-08 Moon Tempo
M-09 Blue Beat
M-10 Fire Is Heat
M-11 Tight Jeans
日本盤は未発表音源の:
M-12 Sometimes Y
M-13 Untitled
:を追加収録。
EU盤はM08~10がなく、M-11が08になり、以下:
M-09 Eye Contact (Version)
M-10 Here It Comes (White Label Mix)
M-11 Windmill
M-12 Windmill (Soft Pink Truth Disco Hijack)
M-13 Don't Stop (Stuart Argabright Remix)
:と、EPのc/wを集めた仕様となっている。ジャケも差し替え。
ご購入はお好みに合わせて。
2015年6月30日火曜日
SOONER 「Scale Of Rime」
ウェブデザイン会社を経営する可児瑞起、CAELUMの塚原幸太郎からなるニカユニット。2009年作。
ジャケは無論、可児が手掛けている。
ユニットの主導権は一日の長がある塚原が握っているのかと思いきや、彼の役割は主に音色の提供(M-13の『はい向かってー、右!』という声ネタループは塚原の肉声かも知れない)。テクスチャを組んでいるのは可児なので、CAELUMとはまた違った感覚が味わえる。同時に、テクスチャ作業が地味にトラックの彩を左右しているのが良く分かる。
塚原らしい可憐で美しい上モノが楽しめ、CAELUMよりも聴き心地爽やかな音世界が当ユニットの特徴だ。
で、肝心な可児のマニピュレイターぶりだが……なかなかどうして堂に入っている。しっかり音空間を把握して組まれ、鳴らし方に音の快楽原則を忍ばせるゆとりがあり、各音色の整理も行き届いている。ビート構成もCAELUMと同様に細かく刻むタイプだが、きちんと差異が感じられる。
要らぬ情報がなければ『本業持ちの余暇』と揶揄する声も出まい。
ただ、くど過ぎる音色チョップや、聴き手への効果が薄い無意味なエフェクト、洒落っ気で持ち込んだっぽい唐突なエレクトロ風味など、デザイナー上がりらしい『一手間加えて作品をより向上させよう』とする作業が多少空回りしているような気がしなくもない。
ただその違和感とやらも、要らぬ情報さえなければこのように難癖として列挙されているかどうか疑わしい。
ニカ人種が匿名性を堅持したがる理由が何となく分かる。
結論は、几帳面できっちり質の高い日本産ニカ。
こういう手堅い作品は意外とリピート率が高い。
M-01 Clavier Montage
M-02 Sparkling Swallow
M-03 Fuzzy Sun
M-04 Delta
M-05 Alliance
M-06 Presse
M-07 Billions Of Galaxies
M-08 Blurred May
M-09 Half A Mile Reverse
M-10 Wanderer
M-11 Resistless
M-12 Two Shades Of Yellow
M-13 Take Ya Shoes Off
2015年6月28日日曜日
LAL 「Warm Belly High Power」
カナダはトロント出身の女性ヴォーカル+男性トラックメイカーデュオ、2004年作・二枚目。
音世界をド直球に説明すると、カナダ産のブリストル系アブストラクト――そうそう、トリップホップ(笑)。レゲエやダブを血肉とした、薄暗いブレイクビーツ。
いや、そこで『なーんだ、典型的トリップホップ編成の没個性出遅れ組(デビューは2000年)かー』と流してしまうのは、ちと了見が狭い。そもそも今までこのブログで紹介してきた男女アブストラクト系デュオはどれもこれも曲者ばかりだったではないか。
毎度書くが、良い音をくださる人々を型にはめるのは絶対に良くない。
アルバムの全体像はシンガーのレジーナ・カジーの声質から、メロウでアンニュイでほんのりレゲエっぽい。そこへ、彼女の弾くハーモニウム(リードオルガン)などの鍵盤系や、トラックの根幹を成すぶっといベース、ギターや鉄琴などのオーソドックスな楽器、タブラやヴィーナやサーランギーといった中東系民族楽器を生音色として乗せ、トラックメイカーのニコラス・マーリーが打ち込み音色を取り混ぜて統括する。中でも中東楽器はトラック内で扱いが良く、ココら辺がLALの個性を担っているようだ。
さて、下の曲目をご覧の通り、本作は四季が織り込まれている。前半の秋冬はしっとり切ない空気を漂わせ、後半の春夏はアンニュイな中にも躍動感を感じる。ボトムにBPM早めの四つ打ちを敷いたトラックもあるからか。夏編でメロウなトラックを演られても、潮風が顔を凪いでいるようにしか聴こえないのだから巧く並べたモンである。
で、ここからが彼らの本領。ヘッドフォンで聴けば分かるのだが、音数が異常に多い。しかも彼らの音楽性がダブの影響下にあるため、それらが平気であちらこちらに散る。
具体的に書けば、表現力に長けた一廉のシンガーであるカジーの声すら一パーツと解釈され、オーヴァーダブにより主音である歌メロを取り巻いて、副音としてあちこちで瞬き続ける。トラックの底辺を支えるビートをサビだけ右耳の外れに追いやりつつ、役目だけは果たさせるといった苛烈なトラック構成も平然と執る。
無論、ダブの素養があるのだから、音数に埋もれてトラックをごちゃつかせる訳がない。必要ない時はばっさり切り落とし、後々必要なら伏線として音量を絞ってさりげなく置き、ここぞの場面で効果的に聴かせる。
あえて大げさに言い切らせてもらうが、ここまで全使用音色を組織立たせるトラックメイカーもそうそう居ない。
あえて難点を挙げれば、フェイドアウトが雑なくらい。
もしかしてこの界隈でこの男女デュオ編成が多いのも、この方面の音を出したいからこの編成にする訳ではなく、優れた者たちだからこそこの編成を敷くのではなかろうか――なんて考えてしまうくらい彼らも出来人。
筆者はこの編成での外れ音源を知りたい。
Fall
M-01 OrangeM-02 Brown Eyed Warrior
M-03 Forget To Say
Winter
M-04 Pale
M-05 Creep
M-06 Saturn
Spring
M-05 Creep
M-06 Saturn
Spring
M-07 Raindrops
M-08 Faithful
Summer
M-08 Faithful
Summer
M-09 Musty City
M-10 Shallow Water
M-11 Dancing The Same
M-12 Invincible
(Bonus)
M-10 Shallow Water
M-11 Dancing The Same
M-12 Invincible
(Bonus)
M-13 B.E.W. Epilogue...Think...Bloodlines
(Bonus Track For Japan)
(Bonus Track For Japan)
2015年5月20日水曜日
GROUPER 「Dragging A Dead Deer Up A Hill」
またココか! オレゴン州ポートランドの宅録おねいさん:リズ・ハリスのソロユニット、2008年発表の四枚目。
オリジナルリリースはバーミンガムのTypeだが、2013年にシカゴのKrankyよりリイシューされた。どっちのレーベルも妖し過ぎる……。
音楽性を端的に表すと、アシッドフォーク。
おそらくかなりヴィンテージな(≒古ぼけた)機材で録っているであろう、デモテープさながらな音質。ダビーというよりも、全体的にぼやけた音像。
軸はリズおねいさんの歌――よりも、おねいさんが奏でるアコギとかエレギとかエレピ。真中中央にどっかと腰を下ろしている。そのやや上から、慎ましげにおねいさんの歌。声質から淡白一辺倒かと思いきや、儚げだったり、清らかだったり、陰鬱だったり、投げやりだったり、凛としていたりと、なかなかヴァラエティに富んでいる。その歌声をオーヴァーダブでハモらせたりもする。
ただし、ちょいちょいグリッチや裏に回ったエレピなどの副音に埋もれてなし崩し化する。
こんなロウさはアルバム全体にも波及。軽度な編集を施しているにもかかわらず、トラックの頭と終いでさーーーっと存在をあらわにするヒスノイズは放置。ギター弦が指と運指でこすれるきゅっという音、ピックがピックアップにばちっと当たる音すら拾う。音割れしない程度に、副音どころか主音すらハウリングを起こしてたりもする。
臨場感を出したいのか、生々しさを出したいのか。
いや、彼女の音による主張は一貫している。
音を意のままに操っているのではない。全てを受け入れている。
あなたはすきにしてくれてかまわない。だから、ありのままのわたしをみて。
何となくメンヘラなおねいさん(誤解なきよう記すが、彼女の肉声は強い意志を感じさせる自立した女性のそれだ)によるセルフヌード音源集(モノクロ)。
ただ、音像のあまりのアレさから素人ヌードのような雰囲気もあるが、あくまで彼女はプロ。自らのヴィジョンを余さず映し込むための技巧、と好意的に捉えることも可能。
M-01 Disengaged
M-02 Heavy Water/I'd Rather Be Sleeping
M-03 Stuck
M-04 When We Fall
M-05 Traveling Through A Sea
M-06 Fishing Bird (Empty Gutted In The Evening Breeze)
M-07 Invisible
M-08 I'm Dragging A Dead Deer Up A Hill
M-09 A Cover Over
M-10 Wind And Snow
M-11 Tidal Wave
M-12 We've All Gone To Sleep
2015年5月6日水曜日
CLARK 「Clark」
Warpの二枚舌男、クリストファー・ステファン・クラークもとうとう七枚目。2014年作。
アートワークはリミックス盤に引き続き、アルマ・ヘイザー。
ここにきて、ようやくセルフタイトルだ。
どうせコイツのことだからアルバムタイトルなんてどうでも良いみたいなダダイズムというか当ブログらしい表現でニカ人種っぽい思想で付けたんだろうと踏んだら、何と総決算的な内容だったので驚いた、初聴の感想から。
彼にしては着地点があまりに真っ当。何か悪いモノでも食べたのかと思った。
臓腑に響く音圧と、おそらくチューバであろう低音金管楽器が唸りを上げるイントロM-01で幕を開けたかと思えば、以降ボトムはおよそ四つ打ち。四枚目に回帰したかのようなシンプルさでキックを四つ並べる。
だが四枚目のようなぶんぶんすっ飛ばす破壊的な面は見られない。むしろシンプルなビートに繊細で浮遊感のある上モノを絡める方法論でアルバムをほぼまとめている――つまり上モノは前作っぽさを残して。前述の低音金管楽器やピアノ、鉄琴などの生音色をちょぼちょぼ用いる点も、その思いを助長させる。お蔭で、作中でアクセントを取るかの如くぽつぽつと割り込むイキの良さそうなトラックですら、どこか落ち着き払って聴こえる。締めのM-13も前作同様、穏やかでちょっぴり不穏なアンビエントトラックだ。
そこら辺で老練した彼の総決算っぽさが垣間見られなくもないが、音響的には根の深い構造が組み込まれているのを見過ごす訳にはいかない。
本作は近年のクラブ系の流行に即し、ダビーだ。
ダビーといっても、音色の加減算と拡大縮小で構築する古き良きダブメソッドを用いて組まれている訳ではない。幽玄な背景音色を垂れ込めたり、一部音色を籠らせたりノイズを塗したりして遠巻きに追いやりつつ、出来た広いスペースの真ん中で主音を奏でつつ、副音をあちらこちらで踊らせる、詐術のようなダブステップ以降の空間処理法だ。現にM-07はCLARK流ダブステップと称して憚らないトラックだ。
この現代的なダビーさが本作のキモだ。前作でもそれっぽさはあったが、世相と巧みに折り合いをつけて自分なりに深化させてみせたのはコレが初めてなのだから、結局は何をしでかすか分からない彼なりに奇を衒っていることとなる。
そうか、そう来たか。
コレを成長と見るか、迎合と見るか、老練と見るかは人それぞれ。
ただ前作でちょっとだけ窺わせた借り物臭さを、間に挟んだミニで修正し、本作できっちり払拭している点を指して、聴き手はどう感じるのだろうか。
筆者的聴きどころは、あちらこちらで瞬く電子音色を歪ませたピアノ音色が切り裂くM-03から、風の強い草原で遠巻きに鳴らされる流麗な長尺ピアノループを軸としたM-04へ進み、やがて曇天となり雷を呼び、力強い四つ打ちキックを取り巻くようにエコーがかった攻撃的な音色が雪崩れ込んでくるM-05の流れ。
M-01 Ship Is Flooding
M-02 Winter Linn
M-03 Unfurla
M-04 Strength Through Fragility
M-05 Sodium Trimmers
M-06 Banjo
M-07 Snowbird
M-08 The Grit In The Pearl
M-09 Beacon
M-10 Petroleum Tinged
M-11 Silvered Iris
M-12 There's A Distance In You
M-13 Everlane
M-14 Treat (Bonus Track For Japan)
M-14のボートラは、BOCみたいなうねうねした古臭いシンセ使いのノンビートトラック。ぶっちゃけ単調だわ、大した余韻もなくフェイドアウトするわで、特に必要は。
2015年5月4日月曜日
GRAILS 「Black Tar Prophecies Vol's 4,5&6」
アレックス・ジョン・ホール(本作は主にシンセ)と、かのカリフォルニアのスピリチュアルデュオ・OMの二代目ドラマー:エミール・エイモス(主にドラム)が二人で統べる、オレゴン州はポートランド出身の四人組インストバンド、2013年発表の編集盤。
レーベルは、美味しい音を目ざとく掻い摘むインディーの配給王:Temporary Residence Limited、レペゼンブルックリン。
編集盤なのでまずは資料的なことから。
タイトル通り、本作は「Black Tar Prophecies」シリーズを総浚いしたモノ。なお「1,2&3」は2006年にImportant Recordsより発表されている。
曲の内訳だが、件のImportantからのシリーズ4弾目で単独EP(2010年作)がM-01、02、05、08、09。Kemado Recordsからの5弾目でフィンランドのPHARAOH OVERLORDとのスプリットLP(2012年作)がM-04、06、07、11。6弾目に当たる残りのM-03、10、12は未発表曲だ。
のっけからもわ~っと煙が立ち込めるダビーなイントロ。何だか妖/怪しさ満点。
曲調をざっくり説明すると、70年代の空気漂うサイケデリックな音世界。ただし、サイケだからと安易にフィードバックギターへ逃げず、古めかしい音色を有機的なフレーズで多彩な切り口からあちらこちらで鳴らすことにより、独特のレトロでトリッピーな空気感を醸し出す、一筋縄ではいかない創りだ。それはホールとエイモスがプロデューサーとミキサーを兼ね、双方の担当楽器にサンプラーを記す点にも表れている。
――と書くと本作はせせこましくて作り物臭いのだろうな、と思われるかも知れないが、それは断じて否。
音色の多さで聴き手がうるさく感じないよう、バンドなのだからそこに器楽的なアンサンブルが感じられるよう、数々の生音から精製した副音をダブの要領で頻繁に抜き差しし、かつ生々しい音質でテクスチャすることにより、その難事を巧く解決している。もわ~っとしたダビーな空間処理によるフィルターの魔法がそれを可能としたのは今更論を俟たない。
ただ彼らの持ち味の一つである、じわじわとテンションを高め、大団円までトランスする曲単位でのドラマチックさが減退しているような気がしなくもない。
そこはほら、アルバムの方向性よ。アルバム一枚を通して音だけで映画のような情景を描き出す――前作で演ってる、その流れ。
比較的短めの曲を並べてゆったりと満ち引きを繰り返す中、あまりに切ないピアノのフレーズを柱に、アコギやエレギやハープシコードやメロトロンやフルートやハミングを上記の手法で継ぎ足し、空間を把握して折り重ね、聴き手の涙腺を崩壊させる、たった三分弱のM-09で本作は最大のクライマックスを迎える。
ほら、貴方の脳内で、愛し合う男と女の望まれぬ別離シーンに被さる、幸せだった頃のモノローグが走馬灯のように――
……あれ? 本作って編集盤じゃなかった?
いや、むしろこうして既出の音源のプレイ順番をバラしても、一枚のアルバムというドラマが再構築出来てしまう点が、バンドの強固なコンセプトの裏返しと言えまいか。
まずはコレ。彼らの音の深淵が十二分に垣間見られる一枚の重厚な物語。
M-01 I Want A New Drug
M-02 Self-Hypnosis
M-03 Invitation To Ruin
M-04 Wake Up Drill II
M-05 Up All Night
M-06 Pale Purple Blues
M-07 Chariots
M-08 New Drug II
M-09 A Mansion Has Many Rooms
M-10 Corridors Of Power III
M-11 Ice Station Zebra
M-12 Penalty Box
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