2014年10月22日水曜日

SHRINEBUILDER 「Shrinebuilder」


リッケンバッカーを抱えて習わぬ経を詠む男:アル・シスネロス(SLEEPOM)と、不撓不屈のドゥームメタルアイコン:スコット〝ワイノ〟ヴァインリッヒ(THE OBSESSEDSAINT VITUS)を中心に、NEUROSISの濁声咆哮担当:スコット・ケリー、意外と便利屋なヴェテラン太鼓叩き:デイル・クローヴァー(THE MELVINS)とまあ、その筋の強者が雁首を揃えたスーパーバンドによる2009年作。
レーベルはNEUROSISのトコ厨二魂擽るイカしたアートワークはNEUROSIS(後にギターで参加のRED SPAROWES共々脱退)のヴィジュアル担当:ジョシュ・グレアム。音響技師はトシ・カサイ

いずれも強烈な個性を放つ、ひとかどの者どもを集めたアルバムにしては非常に整っている、というのが第一印象。誤解を生みそうな表現だが、あえて。
ではどうやってこのどいつもこいつもエゴの強そうな連中を束ねて、一枚のアルバムに整えられたのか? 正直なところ、ワイノはこの面子の中で浮いてはいまいか?
キーワードは〝調和〟。

ジャケをご覧の通り、基本は呪術的でそこはかとなく暗く、ずるっとミッドテンポを堅持するヘヴィ音楽。その一方で、OMやNEUROSIS、THE MELVINSで聴かれるようなインプロを発展させたような酩酊パートも各曲ごとに用意されている。ゆえに曲は概ね七・八分と長め。また、ワイノ、ケリー、シスネロスの三声体制(蛇足ながらクローヴァーもメインヴォーカルを執れる人)だが、ヴォーカル主導の作品ではない。
こんな、面子からして容易に察せられる音世界。
そこへ、更に分かりやすく各メンバーの個性が意図的に反映されているところがキモ。
例えばワイノらしい朗々とした歌声に加えて、彼が掻き鳴らす明快なドゥームメタルリフとか。ケリーのあの喉を酷使しているとしか思えない濁った怒鳴り声とか。シスネロスがOMで流す読経ヴォーカルに、まろやかなベースラインとか。あと明らかに彼が部分的に持ち込んだ、密教ちっくな音世界とか。クローヴァーらしいタンタンと響くスネアの音とか(彼加入前に叩いていた元SLEEP、OMのクリス・ハキアスっぽいオフロードなビート感も、クローヴァーのプレイで再現されている)。
これらファンならピンと来る、個性派ならではの特徴をあえてパーツとして捉え、楽曲の雰囲気に添って当てはめる――こうすることでアルバムに調和が齎され、スーパーバンドの威厳も保たれるという寸法だ。

ここで意地悪く穿った見方をすれば『スリリングさに欠ける』のかも知れない。もっと個性と個性が激突する、ひりひりした作品が聴きたい方も居るかも知れない。
だがそんなこと、それぞれのメインバンドで演れば良いことだろう、と。
筆者からすれば、各曲に籠められた酩酊パートの心地良さで巧くカヴァー出来ているので何ら問題ない、と。あと、超個性ならではの〝音色〟が大ネタフレーズとして楽しめてにやにや出来る、とも。
この老練したメンバーによる理詰め感、ハードコアというよりもポストロックに近い――と強引な極論を吐き、このブログらしく締めさせていただこうか。

なおこのスーパーバンド、ワイノ曰く『シスネロスがイカレちまったので、今後何も起こらないと思うよ』とのこと。
ヘヴィ音楽から離れてダブに傾倒するシスネロスへの皮肉かと思われる。

M-01 Solar Benediction
M-02 Pyramid Of The Moon
M-03 Blind For All To See
M-04 The Architect
M-05 Science Of Anger


2014年10月20日月曜日

THE GENTLEMAN LOSERS 「Dustland」


フィンランド出身、サムとヴィルのクウッカ兄弟による2009年作の二枚目。

本作を抽象的な言葉で表せば〝ぜんまい仕掛けのフォーク〟か。個人的にはこういうコトをあまり書きたくないのだが、近似値の高い具体的な比較対象を挙げるならば、BIBIO(リミックスもしているし)エモメガネの別ユニット:GOLDMUNDになる。
つまり、数多くの生音を縒り合わせ、良く言えばヴィンテージな機材でモノラル録りする、セピア色の似合う哀愁の追憶フォーク。北欧らしい寒々しさを添えて。
もちろん、演奏も録音もジャケデザインもクウッカ兄弟。DIYの極み。
ああそう言えば〝フォークトロニカ〟なんて言葉、あったよね。

そんな彼らのキモは音色の多さ=演奏する楽器の数にあるのだが、これがまた巧いトコロを突いてくる。
以下、各々の担当楽器。()内はメーカー、機種。

サム:ローズピアノ(フェンダー)、ピアノ、ハープシコード、アナログシンセ(ヤマハ CS-15D、SY-1)、メロトロン、オルガン、キーボード(ローガン・ストリングメロディII、Siel Orchestra)、サンプラー(AkaiS5000)、リズムマシーン(エーストーン・リズムエース)、ベース(ヘフナー、ギブソン)、弓弾きアコギ、ログドラム(太鼓系じゃないよ)、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン。
ヴィル:ギター(ギブソン・レスポール、フェンダー・ストラトキャスター、テレキャスター)、ラップスティールギター(フェンダー)、六弦/十二弦アコギ、クラシックギター(ラミレス)、E-ボウ、ウクレレ、ベース(スクワイア)、ドラム(スリンガーランド)

どうやらサムは鍵盤系担当、ヴィルは弦楽器系担当らしい。またサムは写真とデザインを、ヴィルは録音を専任している。またケイサ・ルオツァライネンなる女性がヴァイオリンやヴィオラ、ワイングラスでゲスト参加している。

さて、ここで本題。
ご覧の通り、彼らはポピュラー音楽としては非常にオーソドックスな楽器ばかりを用いているのが分かる。普遍的たれと考えているのだろうか。
いや、重要なのは、更にその中でもよりオーソドックスな楽器に関して使用機材を明確にしている点であろう。
同じコードを同じ楽器で鳴らすにしても、ストラトとレスポールでは聴こえてくる音がまるで違う。更に掘り下げれば、同じフェンダーのベースでも純性モデルと廉価版では大いに音色は異なるはずだ。
逆に木・鉄琴系やアンプラグドの鍵盤系など、象徴的かつエフェクターやアンプが介在しない楽器について、機種まで明記する必要などない。
別に所有リストを晒して自慢している訳ではない。ココに彼らの音へのこだわりと、音色に対する考え方が表れていると思う。

何々に似てる似てないなんてどうでもいい。それぞれ創っている者が違うのだから、そこに提示された作家性を理解する必要が、聴き手にはある。

M-01 Honey Bunch
M-02 Silver Water Ripples
M-03 The Echoing Green
M-04 Ballad Of Sparrow Young
M-05 Bonetown Boys
M-06 Oblivion's Tide
M-07 Lullaby Of Dustland
M-08 Midnight Of The Garden Trees
M-09 Farandole
M-10 Spider Lily
M-11 Wind In Black Trees
M-12 Pebble Beach


2014年10月2日木曜日

MASSIVE ATTACK v MAD PROFESSOR 「No Protection」


二枚目(1994年作)を、あへあへダブおじ(い)さん:マッド・プロフェッサーがダブヴァージョン(リミックス)化! ありそでなかったこの一枚。
翌、1995年発表。

ぐう(の音も出ないほど)ダブ。おしまい。
いやいや待て待て!
もこもこ内に籠っているようで抜けの良い音像。過度に掛けるフィルター、エコー、ディレイ。気まぐれで定める一部音色への偏愛。流動的な鳴らす位置。大胆な音色の抜き差し。
これぞ、まごうことなきダブである。
ただ、元よりマッシヴはそんなダブを血肉としているユニット。これ以上ダブダブしくする必要があるのだろうか……? なんて疑問もあろうが、ここまで徹底してダブのメソッドに当てはめたモノを聴かされれば、聴き手はぐうの音も出ないはず。
本編では二曲ずつ宛がわれしトレイシー・ソーンのしなやかな、ニコレットの可愛い歌声も、クレイグ・アームストロングの感傷的なピアノも、ぶっつぶつのぎったぎた斬り。
この辺の主音への苛烈な扱い、正しくダブ。
なお男声――トリッキーとホレス・アンディが歌っているトラックは一つずつしか選ばれていない上、ヴォーカル音色を一切用いず、文字通り〝抜いて〟いるので注意。
これもダブ特有の音色偏愛の一端であろうか。

あと、クラブ系さんサイドからダブを眺めているだけの筆者からすれば、ダブと言えば(涼しげな音像と)低音の過剰な強調! が最大の特徴かと思っていたら、場合によってはベース音色も平気で抜くんだと本作で知った。
ぜひとも本作を入り口に、この加減算の妙を味わって欲しい。
ひんやりしててきもちいよv

M-01 Radiation Ruling The Nation (Protection)
M-02 Bumper Ball Dub (Karmacoma)
M-03 Trinity Dub (Three)
M-04 Cool Monsoon (Weather Storm)
M-05 Eternal Feedback (Sly)
M-06 Moving Dub (Better Things)
M-07 I Spy (Spying Glass)
M-08 Backward Sucking (Heat Miser)


2014年9月30日火曜日

31 KNOTS 「Worried Well」


オレゴン州ポートランドの変わり種スリーピース、2008年作の七枚目。
レーベルは引き続きPolyvinyl Record

このバンドにはドラムを兼任する録音技師:ジェイ・ペリッチが居る。その兄弟のイアンが今回も手を貸している。ミックスに至ってはそのイアンの単独作業とクレジットされている。
なのにとうとう、バンドの司令塔:ジョー・ヘージがエンジニアとしても首を突っ込むようになってしまった。
ああ、これがコントロールフリークか……。

だが音世界はさほど変わりなし。相変わらず色とりどりのキモ可愛い顔が練り込まれた十二本(日本製は更に二本増量!)の金太郎飴。
他メンバーへの締め付けもなし。フィンガーピッキングの手練れベーシスト:ジェイ・ワインブレナーは今回も生き生きとフレットを上から下まで動かしまくる。心なしかペリッチのドラムにも勢いを感じる。
どうやらこのヘージ、自分以外のパートは誰が好きに演ろうと気にしないタイプのようだ。

それよりも前作から垣間見せていたのだが、核である彼に変化が表れ始めた。
ギターを演奏して曲を組み立てることに頓着しなくなった。
今回ギターを軸に用いた曲は、手拍子付きのアカペラ風イントロから雪崩れ込むM-02。調子外れな歌とワインブレナーの肩肘張ったベースフレーズへ執拗に絡むM-07。音割れも辞さず爆発的な加減速を繰り広げた果てに……のM-08。ハモンド風シンセを巧く用いてドラマチックに仕立てたM-10と、ギターの単音爪弾きからサビでの掻き鳴らしでエモさを演出するボートラのM-13くらいなもの。あとは味付け程度か、ピアノを立ててギターレスの曲も多い。サンプリング音やループの含有率もいつも以上だ。
あくまで憶測だが、ヘージがピアノを弾いている時、ベースが鳴っていない代わりにギター音が聴こえる曲もあるので、ギターも弾けるワインブレナーに委ねてるケースもありそう。ピンポイントでギターの音色を欲しがってる曲もあるので、あらかじめサンプラーにギターフレーズを突っ込んでおいて場面場面でワンショットやループする手法も取りそう。
彼の本質はギタリストでもシンガーでもなくコンポーザーなのだから(リズム隊には好きに演らせて、音世界のキモを握る)自分があれこれ演れる体勢を取るのも理に適っている。
そもそもこの程度の変化で、盤石のヘンテコ31 KNOTSサウンドは揺らぎもしないのだから、ますますもって正しい。

そんな彼のギター離れ、コンポーザー視点強化が、エンジニアとして直接音を弄りたくなった理由に繋がるのかも知れない。
己の脳内音を具現化したいのなら、自分である程度何でも出来るようになるべきなのか。

M-01 Baby Of Riots
M-02 Certificate
M-03 The Breaks
M-04 Something Up There This Way Comes
M-05 Take Away The Landscape
M-06 Strange Kicks
M-07 Opaque / All White
M-08 Worried But Not Well
M-09 Compass Commands
M-10 Statistics And The Heart Of Man
M-11 Upping The Mandate
M-12 Between 1 & 2
M-13 Turncoat (Bonus Track For Japan)
M-14 Who Goes There? (Bonus Track For Japan)


2014年9月24日水曜日

CLARK 「Feast / Beast」


Warpのオオカミ青年:クリストファー・ステファン・クラークの二枚組リミックス盤。2013年。
ジャケはアルマ・ヘイザー

〝ごちそう〟と題したDisc-1は座して聴くようなイメージで、〝けだもの〟と題したDisc-2はクラブで踊るようなイメージで選り分けたそうな。
彼的に韻を踏みたかったらしい。(そういや〝Beast Feast〟なんてラウド音楽イベント、あったよね)

で、まあ……あのCLARKだし、容易に予測出来た結果なのだが――
相変わらず原曲を踏まえる気が更々ない。
具体的には、BATTLES流爆走ナンバーのDisc-2:M-02が、タメの利いたデジデジしい触感のトラックに挿げ代わっていたり。Disc-2:M-06に至っては、歌モノなのにヴォーカル音色をハナから無視した上、代わりに自分で歌っていて、ただただ愕然とした。
リミックスをしてくだすっているBIBIOやネイザン・フェイクら友人は、ある程度テメーの原曲を踏まえて己の色を出してくれているのに、この勝手気ままさ。
リミックスをしてくれた友人のトラックは彼にとって〝ごちそう〟で、一切元ネタに配慮しないオマエは〝けだもの〟そのものとちゃうんかい。
いや〝けだもの〟なこの野郎にとって、各クリエイターの捧げてくれた元ネタこそがなによりの〝ごちそう〟なのかも知れない(生贄的な意味で)

ただ、CLARK謹製としか思えないトラックが三十曲・二時間超分詰まっている――それこそがCLARKファンにとって〝ごちそう〟だと考えれば如何であろうか。
しかも彼の音楽には定着化した〝CLARKテイスト〟なんてものが存在せず、APHEXチャイルドと騒がれてた一枚目二枚目期、生音に色気を見せ始めた三枚目期、衝撃のフロアユース化で度肝を抜いた四枚目期、騒がしい上モノを整わない拍で引っ掻き回す五枚目期、生音回帰で(悪)夢見心地な六枚目期――と、各々をくっきり分別出来るコトが本作で更に浮き彫りとなった。
――人の創ったトラックを踏み台にして。(その割には原曲より遥かに凝った創りをしているモノばかりだったりする)
ゆえに、リミックスアルバムを指してこう評すのは不適切かと思うのだが……『未発表曲で編んだコンピレーションアルバム』である、と。

なお、CLARK当人は『コレを機に、もうリミックスしない』とかまたテキトーなその場限りの発言をほざいている模様。
そら(原曲踏まえぬリミックス曲など)、そう(自作のトラックと変わらん)よ。

Disc-1 (Feast)
M-01 THE BEIGE LASERS - Smoulderville (Clark Remix)
M-02 DM STITH - Braid Of Voices (Clark Remix)
M-03 AMON TOBIN - Kitchen Sink (Clark Remix)
M-04 NATHAN FAKE - Fentiger (Clark Remix)
M-05 CLARK - Alice (Redux)
M-06 KUEDO - Glow (Clark Remix)
M-07 BARKER and BAUMECKER - Spur (Clark Remix)
M-08 SILVERMAN - Cantstandtherain (Clark Remix)
M-09 RONE - Let's Go (Clark Remix)
M-10 NILS FRAHM - Peter (Clark Remix)
M-11 GLEN VELEZ - Untitled (Clark Remix)
M-12 CLARK - Absence (Bibio Remix)
M-13 CLARK - Ted (Bibio Remix)
M-14 VAMPILLIA - Sea (Clark Remix)
M-15 PRINCE MYSHKIN - Cold Caby (Clark Remix)
M-16 CLARK - Absence (Switchen On Barker Revoice) (Bonus Track For Japan)
Disc-2 (Beast)
M-01 MASSIVE ATTACK - Red Light (Clark Remix)
M-02 BATTLES - My Machines (Clark Remix)
M-03 LETHERETTE - D&T (Clark Remix)
M-04 CLARK - Growls Garden (Nathan Fake Remix)
M-05 AUFGANG - Dulceria (Clark Remix)
M-06 MAXIMO PARK - Let's Get Clinical (Clark Remix)
M-07 THE TERRAFORMERS - Evil Beast (People In The Way) (Clark Remix)
M-08 CLARK - Suns Of Temper (Bear Paw Kicks Version)
M-09 HEALTH - Die Slow (Clark Remix)
M-10 DEPECHE MODE - Freestate (Clark Remix)
M-11 Mr. BOGGLE - Siberian Hooty / Fallen Boy (Clark Remix)
M-12 DRVG CVLTVRE - Hammersmashed (Clark Remix)
M-13 MILANESE - Mr Bad News (Clark Remix)
M-14 FEYNMAN'S RAINBOW -The Galactic Tusks (Clark Remix)


2014年9月16日火曜日

BURIAL 「Untrue」


謎めいた男:ウィリアム・エマニュエル・ビーヴァンによる2007年作の二枚目。

ダブステップだそうな。
籠っているけど奥行きがだだっ広い〝ダビー〟な音像の中、拍を刻みたいんだか装飾音として自由で居たいのか分からないビートを軸に、これまた〝ダビー〟なぶっといベースラインと切り貼りのヴォーカルフレーズを散りばめる、ようなクラブミュージック――
だそうな。
今やそのトップランナーとなった彼がその公式にぴったり当てはまるかと言うと、思ったよりそうでもない。
そうでなくて良かった。だからこの場で書けている。

ダビーなのは合っている。と言っても本来のダブのような、全音色のどれかを気分次第で偏愛(過度のエフェクトを掛けて可愛がったり、えこひいきするために邪魔な音色を抜いたり)はしない。一枚靄(フィルター)の掛かった音像の中、各音色をはっきりしない位置取りに据えてトラック毎に固定し、鳴らすような感じだ。
彼、BURIALの場合、そのテクスチャ管理が非常に巧みで、聴き手は一寸先は霧で視界が定かではない位置から無限の空間が広がっているような心地にさせられる。
音の抜けが良くてがちゃがちゃしていないのに、一トラックで用いている音色は意外と多い点に秘密がありそうだ。

次にボトムだが、これがしっかりと拍を打っている。最低速度でBPM124、最速だと138のアグレッシヴなテンポでカツカツ刻んでくる。ダブステップが2ステップという20世紀末に一瞬流行ったジャンルの派生ということもあって、四拍子の一と三を強調する特異なビートのトラックもあるが、クラブで聴く音楽を前提とした創りなのでノリは失われていない。
筆者は一番コレが意外だった。どうせ裏を取ってるのかテキトーなのか分からないビートのような何かを敷いて小難しいアート風吹かせているのかなあ、なんて斜に構えていたがとんでもない。むしろループ感が強いくらいだ。
それが身体で拍を取りたくなるほど、おしなべてカッコイイ。
カッコ良いビートは正義。

最後はなにげに大事な点なのだが、切り張りヴォーカルパーツの扱い方が非常に巧い。誰かさんの最新作のように、ただ単純にワンフレーズをループさせることなく、ワンショットとして安易にぶっ込まれる声ネタに堕せず、要領良く様々なフレーズを継いでいる。
それはもう、あたかも彼のために歌ってくれたフィーチャリングシンガーのように。
M-02のRAY J(離れ目米女性R&Bシンガー:BRANDYの弟)以外声ネタ元は明かされていないが、歌モノトラックっぽくなっている点は非常に大きい。最強の音色である人声を匠の技で普遍的に聴こえるよう操るだけで、聴き手の層が格段に広くなる。

本人はあまり有名になりたくないようなのだが、逸材がこのような高品質の作品を世に送り出した時点で世間が黙っちゃいない訳で。
とっとと内に籠る気質と自己顕示欲に折り合い付けて、三枚目を出しておくれよ。単発ばかり切られても物足りないんだよ。

M-01 Untitled
M-02 Archangel
M-03 Near Dark
M-04 Ghost Hardware
M-05 Endorphin
M-06 Etched Headplate
M-07 In McDonalds
M-08 Untrue
M-09 Shell Of Light
M-10 Dog Shelter
M-11 Homeless
M-12 UK
M-13 Raver
M-14 Shutta (Bonus Tracks For Japan)
M-15 Exit Woundz (Bonus Tracks For Japan)

日本盤はM-04をA面に据えた12インチEPのB面二曲を追加収録。


2014年9月14日日曜日

QUAKERS 「Quakers」


7STU7ことステュアート・マシューズ、KATALYSTことアシュリー・アンダーソン、FUZZFACEことジェフ・バーロウ――以上三名のトラックメイカーによるヒップホップユニット、2012年作。
本作は二枚組で、Disc-2はまるまるDisc-1のインストとなっている。お・と・く。

100%サンプラーを用いて創られたような、愚直なヒップホップ。音の触感としてはニュースクール辺りの、ヒップホップがしっかりメインストリームに根差した頃を思わせる。
フィーチャリングラッパーの記述がないトラックは全て1分弱のスキット(寸劇)かインタールード(間曲)。それ抜きでも多い曲数から察せられる通り、一曲一曲は短め。ヒップホップは通りすがっただけな筆者のような聴き手としては、各トラックがあっさり終わって食い足りないかなーと思わなくもないが、矢継ぎ早にトラックが飛んで来るのでミックステープのような小気味良さがある。
そもそもヒップホップという音楽の構造上、単調さを覚えず各トラックを長くするにはMCの高難度なスキルとトラックへの過剰な工夫が必要となってくるので、これで良いのだ。

一方の作風だが、ホーンセクション使いが目立つ――いや、ホーンセクションは目立つ。あのド派手な音色を巧く用いれば、大ネタ使いばりの強烈なトラックが組めるのだなあ……と、ほとほと感心した。
例えばラップといえばギャング(スタ)だが、威風堂々としたホーン群でマフィアの風情を醸し出したM-03や10。高らかに鳴らすことで映画のテーマ曲のような達成感が得られるM-17や36や40。またM-26のようにファンキーに鳴らすことで王道感を出すことも出来る。
金管楽器は反則。
あとはトライバル風だったり、シンセをわざと安っぽく用いて時代性を出したり、SANTANAばりのきらびやかなギターを立てたりと、ヒップホップという狭い狭い狭い枠組みの中でいろいろ演っている。ただし、録り方を前述のニュースクール風の音質で統一しているので、散漫さは微塵もない。
またNASJURASSIC 5あたりのフレーズをサンプリングしたりと偉人へのリスペクトも忘れない。(蛇足ながらJFKのあの名言を茶化したりもしている)

好きなんだなあ、ヒップホップが。
これを温故知新と見るかパロディと見るかで、聴き手の音楽的スタンスが分かるっちゅーかバレるっちゅーか……モニュモニュ……。

Disc-1 (Rhymes)
M-01 Intro
M-02 Big Cat (feat. SYNATO WATTS)
M-03 Fitta Happier (feat. GUILTY SIMPSON、M.E.D.)
M-04 Smoke (feat. JONWAYNE)
M-05 The Lo
M-06 Russia With Love (feat. COIN LOCKER KID)
M-07 What Chew Want (feat. TONE TANK)
M-08 Flapjacksmm
M-09 Jobless (feat. QUITE NYCE)
M-10 Sidewinder (feat. BUFF 1)
M-11 Mummy (feat. DIVERSE)
M-12 Belly Of The Beast (feat. EMILIO ROJAS)
M-13 Up The Rovers
M-14 The Turk (feat. KING MAGNETIC)
M-15 There It Is (feat. THE CHAMPS)
M-16 RIP
M-17 I Like To Dance (feat. KRONDON、GENERAL STEELE)
M-18 Dark City Lights (feat. FRANK NITT)
M-19 The Beginning (feat. COIN LOCKER KID)
M-20 Kreem
M-21 War Drums (feat. PHAT KAT、GUILTY SIMPSON)
M-22 R.A.I.D. (feat. LYRIC JONES)
M-23 Fresh
M-24 Something Beautiful
M-25 Chicken Livers (feat. FC THE TRUTH)
M-26 Rock My Soul (feat. PRINCE PO)
M-27 Lost and Found (feat. ESTEE NACK)
M-28 My Mantra (feat. DAVE DUB)
M-29 Hunnypots Of Beeswax
M-30 TV Dreaming (feat. BOOTY BROWN)
M-31 Don't Make It Worthless
M-32 Soul Power (feat. DEAD PREZ)
M-33 Glide
M-34 Get Live (feat. COIN LOCKER KID)
M-35 Sign Language (feat. ALOE BLACC)
M-36 Earth Quaking (feat. AKIL)
M-37 You're Gonna Be Sorry
M-38 Outlaw (feat. DEED)
M-39 The Tax Man (feat. SAREEM POEMS)
M-40 Chucky Balboa (feat. SILVERUST)
M-41 Oh Goodness (feat. FINALE)
Disc-2 (Instrumentals)