2016年7月4日月曜日

GALA DROP 「Gala Drop」


ポルトガルの首都・リスボンのダブトリオ、2007年制作・2008年発表のデビュー作。

ぶっといベース、忙しなくあちらこちらで瞬く装飾音、抜けの良い湿った音像――レゲエの本場・ジャマイカのエンジニアによる卓遊びから発展した〝ダブ〟なる至高のトリップミュージックの延長線上に、彼らは立っている。
そんな彼ら最大の特徴は、三人が三人ともパーカッションを兼任する、トライバルな味付けであろう。
無論、それだけではない。

基本はミニマルのインスト。それぞれ主の担当楽器(ドラム、ベース、キーボード)の前に卓やらシンセを置き、手の空いた者がそれで音色を弄り、楽器に感けている者は手癖でフレーズを燻らせ、曲に引っ掛かりを生んでいくスタイル。その卓から繰り出される音色の傾向がスペイシー特化のため、コズミック・ダブ(Cosmic Dub)と呼ばれているそうな。
その一方で前述の、抜けた鳴り重視の太鼓音を含めたトライバル感覚が奇妙かつ絶妙なマッチングを見せている。
宇宙(Cosmo)の中に原始が内包されている謎空間に、聴き手は何を見出すのだろうか。

ドイツ最強のミニマリスト・CANとの共通項も感じるが、こちらはクラウトロックのキモである執拗反復を求めないところがミソ。
また、基軸であるまったりオフロードなビート曲でアルバムを進めたかと思えば、突如どったんばったんしたロック調のビートパターンの曲を呈してきたり、疾走感溢れる曲で聴き手を煽ってきたり、シンプルに四つ打ちから曲を開始したりと、酢漬けキャベツ勢とは相反したひとところに収まりたがらない気質も魅力。

見たか世界よ、コレがラテンの血だ!

M-01 Ital
M-02 Ubongo
M-03 Dabum
M-04 Frog Scene
M-05 Holy Heads
M-06 Parson
M-07 Crystals
M-08 Drop (Bonus Track For Japan)
M-09 Rauze (Bonus Track For Japan)

2011年、遅れ馳せながら日本でもリリース。その際、2010年にアナログのみで発売した「Overcoat Heat EP」より、A面2曲がボートラとして追加された。
どちらもA面だけあってカッコイイぞ。


2016年7月2日土曜日

HELIOS 「Yume」


ペンシルヴァニアのエモエモなメガネっ子:キース・ケニフの当名義四枚目は2015年作。
ジャケ絵はコレとかコレ描いてるマシュー・ウッドソン(メガネ)

いつも通りなんで特に書くコトないのを何とか。
ピアノやアコギを主音に立て、背後に長音のシンセを垂れ籠め、おそらく自ら叩いているだろうドラムパターンをループさせて底に敷く。
メロディは最重要視で。低音はあまり取らない。各音色を微かにくぐもらせて生々しく。
ビートは落ち着いた鳴りで、歯切れ良く。その一方でアンビエントも能くする。
だいたいこんな感じ、いつも。

相変わらず隙がない。

だからこういう手堅い作品はリピート率が非常に高いと常日頃書いている。
多少感傷的(エモい)だが、負の要素はほぼないため聴いて気分が落ちることはない。日々の暮らしのほんの一匙分おセンチになりたいのなら、これ以上の処方箋はない。
そうじゃなくても、音楽として完成度が(毎作毎作常に)高く、奇を衒った部分がかけらもないため、聴いていて邪魔にならない。
ならば聴かない理由もない。
だから逆にこの界隈の一番星になれないのかもなあ。いわゆる〝地味過ぎて〟。
となるとイチゲンさんを取り込みにくい立ち位置に居るのかもなあ。筆者はこの手の音楽の入り口としてまず彼を薦めたいのに。

なお本作で、この名義としては初めてゲストプレイヤーを迎えた。
M-03と06でそれぞれチェロとヴィオラ奏者。(トラックに溶け込み過ぎてて気付かんかった)
また、原盤技師は某白髪のオッサンと仲良しなテイラー・デュプリー

M-01 Every Passing Hour
M-02 It Was Warmer Then
M-03 Sonora Lac
M-04 Pearls
M-05 Yume
M-06 Skies Minus
M-07 The Root
M-08 Again
M-09 Sing the Same Song Twice
M-10 Embrace
M-11 You The Rose (Bonus Track For Japan)


2016年2月22日月曜日

ONEOHTRIX POINT NEVER 「Garden Of Delete」


おいコラ、ロパ公!
Warp移籍ですっかりチョーシコイてる一気に知名度を上げた、ダニエル・ロパーティンの七枚目は2015年作品。
ジャケ絵は自ら手掛けたもの。

前作よりはちゃめちゃ度アップ。
ライヴを頻繁に演るようになってクラウドを意識し始めたのか、本作は割とビートがある。しかもアッパー系の。
また上モノに、やはりクラウドを意識してかEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージックの略)で使われるような扇情的でぺなっぺななシンセ音を多用するようになった。
それとは逆に、ヘヴィメタルちっくなギターをちょぼちょぼトラックに織り交ぜるような、作品の方向性としては理解に苦しむ音色選択センスも聴き逃せない(まるでシュラプネル系のギターヒーローが弾いたかのようなソロもあるぞ!)

その結晶がM-04。
少年の無機質な歌声を主音に据え、チェンバロのような格式高い音色が脇を固め、彼の平常時を表現したかと思えば、やがて音色が歪み、キックが連打され、声が濁り始め……打ち込みブラックメタルばりの狂乱突貫パートに挿げ代わる。
――まるで悪魔に憑りつかれたみたいに。
パーツをぶつ切って密に転換するメソッドを用いる彼だからこそ生めた本作のハイライト。

で、気になるのはそれ以後――いやアルバム全編にわたって、はちゃめちゃ、傍若無人に暴れ狂っているのだろうか? ってトコ。
実はそうでもない。
きちんと通して聴いてよくよく考えてみると、前作で結実した、ザッピングを多用して聴き手の感受性を攪拌し、落ちどころを定めさせない〝脳内ロパーティン劇場〟が手段を多少代えて、淡々と、かつ飄々と再提示されている事実に気付く。
前述のM-04や、剽窃なのにどこか落ち着きないところが如何にも彼らしい〝ロパーティン流EDM〟のM-02やM-06など、本作のアイキャッチにしか過ぎないのだ。
目先のインパクトに騙されては奴の思う壺だ!

こういうアンテナはびんびんに張り巡らせて様々な要素を柔軟に取り入れはするけど、どれも上っ面までで留めておくこの気質、彼の胡散臭さ強固な自信の表れかと思う。
ちなみに本作、コンセプトアルバムらしい。

M-01 Intro
M-02 Ezra
M-03 ECCOJAMC1
M-04 Sticky Drama
M-05 SDFK
M-06 Mutant Standard
M-07 Child of Rage
M-08 Animals
M-09 I Bite Through It
M-10 Freaky Eyes
M-11 Lift
M-12 No Good
M-13 The Knuckleheads (Bonus Track For Japan)

日本盤ボートラは前作とは違いきちっとトラックしているのでまあ、こちらかな……?


2016年2月8日月曜日

黙れ小童ァ! L.O.T.W.式音楽用語解説・其の6


マジでボログの書き方忘れてる。
つか前置きとか要らんと思わん? 字数余りまくりマクリスティーで話が続かなそうな時、脈絡はあるけど内容はナッシングな嵩増し文を書くの得意だけど、それって要らん特技と思わん? なぜそれを日常会話に活かせんのかとか思わん?
つかたかが駄弁り会話なんぞ『ウェーイ!』とか『間違いねえ』とか『マジやべえ』とか舌先に用意しときゃ適当にやり過ごせるのにとか……思わん!
同じ時間の無駄遣いなら、もうちっと実になる言葉を捻り出してーんですわ。このボログの趣旨デスヨ(後付け)。



2015年8月24日月曜日

LILACS & CHAMPAGNE 「Danish & Blue」


GRAILSの中心人物:エミール・エイモスとアレックス・ホールによるブレイクビーツユニット、2013年作の二枚目。
レーベルはダニエル・ロパーティン軒を借りる、ブルックリンのMexican Summer

彼らは特異な立ち位置に居る。
まず二人の本体:GRAILSは70年代サイケを今の世に翻案し、映像的に仕立て上げる音世界を標榜していること。
なのに打ち込み音楽とな!
ロック系とクラブ系を融合させた作品は数あれど、ロック側が求めているモノは常にクラブ側の先進性(ちなみにクラブ系がロックに求めるモノは、ほぼ衝動性)。レイドバックした作風で打ち込みを求めるケースは稀。
字面だけなら悪食に等しい音楽性である。

だがこのユニットはコロンブスの卵と言って良い。
キモは底に敷いたブレイクビーツという手法が、ボトムの溶解化進む現代のクラブミュージックシーンに於いて旧世代の方法論になりつつある点。
ビートは定番:Akaiのサンプラー(エイモスがMPC2500、ホールがMPC1000)とターンテーブルを使用し、BPM100前後でまったりかつシンプルに。言うまでもなく、彼らは本体でも存分に打ち込み機器を扱っているので手慣れたものだ。
一方の上モノは、ギターやシンセを有機的に用い、妖しくもたゆたう流れで。モーグやメロトロンのようなプログレ/サイケでは常套句な古臭い音色も平然と持ち込む。
そこへ、男声のポエトリーディングというかモノローグというか(架空)シーンの抜粋が作中のそこかしこで挿まれる、と。
これらを十一篇に分けてアルバム一枚で表現した、フィルムノワールな創りだ。無論、踊るには適さず、チルアウトとして用いるが最適。
結果、思ったよりアクもそつもなく、かつ合理的な出来となっている。
クラブカルチャーも歴史を持つようになった今、このような方法論の連中が続々と増えてくるのではなかろうか。

あざといまでの過去への憧憬を軸に、二つの異なるジャンルを繋ぎ合わせた、用の美を象徴するかのような作品。
二人の広い視野が成せる業。

M-01 Metaphysical Transitions
M-02 Sour/Sweet
M-03 Le Grand
M-04 Better Beware
M-05 Alone Again And...
M-06 Police Story
M-07 Hamburgers & Tangerines
M-08 Honest Man
M-09 Refractory Period
M-10 Danish & Blue
M-11 Metaphysical Transitions II


2015年8月22日土曜日

Mr.SCRUFF 「Friendly Bacteria」


今回も自作のお絵かきが可愛いぜ!
英国北西部・チェシャー州出身のアンディ・カーシー、久々の五枚目は2014年。
言うまでもなく例のトコから。

曲目をご覧の通り、歌モノの彩が強い。あと若干真面目。
メインシンガー扱いのデニス・ジョーンズも、ヴァネッサ・フリーマンも単独作を有す一廉のシンガーだし、ロバート・オーウェンズに至ってはヴォーカルとしても評価が高いが、ハウスDJとしての名の方が知れたクラブミュージック界の大家だ。
以上、カーシーの実力に即した良好なプロダクションで、本作も望めていることが改めて分かる。
さすがNinjaの屋台骨。

だが本作は七年前と比べて若干トラックをチープに仕立てている、意図的に。
というのも、最近のクラブ系の傾向は安っぽくてもシンプルに、より扇情的なトラックを標榜しているため。本職はDJ、と自負する彼も自ずとそちらへシフトする。
クラウドの反応がなによりの御馳走なDJが、流行りに敏感じゃなくてどうするのさ?
よってビートも四つ打ちっぽくシンプルに。打ち方が微妙にダブステップっぽかったり、さり気なくグライムっぽかったり。いや、TR-808っぽいベースラインでアシッドハウス臭さを出しているトラックまである。
つまりこれまで以上にノリが良くなった訳だ。

――と思いきや、終盤は激渋な流れで締めにかかる、ジャジーなフレイヴァーで。
M-11、12でレーベルメイトであるシネオケのバンマス:ウッドベース弾きのフィル・フランスを迎え、打ち込みのボトム対生音の上モノで芳醇なクラブ系ジャズサウンドを展開する。
M-12に至っては、フランス以外のゲストメンバーが非シネオケにも関わらず、それっぽい空気を漂わせてにやにやさせられる。フランスによるグリップの利いたウッドベースや、巧くトラックに食い込んでいるジョーンズのアコギも然ることながら、やはり単独作のあるマシュー・ハルサルのトランペットがトラックに、ひいてはアルバムに心地よい余韻を齎す、最後に相応しい好トラックだ。

蛇足ながら、カーシーは本作からこの可愛いイラストを止めたかったらしい。
思い留まらせたNinjaの社長、有能。

M-01 Stereo Breath feat. Denis Jones
M-02 Render Me feat. Denis Jones
M-03 Deliverance
M-04 Thought To The Meaning feat. Denis Jones
M-05 Friendly Bacteria
M-06 Come Find Me feat. Vanessa Freeman
M-07 Where Am I?
M-08 He Don't feat. Robert Owens
M-09 What
M-10 We Are Coming
M-11 Catch Sound feat. Denis Jones
M-12 Feel Free
M-13 Get Down (Bonus Track For Japan)

ボートラはノリノリのビートに恐らくフリーマンがノリノリの合いの手を入れる御機嫌なトラック。如何にもボートラっぽいけど、楽しいから筆者的に大アリ。


2015年8月2日日曜日

MOGWAI 「Rave Tapes」


スコットランドはグラスゴーの白き轟音獣、八枚目のオリジナルアルバムは2014年作。
EUは自分のトコ。USは説明不要! 引き続きシアトルのSub Pop Records

結論から書くが、拡散志向でファニーだった前作前々作と比べて焦点を絞り、シリアスに攻めている感がある。前作で茶化し気味だったヴォコーダー声も、本作のM-10では甘く優しく切なく用いられているくらいだ。
一方、エレクトロニカの要素を取り入れたという意見もあるが、それは全く正しくない。曲によってはキーボード音色を主音に立て、ループというよりもリフっぽく反復しているだけでニカ導入はないでしょうよ。
しかもアルバム後半でそこら辺を担っていたキーボード音は奥に追いやられるし。あと当たり前だがボトムも打ち込みでは一切なく、ドミニク・アイチソンとマーティン・ブロックの生々しくも破壊的なベース・ドラムコンビだし。
もっとニカの音色使いは執拗でいやらしいんデス。

つまりMOGWAIの持ち味の一つである、ゆったり厳粛に始まり、やがてぐわっと激情が鎌首を擡げる至高のダイナミズムは健在。
無論、終始寂寥感を漂わせたまま締める静謐な曲も忘れてはいない。
ごりっとしたスラッジコアリスペクトのドヘヴィな触感も残してある。

ただし、ほぼ代名詞である〝白き轟音〟と謳われたフィードバックノイズが影を潜めた。
でも取り払っていない。ちょぼちょぼ、背景音としてさり気なく存在を誇示しており、にやりとさせられること請け合い。
その点をどう感じるで本作の評価が分かれると思われる。
筆者は、拡散志向に移ってバンドとしての円熟味が増したと考えているので、今更曲のダイナミズム誘因を白き轟音というアイコンに頼るまでもない! と言い切ることにする。

最後にいつもの一言。
『良い音を授けて下さる方々を、我々が窮屈な型にはめてはいけない』

M-01 Heard About You Last Night
M-02 Simon Ferocious
M-03 Remurdered
M-04 Hexon Bogon
M-05 Repelish
M-06 Master Card
M-07 Deesh
M-08 Blues Hour
M-09 No Medicine For Regret
M-10 The Lord Is Out Of Control
M-11 Bad Magician 3 (Bonus Track For Japan)
M-12 Die 1 Dislike! (Bonus Track For Japan)

ちゃんとしたボートラをくれる日本思いの彼らなんで、Hostessからの国内盤がお薦め。