2011年7月6日水曜日

TRAPIST 「Ballroom」


欧州随一の音響立国:オーストリアはウィーンの三人組による2004年発表の、厳密には二枚目。(初作品はメンバーの連名)
米国はシカゴの音響系総本山:Thrill Jockeyより。

実も蓋もないが、多くの文字情報を詰め込んで聴く音楽ではない。
ドラムのマーティン・ブランドルマイヤーが、同じくThrill Jockey所属のRADIANでも撥を振るっていることぐらい知っておけば、それで事足りる。
多くなればなるほどこのバンドの、この作品の、この音世界の邪魔になる。

一聴、ハードルが物凄く高い音楽である。
ドラムとアップライトベースとアコギによる即興演奏を軸に、さまざまな音色パーツをスタジオに持ち込んで重ねる手法。
ここら辺の〝音響系〟と呼ばれる輩が演る即興は、ただでさえ受け入れづらい即興という手法をこねくり回して聴き手に提供するので、まるで音に〝イチゲンさんお断り〟の札が下がっているように聴こえてしまう(おそらくジャズのDNAゆえだろう)。ストーナーやサイケ連中のように、安易に垂れ流してくれないのが難点だ。
だがココで逆に考えてみよう。この手の音響派連中の即興は、音に一定の理性を介在させて聴き手の快楽中枢を意図的に擽ってくるのだ、と。(演奏者たちだけ楽しんでるインプロは自慰だぞ! そんなの表現じゃないんだぞ!)
更にこのTRAPISTは、スタジオでその即興演奏をわざわざ編集して、より痒い音に仕立て上げてくれるばかりか、もっとむず痒い思いをさせようと、気持ち良い音をわざわざ書き加えてくれているのだ、と。
問題はその音の鳴らし方が聴き手にとって気持ち良かったか、なのだ。

たまにその音がパーツの一片をそっと五線譜の上に置いただけの、旋律にすらなっていない曲もある。リズムにすらなっていないボトムの曲もある。
何コレ、音楽じゃない! と拒否反応を示す前に、その奥で何が鳴っているのかを気にして欲しい。そこには予期せぬ音(グリッチ)を含めた、聴き手の予想だにせぬ副音が細菌のように蠢いているから。

ざーっと粗塗りした幽玄な背景に、きちっと音色を細部まで書き込んだこの音世界は、まるで水墨画のような。
とにかくだらーっと浸って欲しい。頭を使うだけムダ。

M-01 Time Axis Manipulation (Part 1)
M-02 Time Axis Manipulation (Part 2)
M-03 Observations Took Place
M-04 The Meaning Of Flowers
M-05 For All The Time Spent In This Room
M-06 Hello Again (Bonus Track For Japan)

日本盤は6分にも渡るM-06を追加収録。


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