2011年9月22日木曜日

MELVINS 「(Lysol)」


すごいひとびとの、1992年作品。
本来は「Lysol」というタイトルだったが、某防虫剤を発売する会社からクレームが来たので、(右側の文字を消し)セルフタイトルになりましたとさ。
いつものバズ(G、Vo)とデイル(Ds)に、今回は美味しそうなバンドには必ず顔を突っ込むハイエナ野郎、ジョー・プレストン(B)が参加。

ご覧の通り、ランタイム31:21のワントラックアルバムである。六つのパートに分かれた組曲のような創りになっているが、プログレ色は皆無。
“Sacrifice”はUSハードコアパンクバンドFLIPPERの、“Second Coming~The Ballad Of Dwight Fry”はALICE COOPERのカヴァーをメドレー化している。原曲よりもどろっと遅く、ずっしりとしたアレンジになっているのが彼ららしい。

で、まあ……本作初聴の方から貴重な感想を戴くと、まず決まってこう。
「いつ(曲が)始まるの?」
……いやね、始まってるじゃないのさ、微かな唸り声と引きずるようなスラッジギターが。その後、ドラムがシンバルを鳴らして、ベースがワンショットで参入するから待たれよ。Youは二分半も我慢出来ないのかね。
それが始まったはいいけど、コレがひたすら続く訳だ。ドラムがばたばた叩かれだし、ベースが曲のボトムを這い回るまで五分半も掛けて。そこから更に二分くらいコレを引き伸ばして、歌が入るまでトータルの三分の一を使う豪奢ぶり。
コレを長い(だるい、退屈、意味分かんない)と思うなら訓練が足りないし、適当/むしろ短いと思うならもう、どうしようもない。

本作はその〝どうしようもない〟人々に向けられた、こんな〝どうしようもない〟アルバムを創った人々からの〝ご褒美〟だ。
と言うか、ハナから五分も! ひたすらこのヘドロ(Sludge)のようなギター音が延々と続いた時点で! 気・付・け・よ! と音楽ドMの筆者は怒鳴りたい。

この執拗な引き伸ばしは〝焦らし〟なんだよ! と。

反復音をひたすら演ってて脳内麻薬がどばどば出て、気持ちイイから三十分続けちゃいましたァ! なんてダメ廃人などでは彼らは決してない。
むしろ彼らは本作を通して聴き手を煽っている。弄んでいる。からかっている。
最後はココからまた曲が新たに展開して、ぐいぐい来やがるんだろうなあ、と思わせといて……いきなり引く。梯子を外す。
つまり、アルバム終了。
あまりの唐突な幕切れに、聴き手はおそらく三十秒くらいぽかーんとしているだろう。そのマヌケ面を指差してげらげら笑うために、彼らは三十分もの熱いフリを形振り構わず本気で! 演奏し続けたのだ。
いわゆる〝すかし〟という奴さね。

こういう害はまるでないが悪意はある、音を使った後ろ暗いジョークを得意とする彼ら。
ドS、っつかムダな労力だよなあ。最高(にアホ)だわ、MELVINS。

M-01 Lysol
Hung Bunny
Roman Bird Dog
Sacrifice
Second Coming
The Ballad Of Dwight Fry
With Teeth


0 件のコメント:

コメントを投稿