ポルトガルの首都・リスボンのダブトリオ、2007年制作・2008年発表のデビュー作。
ぶっといベース、忙しなくあちらこちらで瞬く装飾音、抜けの良い湿った音像――レゲエの本場・ジャマイカのエンジニアによる卓遊びから発展した〝ダブ〟なる至高のトリップミュージックの延長線上に、彼らは立っている。
そんな彼ら最大の特徴は、三人が三人ともパーカッションを兼任する、トライバルな味付けであろう。
無論、それだけではない。
基本はミニマルのインスト。それぞれ主の担当楽器(ドラム、ベース、キーボード)の前に卓やらシンセを置き、手の空いた者がそれで音色を弄り、楽器に感けている者は手癖でフレーズを燻らせ、曲に引っ掛かりを生んでいくスタイル。その卓から繰り出される音色の傾向がスペイシー特化のため、コズミック・ダブ(Cosmic Dub)と呼ばれているそうな。
その一方で前述の、抜けた鳴り重視の太鼓音を含めたトライバル感覚が奇妙かつ絶妙なマッチングを見せている。
宇宙(Cosmo)の中に原始が内包されている謎空間に、聴き手は何を見出すのだろうか。
ドイツ最強のミニマリスト・CANとの共通項も感じるが、こちらはクラウトロックのキモである執拗反復を求めないところがミソ。
また、基軸であるまったりオフロードなビート曲でアルバムを進めたかと思えば、突如どったんばったんしたロック調のビートパターンの曲を呈してきたり、疾走感溢れる曲で聴き手を煽ってきたり、シンプルに四つ打ちから曲を開始したりと、酢漬けキャベツ勢とは相反したひとところに収まりたがらない気質も魅力。
見たか世界よ、コレがラテンの血だ!
M-01 Ital
M-02 Ubongo
M-03 Dabum
M-04 Frog Scene
M-05 Holy Heads
M-06 Parson
M-07 Crystals
M-08 Drop (Bonus Track For Japan)
M-09 Rauze (Bonus Track For Japan)
2011年、遅れ馳せながら日本でもリリース。その際、2010年にアナログのみで発売した「Overcoat Heat EP」より、A面2曲がボートラとして追加された。
どちらもA面だけあってカッコイイぞ。