2012年3月26日月曜日

THE BOOKS 「Thought For Food」


NYC出身だけど見るからにナードな風貌のニック・ザムートとポール・デ・ジョンのデュオ、2002年発表のデビュー盤。
オリジナルリリースはドイツのTomlabレーベルだが、2011年のリマスター再発はブルックリンのTemporary Residence Limitedからとなっている。その際、ジャケも差し替えとなった。筆者は旧盤しか持ってないし、こっちの方が好きだから古いままで良いのっ!

作風を端的に表せば、ファニーな雰囲気が持ち味のフォークトロニカ。ドラムで拍を取らず、アンプラグド楽器の生演奏に隠し味程度の電子音を振り掛けた音像は、このジャンルの第一人者・初期FOUR TETよりもフォークしている。
だがこの、もはや死語と化しつつあるジャンルの雛型かと言えば疑問符が浮かぶ。

意味の有無を問わせない、妙ちくりんな声ネタ(何で日本語の株放送が?)をコラージュばりにべたべた貼り付けたかと思えば、ザムートがゆるゆる歌ってみせたりもする。トラック構成も、脈絡ない音色がどんどん刷り込まれ、聴き手の脳内を攪拌することしばしば。
アコギはもちろん、ベースやバンジョーやマンドリンやヴァイオリンやチェロなど、弦楽器に特化してふんだんに用いる。主となるアコギも普通に爪弾いたかと思えば、指で弾(はじ)くようにかき鳴らしたり、弦を何かで叩いたり、ベースでいうスラップのような音を出したりと、鳴らし方に必要以上の工夫を凝らしている。
この音への執着心、正にナードの成せる業。

子供の心を持つ大人二人が音を用いて遊び倒す、たのしい音楽じっけん読本。
まったりムードかと思わせておいてその実、かなりはちゃめちゃ。滅茶苦茶なのかと思えば、すっきり明瞭。難読文字にもフリガナ振ってありますよ、と。
一体どっちが実体? と問われても二人、飄々とした笑みを見せるだけ。裏の裏は表。

M-01 Enjoy Your Worries, You May Never Have Them Again
M-02 Read, Eat, Sleep
M-03 All Bad Ends All
M-04 Contempt
M-05 All Our Base Are Belong To Them
M-06 Thankyoubranch
M-07 Motherless Bastard
M-08 Mikey Bass
M-09 Excess Straussess
M-10 Getting The Done Job
M-11 A Dead Fish Gains The Power Of Observation
M-12 Deafkids

でも2012年初頭、ザムーラが解散宣言しちゃったよ。悲しいね。


2012年3月24日土曜日

CHICAGO UNDERGROUND QUARTET 「Chicago Underground Quartet」


シカゴのジャズ大将:ロブ・マズレクの加減算プロジェクト、四人組では唯一の音源。2001年作。CHICAGO UNDERGROUND系(以下CU系)としてはコレの次にリリースされた。
今回はいつものThrill Jockeyからのリリース。いつものSoma Studiosでいつものマッケンさんが録る〝恒例行事〟と書いて〝おやくそく〟と読む体制。

メンバーはマズレク(コルネット)、チャド・テイラー(ドラム)、ノエル・クーパースミス(ダブルベース)、ジェフ・パーカー(ギター)……って、TRIOと同じ編成じゃないですかー、やだー!
だが今回は〝QUARTET〟だからして、四人フルの演奏が満喫出来る。三人しか同時に鳴らせない制約などない、フルコンタクトなプレイが売り! と思っていただきたい。
だからか、今回は割とバラエティに富んでいる。
どっぷりジャズな曲もあれば、パーカーが大活躍するTORTOISEっぽいギターフレーズをフィーチャーした曲もある。水墨画のようなポストロック的テクスチャーをジャズで翻案した曲もある。如何にもフリージャズ然とした、ポリリズミックな曲だってある。アルバムが終了し、暫しの空白後に起こるどっきり仕掛けだってエキサイティングだ。
メンバーそれぞれ自作曲を提供して編んだのが、この多様化の要因である。

それらを締めるのが、四人の真ん中にどんと聳え立つ野太いジャズの御柱であり、バンマスのマズレク大将が鳴らすコルネットの音だろう。
不動の軸さえあれば何を演ったって許される。おまけに我々下々の者どもにも分かりやすく咀嚼される付加価値も生まれる。

そうなれば本作が、CU系の音世界を一望出来る総決算アルバムだと言い切ってしまえ、この先の締め文への展開が楽になる。
CU系全主要構成員が、己の我を出すべく各々が曲を持ち寄り、結果として多角的な作品となり、でもジャズとしか言いようのない作風を貫き、マズレク大将ありきの、気持ち良い曲ばかりが詰まった高品質アルバム。
CU系に興味が沸いたのなら、まずはコレ! と言わんばかりの見本市。

M-01 Tunnel Chrome
M-02 Four In The Evening
M-03 A Re-Occurring Dream
M-04 Welcome
M-05 Three In The Morning
M-06 Total Recovery
M-07 Sink, Charge, Fixture
M-08 Wo Ist Der Kuchen, Meine Frau
M-09 Nostalgia
M-10 Dance 99 (Bonus Track For Japan)



2012年3月22日木曜日

TWO LONE SWORDSMEN 「Stay Down」


ウェザオール/テニスウッドの極悪タッグ、Warp Recordsデビュー作(通算二作目)は1998年発表。

音世界はアシッドでもあり、エレクトロでもある。改めて聴き直すと、随分と初期段階からこの表現軸を貫いていたんだなあと気付く。
ただ、本作のキーワードは、ジャケを見ての通り〝水中〟である。
水を打ったような静けさから響く、ささやかな音像。こぽこぽと水泡を上げる音色。時折切り出される、水槽の中で鳴らされているかのようなくぐもった主音。
ダビーな音像、と言えばそうなのかも知れないし、ダブとはちょっと違った空間処理、と評しても間違いではない、何ともけったいなテクスチャー。
明らかにジャケをはじめとするコンセプトを意識して音を創っている。もしくは聴き手の脳内がジャケに喚起され、鳴らされている。
こうなるともう、それを意識して組んでいないトラックまでそう聴こえてしまうのだから、なかなかどうして絶大なインパクトを持つ音世界だ。

〝水中エレクトロニカ〟――何とニッチな響きのジャンルかー。

舞台は水族館でも、水槽でも、日光が差し込む程度な深さの海中でも構わない。くらげになったような気分でぼけーっと聴き浸って欲しい。キモチイヨ。
特に明るくはないが、それほどおどろおどろしい暗さもないので、深海までイメージせずとも良いと思う。キモチワルクナイヨ。
けど、それはそれで別枠で聴きたい気がする。

〝深海エレクトロニカ〟――何とわくわくする響きのジャンルかー。

M-01 Hope We Never Surface
M-02 Ink Cloud
M-03 The Big Clapper
M-04 Ivy And Lead
M-05 We Change The Frequency
M-06 No Red Stopping
M-07 Spine Bubbles
M-08 Mr.Paris's Monsters
M-09 Light The Last Flare
M-10 We Discordians (Must Stick Apart)
M-11 Alpha School
M-12 As Worldly Pleasures Wave Goodbye


2012年3月16日金曜日

BONOBO 「Days To Come」


Ninja Tuneの番人、サイモン・グリーンによる2006年作の三枚目。

スモーキーなブレイクビーツから、ジャズオリエンテッドな方向性へ――Ninjaも時と共にそのカラーを変えてシーンに君臨し続けている。
別にお互い争っている訳ではないが、保守派中堅どころの彼もようやく三枚目で作風を軌道修正してきた。言い方は悪いが、革新派Ninja路線に迎合する形で。
具体的に言えば、以前からジャズ色はあったものの、当時Ninja主力のシネオケばりに前面へ押し出すようになった。M-08などその最たるトラックだろう。既にイントロのM-01から、短いながらもその彩を予告している親切設計。
ほら、何せ〝Ninjaの番人〟なのだから。主の変革に付き従うのは是当然。それよりも、何の違和感もなく進化を遂げているこのさり気なさ。
そうなれば自ずと生音の含有度も以前より増す。その大半はグリーン自身が弾いている。

あらあら、古き良きNinjaテイストを守る彼にしてはなかなか冒険したこと。いやいや、この程度の変化はまだまだ序の口。
コレより分かりやすく、しかも大胆な新機軸カードをグリーンが切ってきた点を書かねば、このかんそうぶんの意味がなくなる。

ずばり、いづれもDisk-1のM-02、M-03、M-06、M-10でインド生まれの女性シンガー・BAJKAが、M-09ではレーベルメイトである〝英国のジャック・ジョンソン〟FINKがゲストヴォーカルとして迎えられた――コレに尽きる。
今まで声をサンプルソースに使ったコトはあるが、歌モノは初の試み。
無論、全てにおいてそつのないグリーンが的確に〝歌声〟という最強の音色をトラックに当てはめているのは言わずもがな。むしろ今後、凛としたしなやかさが持ち味のBAJKAを加えて、BONOBOは巷でよくある男女デュオ編成になるべきさ! と進言したいくらい良き彩を曲に齎している。FINKは独りでアコギ抱えて頑張んな!

全体的に一皮向けた印象。このまま、スモーキーかつジャジーな〝Ninjaの中のNinja〟なアーティストに成長して欲しい。

Disk-1
M-01 Intro
M-02 Days To Come
M-03 Between The Lines
M-04 The Fever
M-05 Ketto
M-06 Nightlite
M-07 Transmission94 (Parts 1&2)
M-08 On Your Marks
M-09 If You Stayed Over
M-10 Walk In The Sky
M-11 Recurring
Disk-2
M-01 Days To Come (Inst.)
M-02 Between The Lines (Inst.)
M-03 Nightlite (Demo Ver.)
M-04 If You Stayed Over (Inst.)
M-05 If You Stayed Over (Reprise)
M-06 Walk In The Sky (Inst.)
M-07 Hatoa

最後にDisk-2だが、Disk-1中の歌モノトラックのカラオケみたいなモンで特筆すべき点はない。強いて挙げれば、誰が歌っているか分からないが(もしかしてグリーン本人?)、M-03でBAJKAとは異なるアプローチの歌メロを執っている部分くらい。
とは言え、歌抜きでもさほど空白部分を感じさせないトラックを組める彼の実力を、このおまけで再認識出来るのでは。


2012年3月14日水曜日

ZU 「Carboniferous」


イタリアはローマ市内の港町・オスティア(M-01の曲タイトルになってるね)出身の激烈サックストリオ、2009年作の単独名義としては四枚目。異形の音楽をこよなく愛すマイク・パットン将軍設立のIpecac Recordingsより。
もちろん将軍はとっても出たがりなので、M-06に例の躁鬱ヴォーカルで自ら出陣。M-10では〝声〟という音色使いを披露。おまけにM-02ではレーベル看板バンド:THE MELVINSのギター兼ヴォーカル、バズ・オズボーンも参戦。なお、このギターテイクを録音したのが〝メルヴィンズ第五のメンバー〟トシ・カサイ
イピカックファミリー全面バックアップ。

サックスプレイヤーのルカ(きゃわわな女のコじゃないよ。ごっついおっさんだよ)が吹くのはバリトンサックス。それをベースのマッシモとドラムのジャコポが支える重低世界。野太い音塊が地を這う鈍牛サウンドを想像される方も多いと思う。
だが予想に反して、M-01からいきなりかっ飛ばす、もうがっつーんと。
ジョン・ゾーンばりにイカレたブロウをかましたがるルカ。印象的なフレーズでド低音を徹底して堅守したがるマッシモ。リズムキープは裏打ちばかりな上、キメは小節の末端まで音符を盛り込みたがるジャコポ。
いわゆるマスロック――いや、音の質感からマスコア(日本ではカオティックコアと呼ばれている)の類で扱われることだろう。(ちなみに〝マスロックと〝マスコアは出所が全然違うので注意しようぜ。〝エレクトロニカと〝エレクトロ以上に異なるのさ)

とにかく混沌。複雑怪奇。聴き手の脳裏にずっしり重低音。

だが彼らは、ただ複雑であればいい、テクを駆使して中身がないのをごまかせば良い、なんてちょけた変態バンドでは一切ない。そんなポーザーを変態音楽界の大家、パットン将軍が見込む訳がない。
彼ら最大の長所は〝サックスハードコア〟という唯一無二の編成や高度な演奏技術以上に、どんな相手とも巧く共存共栄出来るスマートさにある。
例えばM-02ではそこはかとなく、バズが所属するMELVINSのカラーを滲ませている、自分たちがこのヴェテランに食われない程度に。M-06は誰と演っても唯我独尊の将軍なので些か分が悪いが、このインストヴァージョンである日本のみのボートラ・M-11を別個の楽曲として成立させている(ルカと将軍のキーが噛み合わなかったらしい)、単なるカラオケに堕せず。
また彼らは、ヒップホップ界の反逆児・DALEKや、元CANの和製ヒッピー・ダモ鈴木や、日本が世界に誇る電子音響の匠・竹村延和など、全く畑違いの相手とコラボを繰り広げる猛者でもある。
そこに飽くなき音楽への探究心と揺るぎない己があるからこそ、誰と組んでも当たり負けしない強靭さを持ち得るのだ。

ヘヴィで、アクが強いのに順応性があり、なおかつ音楽IQが高い。コレがIpecac移籍後初アルバムとは思えないほどレーベルカラーにフィットしている。
スリーピースって良いよね。個性漲るって感じでさ。

M-01 Ostia
M-02 Chthonian
M-03 Carbon
M-04 Beata Viscera
M-05 Erinys
M-06 Soulympics
M-07 Axion
M-08 Mimosa Hostilis
M-09 Obsidian
M-10 Orc
M-11 Vexilla (Bonus Track For Japan)



2012年3月12日月曜日

THE DEAD KENNY G'S 「Operation Long Leash」


とうとう三人で立つ!
ちっとも動けない本体・CRITTERS BUGGINに業を煮やし続ける、スケリック(サックス)、ブラッド・ハウザー(ベース)、マット・ディロン(打楽器類)が、再びマット・チェンバレン(ドラム)を省いて結成した場繋ぎバンドの2011年作品、二枚目(一枚目は自主流通盤)。ブルックリン発、へんてこ新興ジャズレーベルThe Royal Potato Familyからのリリース。
録音は例のStudio Litho(オーナーはPEARL JAMの人)にて、技師はSUNN O)))EARTHを手掛けたランドール・ダン、という泣かせるシアトル人脈。

つか何なのよこのバンド名。ゲートフォールドの紙ジャケを開いて嘲笑して欲しい、もちろんあのカーリーヘアのサックス吹きではなく、コイツらを。

M-09では作曲クレジットにも名を連ねているし、チェンバレンとはケンカ別れではないと思いたい……セッション活動が相変わらず多忙なだけで
代わりにドラムセットへ向かったのは、言うまでもなくディロン。もちろんパーカッションも、最近の定番になりつつあるヴィブラフォンも兼任。
と来ればアレ。『TORTOISEみたいなコトやってみっか!』。M-01が露骨に最近の亀さんぽくて苦笑してしまうこの曲、盛り上がるに連れて何とブラストビートが飛び出す奇天烈さ。さすがに〝TORTOISEの甲羅〟たるマッケンさんもココまではっちゃけない。
以後、ちょくちょくブラスト放ってみせたり。いつもより盛んにサックスがブロウしてたり。展開が無節操にごろごろ変わる変態曲演ってみたり。一瞬だけごりごりっとハードコアになってみたり。いやむしろサックス入りハードコア演ってたり。ディロンがへなちょこラップかましてみたり。一変、びっくりするほどド真面目にムーディなジャズを演ってみたり。
まあ忙しないことで。

ココらでこう思われる方も居らっしゃるかも。「ディロン、いやに頑張ってね?」と。
その通り、前回ですっかり主役のスケリックを食う勢いだった彼が更に図に乗ったのが本作。ドラムながら六曲も作曲に関わっている。
風貌からして如何にも陽気でガサツでパワフルなアメリカンドラマーの彼。その雰囲気が、作中で時折漂うあほっぽさを引き出しているのだろうか。参加直後のクリバギ作品も可笑しな空気が内包された怪作だったので、さもありなん。
とはいえ真面目に演れることを証明している連中なので、本作もきちっとアレンジを練って――いや、どうなのか……? 結構行き当たりばったりに曲を展開させている節も……。

そんないい加減なトコも彼らの魅力っ。
ほら、バンド名がDEAD KENNEDYSのモジリですから。パンクですから。ノーフューチャーにデストロイしなきゃ――って本来、クリバギってこんな風にテキトーだしィ。

M-01 Devil's Playground
M-02 Black Truman (Harry The Hottentot)
M-03 Melvin Jones
M-04 Black Budget
M-05 Black Death
M-06 Bucky Balls (Spherical Fullerene)
M-07 Luxury Problems
M-08 Black 5
M-09 Sweatbox
M-10 Jazz Millionaire

M-02ではスケリックの別プロジェクト・GARAGE A TROISにメンバーとして名を連ねる八弦ギタリスト、チャーリー・ハンターがゲスト参加している。
ちなみにGARAGE A TROISは本作と同じThe Royal Potato Family産。



2012年3月10日土曜日

CHRIS CLARK 「Clarence Park」


現CLARKの記念すべき初アルバム。2001年作品。
本来はコレ、ミニアルバム扱いだったのに……いつの間にかフルアルバムに昇格しているのは、大人の事情なのか「いんだよ、細けぇ事は」なのか。

ランタイムは三十分少々と短め。一分台の間曲を随所に配置しているからか。
そんなコトよりもまあ、当時は言われまくりましたよ、例の〝Aphex Child〟と。
でもこうして後日、腰を落ち着けて聴いてみれば『そこまで似てるかァ?』と首を傾げたくなるのは、比較的フォロワーやらエピゴーネンやらに寛容なつもりの、筆者の印象
音色使いは確かにリチャDっぽい部分が強い。もうコレは影響土壌という名のDNAなのだから、デビュー盤で希釈出来るようなモノではな――
ああもう、そんなのどうでも良い! デビュー作で既にこの出来! という無限の可能性に焦点を当てて欲しいのさ! 似てる似てないとか抜きにしてさあ。
それに、後々引き継がれる彼ならではの特性も、この時点で萌芽を見せているし。

音色を崩壊寸前まで――いや、崩壊したらその地点で臨界点を定め直す、破天荒かつ過剰な音響工作は、まるで玩具を買い与えられた幼児の如き無邪気さよ。
この人は本当にトラックを組むのが好きなんだろうなあ。〝呼吸するかのようにトラックを創る〟リチャD擁するコーンウォール一派のような。
ああ、そうなるとやっぱり、どうしようもなく彼はWarpの申し子だなあ。〝Aphex Child〟に括られた点はそこにあるのかもなあ。

こんな彼の原点たる作品がようやく、約十年越しの想いが実り、日本盤化されましたよ。3rd「Body Riddle」期にWarp Records直営の通販・Warpmart限定で切られた音源+未発表曲追加の超お得仕様で!
『アルバムを出す時期が売り出し期』――つまりいつ大ブレイクしてもおかしくない完成度の作品を連発するCLARKなのに、六枚目期で思い出したようにリイシューとは些か遅くありませェん? と嫌味のひとつくらいBeatinkに言ってやりたい筆者はふと気付いた。
ああ、次がとうとう日本でのCLARKの売り出し期なんだそうなんだ。

彼はようやくのぼりはじめたばかりだからな、このはてしなく遠いテクノ坂をよ……。

Clarence Park
M-01 Pleen 1930's
M-02 Dogs
M-03 Proper Lo-Fi
M-04 Oaklands
M-05 Bricks
M-06 Emw
M-07 Laugh With Hills
M-08 Chase
M-09 Lord Of The Dance
M-10 Caveman Lament
M-11 Fossil Paste
M-12 Diesel Raven
M-13 Shrewland
M-14 Nostalgic Oblong
Throttle Clarence
M-15 Wicked Life
M-16 Lady Palindrome
M-17 Friday Bread
M-18 Proper Mid-Fi
M-19 Bob Dedication
M-20 820689
M-21 Alpha Dodgem Fortitude
M-22 Mother McKnight
Bonus Tracks
M-23 Guitar Solo
M-24 Racloir
M-25 Perfectly Welcome
M-26 Sabbath
M-27 Robinson Crusoe
M-28 Vac Vac Taurus


2012年3月8日木曜日

SLICK SIXTY 「Nibs And Nabs」


前職が揃ってピザ配達スタッフという、英国三人組による1998年作品。
オリジナルリリースはトリップホップ流行期に総本山・ブリストルのブレイクビーツシーンの受け皿となっていたCup Of Tea Recordsからだが、その営業縮小と共に老舗インディーズMute Records(現在はメジャーのEMI傘下)でリイシューされている。
残念ながら本作は彼ら唯一のアルバム。加えて、Cup Of Tea Records最期のアルバムリリースとなってしまった。

ブリストルといえばMASSIVE ATTACK界隈。その界隈といえば、もわーっとしているが抜けの良い音像と、湿った陰鬱さを持つブレイクビーツ。
彼らもその路線かといえば、七割方合っている。現にレーベルコンピに提供されたM-01とM-02は、陰鬱さはないもののその方向性ではある。
だがこの間の抜けたアルバムジャケットを見るからに、それだけでは収まらない空気をそこはかとなく感じまいか。

ジャケは内容を映す鏡である。それこそ固定観念なんぞよりもよっぽど信頼が置ける。

ブルースハープを使って郷愁を誘うまったり曲のM-03の次、M-04ではせっこい音色のシンセにヴォコーダーのロボ声とあほスクラッチが絡むおマヌケトラック。M-05では素人臭さがぷんぷんするミドルティーン声のラップを(わざわざゲストとして迎えてまで)フィーチャー。管楽器の使い方もあほさを助長させる。
そろそろ、ジャケでイキるあんこ体型のレスラーが可愛く見えるはずだ。
その一方で、M-04のリミックスであるM-06。ロボ声とベースラインとビートはまごうことなきエレクトロのそれなのだが、背景や装飾音にまるでそれっぽくないパーツを嬉々として織り込む小癪な真似も。M-08では当時爛熟期にあったビッグビートのオマージュ曲となっている、一手遅れな流行への迎合も。

確かにビートの組み方が一世代前の古臭さだし、トラック構成も時代遅れの感はある。だがそれすらも、アルバムを覆うとぼけた雰囲気にかかれば魔法のスパイスとなる。
むしろ今だからこそ楽しい。にやにやしながら聴こうぜ。

M-01 Hilary, Last Of The Pool Sharks
M-02 Recliner Classic
M-03 Someone Else's Square
M-04 The Wrestler
M-05 God's Own Dustmen
M-06 Dun Deal (Wrestlers Rematch)
M-07 Margo's B&B
M-08 Mungo, Return Of The Master Blaster
M-09 Bridgette's Dustman (Reprise)
M-10 The Wrestler (Radio Edit)


2012年3月6日火曜日

PYRAMIDS with NADJA 「Pyramids With Nadja」


カナダのスラッジ夫婦が、へんてこ五人組ハードコア風バンドとコラボった2009年作品は、Hydra Head Recordsより。PYRAMIDS側にとって、レーベルオーナー(元ISIS)の妻、フェイス・コロッチャ(MAMIFFER)加入後初の音源になる。
なお、アートワークは彼女が手掛けている。

以前紹介した通り、PYRAMIDSはアート志向が鼻に付く、狙い過ぎなくらい変なバンドだが、本作はそこまで聴き手の口角は歪まないはず
まず、相方のNADJA自体が現実主義的な曲創りを標榜するユニットであること。奇を衒わず、冒険をせず、実直に己の中の様式に忠実な音世界である、と。
次に、裏を返せばPYRAMIDSも同じイデオロギーで曲創りをしていること。奇は衒っているが、ある一定の約束事を忠実に守り通した音世界である、と。
また、このふた組は影響土壌がほぼ重なること。
しかも、その影響土壌を露骨に作品へと反映すること。
こうなるとさすがにコラボ作品。NADJAも得体の知れない若手の良いようにはさせない。

さて、以上を踏まえて出て来た肝心の楽曲は……やはり、シューゲイザーの匂いがするドローンアンビエントだった。

全て10分越えの長尺曲なのは如何にもNADJA。曲によっては響いてくる単調なバスドラのキックはPYRAMIDSの十八番。M-03のような重苦しいスラッジ味はNADJAがEARTHやSUNN O)))を介して持ち込んだ音。音世界が耽美的なのはもうPYRAMIDSそのもの。
一方、マイブラ愛を隠そうともしない部分はふた組の共通点。音が頭上から降り注ぐような空間処理もそう。
やはり非常に分かりやすく出来ている――点も一緒。

よくコラボ作品で語られる『両バンドが激しく火花を散らす~』ような空気ではない。『双方の個性が巧く溶け合った~』のも、少々違うかも。
『双方のベクトルが奇跡的に被った~』ある意味稀な競演作品。

M-01 Into The Silent Waves
M-02 Another War
M-03 Sound Of Ice And Grass
M-04 An Angel Was Heard To Cry Over The City Of Rome


2012年3月2日金曜日

TORTOISE 「TNT」


説明不要の亀さん、三枚目。1998年作品。

バンドの首魁〝マッケンさん〟ことジョン・マッケンタイア(Dsなど)が、自らの根城・Soma Studiosに籠もり(M-03とM-08の録音のみ、別のスタジオにて)粛々と執り行ったそのレコーディング、何と1996年11月より開始の1997年11月終了。丸一年も費やしている。
その間、ギターがデイヴッド・パホ(元SLINT。後に自らのプロジェクト・PAPA Mを結成)からあのマズレク大将(本作にも堂々参加)ユニット常連で亀さんメンバー唯一のジャズ畑プレイヤー、ジェフ・パーカーに代わっている。そりゃ誰か飽きるわ。
それはもう難産だったろうさ。苦しかったろう。しんどかったろう。

だが皆さんは少年少女の頃、ゲームに夢中になるあまり、夜更かし、徹夜、あまつさえ学校をサボったりしなかっただろうか?

今では誰もが使っているハードディスクレコーディングシステム〝Pro Tools〟。マッケンタイアの実践投入はSTEREOLAB「Dots And Loops」の方が先だが、TORTOISEでのレコーディングはコレが初。しかも当時、普及しているとは言えず〝魅惑の箱〟扱いだった。
雇われ仕事なら期日はあるが、自分たちの作品なら好き勝手に時間を費やせる!
そりゃもう、レアアイテムゲットやらレベルカンストやらディープダンジョンや裏ルートやらを攻略する勢いで、録音された音(素材)を弄り倒すでしょうよ。Pro Toolsという恰好の玩具を使って、嬉々として。
実はつらくも苦しくもなかったはずさ。楽しんでやがる!

こうして出来上がった作品は非常に端正なモノとなった。
生音を基調としているが、ところどころ打ち込みも噛ませてある。その音色に少々チープな素材を用いているのは、艶も特徴もあるメンバーの演奏と対比させるためであろうか。
This Is TORTOISE!! とも言うべき西部劇ちっくな弦楽器や、シロフォンなどの看板音色を引き立たせるべく、あちこちで打ち込み/生音ない交ぜにした装飾音で聴き手の耳のあちこちをくすぐり続ける。
その生音使いも、いったんハードディスクに取り込んでからループさせたり織り重ねたり鳴らす場所を散らしたりするなど、今では常識となったPro Toolsの編集機能を縦横無尽に使いこなし、嫌味なく構成している。
また、ドラムンベースちっくなビートパターンを組み込むなど、既存の方法論から逸脱するような動きも。
微に入り細を穿つような。

もしかしてこう操れるまで、一年もの実験期間を要したのかも知れない。
そんな地道な完コンプ実験が、後世の録音技術に多大な影響を与えている。与えているからこそ、本作は今でも色褪せぬ超名盤として崇められている訳だ。
いろんな意味で教科書盤。一家に一枚、是非。

M-01 TNT
M-02 Swing From The Gutters
M-03 Ten-Day Interval
M-04 I Set My Face To The Hillside
M-05 The Equator
M-06 A Simple Way To Go Faster Than Light That Does Not Work
M-07 The Suspension Bridge At Iguazu' Falls
M-08 Four-Day Interval
M-09 In Sarah, Mencken, Christ And Beethoven There Were Women And Men
M-10 Almost Always Is Nearly Enough
M-11 Jetty
M-12 Everglade
M-13 TNT (Nobukazu Takemura Remix) (Bonus Track For Japan)

ボートラM-13は原曲のツボをきちんとを捉え、自らの持ち味は最大限に引き出す好リミックスなので、ぜひ日本盤を。