2012年7月30日月曜日

FUNCKARMA 「Re:Elaztiq Bourbon 5」


オランダ出身、ドンとローエルのファンケン兄弟によるエレクトロニカユニットの編集盤。2005年発表。
内訳は、2002年「Elaztiq EP」からM-09、10、11。同年「Bourbon Sound EP」からM-01、04、06、08。翌2003年「Part 5」からM-02、03、05、07。それに日本のみ、「Elaztiq EP」収録曲なのになぜか割愛されたM-12にKETTELのリミックスM-13を加え、構成されている。

言うまでもなく彼らはNONGENETIC率いるアングラヒップホップクルー、SHADOW HUNTAZのトラックメイカーだ。ならば本作はヒップホップ流儀に準じたブレイクビーツ音楽なのかと言えばさにあらず。
向こうの作品ではある程度、作風をすり合わせていた。もちろん、自己作品にそんな配慮は要らない。
ひたすらデジデジしく、メロディにも気を配ったインストニカ。ヒップホップ色は薄いが、薄暗いトラックばかりなので〝ある意味アブストラクト〟なのかも知れない。
本来、そんな作風。

となると真っ先に思い浮かぶ音像がBOLA師匠。

はっきり申し上げて、音世界は似てなくもない。そこを論う、嫌な聴き方も出来る。
ただ、彼らの場合はトラック構成が相当異常だ。
BOLA師匠は音数を切り詰め、主音を立ててトラックを組んでいるが、彼らはまるで逆。これでもかとばかりがんがん音色を詰め込む。しかもグリッチのような無機的な音ではなく、記譜出来なくもない有機的な音を惜しげもなく用いるのだ。
寄木細工のような整合美、と評して憚らない。

メロディを味わうだけでなく、構成力や引き出しの多さを堪能出来る本作は、編集盤ながらなかなかどうして気持ち良い作品となっている。
ただ、安直に分かりやすいトラック進行と派手な音色使いを披露しているKETTELのリミックスはコレで良いのか浮いてるのか……。

M-01 Noir
M-02 Strip
M-03 Pipe
M-04 Sphere
M-05 Lignite
M-06 Velvet
M-07 Loaded
M-08 Sparkzz
M-09 Brik
M-10 Dredge
M-11 Bump
M-12 Elaztiq (Japanese Bonus Track)
M-13 Loaded (Kettel remix) (Japanese Bonus Track)


2012年7月2日月曜日

STEREOLAB 「Cobra & Phases Group Play Voltage In The Milky Night」


仏国人のレティシア・サディエール含む女声ツインヴォーカルを軸に、英国人のティム・ゲインが統括する、五人組おしゃれバンドの七枚目。1999年作品。
ジャケは言わずもがな、ジュリアン・ハウス。

某まんがのせいかは分からないが、このバンドを「オサレな輩がファッションでBGMにするスカしたバンド」と思っている方も居るのではなかろうか。
まあ、それも良い。
ただ、それだけじゃないのよ、と。もっともっと音楽に対して真摯なのよ、と。

元々がラウンジやモンドやクラウトロックのような、今となっては古めかしくて妖しい響きの音楽を自らの血肉にしたバンド。(そんなトコが、サブカル≒オサレ扱いされる所以か)
そこへ、ブラジル音楽の要素を本格的に取り入れてきたのが本作。
ハナのM-01から、南米特有の肉感的なビートを敷き、ゲスト参加のロブ・マズレク大将が気泡のようなコルネットを鳴らし(他、M-02、06、08、13でもプレイ)、そこへヴィブラフォンとギターのカッティングを重ね、女声二色のスキャットを絡める――そんなわくわくする曲から始まる、今までの彼らでは味わえなかった「ドーンときてガシャーンとやられる感覚」は特筆モノ。
一夜漬けのイッチョカミでは湧き上がらない抜群の咀嚼/吸収力と、この作品で演りたいコトが迷わず具現化出来ている点、そこが大きい。

その一翼を担っているのがやはり、前々作よりプロデュースするジョン・マッケンタイア。時折、顔を覗かせるヴィブラフォンや、おかしな手数のドラムは彼のプレイによるもの。
そんな彼が指揮する曲はM-01、02、04、06、08、10、13、15。
では他のM-03、05、07、09、11、12、14はと言えば……何とあのジム・オルーク。M-05やM-11から12などの落ち着きのなさや酩酊感は如何にも。

未だ在籍しているのか外部からの助力なのか分からないショーン・オヘイガン(HIGH LLAMAS)を含めて、これだけの辣腕に支えてもらえるのも偏に、七枚ものオリジナルアルバムを重ねてきた実績と、その実が伴った本人らの力量と、自己を確立しても尚、貪欲に新たな音を取り込もうとする努力に他ならない。
本物だからこそ〝おしゃれ〟なのだな。

M-01 Fuses
M-02 People Do It All The Time
M-03 The Free Design
M-04 Blips Drips And Strips
M-05 Italian Shoes Continuum
M-06 Infinity Girl
M-07 The Spiracles
M-08 Op Hop Detonation
M-09 Puncture In The Radax Permutation
M-10 Velvet Water
M-11 Blue Milk
M-12 Caleidoscopic Gaze
M-13 Strobo Acceleration
M-14 The Emergency Kisses
M-15 Come And Play In The Milky Night
M-16 Galaxidion (Bonus Track For Japan)