2013年8月30日金曜日

ありえへん! L.O.T.W.式音楽用語解説・其の5


やめてくださいよ! 暑いぞ! ムカつくんじゃ!
よって今年も月々の目標、月六回更新は出来そうもありまてん。すまんな
But! 一縷の望みを賭け、挑んでこそぎゅぁんぶらーじゃありまてんこと? (ヲホホホホ
だからまた日にち捏造しちゃいまった! 
後日埋めりゃEんでしょ! 梅りゃ! (逆ギレ

つーこって今回はBeatについてー!
さーあ、いつもの行きますよー! 皆さん、御唱和ください!
カッコEビートは正義(Justice)!!!!!!!!!!!!!!

2013年8月28日水曜日

PELICAN 「Australasia」


シカゴの四人組ヘヴィインストバンド、2004年の初アルバム。ISIS:アーロン・ターナー運営のHydra Head Recordsより。(現在はレーベル閉鎖中)
ジャケデザインは言うまでもなく社長、御自ら。

音世界はポストロックにも通じるヘヴィミュージック。分厚いギターリフ主導で曲が展開し、起伏は展開任せ。無論、一曲一曲は長め。
そのリフ構成は、フィードバックに逃げたり、カッティングやワウのような変化球に溺れたりせず、ひたすら剛球一本槍。ベースはひたすらユニゾン。初アルバムらしい衒いのなさが魅力だ。
それを単調、と論うのは簡単だが、ココまでリフリフアンドリフと貫かれれば、ヘヴィリフへの耐性如何で清々しい思いに駆られるのではなかろうか。
この手のバンドにありがちな、めそめそした叙情性(つまり〝エモさ〟)が皆無で、剛球ならではの漢の哀愁を漂わせているのも良い。
以上を踏まえ、メタルっぽいマチズモを感じさせて受け付けないわー、と仰られるならこのバンドは眼中に入れなければよろしかろう。

で、そこら辺を受け入れられる激音慣れした耳の方々へ、このブログっぽい難点を提議するならば――
『この手のバンドってポストロックにも通じる音楽性なのに、音響に対するこだわりがないのは何でなの?』
鳴らし方、外し方、崩し方、乱し方、鳴らす位置、鳴らす音量、それらによる効果と反映のさせ方――をさほど考えず、雰囲気だけ近付けたこの手の音楽性を安易に〝ポストロック風〟と括ってしまう風潮に、筆者は違和感を感じてしまう。
音の快楽はどうしたのさ!

そんな重箱の隅を突付く筆者など捨て置いて、このアルバムは曲展開の構築美と力技の成せる熱量が存分に味わえる良い作品だ。
それはそれ、これはこれ。

Disc-1 「Australasia」
M-01 Night End Day
M-02 Drought
M-03 Angel Tears
M-04 GW
M-05 Untitled
M-06 Australasia
Disc-2 「Pelican EP」
M-01 Pulse
M-02 Mammoth
M-03 Forecast For Today
M-04 The Woods

二度目の日本盤はデビューEP付きのお徳盤。しかもゲートフォールド紙ジャケ仕様。


2013年8月26日月曜日

RED SNAPPER 「Key」


Warpな人力アブストラクト四人組の復活作。四枚目、2011年発表。
一応メジャーのV2 Beneluxより。

曲の運転手たるウッドベースのアリ・フレンド、タイトなビートをカマしてくるドラムのリッチ・サイアー、湿乾自在の音色(ねいろ)で彩を与えるギターのデイヴ・エイヤーズに、クラリネット/メロディカ/サックスを使い分ける便利屋のトム・チャレンジャーが加わった。
それによる変化は、特になし。今まで通りの多角的な人力アブストラクト。
強いて挙げれば、サイアーのビートパターンがちょっぴり複雑化したかなとか、若干ループを頼る傾向が出てきたかなとか。フレンドがウッドベースだけでなく、M-07のようにエレクトリックベースも弾くようになったとか。
――あ、本作からフレンドがちょくちょく歌うようになった!
最大の変化はコレかもしれないが、元々歌入り曲はアルバム構成のアクセントに過ぎないバンド。フレンドがRED SNAPPER解散後に組んだCLAYHILLより連れて来た渋い声のギャヴィン・クラーク(M-04、06)と、ハスキーな声色の女性ソロシンガー:イライザ・カーシー(M-03、08)も当たり前の顔をして流れに溶け込んでいる。
――いや、M-08はパワフルなビートとスペイシーなギターフレーズの上へカーシーおばさんの熱唱が被さる中、チャレンジャーがサックスでベッタベタな合いの手を入れるという、80年代の臭い漂うダサさ紙一重の強烈な曲が一際異彩を放っている。
ただ、今まで彼らはこのような妖しい変化球をアルバム毎にしれっと含ませてきた食えないバンド。この異色ぶりも計算の内だろう。

このように、いつも通りなようで、十年も経てばちっとは作風も変わるわな、と思わせといてやっぱり根っ子の部分はどっしり御柱、という安定性が魅力。
そんな中、今までゲストで賄ってきた金物系パートをチャレンジャーで固定出来たのは大きい。彼のフレーズワークは若干ベタな傾向はあるが、現時点で最良のピースかと思われる――バンド自体がアクの強さを売りにしている訳でもないし。
――じゃあ何を売りに、彼らは音楽を演っているのかって?
こんな演奏が手堅く巧くて、四人のアンサンブルも完璧で、しかもフロアを縦にも横にもロッキンさせられるバンドが、ふらっと立ち寄ったライヴハウスで演ってたらどうよ? カッコ良過ぎて、しっびれるぜー?

M-01 In Your Backs
M-02 Chimee
M-03 Biffa Bacon
M-04 Jack
M-05 Spiky
M-06 Architectronic
M-07 Take Your Medicine
M-08 Loveboat
M-09 Eye Liner Stab
M-10 Great First Touch
M-11 Racing Snake
M-12 Off Balance
M-13 Fat Roller
M-14 You Read My Cards Wrong


2013年8月18日日曜日

R + NAAAA 「R + Naaaa」


日本ビート学の権威・RIOW ARAIが五名の女性シンガーを迎えた歌モノアルバム。2009年四月発表。(コチラ同年十一月発表)
ユニット名は〝あーるぷらすなー〟と読む。

参加シンガーはNONPAREILLE(ノンパレイユ)こと平松奈保子ANNA YAMADA(山田杏奈)、スペイン帰りのAKANE DEL MAR、日独シューゲイザー同盟・GUITAR(注:ユニット名)AYAKO AKASHIBA(赤柴亜矢子)KARENACHICO。しんみり型あり、クール型あり、ウィスパーあり、オーソドックスありと、人選に多様性があり〝音色としての歌〟を意識していることが窺われる。
だからと両極端に、静謐トラックとガッツンガッツンアゲていくアッパートラックが同居している訳もなく、おおむねアルバムはチルアウト方向でしっとり進行してゆく。

ではRIOW ARAIのほぼ代名詞であるボトムラインはと言えば……相当シンプルに組んである。上モノも、流れに〝刺す〟のではなく、流れに〝沿って〟いる。歌モノだからシンガーを立てる、という前提もあるが、ツジコノリコとのRATN同様、彼の中で〝コレはコレ、アレはアレ〟と意識的に分けているよう見受けられる。
それが良く出ているのは、意外にもM-07。メイン活動の「Mind Edit」のラストに置かれ、作中で浮いていた〝Daybreak (I Dine At)〟の歌入り/ボトム打ち替えリメイクなのだが、NONPAREILLEの優しい声色も相俟って、元ネタでは寸足りなかった部分が埋まった好トラックに仕上げ直されている。
メイン活動のトラックを流用して、どこが〝コレはコレ、アレはアレ〟なの? なんて疑問もあろうが、荒っぽいビートのアルバムを心地良く締める意図を持って組んだチルアウトトラックを、チルアウト的構成のアルバムで再構築して何か問題でも? と返答したい。

いつものブロークンなビートを期待しては肩透かしを食らう内容だが、一皮剥けた「Rough Machine」以後の活動からして、一作品中でアレやコレやと音楽性を掻い摘んでも自分の作品の聴き手は付いて来てくれない、と判断したかのような一作毎での作風の統一感は、彼なりのレッテルの剥がし方と考えれば、作品へ素直に入っていけるはず。
そうなれば、学究肌でありながら常に自分の可能性を探求し続け、かつ冷静に自己分析が出来る、彼らしい作品だと気付くだろう。
ただ、外国語詩の拙い発音や、現時点でアルバム一枚歌い切らせるに至らない実力のシンガーも居る点が引っかかったり、そこまで気にする必要もなかったり。

M-01 ルーム4307 (NONPAREILLE)
M-02 クチカケトマト (ANNA YAMADA)
M-03 家 (ANNA YAMADA)
M-04 Volar -羽ばたき- (AKANE DEL MAR)
M-05 CRY4U (AYAKO AKASHIBA)
M-06 UNI-CO (ACHICO)
M-07 トーキョー (NONPAREILLE)
M-08 Ilusion Eficaz -価値ある幻想- (AKANE DEL MAR)
M-09 Aerial Line (ANNA YAMADA)
M-10 Ride On (AYAKO AKASHIBA)
M-11 Noche Del Aire -空気の夜- (AKANE DEL MAR)


2013年8月16日金曜日

ルーク・ヴァイバート 「Rhythm」


クラブミュージック界の高田純次、ルーク・フランシス・ヴァイバートの本名名義――かと思いきや、何とカタカナ名義。2008年作で、本名名義とするなら単独作品で四枚目。
日本の気まぐれクラブ系レーベル:Soundofspeedより。

本名名義ということで、ある意味プライヴェートな内容。
かと言って習曲を蔵出しした訳でも、聴き手が付いて行けないくらいぶっ飛んだ内容でもない。いつも通りの、温くていい加減なルークワールド。
M-05以外、2008年から2009年にかけて出したアナログEP三枚より全て引っ張ってきている、編集盤のような収録曲構成もそれに輪をかけているような。
では何を以ってプライヴェートな内容なのか。
この名義はスモーキーなブレイクビーツを演ったり、大大大好きなアシッドハウスを演ったり、スティールギター奏者とコラボったり、モーグシンセ奏者に急接近したりと、非常に節操がない。ファイル音源だが、ラッパーを連れて来たりもしている。
つまりその時、一番演りたいコトをこの名義で展開しているから。

で、今回はヒップホップらしい、オールインストの。
とは言え、近年のヒップホップ界主流のバウンスビートでノリノリのトラックを彼が組むはずもなく(いや、諧謔的にいづれ演りそうな気がするんだけどなあ)、オールドスクールからミドルスクールを意識した創りになっている――
かと思いきや、そこはルーク。出て来た音はWAGON CHRIST名義とさほど変わらんだろうと。どうしようもなくヒップホップな部分は、それ系で頻繁に使われている声ネタ多用や、シンプルにゆったり刻まれたセオリー通りのブレイクビーツくらい。むしろMo'Waxから出た一枚目のコッチの方がヒップホップ流儀に法っている。
いくらオールドスクールっぽくヴォコーダー声を使おうが、今に始まったコトではないし。
だがココまで自分の色が出ていると、難癖よりも逆に清々しさを覚える。野球で言えば、球の軌道は明らかにスライダーじゃないっぽいのに、投げている本人が『スライダーの握りで投げてるからコレはスライダー』と言い切っているような。
おまけに『空振り取れたんだから文句ねえだろ』と。

そんなルーク投手、本作も〝零封はしないまでも、きちんとQS(先発投手が六イニングを三点以内にまとめること)を成し遂げ、悠々中継ぎ・抑えと交代。勝ちゲームをベンチで眺める〟ような内容を保っている。
その一方で、テーマを決めたら流れに沿いつつも、作風は一切ブレずに一作品を編み込める高い企画力もそろそろ評価すべきかと。トム、見習えよ?

M-01 Wow! It's Now!
M-02 Registrarse
M-03 Sparky Is A Retard
M-04 A Fine Line
M-05 My Style
M-06 Keep Calm And Carry On
M-07 Eleventy One
M-08 Rhythm
M-09 Concertina Turner
M-10 James Bond In A Jimmy Hat
M-11 Harmonica Sellers


2013年7月30日火曜日

PONGA 「Psychological」


NY地下音楽シーンの猛者:ウェイン・ホロウィッツ(Key)とボビー・プリヴァイト(Ds)が、シアトルのイカレサックス吹き・スケリックを誘い、そのスケリックが連れて来たデイヴ・パーマー(Melodica、Key)を加えて結成した四人組の二枚目。2000年作品。
日本の大手インディー・P-Vine Recordsからの正式リリース――ということはコレ同様、元々は自主制作盤。

スケさん関連というコトで、例の如く〝ジャズっぽい何か〟。
CD帯記載の叩き文〝PONGA Is Improvised,No Overdubs〟通り、プレイヤー同士が演奏中に抜き差しならぬせめぎ合いを繰り広げるジャム。ゆえにスタジオ音源とライヴ音源が混在しても、何ら違和感もない。
また、各プレイヤーの担当楽器は上記で固定。普段はピアノ演ったり鉄琴演ったり移り気なスケさんも、当プロジェクトではひたすらサックスを吹き散らしている。
他、プリヴァイトはジャズ畑らしいオフロードなビートを叩き出し、ホロウィッツはかの鍵盤プログレトリオばりの粘っこい音をひねり出し、パーマーは同パートのホロウィッツと競りつつも得意のメロディカでセピア色の雰囲気を醸し出したりもする。

この通り、今回は真剣と書いてマジだ。各々の目が血走っているくらいマジだ。

だが即興一本槍とは言え彼らは、内容のないセッションを意味付けるべく真剣面を貼り付けて、前衛ぶった溶解フレーズで演奏を引き伸ばすようなセコい連中ではない。
メンバー曰く、当プロジェクトは各々がDJ視点で生演奏を自己統制しているそうだ。
つまり、各自が気持ち良いと思ったフレーズを持ち寄り、各自の判断に任せてぶっ込んでいくスタイル、と考えて間違いない。
その象徴がM-04の終盤。スケリックのサックスが即興の末、明確にキャッチーなフレーズを曲調から剥離上等で選択している点に垣間見える。シンバルから火花が散るくらい激しいプリヴァイトのドラミングと対比させた、チンドン屋のような可笑しなフレーズを。
ただだらーっと音を反復させて気持ち良がってるのではない、指癖を逆手に取った攻めの姿勢、と例えるべきか。
こんな風に各自、アルバムの随所で反復の魔力に溺れず、持続の堕落に呑まれず、フレーズを揺らがせ、擦り込んでいく。ループ感などどこ吹く風で。

〝即興演奏〟と言うと取っ付きづらくて小難しい印象もあろうが、聴き手にとって気持ち良いコトを重要視した即興は分かりやすく、こんなにも楽しいよ、と理解出来る一枚。
そんな意味でも〝DJ視点〟だと思う。

M-01 Riviera
M-02 Psychological
M-03 Dental Melodica
M-04 Hagro
M-05 Nubile
M-06 Sabado Gigante
M-07 Show Me The Ponga


2013年7月28日日曜日

SUNN O))) 「3: Flight Of The Behemoth」


シアトルの重低音魔人二体による、2001年作の三枚目。
レーベルは本作からいつものアンちゃんトコで。アートワークは当然、オマやん。

M-01、02といつも通りの重低音絨毯爆撃。
だが油断して聴く音楽ではないがはいけない。本作から彼らの音楽に対するアプローチが変わりつつあるからだ。
今までは斧(〝Axe〟はギターの隠語)二本を振りかざしての重低音無間地獄。コレからは、そこから一歩踏み出し、違う地獄の景色を描いてみようと考えた。

そこでM-03と04の連曲。日本が生んだノイズグル・MERZBOWこと秋田昌美とのコラボだ。全く別畑からの起用かと思いきや、秋田はブラックメタルに理解を示しており、SUNN O)))とは割と簡単に折り合いが付けられたものと思われる。
さてその結晶は、あざといくらい安い音質のお陰でチェンバロのように聴こえる不吉なピアノループが先導し、SUNN O)))二人が絡んでいく形から始まる。だがやがて、その作為的なループは消失。秋田の手により、ギター音色がハーシュにまで崩壊し切ってしまう。
大地を揺るがす重低音、とぐろを巻いて両耳を苛むハーシュノイズ、存在を忘れた頃に再び現れ瞬くピアノループ――と、各音色が膨張と緊縮を繰り返す、眉間の皺の刻みが止まらない逸品となっている。
コレだけでも後の拡散路線の布石は打てた。

またM-05は曲タイトルからして何てことはない。かのMETALLICA〝For Whom The Bell Tolls〟の翻案だそうな。
オリジナル同様、鐘の音で始まる中、かすかにドラムマシーンによるビートが這い、重低リフが轟き、喉を鳴らして低い唸り声を洩らすこの曲、言うまでもなく原曲の面影など一切ない。それなのに、さり気なくインスパイア先への敬意を忘れない彼ら――
こうして先人や同胞の知/血を巧みに取り込み、音楽的な成長を遂げていくのだ。

Disc-1
M-01 Mocking Solemnity
M-02 Death Becomes You
M-03 O))) Bow 1
M-04 O))) Bow 2
M-05 F.W.T.B.T
Disc-2 「Sunn O))) With Merzbow At Earthdom 2007」
M-01 O))) Bow 3
M-02 O))) Bow 4

日本盤のみボーナスディスクのDisc-2は、新大久保Earthdomで2007年五月、秋田を迎えて演ったライヴの音源化。コレでしか聴けない。
SUNN O)))、秋田以外の面子は、アッティラ・チハー(MAYHEM)、オーレン・アンバーチ、トス・ニューウェンフイゼン、アツオ(BORIS)、といつものメンバー。
KIRINのビア樽を中心に参加メンバーが猛る、インナーのあほ写真で苦笑い。


2013年7月26日金曜日

BOARDS OF CANADA 「Tomorrow's Harvest」


Warp以前の自主音源はカウントしない不文律なので、四枚目。2013年作品。

あらかじめ記しておこう。本作は地味である。
ボーカナBOCはああ見えてキャッチーだ。聴かせたい音色を印象的な鳴らし方で、副音がそれを盛り立てる形のテクスチャで、トラックを組んでいる。
例えばヴィンテージっぽいアナログシンセだったり、幼児のはしゃぐ声だったり、アンプ直結のギターだったり。
本作は主音が魅力不足、とはこれっぽっちも思わないが、そこまでフィーチャーしたテクスチャではない。
しかもBOCがBOCたらしめていた、幼児の声ネタという反則に近い主音使いを控えた。だから、追憶に浸らせるあの音世界も減退した。前作で導入し、大好評だった生音との折衷策に至っては一切排した。
ゆえに地味扱いを受けている。

何だか筆者は解せない。
元々派手な作風じゃないのだから、地味なら地味で良いのに。早くもM-02から、出し殻のようなキックと、ほんのり鳴ってる背景音で引っ張るような地味ーィなトラックを当ててくる時点で〝キャッチー〟なんて似合わない言葉を鼻で笑う構成だろうと。
しかもこのトラック、中盤あたりからじわじわ音色が増えてくるのだが、ビートがさり気なくディレイする、ひっそり新機軸でちょっぴり今風のトラックだ。
またM-04では、単調なハンマービートへ各種浮遊音を惜しげもなく散らす、今までちょこちょこ演ってきたポリリズミックトラックの総決算的出来栄えな秀曲だ。
このように、音色の編み方――つまりテクスチャ面を強化した印象が強い。
言葉は極端だが、絶対的に音色を聴かせていたのを相対的に聴かせる方向へと切り替えたのだから、地味に感じるのも致し方ない。

ただ、全編籠もった音像と、BOCらしい古臭いシンセと、概ねまったり刻むブレイクビーツで構成された音世界は相変わらずブレない。
それなのに、本作で追憶のセピアカラーを減退させた結果、荒涼とした大地で打ち捨てられた基地跡のような情景が音から想起されるのは意外だった。今まではもっと人の息吹が感じられたのに。
その一方でM-15のような、レトロフューチャーなサスペンス劇で使って欲しい、渋くてカッコ良いトラックも忍ばせてある。

おや? 愚直で不器用な音世界のイメージがあるBOC、意外と何でも出来そうじゃない。なら次は元同僚のようにサントラ、やってみようか。
元々音が映像的だし、ユニット名の由来があるショートフィルムからだし、イケると思うんだけどなあ。

M-01 Gemini
M-02 Reach For The Dead
M-03 White Cyclosa
M-04 Jacquard Causeway
M-05 Telepath
M-06 Cold Earth
M-07 Transmisiones Ferox
M-08 Sick Times
M-09 Collapse
M-10 Palace Posy
M-11 Split Your Infinities
M-12 Uritual
M-13 Nothing Is Real
M-14 Sundown
M-15 New Seeds
M-16 Come To Dust
M-17 Semena Mertvykh


2013年7月24日水曜日

あーあ、L.O.T.W.式音楽用語解説・其の4


すんまへん、あたまぐるぐるなんす。
べつーにNessha Bjouでヘデイクな訳やのーて、どのWordsが我がボログの読者様の分からんちんな専門よーごなんか分からんちんのDeath。
言葉なんてニュアンスさえ伝わりゃあOkayにゃのに、イッチいち定義してどないにゃんにゃん、てな訳す。言い訳っす、すんまへん。
Dakara! あ、あっ、あのっ、よっ、よろしければっ、当ボログで出て来ても来てなくても分からんちんな音楽よーごございましたら、おせーてたもれください。(謝礼出まてん)
で? いみじくもこのあてくしが? お教えするんすか? うわ、わい、ナニサマ!

なら、みなしゃんと一緒に学んでいきまShawn! ヽ(´ー`)ノ


2013年7月16日火曜日

MASSIVE ATTACK 「Heligoland」


いろいろ挿みつつ、めでたくダディGが育児休暇から復帰した、2010年作の五枚目。
ジャケデザインは言うまでもなく、3D。

早速、恒例の豪華ゲストシンガー紹介コーナー。
M-01で、TV ON THE RADIOのトゥンデ・アデビンペ。M-02、05で、今や各所引っ張りだこの客演女王:マルティナ・トプリー・バード。M-06で、ELBOWのガイ・ガーヴィー。M-07で、MAZZY STARの魔性の女:ホープ・サンドヴァル。
忘れてはいけない〝Voice Of Massive Attack〟ホレス・アンディはM-03と04で。
最後にあのGORILLAZBLURからデーモン・アルバーンがM-09で。M-03、06、09では曲創りにも一枚噛んでいる。
また、本作は生音の含有度が今までで一番高く、プレイヤーも大勢迎えている。その中に、エイドリアン・アトリージョン・バゴットなど、ブリストル界隈がちらほら。アデビンペの同僚:デイヴ・シテックの名も。
無論、非メンバーながらニール・デイヴィッジとの三頭体制は揺るぎない。

3D曰く、ダディGの制作スタイルはざっくりループを回して感覚的にパーツを組み替えていく、天才肌のそれらしい。
一方の3Dは、卓に根を下ろしてひたすらチコチコ弄り倒すタイプ、と自己分析している。
とすると、ダディG不在の前作がああだったのも納得だし、彼が復帰した本作はもっと音の空間を利したモノとなっている。逆に、初期にはない細密さも本作は有している。
ならば大方の本作の評である『初期の感覚に戻った』は、些か短絡的かと思う。その頃はダディGが仕切っていたのだから。

ゆえにダディGの大らかな感覚と、3Dの偏執的な感覚が巧く溶け合った作品、と評すのが妥当かと。そういえばデュオ体制の作品だしね。

朗々と歌うアデビンペに競うピアノの和音が微妙におかしいM-01。アンディ、ダディG、3Dと、MASSIVEの象徴である三人が鬱々とマイクリレーをする暗黒レゲエのM-03。アコギの小気味良い調べが、凛とした歌唱のマルティナ姐さんと絶妙な絡みを見せるM-05。水泡の湧くよな奇妙なループから、デイヴィッジお得意のオーケストレーションまで発展するM-06。軽快なビートとオルガンがトラックを引っ張ってじわじわアゲてゆく七分半超えの長尺曲、M-10――など、随所にMASSIVEらしい旨味が凝縮されたトラックが並ぶ。
あえて難点を挙げるなら、わざわざダディGが請うて歌わせたM-07でサンドヴァルが声域の狭さと表現力の拙さを露呈し、上位互換のマルティナ姐さんに歌わせとけば良かったじゃない? などと思わせた、MASSIVE初のシンガー人選ミスくらい。(手拍子と鉄琴が印象的な、静謐で凄く出来が良いトラックなのにもったいない)

聴き込めば音数の多さに驚かされる一方、それらが無理なく把握出来るすっきりしたテクスチャが魅力。当然、各音色の選択も絶妙。
やっぱり、装飾過多になりがちな3Dを抑える役のダディGが居ないと。

M-01 Pray For Rain
M-02 Babel
M-03 Splitting The Atom
M-04 Girl I Love You
M-05 Psyche
M-06 Flat Of The Blade
M-07 Paradise Circus
M-08 Rush Minute
M-09 Saturday Come Slow
M-10 Atlas Air
M-11 Fatalism (Ryuichi Sakamoto & Yukihiro Takahashi Remix) (Bonus Track For Japan)

日本盤ボートラのM-11は、ダブステップっぽい曲調に白髪のオッサンが弾くお約束のピアノを乗っけた安直な創りながら、なかなか面白い出来なので控えめにこちらを。
なお、ヴォーカルというか声ネタはガーヴィー。元ネタは未発表なので、本作から収録洩れしたモノと思われる。


2013年7月14日日曜日

HARMONIOUS BEC 「Her Strange Dreams」


日本人二人からなるニカユニット、2010年初作品。ロンドンのMonotreme Recordsより。
根元気になるこの蠱惑的なジャケイラストは、ウエハラによるもの。

無論、棒歌ロイドを用いた作品ではない。そもそも本作はインストだ。
過剰にフィルターを掛け、強烈な靄で覆ったトラックから幕開け。ジャケの美少女が誘(いざな)う奇妙な夢を、まずは音で具現化する。
そこから弦楽器とビートが縺れ合うM-02、両耳のあちこちでさまざまな音色が騒ぎ立てるM-03、レーベルメイトの65daysofstaticを思わせる高速ブレイクビーツが音割れ上等! と荒れ狂うM-05など、音世界を限定しないニカらしい創りで聴き手を翻弄する。
また、ヴォーカルチョップを偏執的に駆使するトラックもあれば、ポリリズミックなトラックも平然と組める。生音っぽい音色も散見される。
そんな落としどころの知れないトラック群を、ダビーなのかスモーキーなのかドリーミーなのか知れぬ奥行きのあるテクスチャで統一して録ったお陰か、作品にブレがない。
その上〝夢〟を演出するためか、各音色にほぼフィルターを被せているため、日本人ニカクリエイターが犯しがちな〝デフォルトのプリセット音色をまんま用いて作品を陳腐化する〟過ちは華麗に回避出来ている。これだけでも筆者は好印象だ。
研究熱心な人々なのかも知れない。

ただ、まだまだ一枚目。勢い任せで細部のアイデアのおざなりさも見受けられるし、どこぞから借りてきた個性を披露している部分もある。
そんなのは時間が解決してくれるから、何の問題もない。
久々に我々日本人から、高い伸び代を感じさせるニカユニットが出て来てくれて、筆者はにこにこ。後は数を出して欲しい。

M-01 Giantland
M-02 Funny Hierophant
M-03 In The Bright Oval
M-04 Shunrai
M-05 Progress
M-06 Cryptomeria Rain
M-07 Falling Ash plume
M-08 PlanetS
M-09 Arms Girl
M-10 Solitary Bronze Prayer
M-11 Asahigaoka


2013年6月28日金曜日

GODFLESH 「Songs Of Love And Hate」


異ジャンルを取り込んで、地下ヘヴィ音楽界を隅から隅まで闊歩する才人:ジャスティン・ブロードリック(Gu)と、G・C・グリーン(Ba)によるユニット、1996年作の四枚目。
――に、翌1997年発表のリミックス盤「Love And Hate In Dub」と、2001年発表のPV集「In All Languages」を付けたお徳盤。2009年リリース。
90年代、エクストリーム音楽界で暴虐の限りを尽くした、英国はノッティンガムのEarache Recordsより。

背骨をノミで彫るようなベースと、金ヤスリで削り散らかすようなギターへ、あえてボトムをドラムマシーンで固定して繰り広げる重苦しいミッドテンポが彼ら本来の持ち味。
ただそれ一辺倒でもないのが、曲者のブロードリック面目躍如といったところ。ギターのフレーズも局所音楽らしい硬質のリフだけに頼らず、今となっては二手も三手も先を行っている、シューゲイザー的な拡散性の高いフィードバックノイズを織り込んだり。自身の歌も、局所音楽らしい怒号だけでなく、ゆらゆらたゆたう陰鬱な声色を使い分けたり。人力至上のメタルやハードコアでは異端の打ち込みを、ビートだけでなく装飾音としても効果的に用いたり。
さまざまなアイデアを柔軟に盛り込む先進性が最大の長所だ。

本作はそんな彼らのターニングポイント。
何と、遂に人力のドラマーを加入させたのだ。

後に米バカテク変態オルタナバンド・PRIMUSに引き抜かれ、果てにシャナナナニーニー鳴く蝉率いるあのGUNS N' ROSESに抱えられた、ブライアン・マンティアがその人。(蛇足ながら、彼の母方は日系人)
それにより、ビートに生々しい躍動感が生まれた。
が、以前のようなシンプルな打ち込みビートが彼ら特有の冷徹さを増幅させていたのに要らんコトしよる、という意見も生まれた。
ただ筆者は、人力だけでなくM-04のようなブレイクビーツを導入したのも加味して、この変化を好意的に受け止めている。常日頃から書いている『カッコ良いビートは正義!』やら『カッコ良い音をくれる方々を型にはめてはいけない』やら、そんな身上で。

ダブに傾倒する一方、ヒップホップユニットをも組閣してしまうような視野の広い人なら、好きに演らせてあげりゃ良いじゃないのさ。
本作は彼が外部で演ってきたコトを、メインユニットでフィードバックさせ始めた、基点とも言えるアルバムと考えている。

Disc-1 (CD)
M-01 Wake
M-02 Sterile Prophet
M-03 Circle Of Shit
M-04 Hunter
M-05 Gift From Heaven
M-06 Amoral
M-07 Angel Domain
M-08 Kingdom Come
M-09 Time Death And Wastefulness
M-10 Frail
M-11 Almost Heaven
Disc-2 (CD)
M-01 Circle Of Shit (To The Point Dub)
M-02 Wake (Break Mix)
M-03 Almost Heaven (Closer Mix)
M-04 Gift From Heaven (Breakbeat)
M-05 Frail (Now Broken)
M-06 Almost Heaven (Helldub)
M-07 Kingdom Come (Version)
M-08 Time Death And Wastefulness (In Dub)
M-09 Sterile Prophet (In Dub)
M-10 Domain
M-11 Gift From Heaven (Heavenly)
Disc-3 (DVD)
M-01 Crush My Soul (PV)
M-02 Mothra (PV)
M-03 Slavestate (PV)
M-04 Christbait Rising (PV)
M-05 Avalanche Master Song (PV)


2013年6月26日水曜日

ですよねー! L.O.T.W.式音楽用語解説・其の3


『(また)二十日にお会いしませう』発言ゥ? 今日は二十六日ィ? 六日も過ぎてるゥ?
た・ぶ・ん、と書きまったしィ。遅れたのはあてくしの大人のジジョー、そやし貴方はそない発言をジチョー、なんちて。
別にいつもみたいにしれっと〝2013/6/20 4:44〟更新スタンプぺたこしてタイムライン捏造したってもええんやで?
――と、何でこのボログの管理人たるあてくしが、こないボログを閲覧してくだすってるお客様たるみなさまへ向かって垂直目線で見下ろしてるのか分かりまてん。
きっと魔が差したんですゥ! 許してくだたい。燃やさんといてくだたい。
つか音の素人のあてくしがこない偉っThawなコーナー作ってる時点で創井り口手さんサイドに対する垂直目線だおえー。
は? 知らんよ。

…………よし、四行稼いだな! (ガッツポ
今回は当ボログで頻繁に使われてる重要な〝よーご〟だす。


2013年6月14日金曜日

TWO FINGERS 「Two Fingers」


音色詰め込み魔:アモン・アドナイ・サントス・デ・アラウホ・トビン(本名)が、DOUBLECLICKことジョー・チャップマンと組んだヒップホップユニットの2009年初作品。
Ninja Tune傘下のヒップホップ特化レーベル:Big Dada Recordingsより。

ガーナ系UKラッパーのスウェイを軸に、フィラデルフィア出身でティンバランド人脈の女性ラッパー:ミズ・ジェイド、ジャマイカの女性ダンスホールレゲエシンガー:セシルを起用した歌モノならぬ声モノアルバム。トビン作品としては初の試み。
ただでさえ過剰でアクの強い作風のトビンが、チャップマンという相棒付きで、シンガーという看板を潰さず演れんのか? なんて危惧もあるが、そこら辺は彼もプロ。
ビートは古き良き純然たるブレイクビーツではなく、バウンシーに刻んでいく。ダブステップの彩も強い。また、トライバルな響きのある音色を多用したり、直近作よりの流れでムジークコンクレートっぽいジッポーライターを開ける音などもあり。
シンガーたちに目配せをしつつ、相棒と連携を取りつつ、いつも通りがんがんと印象深い音色を盛り込んでいくスタンスは不動。

その最たるトラックがM-05。
アタックの強い速めのバウンスビートへ、可笑しな声ネタやド派手なワンショットと、どいつもこいつもでしゃばりなパーツを巧みに配置し、そこへスウェイがノリノリで早口フロウを乗せ、パンチラインではケヴィン・タフィーなるシンガーを呼んでキャッチーなフレーズを被せる、エゴまみれの各音色が奇跡的な共存を果たした悶絶必至のキラーチューン。
俺は俺、お前はお前なんだから、俺に阿らずにお前のベストを尽くせ。俺がちゃんと生かしてやるから――なんて男気発言がトラックから聞こえてくるようだ。

その一方で、変態的なバウンスビートでヒップホップの縮図を塗り替えたティンバランド周りのミズ・ジェイドに、唯一の参加曲M-08がグライム色濃厚だったりするセシルと、起用法に確固たる意図が感じられるのも事実。
結局、トビンにとってシンガーなど音色の選択肢の一つに過ぎないのかも知れない。
音を突き詰めるとこうなる、正に修羅の道。

M-01 Straw Men (featuring SWAY)
M-02 What You Know (featuring SWAY)
M-03 Better Get That (featuring Ms.JADE)
M-04 Two Fingers (featuring SWAY)
M-05 That Girl (featuring SWAY)
M-06 Keman Rhythm
M-07 Jewels And Gems (featuring SWAY)
M-08 Bad Girl (featuring CE'CILE)
M-09 High Life (featuring SWAY)
M-10 Doing My Job (featuring Ms.JADE)
M-11 Not Perfect (featuring SWAY)
M-12 Moth Rhythm

本作のラップ抜きトラックに(一曲差し替えあり)、未収録のインストトラックを数曲詰め込んだ、その名もずばり「Instrumentals」もあり。逆に本編に参加したラッパーたちの大健闘ぶりが良く分かる代物。




2013年6月12日水曜日

STANTON MOORE 「All Kooked Out!」


かのバカテクジャズファンクバンドGALACTICから、ストーナーロックとハードコアの間を取り持つCORROSION OF CONFORMITYまで、予断を許さない活動履歴を誇るニューオーリンズのグルーヴ神が、〝スケさん〟ことシアトルのサックスプレイヤー:スケリックと八弦ギタリストのチャーリー・ハンターらを誘って創った、1998年の初ソロ。

音世界は語るべくもなく、ジャズっぽい何か。
締めのM-13で、ようやくド真面目にしっとりジャズを演っているものの、例の如くジャムから発展したような曲構成。それでいてひりひり弛まぬ緊張感よりも、アットホームな空気が強い。スケリックも奇声を発してご機嫌だ。
それより何より、左の耳からでしゃばりなスケリックのサックスが、右の耳からたまにオルガンと見紛うような音色(ねいろ)を出すハンターの八弦ギターが、全曲不動の配置で鳴る極端な音像に、まずは驚かされる。
無論、そのど真ん中にはムーアのスウィンギンでシンギンなビートが! 彼のソロだからなんて以上に、彼の特徴的なビート構成が弥が上にも耳を惹く。
スネアのヒット一音一音がくっきりしているどころか、ロールを小節のギリギリまでその粒を揃えて叩き切れる歯切れの良さ。しかもグルーヴィーな曲では、まるで歌うように表情豊かなビートパターンを、当たり前のようにビートの裏を取りつつ、メトロノームばりに正確なタイム感で刻んでくれる。
よくジャズに耽溺している音楽ファンに『ジャズドラマーは何でも出来る化け物揃い。メタルドラマーなんてまだまだ』などと放言をかます(巧いならジャンル問わず巧いで良いじゃねえかバカ!)性質の悪い輩が居るが、しれっとこの次元の演奏をリラックスムードで叩けてしまう奴が存在するのだから、そう自慢したくもなるわな、と。(でもオマエが凄え訳じゃなくて、ドラマー様が凄いんだからな。偉そうにすんなバカ!)

きっとライヴではにこにこしながら叩いてるんだろうなー。俺、スケさんファンだけど、たぶんずーっとこの人のプレイを口を半開きにしたまま眺めて悦に入ってるんだろうなー、なんて想像出来るくらい生々しくて気持ち良いビートだらけ。
カッコ良いビートは正義!

なお後日、この三人にスケさんの相棒でヴィブラフォン大好きパーカッション叩き:マイク・ディロンを加え、GARAGE A TROISが結成される。
そのお披露目盤扱いにするにはもったいないムーディーな逸品。

M-01 Tchfunkta
M-02 Common Ground
M-03 Green Chimneys
M-04 Blues For Ben
M-05 Kooks On Parade
M-06 Nalgas
M-07 Witch Doctor
M-08 Boogaloo Boogie
M-09 Nobodys Blues
M-10 Stanton Hits The Bottle
M-11 Farmstead Antiques
M-12 Angel Nemali
M-13 Honey Island

日本盤は:
M-14 Kirotedo
M-15 Obopa Bebop
:を追加収録。共にボートラ以上の出来なので、こちらの方がお得。



2013年6月10日月曜日

BIBIO 「Silver Wilkinson」


ステファン・ウィルキンソン本人によるデザインの、色取り取りのビビオ(毛針の一種)が舞う秀麗ジャケが印象的な、2013年作の六枚目。

相変わらず〝Everything By Stephen James Wilkinson〟状態。
だが、M-01から聴き手の首を傾げさせる。三枚目まで所属していたMush Records時代の〝追憶的なフォークサウンド〟の音像が飛び出して来るからだ。
『いやいや、のっけだからイントロ扱いでしょ。良くある手法だよねー』と高を括っていたら、続くM-02も追憶フォーク。『今更、あの方法論で演り残したコトなどないでしょうに』なんて思っていると、インターリュードっぽい流れを挿み、やはりとろーんと始まるM-04の後半でようやく、Warp期に導入された古臭いデジタル音色が。
そこから一気に耳慣れたWarp路線へ。
続く、晴れの日に庭で創ったM-05など典型の曲。M-07はCOMMODORES〝Just To Be Close To You〟をサンプリングし、地味な出だしながらもヴォーカルチョップしまくり始めてからが本番のブレイクビーツチューン。M-10は彼を発掘したBOARDS OF CANADA最初期の影響が強い、シンセが幅を利かすインストナンバー。

序盤のMushMushした雰囲気は何だったのか。

Warp移籍以降、大手インディーらしい環境の良さから、もうレアでロウな音質で録る必要性がなくなったと思っていた、筆者は。
ややや、そこで今回。ウィルキンソンは自宅にあるレンガ造りの物置へ機材を持ち込み、風雨吹き荒ぶ中で数曲の録音を敢行したという。アルバムの随所で、雨音という自然の齎すグリッチが聴こえてくる仕掛けだ。
あえて制限のある環境で録られたこの音像、強烈に追憶を――いや、Mush期を呼び起こさせる。同時に良好な音質のWarp期っぽい曲と、上手く表裏一体になっている。
コレは〝原点回帰〟などではない。Mush期とWarp期の折衷策だ。

アルバムはMush路線なアコギの弾き語りで(日本盤はそれと連動させた、幽玄なアカペラの小品で)優しくそっと閉じる。
意図さえ分かれば、もう安定のBIBIO謹製レトロフォークニカ。ほっとするね。

M-01 The First Daffodils
M-02 Dye The Water Green
M-03 Wulf
M-04 Mirroring All
M-05 A Tout A L'heure
M-06 Sycamore Silhouetting
M-07 You
M-08 Raincoat
M-09 Look At Orion
M-10 Business Park
M-11 You Won't Remember
M-12 But I Wanted You (Bonus Track For Japan)



2013年6月8日土曜日

BOWS 「Cassidy」


友人のMOGWAIが羨む才の持ち主、ミュージシャン兼作家兼詩人のルーク・サザーランドが、デンマークの女性シンガー:シーネ・ホイップ・ヴィレ・ヨーゲンセンと組んだデュオ、2001年作の二枚目。
知る人ぞ知る名インディーレーベル、Too Pureより。

基本、儚げで一本調子なヨーゲンセンや、例の喘ぐようなサザーランドの歌を立てた創り。曲によっては片方だけだったり、デュエットだったり、ゲストシンガーを据えたり
一方のサウンドプロダクションは、これがまた曲者。
アタックの強いブレイクビーツを敷いたアブストラクトっぽいトラックもある。煌びやかな上モノ使いでエレクトロニカを意識しているトラックもある。サザーランドお得意のヴァイオリンに、ギター、ピアノ、ベース、ドラムで(ゲスト奏者を迎えるケースもあるが、サザーランドはマルチプレイヤーでもある)ポストロックっぽいフレーズを奏でる曲もある。
このボーダレスな感覚、如何にも作家でもあり詩人でもあり音楽家でもある多才な者が、しがらみなく創ったような印象を受ける。

専業ミュージシャンなら散漫にならぬよう、いずれかの彩をあえて強めるだろう。
だが本作はその三点を均等なバランスで保ち、かつ統一感もある、夢見心地な出来なのだ。秀才、あな恐るべし。
その要因としては、曲毎にジャンルを決め打ちしてとっ散らかすのではなく、この曲は煌びやかな上モノにブレイクビーツ、この曲は生演奏にブレイクビーツ、この曲は生演奏に煌びやかな卓加工、と互いの要素を複合させて堂々と並べた創りにある。
これ、サザーランド本人はおそらく意識して創っていないと思われる。十中八九、『好きだからこうなった』と答えるだろう。

どっぷり浸かっている者では考え付かない、俯瞰出来る立場から己の好き勝手に演ったセンスの塊のような作品。
しかも副業者にありがちな奇を衒った感や、素人臭さが一切ない。きちんと基本を踏まえている上に、この高次元なプロダクションが自力で出来ない(トラック制作はもちろん、プロデュースもエンジニアもミックスもサザーランドがほぼ担当)玄人は掃いて捨てるほど居る。
衝撃的な作風ではないが、地味に凄いよ。

M-01 Luftsang
M-02 Cuban Welterweight Rumbles
M-03 Man Fat
M-04 Ali 4 Onassis
M-05 Uniroyal
M-06 B Boy Blunt
M-07 Wonderland
M-08 DJ
M-09 Blue Steeples
M-10 Hey Vegas
M-11 Sun Electric / Ton Ten All The Way Home

日本盤のみ、同年発表のシングル「Pink Puppet」よりタイトル曲を除いたリミックス四種が追加収録されている。
その内容は何と、サザーランドが執筆した小説の一場面を自身で朗読した代物。それをリミックスさせる感性も凄いが、その面子がマイク・パラディナス(μ-ZIQ兼Planet Muレーベルオーナー)やロブ・スウィフト(米著名ターンテーブリスト)らと、豪華なのも凄い。



2013年6月6日木曜日

FOUR TET 「Rounds」


FRIDGE主にギター担当、インド系英国人のキエラン・ヘブデンによるソロプロジェクト、2003年作の三枚目。

主にアンプラグド楽器をサンプラーに録り込んで音色として使い、ブレイクビーツや電子音へ平然と織り込む、〝フォークトロニカ〟なるニカ派生ジャンルの金字塔。
本作はそんな音世界の中、如何にもフリージャズっぽいビートパターンやポリリズミックなトラック、ピアノやアコギを用いて哀愁のフレーズを奏でるエモい曲調など、いろいろ趣向を凝らしている。
また、ボトムにブレイクビーツを敷いているせいか、非常に歯切れが良い。各音色をすっきり配置する、整理の行き届いたテクスチャのお陰もあるだろう。
その一方で、音色のチョップやディレイを多用する傾向もある。

適材適所か、絶妙なバランス感覚か。
だが彼の真骨頂はそこにあらず、セオリー無視の大胆な音使いにこそある。

例えば、M-02。実はTHE ENTOURAGE MUSIC & THEATER ENSEMBLEというスピリチュアル系フォーク舞踊ユニット(つまりヒッピー音楽)の〝Neptune Rising〟なる曲のカヴァーを自称しているのだが、よーく聴かないと元ネタが判別出来ないくらい溶解しているのは置いといて――
軽快なブレイクビーツに被さるバンジョーとベルの音。やがて前触れもなく、それをぶち壊す破音。まるでステレオが壊れたかのような音を幾度もぶち込んで、平気でトラックを構成させてしまうのだ。
そのやり口に狡さはない。聴き手が突然破音を浴びて『えっ、何なにっ? 何これっ!』とびっくりしている中、『別に何でもないけど』と平然と答えた彼の口元は笑んでいた――みたいな茶目っ気がそこにある。
ヘブデンは神経質に音を創り込む職人気質が多いこのエレクトロニカ界において、このような〝破調の美〟を大胆に作風へと溶け込ませた稀有なアーティストである。

――と、音色を多角的に使い倒したこの作品。〝FOUR TETの〟なんてレヴェルを遥かに凌駕し、2003年度どころか00年代を代表する域の傑作だ。
そんな本作発表十周年の2013年に、二枚組としてめでたくリイシュー。
残念ながら本編にリマスターなどは施されていないが、ボーナスディスクとして翌2004年にDomino Recordsサイト上とライヴ会場のみで発売されたコペンハーゲンでのライヴ音源が同封されている。音色チョップしまくりデス。
ニカ初心者の方、未聴の方、オリジナル盤を売って/(筆者のように円周傷を入れて)オシャカにしてしまった方、この機会にぜひ。

(2011/4/25執筆文を大幅改筆)

Disc-1
M-01 Hands
M-02 She Moves She
M-03 First Thing
M-04 My Angel Rocks Back & Forth
M-05 Spirit Fingers
M-06 Unspoken
M-07 Chia
M-08 As Serious As Your Life
M-09 And They All Look Broken Hearted
M-10 Slow Jam
Disc-2 「Live In Copenhagen 30th March 2004」
M-01 She Moves She
M-02 Everything Is Alright
M-03 Spirit Fingers
M-04 Glue Of The World
M-05 My Angel Rocks Back And Forth
M-06 As Serious As Your Life
M-07 Hands / No More Mosquitoes / Hilarious Movie Of The 90s




2013年5月30日木曜日

ADORAN 「(Untitled)」


NADJAだけでなく、ソロ活動に別プロジェクトとフットワークの軽さを見せるエイダン・ベイカーが何とドラムスティックを握り、ベーシストのドリアン・ウィリアムソンと組んだスラッジデュオの2013年初作品。ベイカー懇意のベルギー発:Consouling Soundsより。
AidanDorian=ADORAN、ね。

(自身を含め)総勢十七名のドラマーを迎えた2012年1月のソロ作から、〝オーガニック〟を謳った2012年10月のNADJA作品に至る流れからして、ベイカーの中で人力ビート熱が高まっているものと思われる。
それなら本来、彼はギタリストというよりはマルチプレイヤー(というよりも作曲家)なので、『俺が全編ドラムを叩いた作品を創りたい』と考えるのも当然の帰結。(というよりは元々、打ち込みビート構成の工夫のなさからして〝打ち込みは人力の代替〟としてしか見ていないっぽい)

さて、ベイカー作品で二曲となると当然、M-01が27:22、M-02が30:09と長尺。
リズム隊でのデュオ編成らしく、コード弾きのベースが地べたをごろごろ這いずり回る主旋律を担い、ドラムがそれを支えつつもがんがん鞭打ってメリハリを付けていく――そう、あのミッドテンポでひたすら引きずって引き伸ばして、次第にフレーズを移り変えていく暗黒音楽系の牛歩サウンドがココでも展開されている。
引き、満ち、引き、また満ちる――この終わりそうで終わらない弛まぬ緊張感なら、思ったより長さを感じないはず、当ブログの読者様なら。
そこで想起されるのが、同じカナダ出身のポストロック共同体:GY!BE周り。
双方まるで絡みはないが、こうしてコミュニティ内で音を完結させる如何にもポストロック人らしいGY!BEと、人脈を広げることで音楽的領土を拡大していくハードコア派生系音楽人のベイカー(ただし、彼のバックボーンはシューゲイザー)の点と点を結んでみるのも、強引だが面白い。

この音世界なら、ベイカーのドラムにもっと安定感やビート構成力やパワフルさを求めたくなるなあ、なんて思ったりもするが、そこは難癖なので黙殺。現在はドイツに住んでいるベイカーに、メイプルリーフを感じられただけで良しとする。
なお、本作は2012年の6月にベイカーの元地元・トロントで録られた。マスタリングは地下音楽御用達の兼業ミュージシャン:ジェイムズ・プロトキンによるもの。

M-01 Careful With That Death Machine
M-02 The Aviator




2013年5月22日水曜日

DALEK 「Abandoned Language」


ターンテーブリストのスティルが脱退。ラッパーのMCダイアレックとトラックメイカーのジ・オクトパスのデュオとなった四枚目、2007年作。
代わりのターンテーブリストは、大半のトラックでモーティヴが、M-03と10ではかのバトルDJチーム・THE X-ECUTIONERSの元メンバー:ロブ・スウィフトが手を貸している。準メンバーのジョシュア・ブースもちゃんと参加。
レーベルは引き続きパットン将軍のトコ

のっけのM-01から10分トラック。しかもその低音パートはキックでもベースラインでもなく、ブーーーーンと響き続ける重低ドローン――
相変わらずBの流儀をせせら笑う、DALEK独自のヒップホップ道が展開されている。
だがその一曲目から、聴き手はびっくりさせられること請け合い。
何と、今まで『俺たちの表現軸だ!』と言わんばかりに上モノとして垂れ込めてきた、エフェクターでぐしょぐしょに掻き乱すあのギターノイズを一切排してしまったのだ。お陰でジョシュア・ブースのパートが奪われ、本作では共同ソングライターのクレジットのみ。

無論それは彼らの今後を考えれば絶妙手だったと、声を大にして言いたい。

前作はちょっと意固地になってたんだろうと思う。
ヒップホップ界きっての異端児の名を以って肩を怒らせ、他のクルーが真似すらしないことをあえて演り、自己を確立したは良いが、足元を見ていなかった。
ギターを歪ませてフィードバックさせればノイズの一丁上がり! なんてそんな安易なモンじゃないのだよ、音の魑魅魍魎蠢くあの界隈は。

不穏な音色をシンセで選り、長音でひり出す演り方は明らかにドローンを意識している。M-05のような擦弦楽器で創る混沌とした音世界のインストも、スキット以上の効果を生んでいる。M-07のヴァースで調子っ外れでフリーキーなクラリネット(?)を挿す、突飛な音色使いも今まで見られなかった傾向だ。これまでとは乗せ方を変えた、ギターでひり出すハーシュノイズも、アルバム末尾(M-11)に置かれたとなると曰くありげだ。
一方、もう一つの懸念材料だった、MC一人によるフロウのマンネリ化は、マイメンを呼んで合いの手を付けさせたり、自身の声に過度の変格を加えたりと、試行錯誤している様子。それが成功しているかは聴き手各自の判断に委ねるとして(リリックが判明出来ないくらい、もこもことフィルターを被せて何の意味があるのだろうか?)、己と向き合うべく1MCを貫いているらしいので、その方向性を維持しつつもいろいろ手管を模索するのは良い傾向かと思う。

ジャンル問わず、こういう音に真摯な連中は作品毎にきっちり成長した姿を聴かせてくれるのでスルー出来ない。
もっとこんな努力が金銭で報われれば良いんだけどねえ。

M-01 Abandoned Language
M-02 Bricks Crumble
M-03 Paragraphs Relentless
M-04 Content To Play Villain
M-05 Lynch
M-06 Stagnant Waters
M-07 Starved For The Truth
M-08 Isolated State
M-09 Corrupt (Knuckle Up)
M-10 Tarnished
M-11 (Subversive Script)

日本盤は:
M-12 What I Knew Then
:を追加収録。DALEKらしさとはやや違う方向性の変態トラックだが、なかなか面白い出来なので、あえてこっちを買うのもありかと。


2013年5月20日月曜日

マジかYo! L.O.T.W.式音楽用語解説・其の2


意外と好評っPoi、月イチこのコーナー、けふはラベルになっちょるジャンルのコトゥー。
たぶん長くなるさけ、とっととイクぜ。
でも四行くらい書いておっきたいのよねい。起承転結希みてーな、な? な!
……で、こーして詰まっちんぐな訳ダワ。ざまーねーな。はいクリッククリックゥー!


2013年5月16日木曜日

CHICAGO UNDERGROUND ORCHESTRA 「Playground」


全てはココから始まった。
シカゴのジャズ大将:ロブ・マズレクの加減算プロジェクト、1998年作品。地元の老舗ジャズレーベル・Delmark Recordsより。

この作品は本来、大将のソロアルバム扱いから始まっているのはジャケを見ての通り。
メンバーは大将(主にコルネット)、テイラー(ドラム)、パーカー(主にギター)の常連に、クリス・ロペス(ベース)、サラ・P・スミス(主にトロンボーン)のクインテット。
M-01ではTORTOISEのジョン・ハーンドンとダン・ビットニーがそれぞれコンゴとボンゴで参加。録音技師はそのTORTOISEを辞めたばかりのバンディ・K・ブラウン。
M-01はハービー・ハンコックの、M-04はデューク・エリントンのカヴァー。

――と、今回はやけに作品の背景説明が多いのにも訳がある。
はっきり申し上げて、書くコトがない! から。
本作は後の大将系列作品のように、打ち込みを織り交ぜたり、エキセントリックな曲調に足を踏み入れたり、音符を感性で置いていったりする逸脱行為のない、直球ど真ん中のジャズアルバムだ。
その一方で、自身の特徴的なコルネットのフレーズを立てつつ、他のパートの連中にもきちんとスポットライトを当てることで音世界の広がりを醸し出す、彼らしい立憲君主制のジャズアルバムだ。
まずコレを足掛かりにCHICAGO UNDERGROUND系だけでなく、マズレク大将作品を聴き進めていくのが無難かとは思うが、あまりに衒いのない創りのため、聴き手が近作の一筋縄ではいかない作風まで掘り続けてくれるかどうか疑問だ。

裏を返せば、ココで留まっても十分楽しい。
筆者は、アップテンポでスリリングなプレイの中、スミスかパーカーがリコーダー(縦笛)を闇雲に吹き散らすM-06が楽しくて仕方がない。蛇でも呼ぶつもりかよ、と。
要は、あんま頭使わず片意地張らず、ジャズ聴いてまったりしてーなー、なんて気分にうってつけのアルバム。

M-01 Blow Up
M-02 Flamingos Dancing On Luminescent Moonbeams
M-03 Boiled Over
M-04 Le Sucrier Velours
M-05 Components Changes
M-06 Playground
M-07 Jeff's New Idea
M-08 The Inner Soul Of H
M-09 Whitney
M-10 Ostinato



2013年5月14日火曜日

HANGEDUP 「Kicker In Tow」


カナダはモントリオール発、ヴィオラのジェネヴィーヴ・ヘイステックと、ドラムのエリック・クレイヴェンによる男女デュオ、2002年作の二枚目。

モントリオールでポストロックなら、GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR人脈だろ! と察した方は鋭い。本体参加はないものの、そのサイドプロジェクトでしばしば名を連ねているこの二人、他に二つのプロジェクトで顔を合わせている間柄ゆえ、息の合った緊張感のある演奏が期待出来る。
録音はテープで行われ、技師はやはりGY!BEのエフリム・メナック。

さてこうなると、出て来る音はやはりモントリオールの御柱同様、満ち引き激しいあの路線。ギターもヴァイオリンもベースもチェロも同じ弦楽器だろ! と口角泡を飛ばし、じわじわテンションを上げていくアレ。
ならばたった二人で、あの人海戦術音楽は無理だろ! と思われるかも知れないが、これが何ときっちり二人で演れている。ゲストは、M-06でハリス・ニューマン(本作のマスタリングも担当)がベースを弾いているだけ。
となれば当然、オーヴァーダブ。ヘイステックのヴィオラの音が二つ以上聴こえる時もあるが、全部私が弾いてるんだから問題ないよね、と言わんばかりにテンションの高い曲ではがつがつ音を盛り込み、上の隙間を埋めていく。
一方のクレイヴェンも然る者。オフロードな前のめりビートで緊張感のあるボトムを演出する。しかも、ドラムヘッドを叩き割らん勢いで。
そんな上と下を癒着させる低音は要らない、デュオなのだから。あえて外すことで、上下の音を際立たせる意味があるから。
無論、テンションが高いばかりでなく、感性に基づいて音符をひっそり置いていく曲や、ドローンノイズっぽい展開もある。それらがあるからこそ、爆発的な曲への増幅効果も見込めるし、デュオ編成らしい音の隙間の有効活用も出来る。
そこらは海千山千。抜かりはない。

GY!BE関連としては短い、五・六分程度で終わる曲を並べているので、どうも閉鎖的でとっつきづらいモントリオールシーンを感じるのにもってこいの入門盤では。

M-01 Kinetic Work
M-02 Sink
M-03 Losing Your Charm
M-04 View From The Ground
M-05 Moment For The Motion Machine
M-06 No More Bad Future
M-07 Motorcycle Muffler
M-08 Automatic Spark Control
M-09 Broken Reel


2013年5月12日日曜日

AROVANE 「Tides」


ドイツはハーメルン出身のウヴェ・ザーン、2000年六月発表の二作目。

同年一月にリリースされた一枚目はAUTECHREフォロワーのデジデジしいニカだったが、本作はM-02、05、07、09でアコギにクリスチャン・クレインを迎えた通り、メロディの立った生音折衷ニカを標榜している。
M-02は、そのアコギの爪弾きを一音ずつ割って左右交互に奏でたり、鼓膜を弾いたり、左から右に流したりとなかなか凝った、本作のリーダートラック。
また主音にチェンバロ(英名:ハープシコード)を用いた曲で始まって(M-01)、締める(M-09)、几帳面な法則性も重視したアルバム構成だ。
一方のボトムラインだが、抜けの良い空間処理が特徴的なブレイクビーツを敷いている。これが非常に小気味良く、機能的ですっきりした上モノ構成も相俟ってダビーに聴こえる。その刻み方も、シンプルさを求めている時はオーソドックスに、遊べる雰囲気なら崩し気味に組める、余裕を持った創り。

鼻に付く部分は、たまーに先人からの借り物っぽい音世界を感じることくらいか。そんな点が難癖に聞こえるほど、本作はトータルバランスの良い作品だと思う。
さすがマイスター魂のドイツ人。

そんなザーン氏、スプリット編集盤を挿んだ2004年・三枚目で〝Good Bye Forever〟なるアルバム最後の曲を遺し、音楽活動を終了させている。
――いや、確定じゃないんだ! こうした彼を称える文を残せば、いづれ戻って来てくれるかも知れないんだ。
それに音源は記録(Record)なんだから、彼の遺した音楽(Record)は永久の時を刻めるんだ――と思ったら、音源は出してないだけなのな 何だよもうっ

M-01 Theme
M-02 Tides
M-03 Eleventh!
M-04 Tomorrow Morning
M-05 Seaside
M-06 A Secret
M-07 The Storm
M-08 Deauville
M-09 Epilogue



2013年5月10日金曜日

RAINSTICK ORCHESTRA 「Floating Glass Key In The Sky」


本職がデザイナーの角田縛とSEの田中直通からなるデュオ、2004年作は何とあのNinja Tuneから。
当然、ジャケデザインは角田が手掛けている。

ビートの刻みはこまめだが、BPMは速くない。装飾音は多用するが、すっきり構成されているのでうるさく聴こえない。各音色配置がきちっと整頓されて把握しやすいが、ダブのような局所的な音色の偏愛はなく、全てほぼ等価で鳴らされている。
たまにジャジーだったり、Ninjaらしくブレイクビーツをボトムに這わせたり、まったり牧歌的だったりするが、基本的にはミニマル。また、似たような音色をトラック毎で使い回しているのが最大の特徴。
とまあ、音響へのこだわりよりも、自分たちが気持ち良い音を使ったトラックを組みたがっているのが良く分かる創り。そのため、割とメロディの立ったアルバムだ。

そこで『同じような音色を曲毎に使い回して単調にならないのか?』という疑問。
コレが意外とそうならない。
元々音色使いの志向が、奇を衒いたがる〝破調〟タイプではなく、アルバム全体の空気を乱さない〝調和〟タイプ。よって用いる音色自体が淡白となるので、脳裏にへばり付いて来るくどさがない。
あとはテクスチャの妙で聴きやすい環境を整え、巧く反復の魔力を用いて印象付け、各パーツを弄る匙加減を吟味してフックを与える――このような、地味ながらも小憎らしい工夫を施すだけで〝統一感〟の名の下に許容出来る雰囲気となる。
メンバー二人の背景も相俟って、アート臭くないのもその一端だと思う。

ただ、プリセット音色をそのまま用いたようなデフォルト臭は、商業作品として避けるべきではなかろうか。作品が途端に安っぽくなる。
そこで興醒めせず聴き通せるのも、本作の地味ーな旨味ゆえなのだな。

M-01 Trick
M-02 Waltz For A Little Bird
M-03 Kiteletu
M-04 Powderly
M-05 Overflow
M-06 Electric Counterpoint Fast
M-07 A Closed Circuit



2013年5月8日水曜日

MASSIVE ATTACK 「100th Window」


2003年作、四枚目。

マッシュルームことアンドリュー・ヴォウルス脱退後初のアルバム。ただし、ダディGことグラント・マーシャルは育児休暇により本作不参加。実質、3Dことロバート・デル・ナジャと、前作よりプロダクションに関わるニール・デイヴィッジのアルバムと言える。
その3D、本来ココにいるはずのダディGとは、トラックの創り方がまるで違う。
ダディGはざっくりとトラックの基礎を決めてから、感覚的に形作っていくタイプ。一方の3Dは、とにかく神経質に細部まで卓で弄って弄って弄り倒すタイプ。

もうお分かりであろう。
本作は3Dの偏執的な創り込みぶりが如何にも発揮された、静謐な音像なのになぜかうるさい、彼の執念の結晶である。

両耳の鼓膜を弾くキック。左右、鳴らす位置が安定しない装飾音。飛びかけの蛍光灯の如く、常に揺らぎ続ける副音――
デイヴィッジすらあきれて見守るしかないくらい、これでもか! と音が詰め込まれ、弄り倒され、入り乱れ、脳内で拡散し続ける。
各音色を把握しながら聴くと、ほんっっっとに疲れるアルバムである。
〝冷たい〟やら〝無機質〟やら言われ、『ダディGが(ストッパー役として)居ればこんなに(鬱陶しく)ならなかった』と罵るファンが居るのも、残念ながら当然とも言える。
ただ筆者は、この過剰な音響工作が徒労だったとは思わない。聴き方を変えれば、こんな痒いところに手の届くアルバムもないとすら思える。

さてここで逆転の発想。ぼけーっと垂れ流して聴いてみよう。
例えばベッドに横たわって、目を閉じ、各音色を肌で感じ、身体を溶かすつもりでリラックスすると、まるで音に愛撫されているかのような心地を味わえる。
しかもM-09の8:17の後、30秒空白を取ってからの、パルス波のような音が単体で揺らぎ続けるミニマルドローン曲に癒しを感ずるはず。

それもこれも、気持ち良い音を気持ち良い場所に配置する、匠の技術の賜物。
要はちゃんと実の伴った凝りっぷりだというコト。
Don't Think, Feeeeeeel!!

M-01 Future Proof
M-02 What Your Soul Sings
M-03 Everywhen
M-04 Special Cases
M-05 Butterfly Caught
M-06 Prayer For England
M-07 Small Time Shot Away
M-08 Name Taken
M-09 Antistar

お約束のゲストヴォーカル紹介コーナー。
今回は少数精鋭。M-02、04、06はコレで一世を風靡した反骨のスキンヘッド女性SSW:シネイド・オコーナー。〝Voice Of Massive〟ホレス・アンディはM-03と08で。
残りはすべて3Dがヴォーカルを執っている。
また、M-07ではバックコーラスにGORILLAZの2Dことデーモン・アルバーンが参加し、二次元・三次元タッグを結成しているが、2Dの方、殆ど聴き取れない……



2013年4月22日月曜日

ISIS 「Celestial + SGNL>05」


当ブログでやたら名の挙がる、Hydra Head Recordsオーナー:アーロン・ターナー率いる五人組ヘヴィネスバンド。RED SPAROWESのブライアント・クリフォード・メイヤーも在籍。
本作は2000年にEscape Artist Recordsから出した初フルアルバムと、その連作に当たるNeurot Recordings(NEUROSIS運営)より切った翌2001年発表のミニアルバムを合わせ、日本のみの二枚組便利盤仕様(同2001年発売)にしたもの。それが、リマスターとボートラのライヴ音源を加えて2010年に再発された。
ジャケデザインは当然、ターナー自身。

この界隈に蔓延る〝BLACK SABBATH症〟とも言うべき籠もったダウンチューニングのヘヴィリフではなく、モダンへヴィネス以降の低音ブーストした音密度の圧縮リフを振り下ろす、よくよく考えてみれば珍しいタイプ。曲調はミッドテンポを堅持。ターナーのモノトーンな咆哮ヴォーカルはあくまでおまけ。
そこへ強弱法を多用し、音のメリハリをつけていく一方、手を替え品を替えた音工作をさり気なく絡めていくのが彼らのメソッド。
M-02では、前半でインダストリアルちっくなループを被せ、目を見張らせたかと思えば、その後半で後にメイヤーがRED SPAROWESで大々的に展開する叙情的なパートへとシフトする、大胆巧みな構成が光る。
またギターの鳴り方にも相当気を配っており、静のパートではただ弦を爪弾くだけでなく、聴き心地良さそうな音をリアルタイムで模索するようなサイケデリックな音色を耳一杯に広げる場合もある。完全インストのM-06では、オケヒットならぬバンドヒットを執拗に連発する中、ギターがフィードバックでそれにシンクロさせ、躍動感のみでは留まらぬ妙な酩酊感を齎すことにも成功している。

なるほど、〝Thinking Man's Metal〟と呼ばれただけはある。

ただしこれ以降、考え過ぎと言うか根っ子のハードコアを忘れたカナリアと言うか、それなりにヘヴィで適度に練って鳴りを重視し、ポストロックを思わせる作風へと〝進化〟していく。
だが筆者はこの、メーターを振り切った破壊的な動の力と、音の粒が芽吹く再生的な静の心が高度で備わった本作こそ傑作だと思うのだが、如何であろう。
つか以降は中途半端で子供騙しだと思うけどなー。録音状態もトリップ感を視野に入れているクセに、音像の内側でもこもこしてて気持良くないしー。何でかなー、おかしいなー。

Disc-1 「Celestial」
M-01 SGNL>01
M-02 Celestial (The Tower)
M-03 Glisten
M-04 Swarm Reigns (Down)
M-05 SGNL>02
M-06 Deconstructing Towers
M-07 SGNL>03
M-08 Collapse And Crush
M-09 C.F.T. (New Circuitry And Continued Evolution)
M-10 Gentle Time
M-11 SGNL>04
M-12 Glisten (Live)
M-13 Gentle Time (Live)
Disc-2 「SGNL>5」
M-01 SGNL>05 (Final Transmission)
M-02 Divine Mother (The Tower Crumbles)
M-03 Beneath Below
M-04 Constructing Towers
M-05 Celestial (Signal Fills The Void)
M-06 CFT (Live)

US盤は「Celestial」単体売りで2013年、後のバンド解散(2010年)まで所属したIpecac Recordings(マイク・パットン将軍主宰)にて再発されている。


2013年4月20日土曜日

二周年だから始めう! L.O.T.W.式音楽用語解説・其の1


ま、早ェーモンでにー(友利)すねん。
毎回毎回記念日にティン滓みてーなDa-Bunしこっててもしゃーないやろ的なコトを常日頃考えてた上に、かんそーセッブンどぴゅるだけやNoがNothingと。
ならばいご、月に1どぴゅくらいは違うコトやろうぜ、と。
なら、かんそう(Da)ぶんセレクトがぬーもん者向けなこのボログ、もっとイージーにしませうよ、と。また、ニュアンスだけでそれっぽい単語並べんじゃねいよ、と。どない定義でその専門Poi用語使ってるかはきっりせいよ、と。

てコトでー、音楽用語辞典、みたいなの、Y'allぜ。全然あいうえおABCDE順に並べるつもりNothingだけんじょも。
残念ながら全部、この単語がこの用法で世間一般的にシントーしてる訳ではNothingなのであからめじ。
あと、あくまで筆者的なニュアンスだから! ワイ(Why)、こんな風(Who)に使ってまっせ的な。貴方と介錯解釈違っててもキニシナーイ! なーんて予防線ぺたぺた。

2013年4月16日火曜日

JAMIE LIDELL 「Compass」


おれたちのジェイミー兄貴がな、な、何とあのBECK全面協力の下、創った作品。2010年四枚目。もちろんWarpより。
BECKだけでなく、レーベルメイトでブルックリンのバンド・GRIZZLY BEARのクリス・テイラーだって全面参加なのを忘れてもらっては困る

おっとなー! な路線の前作よりも拡散志向。
いつも通り、お得意のヒューマンビートボックスを駆使したM-01も、しっとりファンクネス曲のM-03も、PRINCE様リスペクトのディフォルメファンクチューン:M-04も、パワフルナンバーのM-07もある。
ただやはり、M-05のようなシンセを巧く使った古臭いポップセンスの曲(蛇足ながら、東京生まれの女性米国人シンガー:ニッカ・コスタ参加)や、アコギとオーケストラとカスタネットに後半のトライバル風ヴォーカルが異国情緒と哀愁を誘うM-10や、まんまBECKがメインを歌っても(コーラスではテイラーと共に参加)おかしくないM-13や、ラストに相応しい厳粛なM-14など、今までとは毛色が違うトラックも外部のインプットあってのこと。
また、活きの良いファンクナンバーにおける、女性がおもわず腰をくねらせてしまうであろうぶっといグルーヴ感も今までに欲しかった部分であり、彼がこの路線で更に上昇する上で不可欠な要素を取り込んだことになる。

この通り、既存のスタイル、新風を巻き込んだ部分、どちらも美味しくマイルドブレンドされている上、どの曲も粒揃いでおしなべて質が高い。
今まで互助関係だったMOCKYと別の道を歩み、活動拠点をパリからNYCに変え、新たな一歩を踏み出したリデルにとって良いターニングポイント作となったことだろう。
無論、彼自身のアクの強さ個性が、他の誰と組んでも当たり負けしない強靭さを有していた証明にもなっている。
そろそろ、UK変態ファンクアイコンとしての兄貴を称えるべきでしょうよ!

……いや、作中のところどころ、BECKの書く歌メロと自身のキーが合わず、声が出切ってない部分も……あったりね。
それは彼が、まだまだ上を目指せるアーティストだから、ってことデスヨ!?

M-01 Completely Exposed
M-02 Your Sweet Boom
M-03 She Needs Me
M-04 I Wanna Be Your Telephone
M-05 Enough's Enough
M-06 The Ring
M-07 You Are Waking
M-08 I Can Love Again
M-09 It's A Kiss
M-10 Compass
M-11 Gypsy Blood
M-12 Coma Chameleon
M-13 Big Drift
M-14 You See My Light
M-15 Black Hole Man (Bonus Track For Japan)

日本盤のボートラM-15はココだけでしか聴けないが、テキトーに組んだいい加減な曲なので特に頓着する必要はナシ。輸入盤で十分。
それよりもUK特別盤には:
M-01 I Turn It Around
M-02 Lies Inside
M-03 Your Sweet Boom Dub
M-04 Pat's Compass
M-05 Lies Inside Cold Dub
:と、本作メイキング映像が収められた二枚組となっている。けどタイトル見る限り、M-03以降が今までの日本盤に付けてきた押し付けボートラ臭いんだよなあ。





2013年4月14日日曜日

TRICKY 「Angels With Dirty Faces」


ああ、そういや書いてなかったね……。
元MASSIVE ATTACK準メンバーの、本名:エイドリアン・ソウズと、本作一杯で袂を別つマルティナ・トプリー・バードによるユニット、1998年作三枚目。

何を意味するのか、曰くありげにゲストが多い。
ジャズプレイヤー多めの人選の中、スラッシュメタルバンド・ANTHRAXのスコット・イアンや、THE LOUNGE LIZARDSのマーク・リボー、THE BOOMTOWN RATSのピート・ブリケットなど、意外な面々も。M-03には、あのPJ・ハーヴェイなんて名もある。
閉塞的な故郷・ブリストルを離れ、NYCに拠点を変えたことにより『いっぱいおともだちができたよ! うれしいなv』状態だったことが推測される。

となると本作は生音主体。しかも一枚目の時のようなサンプリングしといて『元ネタは興味ねえ』と吐き捨てた不遜さはなく、生演奏をそのまま用いる〝相手への敬意〟を覚えた様子。
ならば丸くなったのか!? と思いきや、この頃はマルティナとの私生活が破綻してきた時期であり、前作とは違う意味でぎすぎすした緊張感が張り詰めている。彼女に『あたしが去れば満足なんでしょ!?』と歌わせるM-07は強烈だ。
その一方で、多くのミュージシャンとコラボったことによるものか、作品自体が多様化を見せている点に本作の充実ぶりを見た。
ハーヴェイを迎えた暗黒ゴスペルのM-03。高速ブレイクビーツをバックに呪詛を吐き続けるM-06。トラック自体はフリージャズ風味な前述のM-07。ウッドベースが唸り、リムショットとギターのカッティングとスティールパンっぽいサンプリング音色が小気味良さを演出するM-09。速めのBPMで病んだ声と変質狂なギターカッティングがとぐろを巻くM-11。

――と、下手すると散漫になりかねない拡散ぶりを、主役のTRICKYが特有のセンスと病的なフロウで君臨することにより、びしっと締めている。その上で楽曲のクォリティも今までの最高次元で粒を揃えている。
コレが彼の傑作でしょう!
以後、この多様化とー、アメリカ生活がよっぽど肌に合ったのかー、えーとー、まー、あのー、んーと……。

M-01 Mellow
M-02 Singing The Blues
M-03 Broken Homes
M-04 6 Minutes
M-05 Analyze Me
M-06 The Moment I Feared
M-07 Talk To Me (Angels With Dirty Faces)
M-08 Carriage For Two
M-09 Demise
M-10 Tear Out My Eyes
M-11 Money Greedy
M-12 Record Companies
M-13 Time Slippin' (Bonus Track For Japan)
M-14 Peyote Sings (Bonus Track For Japan)

輸入盤ボートラM-13、14がないのはもちろん、M-11がオープニングトラックのM-01となり、以後一曲ずつずれていく謎仕様。
ただ単にレーベル側が、NIRVANAのアレのミキサー:アンディ・ウォレスを立てて発売したかっただけの模様。