2014年7月14日月曜日

JOE VOLK 「Derwent Waters Saint」


ストーナーロックバンドのGONGAや、ジャスティン・グリーヴス率いるCRIPPLED BLACK PHOENIXなど幅広いバンド活動を展開していた(現在無所属)、英国はブリストルのシンガーソングライター(SSW)、2006年の初ソロ。
レーベルはPORTISHEADの首魁:ジェフ・バーロウ主宰のInvada Records。その相棒のエイドリアン・アトリーがプロデュースを手掛け、彼の自宅でレコーディングからミキシングまで執り行われた。

音世界は大方の予想通り、フォークソング。得意のアコギを抱えて、ぼそぼそっと歌う。どことなく儚げで、何となく物悲しくて、ちょっぴり優しい彼の歌唱だが、バッキング如何では無残に当たり負けしてしまうタイプなので曲調は選ぶものの、ハマればじわじわと聴き手の寂寥感を掻き立てる麻薬と化す。
もちろん彼のみの弾き語り曲もあるが、その他は軒並みアトリーが様々な楽器で彩を加えている。またゲストもちょぼちょぼ呼んでおり、お馴染みPORTISHEADのサポート鍵盤弾き:ジョン・バゴット(M-02)に、ブリストルの女性SSW:ラーシャ・シャヒーンがベースで(M-01、08)、GONGAのドラマー:トム・エルギーがハーモニカで(M-09)、脇を盛り立てる。

そんな当アルバムは基本、彼のこの煮え切らない声質を立てた哀歌なのだが、このブログ的なキモはそこではない。
皆さんは〝バイノーラル録音〟をご存知か。
要は臨場感と生々しさに特化した録音方法なのだが、本作はどうやらコレで録られている様子。ヘッドフォンをご用意いただきたい。
目を閉じればそれはもう、ヴォルクが貴方のすぐ傍で弾き語っているような気にさえさせられる。むしろヴォーカルに至っては、直接耳元で囁いているかのような近さだ。
無論、ピックがフレームに当たる音、左指がフレットを滑る音どころか、さーっと鳴り続けるヒスノイズまで余さず拾っている。
これはプロデューサーのアトリーによる妙策と、筆者は判断する。地味でか弱い部分がヴォルクの長所でもあるのだが、あえて聴き手の目の前にでんと置いて全面フィーチャーすることでその長所が脳裏に焼き付くぐらい鮮明になる(親近感すら湧くかも知れない)。その上、このしつこくない特性なら鬱陶しく感じようがない。

最後に重要なことを。
こんな地味ーィな彼が様々な有力クリエイターにフックアップされて、こうしてソロアルバムが切れるのも、この作品に集められたような良質な楽曲が書ける――裏付けのある能力を有すがゆえ。
僥倖なんてこの音楽界にはないのだよ。

M-01 You, Running
M-02 The Sun Also Rises
M-03 Dwarf Minus
M-04 Thaumaturgist
M-05 Lanfranchis
M-06 Toecutter (Our Lady)
M-07 Farne
M-08 Watching The Crest
M-09 Whole Pig, No Head
M-10 This Vehicle Is Moving
M-11 The Weir


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