謎めいた男:ウィリアム・エマニュエル・ビーヴァンによる2007年作の二枚目。
ダブステップだそうな。
籠っているけど奥行きがだだっ広い〝ダビー〟な音像の中、拍を刻みたいんだか装飾音として自由で居たいのか分からないビートを軸に、これまた〝ダビー〟なぶっといベースラインと切り貼りのヴォーカルフレーズを散りばめる、ようなクラブミュージック――
だそうな。
今やそのトップランナーとなった彼がその公式にぴったり当てはまるかと言うと、思ったよりそうでもない。
そうでなくて良かった。だからこの場で書けている。
ダビーなのは合っている。と言っても本来のダブのような、全音色のどれかを気分次第で偏愛(過度のエフェクトを掛けて可愛がったり、えこひいきするために邪魔な音色を抜いたり)はしない。一枚靄(フィルター)の掛かった音像の中、各音色をはっきりしない位置取りに据えてトラック毎に固定し、鳴らすような感じだ。
彼、BURIALの場合、そのテクスチャ管理が非常に巧みで、聴き手は一寸先は霧で視界が定かではない位置から無限の空間が広がっているような心地にさせられる。
音の抜けが良くてがちゃがちゃしていないのに、一トラックで用いている音色は意外と多い点に秘密がありそうだ。
次にボトムだが、これがしっかりと拍を打っている。最低速度でBPM124、最速だと138のアグレッシヴなテンポでカツカツ刻んでくる。ダブステップが2ステップという20世紀末に一瞬流行ったジャンルの派生ということもあって、四拍子の一と三を強調する特異なビートのトラックもあるが、クラブで聴く音楽を前提とした創りなのでノリは失われていない。
筆者は一番コレが意外だった。どうせ裏を取ってるのかテキトーなのか分からないビートのような何かを敷いて小難しいアート風吹かせているのかなあ、なんて斜に構えていたがとんでもない。むしろループ感が強いくらいだ。
それが身体で拍を取りたくなるほど、おしなべてカッコイイ。
カッコ良いビートは正義。
最後はなにげに大事な点なのだが、切り張りヴォーカルパーツの扱い方が非常に巧い。誰かさんの最新作のように、ただ単純にワンフレーズをループさせることなく、ワンショットとして安易にぶっ込まれる声ネタに堕せず、要領良く様々なフレーズを継いでいる。
それはもう、あたかも彼のために歌ってくれたフィーチャリングシンガーのように。
M-02のRAY J(
本人はあまり有名になりたくないようなのだが、逸材がこのような高品質の作品を世に送り出した時点で世間が黙っちゃいない訳で。
とっとと内に籠る気質と自己顕示欲に折り合い付けて、三枚目を出しておくれよ。単発ばかり切られても物足りないんだよ。
M-01 Untitled
M-02 Archangel
M-03 Near Dark
M-04 Ghost Hardware
M-05 Endorphin
M-06 Etched Headplate
M-07 In McDonalds
M-08 Untrue
M-09 Shell Of Light
M-10 Dog Shelter
M-11 Homeless
M-12 UK
M-13 Raver
M-14 Shutta (Bonus Tracks For Japan)
M-15 Exit Woundz (Bonus Tracks For Japan)
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