2017年2月24日金曜日

THE INTERNAL TULIPS 「Mislead Into A Field By A Deformed Deer」


LEXAUNCULPTのアレックス・グレアムと、MEDICINEを仕切っているブラッド・レイナーが組んだカリフォルニア産ユニットの一枚目、2010年作。
〝コーンウォールのガリ勉野郎〟マイク・パラディナスのPlanet Muより。

クレジットを読む限り、打ち込み畑のグレアムが機械や鍵盤系担当。バンド畑のレイナーがギター・ドラム・ベースのような基本楽器と歌担当。非常に分かりやすいパートナーシップを築いている。
さてこんな二人から出て来た音は……Planet Mu産だからして、高速ブレイクビーツと電子音の上モノが荒れ狂う如何にもなアレ? それとも同レーベルが近年ひたすら青田刈りしている、最新鋭のクラブミュージックからの影響が強いスカスカペナペナダンサブルな感じ?
いやいや、アラ50のオッサンどもがそんなん演りたいと思う?

作中に通底するは、ふわふわゆったりとしたノンビート、もしくは3/4拍子の曲調。ピアノを要所で用いつつ、なよっとして感傷的なメインヴォーカルよりも脇で引き立つ甘い多重コーラスの方に焦点を当てるような、わざとらしいポップセンス。音割れやグリッチなど気にせず、様々な個所で生活音やブリープ音を織り込む作為的なテクスチャ――
これはもう、一昔の(今も!?)ミュージシャンが唸るほど金を得た時にするコトを黒い皿上で表現した、イギリス代表のコレとかアメリカ代表のアレ――そうそう、上っ面はイイ子ちゃんしているけど裏はー? みたいな、大衆音楽の湖底に堆積した汚泥からの影響が強い、現代のサイケミュージックだ。
そんな紙片ではなく角砂糖にイケナイ溶液を染み込ませた妖しい怪しい本作は淡々と進み、陽気だがそこはかとなく空しく聴こえるカントリー風のM-11から一転、病室を思わせるM-12で心電図がフラットラインして終劇した刹那、本編では殆ど扱われずじまいの生ドラムによるぱたぱたしたビートが敷かれたスタッフロールっぽいM-13で幕を下ろす。
『貴方のハートには、何が残りましたか?』と言わんばかりに。

シュールなのだろうか。メランコリックなのだろうか。シネマティックなのだろうか。だが思ったより投げっ放しではなく、じめじめもしておらず、思った以上に情景が脳内で浮かび上がる音楽をしている。
聴き手を選びそうなのに、ちゃんと万人に向けて大きく両手を広げている懐の深さが魅力の本作、コンセプトアルバムらしい。

M-01 1/2 Retarded Tuner Of Hurricanes
M-02 Bee Calmed
M-03 9 Tomorrows
M-04 Arlie
M-05 Dead Arm Blues #B510
M-06 Talking Hoshizaki Blues
M-07 Mr. Baby
M-08 Songbird
M-09 Parasol
M-10 Fixed Confidence
M-11 Long Thin Heart
M-12 Invalid Terrace
M-13 We Breathe


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