兄貴からパパへ。2016年作、六枚目。
Warpを離れ、Kobalt Label Servicesのケツ持ちで興した自己レーベル:Jajulinより。その由来はJamie、Julian(愛息)、Lindsey(愛妻)の短縮形。
聴き手の機先を制する上で大事な一曲目からいきなりしっとりバラード。伏し目がちに、悲哀を噛み締めるように歌い上げる様が目に浮かぶようだ。
以後、
かと言って一本調子さはなく、如何にもリデル謹製なエレクトロファンク曲:M-07や08。ピアノ! ハモンドオルガン! 女声コーラス! でゴスペルさながらの荘厳な盛り上がりを見せるM-10。ハープや擦弦楽器を用いて幻想的に仕上げたM-13など、多角的な手は打っている。
『オレ俺アンド己』であえて創った前作や、『俺とベックと(GRIZZLY BEARのクリス)テイラーと』だった前々作よりも一歩先を行く、『俺と名うてのセッションパーソンたち(モッキーも居るよ)』になったことで、職業的なソロアーティストとしての色合いが益々強まった。
詰まるところ、守備範囲は広げつつも、極めてオーソドックスな創りのブルーアイドソウル作品だと思う。
最早街角でイキりながら青々とした髭を剃る、ぎらっぎらに尖がった十年前の彼の面影はない。齢四十を越えたのだから当たり前だ。
ココから聴こえるのは、乳児の息子の発する声をサンプラーへ取り込み『はっはー! これでお前も歌手デビューだ!』とはしゃいだり(想像)、デザイナー上がりの奥さんと膝を突き合わせてラヴラヴな歌詞を紡ぎ上げたりする、命を賭して守るべきものが出来たリダーデイル(本名)家の主としての素の姿だ。
そのキモを踏まえて聴けば、曲の良さも相俟って如何に本作が情感の籠ったリアルな逸品かと理解出来るはず。
ただ、それがこうメランコリックな路線なのだから……リデルがこの幸せへと辿り着くまでに味わったさまざまな苦悩は察するに余りある。
リデル作品のイチゲンさんが本作から入ると、ココで満足して掘り下げてくれなそうなので、まずは二枚目や前作で彼の強烈なキャラクターから来る強固な音世界を理解してからにして欲しいと切に願う。
裏を返せば、そのくらい耳にすっと入って来るリピート性を、本作は有する。
M-01 Building A Beginning
M-02 Julian
M-03 I Live To Make You Smile
M-04 Find It Hard To Say
M-05 Me And You
M-06 How Did I Live Before Your Love
M-07 Walk Right Back
M-08 Nothing's Gonna Change
M-09 In Love And Alone
M-10 Motionless
M-11 Believe In Me
M-12 I Stay Inside
M-13 Precious Years
M-14 Don't Let Me Let You
M-15 Love Me Please (Bonus Track For Japan)
M-16 You Rewind (Bonus Track For Japan)
ボーナストラックM-15、16はやや寸足らない感じはするものの、しっかり完成させて聴きたかったくらい良い出来なので、是非日本盤を。