2017年3月28日火曜日

FORD & LOPATIN 「Channel Pressure」


時代の寵児になれるか!? ONEOHTRIX POINT NEVERの名義で著名なダニエル・ロパーティンが、胡散臭い臭いのぷんぷんするジョエル・フォード(小学六年生以来の旧友らしい)と組んだ、2011年発表の初アルバム。
Mexican Summer傘下、ロパーティン所有のSoftwareより。ミキサーにはアトランタのイッチョカミ野郎:スコット・ヘレンを迎えている。

音楽性を一言で表したいのなら『シンセポップ』。もう一言加えたければ『ニューウェーヴの香りがする』とでも。
無論、そんな通り一遍なヒトコトで済ませられるほど平易な音楽性をしていない。全くもって困った奴らだ。

表面上は、総じて甘い声質なフォードを含めた三名のヴォーカル(と、二名のヴォイス)と、二機のシンセを軸に据えたポップミュージックの体裁を執っている。
それっぽさが出るよう、声に軽くエフェクターを掛けたり、シンセの音色を80年代風のディスコっぽさ重視で選択したり。曲によってはゲストヴォーカルの一人が弾くギターを有効活用したり。ビートはゲストドラマーを呼んだり、フォードがシンプルに打ち込んだり。
そうやって灰汁は丹念に掬い、表面をつやつやに磨き上げ、音に辻褄を合わせてはいるが、彼らの本質は見事に隠蔽されている。
後ろ暗い者は表を見栄えが良いように飾り立てるものだ。

そもそもポップミュージックなら、音像のど真ん中にヴォーカルをでーんと鎮座させ、聴き手の耳が周りの副音に感けないよう誘引するだろう。
だが彼らの用いるヴォーカルという大正義主音は、ハナからぶれている。例えば、やや右チャンネル中央から左チャンネル中央へと揺すったり。歌のワンフレーズどころか一単語単位で切り刻んで、一音毎に左右チャンネルへと刷り込んだり。フレーズをサンプル化してコーラスのようにぺたぺた貼り付けたり。エフェクトを掛けて模擬シンセ音として潰したり。
コレが主音か!? というくらい酷使する。
そうやって主音への集中力を奪ったところで、シンセで生成した派手な副音をこれまた左右チャンネルに瞬かせる。それはもう多種多様な物量を手練手管で。一方、背景に淡く塗った長音をエフェクトでねじ切る不快な工作も人知れず行う。
それなのにビートの刻みはタメずズラさず、一切奇を衒わない。シンセポップの型枠を堅持するためか、聴き手にこれ以上耳移りさせないようするためか。とはいえ、稀にビート系音色を左右に振り、副音のような扱いもするが。

もうこれは聴き手の音的快楽中枢を掌握する、洗脳行為ではなかろうか。
けど上辺の耳触りの良さのお蔭で心身への実害は一切ないし、聴き手は好きに溺れるが良かろう。
各曲をコンパクトにまとめ、ランタイムを三十七分程度に抑えたのは悪意なのか、それとも良心からだろうか……? (深い意味はなさげなんだけど)

M-01 Scumsoft
M-02 Channel Pressure
M-03 Emergency Room
M-04 Rock Center Paronoia
M-05 Too Much MIDI (Please Forgive Me)
M-06 New Planet
M-07 The Voices
M-08 Joey Rogers
M-09 Dead Jammer
M-10 Break Inside
M-11 Surrender
M-12 Green Fields
M-13 World Of Regret
M-14 G's Dream


0 件のコメント:

コメントを投稿