2014年2月26日水曜日

BATTLES 「Mirrored」


スーパーマスロックバンド、満を持してのデビューフルアルバム。2007年作。

パワー、タイム感、グルーヴ感の三拍子揃った、クラッシュシンバルの異様な高さも魅力なシーン屈指の凄腕ドラマー:ジョン・スタニアー。
経歴からすると四番目のメンバー扱いになってしまうが、ここぞという場面でごりっとしたベース音を聴かせ、存在感を誇示するデイヴ・コノプカ。
遊びさながらに様々なへんてこ音色を無責任に五線へと置いていく、お茶目なギターのお兄さん:イアン・ウィリアムス。
最年少ながらクラシックの素養を持つマルチプレイヤーかつ、ヴォイスパーカッションも得意とする全方位音楽野郎:タイヨンダイ・ブラクストン。
――この通り、センスと技量と名声が伴った近年稀に見る存在の彼ら。まだまだ小難しいとか、スカしているとか、偏見を持たれている方も居るような気もする。
それらとはほぼ真逆の存在なのに、と筆者は思う。

確かに展開がごろごろ変わって掴みどころのないM-06は難解なのかも知れない。
だがそういう曲はこれくらいなもの。しかもその曲順は〝In〟で始まり〝Out〟で閉まるアルバムのど真ん中。おまけに曲タイトルが七色の色彩を持つ〝Rainbow〟。
あと他の曲は四人の感性に基づいて、それぞれの音を重ね合わせるモノばかり。
――え? それが難解なんだって? 聴き手のこっちもあまり深いコト考えず、心地良い音色の絶妙な絡みを漠然と楽しんでいれば良いだけなのに?

それを今回、上手に伝えやすく提供している妙薬が、全楽器界最強の音色である人声。主にブラクストンが担当する声ネタや歌である。
もヴォイパなどをさり気なく使ってきた訳だが、彼らはインストバンド、まさか大々的に歌など使う訳がない邪魔なだけだろ、と思わせておいて先行シングルM-02をズドン。人を食ったようなロボ声ヴォーカルをフィーチャーした激ポップなキラーチューン。
その後も、声楽をバカにしてるとしか思えない素っ頓狂な裏声を主音に据えた、続くM-03。ノリだけで発したへなちょこな歌紛いが、中盤以降のダイナミックなバンドサウンドと巧く対比されているM-04と、効果的に声/歌が使われている。
無論本人たちからすれば、難しく考えず、ただ面白いから、カッコイイから、気持ちイイから演ってみよう! の快楽原則に則っているだけのはずだ。

何せこの手のバンドにとって、声も歌も音色パーツに過ぎないのだから。

だが我々大衆は歌合戦やらのど自慢やらカラオケやら、歌を至高の音楽表現として身近に接している。誰もが音楽の授業では口を大きく開いて合唱する。
それを逆手に取ったのか、茶化しているのか、大衆受けを狙ったのかは分からないが、より一般的な表現を大々的に用いて音色の魅力を伝えた結果ポップとなった、他とは一味違う奇妙な図式のアルバム。
まるで数学(Math)の証明問題のようだ。

M-01 Race: In
M-02 Atlas
M-03 Ddiamondd
M-04 Tonto
M-05 Leyendecker
M-06 Rainbow
M-07 Bad Trails
M-08 Prismism
M-09 Snare Hangar
M-10 Tij
M-11 Race: Out
M-12 Katoman (Bonus Track For Japan)

日本盤のみボートラのM-12は二分弱のおまけ感ありありなドローンアンビエント曲なので、特に聴く必要性もないかと。


2 件のコメント:

  1. でも脱退しちゃいましたね
    タイヨンダイ。

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  2. それが奏功してしまったのが次の。
    主力が抜けても現存選手で穴が埋まってしまう埼玉ライオンズみたいなバンド。

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