2014年2月24日月曜日

NUMB 「Helix Of Light」


四年間の沈黙の後、2010年にを変えて運営を再開したRevirth。その共同経営者であるNUMBが満を持して切ってきた、2012年作の三枚目。
アートワークはsonoe

NUMBと言えば、羽虫にも似た微細なグリッチを聴き手の両耳一杯に広げ、その真ん中をビートと呼ばれる鉄棒で小突く音世界が思い当たる。
でもそれだけじゃないよ、と胸を張ったのが二枚目だった。
そこで本作。『それだけじゃない』どころか、二つも三つも縁石を飛び越える大きな変化を遂げていた。

まず挙げられるのがビート。
以前は徹頭徹尾、メタリックと言うかセラミックと言うか……硬質だが弾性に富んだビート音色を用いてその奇々怪々な音世界を演出していたが、本作はリムショットやらパワードラムやら、多彩な切り口で目先を変え始めた。
次に音色使い。
本作はM-03のシンバル連打や、M-04を装飾するパーカッションのような音など、生っぽい音色が散見される。坪口昌恭菊地成孔とのTOKYO ZAWINUL BACHや、吉見征樹井上憲司とSAIDRUMのDRACOなど、数々の他流試合経験を自身の作品にフィードバックさせつつあるのだろうか。
で、締めに上記二点が消し飛ぶほど大きな改革――

シンセを駆使することで、上モノが記譜出来そうなくらい有機的になった!

今までは、グリッチにグリッチを重ねた無機質なニヒリズム漂う上モノで聴き手の鼓膜を圧迫していた。
そこへきて本作。メロディアスとまではいかないが、上モノの音符化はどうだ。今までが今までだけに、『優しくなった』なんてにわかに信じ難い意見も出ている。
本人は『オッサンになったからじゃないか』と嘯いていたが、やはりコレも他流試合による効果かと思われるし、本人も自覚している節もある

ただし、これらが今までの彼をすっかり塗り替えて、真っ新な再出発を本作から歩み始めたのかと言えば然に非ず。
やっぱり背景音として、あの羽虫が群れているかのようなグリッチを垂れ込めたり。今まで通り、装飾音が左(右)から反対側に通ったり、左(右)・中央・反対側と点在させたり、左右から中央へ寄せたり離したりと忙しない卓加工が施されていたり。結局、記譜出来る上モノとやらも、音色使いが彼独特のメタリックのようなセラミックのような質感だったり。
そこら辺は譲れない部分だろうし、日和ったと揶揄されぬよう音楽的な棘を残すべく腐心したのが見て取れる。

何よりも、これだけの変化と自我を両立した本作が、まだ彼の成長の過程である点。
この音楽性をさまざまな角度から弄れる可能性を含ませた上に、今後もうちょっと違う動きが出来るかもよ? などと示唆出来たのは大きい。
ブランクの六年間でとうとう四十代に突入したオッサンにまだまだ高い伸びしろが期待出来るなんて、日本の音楽界も捨てたモンじゃないよ。

M-01 Darkmatter
M-02 Helix Of Light
M-03 Vesica Piscis
M-04 Torus
M-05 Annulus
M-06 Cluster
M-07 Covalent Bond
M-08 Monad
M-09 Paradox


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