カナダはトロント出身の女性ヴォーカル+男性トラックメイカーデュオ、2004年作・二枚目。
音世界をド直球に説明すると、カナダ産のブリストル系アブストラクト――そうそう、トリップホップ(笑)。レゲエやダブを血肉とした、薄暗いブレイクビーツ。
いや、そこで『なーんだ、典型的トリップホップ編成の没個性出遅れ組(デビューは2000年)かー』と流してしまうのは、ちと了見が狭い。そもそも今までこのブログで紹介してきた男女アブストラクト系デュオはどれもこれも曲者ばかりだったではないか。
毎度書くが、良い音をくださる人々を型にはめるのは絶対に良くない。
アルバムの全体像はシンガーのレジーナ・カジーの声質から、メロウでアンニュイでほんのりレゲエっぽい。そこへ、彼女の弾くハーモニウム(リードオルガン)などの鍵盤系や、トラックの根幹を成すぶっといベース、ギターや鉄琴などのオーソドックスな楽器、タブラやヴィーナやサーランギーといった中東系民族楽器を生音色として乗せ、トラックメイカーのニコラス・マーリーが打ち込み音色を取り混ぜて統括する。中でも中東楽器はトラック内で扱いが良く、ココら辺がLALの個性を担っているようだ。
さて、下の曲目をご覧の通り、本作は四季が織り込まれている。前半の秋冬はしっとり切ない空気を漂わせ、後半の春夏はアンニュイな中にも躍動感を感じる。ボトムにBPM早めの四つ打ちを敷いたトラックもあるからか。夏編でメロウなトラックを演られても、潮風が顔を凪いでいるようにしか聴こえないのだから巧く並べたモンである。
で、ここからが彼らの本領。ヘッドフォンで聴けば分かるのだが、音数が異常に多い。しかも彼らの音楽性がダブの影響下にあるため、それらが平気であちらこちらに散る。
具体的に書けば、表現力に長けた一廉のシンガーであるカジーの声すら一パーツと解釈され、オーヴァーダブにより主音である歌メロを取り巻いて、副音としてあちこちで瞬き続ける。トラックの底辺を支えるビートをサビだけ右耳の外れに追いやりつつ、役目だけは果たさせるといった苛烈なトラック構成も平然と執る。
無論、ダブの素養があるのだから、音数に埋もれてトラックをごちゃつかせる訳がない。必要ない時はばっさり切り落とし、後々必要なら伏線として音量を絞ってさりげなく置き、ここぞの場面で効果的に聴かせる。
あえて大げさに言い切らせてもらうが、ここまで全使用音色を組織立たせるトラックメイカーもそうそう居ない。
あえて難点を挙げれば、フェイドアウトが雑なくらい。
もしかしてこの界隈でこの男女デュオ編成が多いのも、この方面の音を出したいからこの編成にする訳ではなく、優れた者たちだからこそこの編成を敷くのではなかろうか――なんて考えてしまうくらい彼らも出来人。
筆者はこの編成での外れ音源を知りたい。
Fall
M-01 OrangeM-02 Brown Eyed Warrior
M-03 Forget To Say
Winter
M-04 Pale
M-05 Creep
M-06 Saturn
Spring
M-05 Creep
M-06 Saturn
Spring
M-07 Raindrops
M-08 Faithful
Summer
M-08 Faithful
Summer
M-09 Musty City
M-10 Shallow Water
M-11 Dancing The Same
M-12 Invincible
(Bonus)
M-10 Shallow Water
M-11 Dancing The Same
M-12 Invincible
(Bonus)
M-13 B.E.W. Epilogue...Think...Bloodlines
(Bonus Track For Japan)
(Bonus Track For Japan)
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