ウェブデザイン会社を経営する可児瑞起、CAELUMの塚原幸太郎からなるニカユニット。2009年作。
ジャケは無論、可児が手掛けている。
ユニットの主導権は一日の長がある塚原が握っているのかと思いきや、彼の役割は主に音色の提供(M-13の『はい向かってー、右!』という声ネタループは塚原の肉声かも知れない)。テクスチャを組んでいるのは可児なので、CAELUMとはまた違った感覚が味わえる。同時に、テクスチャ作業が地味にトラックの彩を左右しているのが良く分かる。
塚原らしい可憐で美しい上モノが楽しめ、CAELUMよりも聴き心地爽やかな音世界が当ユニットの特徴だ。
で、肝心な可児のマニピュレイターぶりだが……なかなかどうして堂に入っている。しっかり音空間を把握して組まれ、鳴らし方に音の快楽原則を忍ばせるゆとりがあり、各音色の整理も行き届いている。ビート構成もCAELUMと同様に細かく刻むタイプだが、きちんと差異が感じられる。
要らぬ情報がなければ『本業持ちの余暇』と揶揄する声も出まい。
ただ、くど過ぎる音色チョップや、聴き手への効果が薄い無意味なエフェクト、洒落っ気で持ち込んだっぽい唐突なエレクトロ風味など、デザイナー上がりらしい『一手間加えて作品をより向上させよう』とする作業が多少空回りしているような気がしなくもない。
ただその違和感とやらも、要らぬ情報さえなければこのように難癖として列挙されているかどうか疑わしい。
ニカ人種が匿名性を堅持したがる理由が何となく分かる。
結論は、几帳面できっちり質の高い日本産ニカ。
こういう手堅い作品は意外とリピート率が高い。
M-01 Clavier Montage
M-02 Sparkling Swallow
M-03 Fuzzy Sun
M-04 Delta
M-05 Alliance
M-06 Presse
M-07 Billions Of Galaxies
M-08 Blurred May
M-09 Half A Mile Reverse
M-10 Wanderer
M-11 Resistless
M-12 Two Shades Of Yellow
M-13 Take Ya Shoes Off
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