2015年7月2日木曜日

TUSSLE 「Kling Klang」


サンフランシスコの個性派四人組、2004年発表のデビュー作。
レーベルは、USがGROWINGBLACK DICEから、ISISEARTHHARVEY MILKまで居た、ニュージャージーのTroubleman Unlimited。
EUが地元の英雄:JAGA JAZZIST周りから、ネナ・チェリービョルン・トシュケにせんねんもんだいまでひしめく、ノルウェイはオスロのSmalltown Supersound
日本でのP-Vineが真っ当に見える不思議。(いやココも十分妖しいんだけど)

何が〝個性的〟なのかと言えば、そのバンド編成。
まずはベースありき。音像のど真ん中にふてぶてしく居座り、指弾きの太くてねちっこいベースラインでファンキーに存在感をアピールする。何とコレが主音。
次にドラムだが……何と二人居る。シンプルでノリやすい四つ打ちちっくなミニマルビートでボトムを固める一方、装飾音色をも担っている。しかも双方のキャラ付けも出来ており、片方はクラベスやカウベルのような〝楽器〟。もう片方はビン・バケツ・自転車のホイールのような〝楽器じゃない何か〟。しかもその両者がシンクロして叩くのではなく、キック・スネア・ハイハットというビート根幹パーツをあえて各々で割り振り、後は件の装飾音色をお互いの感覚任せで乗せていくユニークなスタイルを執っている。
最後の一人はギターやキーボードのような和音楽器でしょう! と思いきや、何とサンプラー。曲の飾りにしかなり得ない電子音っぽいワンショットやループ、ドラム二人が叩き出したビートや装飾音を、エフェクターでエコー処理して耳のあちこちへと忙しなく飛ばす、ダビーな音遊びを担当。よって、バンドの最終ラインを統括しているのはココ。
メロディ? ああ、もしかしてそれ、俺の担当かなあ……と、首を傾げながらベースが手を挙げるくらい普遍的な要素排除。
言うまでもなく、もう一つの普遍的な要素・ヴォーカルもなし。声はサンプラーに取り込んだワンショットくらい。純然たるインスト。

これだと何だか小難しそうな音出してそうだな、と思われるかも知れない。だが実際聴くと、そうでもない。むしろ取っ付きやすく思える。
ミニマルなビートと、運指が良く動くベースライン。そこへエフェクター掛かった各種装飾音がサイケちっくに音像全域で瞬く――ディスコちっくで、ドイツ産サイケ音楽〝クラウトロック〟ちっくで、ダビーである、がゆえにポストパンクちっくでもある――彼らの一種独特な折衷音楽を自然と楽しんでいる聴き手がそこに居るはずだ。
それもこれも、無駄を一切省いて各要素の重要部分だけを抽出し、彩り豊かな曲に仕立てられる卓越したセンスが織りなす業だろう。

なお、本作の録音技師はM-03、07、09がNeurot Recordings周りで暗躍するサンフランシスコのデズモンド・シェイ。M-01、02、04、05、08、11はかのへんてこハードロッキンテクノバンド・TRANS AMのギターとか弾いている人:フィル・マンリー。
なるほどねい!

M-01 Here It Comes
M-02 Nightfood
M-03 Eye Contact
M-04 Ghost Barber
M-05 Comma
M-06 Disco D'Oro
M-07 Decompression
M-08 Moon Tempo
M-09 Blue Beat
M-10 Fire Is Heat
M-11 Tight Jeans

日本盤は未発表音源の:
M-12 Sometimes Y
M-13 Untitled
:を追加収録。

EU盤はM08~10がなく、M-11が08になり、以下:
M-09 Eye Contact (Version)
M-10 Here It Comes (White Label Mix)
M-11 Windmill
M-12 Windmill (Soft Pink Truth Disco Hijack)
M-13 Don't Stop (Stuart Argabright Remix)
:と、EPのc/wを集めた仕様となっている。ジャケも差し替え。
ご購入はお好みに合わせて。


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