2012年8月22日水曜日

MASSONIX 「Subtracks」


90年代アシッドハウスの立役者であるマンチェスターの808 STATE。その首魁、グレアム・マッセイのソロプロジェクトが、何とあのSkam Recordsから。2006年作。

ジャケをご覧の通り、テーマは〝深海〟。出ましたよ〝深海ニカ〟
いやいやいや、コレも〝深海〟と言うよりは……まだまだ〝海中〟程度。光の差し込まない暗闇で蠢く深海魚のような、グロくて得体の知れない音像を期待してはいけない。そもそもそんな現世とは没交渉な音楽を期待している者は居ない。
もちろん〝海中〟ならではの音処理は散りばめられているので、大陸棚の底を舐めて進行する遊覧潜水艦にでも乗ったような気分で聴いていただきたい。
その海中音像を具現化するために、モーグやらアープやらローランドやらカシオやらアカイやらコルグやらヤマハやら……それはもう、数多のシンセサイザーの機種を使い分けて上モノを生成する、このこだわりよう。
力、入ってます。

ただし引っ掛かる点がひとつ。
本作は1996年から2006年にかけてセレクションされた〝SubTrack〟である、とインナーに明記されているコト。真相は、マッセイがテープやDATやProtoolsに録り溜めた未発表の自作曲を、より抜いて再加工したモノがコレ、らしい。
確かに古臭い音色を使っている部分も多々見受けられる。それが如何にも808 STATEっぽかったりする。
そこを! 『時代遅れだ』などと論わずに、にやにやしつつも『相変わらずだなー』と楽しむ方が、本作に相対する健全な聴き方である! と、筆者は断言したい。
適度なダサさも一般的にはオワコンのアシッドらしいし、この808っぽさはむしろマッセイの個性であると。
無論、これが俺だ! と、片意地を張るばかりではない。M-09のような、ジャジーなトラックにアジアンテイストの上ネタをポリリズミックに重ねる匠の手並みは、マッセイが現代に生きるミュージシャンであることを如実に示している。

でも、まあ……Skamらしい作品かと言えばこのレーベルにしては音質が良好な点も鑑みて、首を傾げざるを得ないのだが、そもそもSkamはマンチェスターのレーベル。マッセイは地元の英雄になる。そんな点にも、にやにやさせられてしまうはず。

M-01 Port Silat (Off Port Silat)
M-02 Sargasso (Horse Latitudes, Giant Kelp)
M-03 Debussa (Undersea Danube)
M-04 Despina Farfisa (Continental Ridge)
M-05 Gold Coast (Pro Bumba Colony, Sea Caves)
M-06 Deep Saline Green (Light Conductor 45 Fathoms)
M-07 March Of The Triton Titans (Rubber, Canvas And Lead)
M-08 Forests Of Crespo (Kelp Forest Range)
M-09 Boonadawn (The Mackerel, The Sampan And The Marlin)
M-10 Diamond Dance (4ths, Heavy Water)
M-11 The Subatlantian (Black Smokers)
M-12 El Rey De Ray (Warm Gulf Water Rising)
M-13 Pulsars (Deep Ocean Basin To Jodrell Bank)


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