2012年8月28日火曜日

NADJA 「The Bungled & The Botched」


カナダのシューゲイジングスラッジ夫妻による2008年作品。

あまりに膨大な量を持つ彼らのフル音源だが、彼らなりに線引きというモノがある。
カナダのAlien8 Recordingsとオレゴン州のBeta-lactam Ring Recordsより発売されたモノ、に加えて日本のDaymare Recordingsで配給されたモノは自称〝公式〟。それ以外は〝外伝〟扱いとのこと。
本作はConsouling Sounds産――つまり〝外伝〟だ。
以上を踏まえて、今まで当ブログで扱った彼らの音源では、コレコレが〝公式〟。言わずもがな、カヴァー盤のコレとコラボ作品のコレは〝外伝〟になる。

いつもならのっけから、ド低音と金属音に二極分裂したギターノイズを仁王立ちさせてずるずる、時間を掛けて引きずって行くのだが、本作のM-01は寂しげに爪弾かれるアコギ単品で静かに静かに幕開け。
やがてそこへフルートが絡み、聴き手の寂寥感を駆り立てていく。いつの間にかマシーンビートもひっそり添えられ、いつもの展開への布石が打たれ――ず、ビートが止み、囁き声が聴き手の耳元をくすぐる。
『え、来るの? 〝外伝〟だから来ないの?』と戸惑っているはずの聴き手をさんざん焦らし……ようやく、ご褒美を与えるかの如く、がーん! と、来る、いつものあの音像が。しかも曲前半で奏でられたアコギの調べと全く同コード進行で。
コレだけでも〝外伝〟扱いとは思えないくらいの強力な高揚感を、聴き手に与えてくれること受け合い。しかもこの曲、2012年に行われた彼らの初来日公演でも披露された。〝外伝〟なのに。

M-02はいきなり例の〝音数は少ないが密度は異常に濃い〟音像で幕開け。そこからお得意のギターサイケデリアが舞い散り、不安定な鳴りのピアノループが噛み合わさっていく、彼らならではの曲。

このように音世界は揺るぎもしないが、ちょっとだけ〝公式〟では演らなそうなコトを取り入れてみるのがNADJA的外伝。アウトテイク集では決してない。
そのランタイムは59分59秒。こだわりを持って計算された、音の洪水。

M-01 The Bungled And The Botched
M-02 Absorbed In You

後、2013年にめでたく国内盤が発売。
二枚組仕様で、おまけ盤は500枚限定のオリジナル初回盤に付いてきたCD-Rだったもの。本編のデモヴァージョンがそっくり収録されている。


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