2013年7月26日金曜日

BOARDS OF CANADA 「Tomorrow's Harvest」


Warp以前の自主音源はカウントしない不文律なので、四枚目。2013年作品。

あらかじめ記しておこう。本作は地味である。
ボーカナBOCはああ見えてキャッチーだ。聴かせたい音色を印象的な鳴らし方で、副音がそれを盛り立てる形のテクスチャで、トラックを組んでいる。
例えばヴィンテージっぽいアナログシンセだったり、幼児のはしゃぐ声だったり、アンプ直結のギターだったり。
本作は主音が魅力不足、とはこれっぽっちも思わないが、そこまでフィーチャーしたテクスチャではない。
しかもBOCがBOCたらしめていた、幼児の声ネタという反則に近い主音使いを控えた。だから、追憶に浸らせるあの音世界も減退した。前作で導入し、大好評だった生音との折衷策に至っては一切排した。
ゆえに地味扱いを受けている。

何だか筆者は解せない。
元々派手な作風じゃないのだから、地味なら地味で良いのに。早くもM-02から、出し殻のようなキックと、ほんのり鳴ってる背景音で引っ張るような地味ーィなトラックを当ててくる時点で〝キャッチー〟なんて似合わない言葉を鼻で笑う構成だろうと。
しかもこのトラック、中盤あたりからじわじわ音色が増えてくるのだが、ビートがさり気なくディレイする、ひっそり新機軸でちょっぴり今風のトラックだ。
またM-04では、単調なハンマービートへ各種浮遊音を惜しげもなく散らす、今までちょこちょこ演ってきたポリリズミックトラックの総決算的出来栄えな秀曲だ。
このように、音色の編み方――つまりテクスチャ面を強化した印象が強い。
言葉は極端だが、絶対的に音色を聴かせていたのを相対的に聴かせる方向へと切り替えたのだから、地味に感じるのも致し方ない。

ただ、全編籠もった音像と、BOCらしい古臭いシンセと、概ねまったり刻むブレイクビーツで構成された音世界は相変わらずブレない。
それなのに、本作で追憶のセピアカラーを減退させた結果、荒涼とした大地で打ち捨てられた基地跡のような情景が音から想起されるのは意外だった。今まではもっと人の息吹が感じられたのに。
その一方でM-15のような、レトロフューチャーなサスペンス劇で使って欲しい、渋くてカッコ良いトラックも忍ばせてある。

おや? 愚直で不器用な音世界のイメージがあるBOC、意外と何でも出来そうじゃない。なら次は元同僚のようにサントラ、やってみようか。
元々音が映像的だし、ユニット名の由来があるショートフィルムからだし、イケると思うんだけどなあ。

M-01 Gemini
M-02 Reach For The Dead
M-03 White Cyclosa
M-04 Jacquard Causeway
M-05 Telepath
M-06 Cold Earth
M-07 Transmisiones Ferox
M-08 Sick Times
M-09 Collapse
M-10 Palace Posy
M-11 Split Your Infinities
M-12 Uritual
M-13 Nothing Is Real
M-14 Sundown
M-15 New Seeds
M-16 Come To Dust
M-17 Semena Mertvykh


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