2013年7月16日火曜日

MASSIVE ATTACK 「Heligoland」


いろいろ挿みつつ、めでたくダディGが育児休暇から復帰した、2010年作の五枚目。
ジャケデザインは言うまでもなく、3D。

早速、恒例の豪華ゲストシンガー紹介コーナー。
M-01で、TV ON THE RADIOのトゥンデ・アデビンペ。M-02、05で、今や各所引っ張りだこの客演女王:マルティナ・トプリー・バード。M-06で、ELBOWのガイ・ガーヴィー。M-07で、MAZZY STARの魔性の女:ホープ・サンドヴァル。
忘れてはいけない〝Voice Of Massive Attack〟ホレス・アンディはM-03と04で。
最後にあのGORILLAZBLURからデーモン・アルバーンがM-09で。M-03、06、09では曲創りにも一枚噛んでいる。
また、本作は生音の含有度が今までで一番高く、プレイヤーも大勢迎えている。その中に、エイドリアン・アトリージョン・バゴットなど、ブリストル界隈がちらほら。アデビンペの同僚:デイヴ・シテックの名も。
無論、非メンバーながらニール・デイヴィッジとの三頭体制は揺るぎない。

3D曰く、ダディGの制作スタイルはざっくりループを回して感覚的にパーツを組み替えていく、天才肌のそれらしい。
一方の3Dは、卓に根を下ろしてひたすらチコチコ弄り倒すタイプ、と自己分析している。
とすると、ダディG不在の前作がああだったのも納得だし、彼が復帰した本作はもっと音の空間を利したモノとなっている。逆に、初期にはない細密さも本作は有している。
ならば大方の本作の評である『初期の感覚に戻った』は、些か短絡的かと思う。その頃はダディGが仕切っていたのだから。

ゆえにダディGの大らかな感覚と、3Dの偏執的な感覚が巧く溶け合った作品、と評すのが妥当かと。そういえばデュオ体制の作品だしね。

朗々と歌うアデビンペに競うピアノの和音が微妙におかしいM-01。アンディ、ダディG、3Dと、MASSIVEの象徴である三人が鬱々とマイクリレーをする暗黒レゲエのM-03。アコギの小気味良い調べが、凛とした歌唱のマルティナ姐さんと絶妙な絡みを見せるM-05。水泡の湧くよな奇妙なループから、デイヴィッジお得意のオーケストレーションまで発展するM-06。軽快なビートとオルガンがトラックを引っ張ってじわじわアゲてゆく七分半超えの長尺曲、M-10――など、随所にMASSIVEらしい旨味が凝縮されたトラックが並ぶ。
あえて難点を挙げるなら、わざわざダディGが請うて歌わせたM-07でサンドヴァルが声域の狭さと表現力の拙さを露呈し、上位互換のマルティナ姐さんに歌わせとけば良かったじゃない? などと思わせた、MASSIVE初のシンガー人選ミスくらい。(手拍子と鉄琴が印象的な、静謐で凄く出来が良いトラックなのにもったいない)

聴き込めば音数の多さに驚かされる一方、それらが無理なく把握出来るすっきりしたテクスチャが魅力。当然、各音色の選択も絶妙。
やっぱり、装飾過多になりがちな3Dを抑える役のダディGが居ないと。

M-01 Pray For Rain
M-02 Babel
M-03 Splitting The Atom
M-04 Girl I Love You
M-05 Psyche
M-06 Flat Of The Blade
M-07 Paradise Circus
M-08 Rush Minute
M-09 Saturday Come Slow
M-10 Atlas Air
M-11 Fatalism (Ryuichi Sakamoto & Yukihiro Takahashi Remix) (Bonus Track For Japan)

日本盤ボートラのM-11は、ダブステップっぽい曲調に白髪のオッサンが弾くお約束のピアノを乗っけた安直な創りながら、なかなか面白い出来なので控えめにこちらを。
なお、ヴォーカルというか声ネタはガーヴィー。元ネタは未発表なので、本作から収録洩れしたモノと思われる。


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