2014年6月30日月曜日

FROM FICTION 「Bloodwork」


カナダはトロント出身の四人組、唯一のアルバム。2006年作。
録音技師はかのスティーヴ・アルビニ。無論、シカゴにある彼所有のElectrical Audioにてレコーディングされた。

音世界は刺々しいマスロック。かなり荒っぽい上に、嫌みのない程度に複雑な展開を志向しているので、マスコア扱いを受けて然るべき存在かと思う。(蛇足ながら両者はルーツからして似て非なるジャンルなので、混同しないよう注意されたし)
自由闊達なインストM-02以外は、投げやりなんだかヤケクソなんだか分からないヴォーカル入り。左右から違う音のギターが聴こえるので、おそらく兼任だろう。また、M-06の静かな出だしで併せているたぶんリラグロッケン(鼓笛隊でよく見る、歩きながら鳴らせる鉄琴)以外、すべてギター二本+ベース+ドラムで音を賄っている。

さて、そんな彼らの軸はざらついた金属質な鳴りの二本のギターワークなんだろうが、そこはアルビニレコーディング。真中中央に配置されたドデカイ音のドラムが幅を利かせまくる。頻繁にリズムチェンジするのに、この手の音楽性にしては鋭い突起物でざっくざく刺しまくる切れ味鋭いテクニシャンタイプではなく、鈍器でがっつがつ殴りまくる漢臭いビートを身上としているのも面白い。
小声で言わせてもらうがこのドラマー、ごく稀にモタったりしているのだが、おそらく生々しい音を録ることに血道を上げているアルビニが黙殺したものと思われる。なおこのドラマーの名誉のために付け加えると、良いタイム感を有する手練れだと上から目線で筆者は評価している。
ただこの類のバンド、門外漢には『曲展開が複雑で意味分かんない』と敬遠され、好事家には『どのバンドも似通ってて個性出しづらいよね』としたり顔されがち。だが彼らは曲展開に変態ちっくなあざとさがなく、むしろ流麗ですらある一方、アルビニに背中を押してもらった持ち前の馬力も相俟ってスリリングかつ喚起力のある演奏が存分に味わえる。オリジナリティがあるとは言わないが、良いバランス感覚を有していると思う。
でもまあそのゥ……ヴォーカルが演奏に埋もれていて弱いと言えば弱いのかも知れないが、がなりまくって吼えまくって何を歌ってるのか分からないタイプではないので、へヴィミュージック耐性のない聴き手を取り込みやすいのでは。

ただし、残念ながら彼らは本作を発表する前年、既に解散してしまっていたらしい。
今回は情報がなさ過ぎて困った。でも銀盤という名の記録は永遠に残り続ける。

M-01 Tumult
M-02 Terry
M-03 Patterns In Similar Static
M-04 Nnii
M-05 Laywires
M-06 Q In The G (Cue Indigee)
M-07 Quagmire


0 件のコメント:

コメントを投稿