この道、もうすぐ三十年! カリフォルニアはオークランドの悪夢、2001年発表の七枚目。ペンシルヴァニアの地下音楽専門レーベル:Relapse Recordsより。
ジャケはシンメトリーの鬼:セルドン・ハント。
基本線は重く暗い、バンド名が体を表す音世界。特級の鬱音楽である。
前作同様のアルビニ録音(スタジオも例の場所)らしさ溢れる、バカデカい音でボトムを支えしジェイソン・ローダーのドラム。ヘヴィ系にありがちなサウンドに埋没する縁の下の力持ち的存在とは一線を画す、くっきりとしたフレーズワークのベース:デイヴ・エドワードソン。この種のバンドにしては珍しい専任キーボード奏者として、サンプラーを駆使しつつバンドの裏で鳴りし効果的な音を一手に引き受けるノア・ランディス。それらを盾に、ソロ同様アコギを能くする底抜けに暗い歌声のスティーヴ・ヴォン・ティルと、喉を酷使した濁声を張り上げるスコット・ケリーの両ヴォーカル兼任ギターを立てた創りとなっている。
そこへ三枚目から非常勤ヴァイオリン/ヴィオラ弾きとして、バンドの退廃美を演出する
暗く重く激しいだけではなく、音の鳴りを注視し、ジャンルの垣根を取り払う実験性も重視した理知的な作風だ。
そんな三枚目で確立した音楽性を毎盤アップデートしながら保守し続けている彼ら、今回は徹底して駆けない。元ハードコアパンク上がりならではの外連味ないファストナンバーは封印したものの、テンポが速めの曲はアルバム毎に演ってきた。
だが今回は徹底して低速。どろっと、ずるりと重々しく、遅い。まるで呪詛である。
ゆえにM-02を始めとする、静かに始まって、タメにタメて後半でバンド一丸となり音塊を爆発させる曲展開が彼ら史上最大の(負の)高揚感を発揮することとなる。
それにより、既に暗黒音楽の重鎮として君臨する彼らが、箔というか更なる名状し難き凄みとやらを付与出来た。
これはもう、彼らにとって一大到達点かと。
そのくらい実の伴った緊張感と、押し殺した迫力に戦慄する。
作風からして長尺になりがちなのだが、組曲としても聴ける13分にも亘る漢哭きの大曲:M-05の堂々たる創りからして王者の風格を醸し出している。しかもコレでアルバムを締めて『ねっ!? 俺たちって凄いでしょ?』といちびるのではなく、あえてアルバムの真ん中に配し、続くM-06では常に得意にしてきたトライバルな反復ビートの曲をインタールードのように用いて後続の喚起力を高める、大正義な進行も素晴らしい。
ファンによって傑作が変わる奥深きバンドだが、筆者としては揺るぎなきNEUROSISらしさが具現されたコレが頂点。
ずるずるどろどろ音楽は冗長で単調、なんて批判は浅はかだと本作で知るべきだ。
M-01 Erode
M-02 The Tide
M-03 From The Hill
M-04 A Sun That Never Sets
M-05 Falling Unknown
M-06 From Where Its Roots Run
M-07 Crawl Back In
M-08 Watchfire
M-09 Resound
M-10 Stones From The Sky
M-11 Dissonance (Bonus Track For Japan)
日本盤のみボートラ1曲追加。M-01のロングヴァージョンっぽいので、アルバムをリピートして聴くとループ感が味わえて吉。
それよりも、本作の全曲を映像化した(のと、別働隊がある部屋にて本作を大音量で鳴らしたモノを録音して、その録ったモノをまた同じように鳴らして、それを録音して……を最終的に三十回繰り返した)ブツがあるんだとよ。おお怖っ。
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