2015年7月20日月曜日

FOUR TET 「Morning / Evening」


〝音色の魔術師〟キエラン・ヘブデンの七枚目は2015年作。
アナログ、ファイル配信は自己レーベルText Records。US盤CDはFRIDGEの過去作でお世話になっているTemporary Residence Limited

ご覧の通り、約二十分の長尺二トラックをA/B面に割り振った剛毅なアルバム。
当然、アナログの良音質を保つランタイム(片面二十分弱)でまとめられ、ヒスノイズやチリチリノイズも気にせず録られ、ボトムに速めの四つ打ちが敷かれ、紙ジャケ仕様(今回は口が外開きなのでディスクが取り出しやすいぜ!)を施した、現場志向の強い前作の流れを汲む仕上がりとなっている。
が、その精神性と当作品における本質はやや異なっているように思える。

出だし爽やか。まるで晴れの日の朝のよう。
ぽそぽそっと拍を刻むビートに、インドかタイ風の節回しが強烈なインパクトを与える女声歌ネタが、寝起きのぼやけた視界を飛蚊のように舞う。その裏で柔らかいシンセ音がまどろみのように鼓膜を喜ばせ、ベース音代わりのドローン音色がシーツのようにまとわりつく。
ここら辺で聴き手も首を傾げだすことだろう。
ひたすらループする主音の歌ネタは、前作のただサンプラーのキーパッドを押しましたと言わんばかりの稚拙な用い方ではなく、エコーをかけたり、被せてコーラスのように絡めたり、リバーブをかけて歪ませたり、左耳から右耳へ通したり、ピッチを上げ下げして声のトーンを高くしたり低くしたりと、それはもう(朝なのに)白昼夢のような甘い甘い音色に仕立て上げている。
その上、たゆたうような各種シンセ音も緻密に織り上げ、さり気なく装飾音をあちらこちらに散りばめ、浮遊感をかさ増ししている。

えっと、クラブノリじゃ……ないよね?

さて、M-01後半から跨いでM-02前半はほぼアンビエント状態。二度寝したのかな? と思わせるよなチルアウトパート。ほぼノンビートで、覚醒的なシンセ使いや女性のコーラスとハミングが優しく添い寝する様は文字通り夢見心地。
そこからじわじわとビートが復活。午後は夜型民族(と書いてパーリーピーポー)、目覚めの時。M-01でのような弱い打ち方ではなく、パワフルなスネアと歯切れの良過ぎるハイハットがミニマルに、しかもやや遠巻きに鳴り続ける。
――さあ今日もクラブが呼んでるぜ! と言わんばかりに。
アルバムはそんな推量を聴き手に抱かせつつ、幕を閉じる。
――後は俺が回すクラブに遊びに来てくれ、と言わんばかりに。

つまり、皿と箱は別物だと気付い(てくれ)た模様。
やったね。

M-01 Morning Side
M-02 Evening Side

Hostessから今回も日本盤出ているけど……ステッカー、要る?


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