2015年7月16日木曜日

JAMIE LIDELL 「Jamie Lidell」


Warpのファンキーソウル兄貴、2013年作の五枚目。

前作ではゲストを多数迎えて拡散志向を打ち出した訳だが、今回は焦点を絞っている。
早くも断言してしまうが、彼の脳内で思い描く音世界は完成したのだから。
自身のクセのある超個性を前面に打ち出し、卓を駆使したにもかかわらず暑苦しさ熱量も情感も伝わる変態濃厚ファンクがアルバム全編で繰り広げられている。
そろそろ世界は、このエキセントリックでスタイリッシュでホットでカリスマティックなジーニアスの存在に気付いた方が良い。
そのくらい彼がネクストレヴェルに達した作品だろうと思う。

さて、本作最大の長所だが、彼自身の声が類稀なるキャラクター性を有していることを自覚して創っている点にある。
低音に渋みがあり、中音に張りがあり、高音に艶がある。全体的にアクがある。
本作はそんなオールラウンドシンガーな彼がオーヴァーダブを駆使して全ての歌を担当している。もうこれだけでおなかいっぱい彼のカリスマ性が存分に感じられようもの。
曲後半で〝俺Featuring俺With俺コーラス隊〟な熱い暑い掛け合いが左右チャンネルに分かれて繰り広げられる、大興奮のM-02。タメの利いた装飾過多なトラックへ向けて、多重俺コーラスが更に覆い被さるM-03。モジュレイターを玩具に、人を食ったようなやさぐれヴォイスで酔っ払い感丸出しのM-06。プリ様リスペクトなねちっこいトラックにも関わらず、第一声で兄貴が来たと思わざるを得なくなるM-08など――今までの彼の音楽性よりも、巧く彼のキャラクター〝声〟を利用したトラックが耳を惹く。
創造に大切な、第三の眼で己を見られている。

俺がトラックを組んで、俺が歌って、俺が編集しているのだから俺じゃない訳がない! と胸を張って言い切れるソロ音楽クリエイターが世界に何人居るのか。当たり前のコトじゃないかと反論されるかも知れないが、虚空を見上げ思い浮かべてみて欲しい。果たして何本指が折れるだろうか。
筆者は三本目くらいで彼の名をコールすることだろう。
『タイトルを付けるのは好きじゃないだけなんだけど、コレが俺の初作品と言って良いから』と語るくらいセルフタイトルがぴったりの作品。まだまだ上がるぞ。

M-01 I'm Selfish
M-02 Big Love
M-03 What A Shame
M-04 Do Yourself A Faver
M-05 You Naked
M-06 Why_Ya_Why
M-07 Blaming Something
M-08 You Know My Name
M-09 So Cold
M-10 Don't You Love Me
M-11 In Your Mind
M-12 I'll Come Running (Bonus Track For Japan)

ボートラM-12はちゃんとトラックになってるものの、あってもなくても。


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