2015年7月18日土曜日

GRAILS 「Burning Off Impurities」


オレゴン州はポートランドのマルチプレイヤー四人衆、2007年作の三枚目。
ブルックリンの美味しいトコ取りレーベル、Temporary Residence Limitedより。

ドラム、ベース、ギター(エレ、アコ)、キーボード(ピアノ、オルガン)の基本楽器を軸に、ハーピシコード、メロディカ、ローズ、バンジョー、ペダルスティール、ウード(中東のリュートみたいなの)と、さまざまな楽器を曲によって使い分けるインスト音楽なのは今まで通り。ハーモニカ、金管楽器類、ヴァイオリンのゲストも迎えている。
だが、2004年発表の二作目まで養っていたNeurot Recordingsには悪いが、彼らはこの作品で本格化した。スタジオセッション盤、スプリット盤、単独EP、編集盤――と、三年もの間にじっくりマテリアルを積み重ねることで音楽性を熟成させた印象を受ける。
当ブログで何かと名前の挙がる優良インディーズのNeurotをクサすつもりは毛頭ないが、在籍時はTORTOISE影響下にあるポストロック有望株でしかなかった。
いやもう本当に、劇的に化けた。

その熟成に至るキーワードは二つ。ダイナミズムとトライバル風味だ。

まずはゆっくりと助走代わりに反復し、機を見計らって一気に駆け昇り、後は鬼気迫るテンションで乗り切ってしまう、振り幅の大きい構成力を会得したこと。
ザック・ライルズとリーダーのアレックス・ジョン・ホールの主にギター二人が絶妙なユニゾンぶりで主音の弦楽器を掻き鳴らしまくり、主にベースのウィリアム・スレーターが負けじとぶりぶりうねりまくり、もう片方のリーダーである主にドラムのエミール・エイモスが皮をびんびんに張った太鼓をばっこんばっこん叩きまくる。
それで聴き手のアドレナリンがぐんぐん上がる。件のテンションを高めてくる曲と、比較的穏やかな曲をほぼ交互に配すやり口もそれを助長してくれる。
また、本作から中近東の音階をさり気なく用い、民俗音楽っぽい雰囲気を醸し出してきた。それによりエイモスのドラムも、よりパーカッシヴなプレイにシフトしている。

つまり野性味が増した、と。
音世界をより激しい方向性にシフトして一皮剥けた、実は珍しいタイプのバンド。

M-01 Soft Temple
M-02 More Extinction
M-03 Silk Rd
M-04 Drawn Curtains
M-05 Outer Banks
M-06 Dead Vine Blues
M-07 Origin-ing
M-08 Burning Off Impurities

実は日本盤も出ている。


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