あの辛辣なる音楽賢者AUTECHREの変名と言うか、前名義と言うか……1991年発表、ロブ・ブラウン&ショーン・ブースによるキャリア初のフル音源が、2011年(末)に二十周年を記念して驚きのリイシュー。
無論、おマンチェの謎ニカレーベル・Skam Recordsより。タイトル通り、Skamにとっても記念すべき初リリース作品であった。
当時レコードで発売されたオリジナルの収録曲はM-01とM-02。それぞれA面とB面だった、という訳だ。M-03とM-04は当時の未発表音源とのこと。
それを踏まえれば、この四篇は長尺トラックに非ず、というコトが分かるはず。いちいちトラック分割もせず、そのままCD化しました、と言わんばかりの怠惰さ。
まあ元々が曲名とかアルバムタイトルとかどーでもいい、と考えているニカ気質剥き出しの彼ら。後日1997年、選り抜いてレーベルコンピ「Skampler」で蔵出しされた〝Leaves On The Line〟〝Keyop〟〝Northwest Water〟以外のトラックは、インターリュードを含めて名もなきトラック扱いなのも怠惰なのかいい加減なのか。
そのアレさは内容にまで表れる。
ヒップホップの始祖鳥であるエレクトロちっくなのもあり。同じ枝葉のアシッドハウスちっくなのもあり。今で言うチップチューンな味わいもあり。
それらを一口で言えば「Skam特有の安っぽさがもう浮き彫りになっている」。
もう一言加えれば「雑多」。
更にもう一言加えれば「青い」。
初作品にありがちな「とりあえず俺たちのやりたいコトを、この皿に余さず叩き込んでやるぜっ!」と、拳を固めていきってみせたようなアルバム。
サンプラー扱いはこなれたもので、既に実力の片鱗は見せている。とは言えまだ発展途上なので、後に獲得する強烈な個性や不動の表現軸など望むべくもない。しかも時代性も相俟って、今となってはビミョーにダサい。
俗に「枕に顔を埋めて足をばたばたさせる」盤。
だが、それが良い。(ニコッ)
ほんのたまに、サンプラーを用いていた頃の初期AUTECHREっぽい音色使いが顔を覗かせ、にやりとさせられたり。
トラック群が比較的連動しているので、DJミックスのような味わいがあったり。
それよりも何よりも! レイヴ禁止法に敢然と立ち向かったり、現在の音楽性からでは窺い知れない「ヒップホップに多大な影響を受けた」という発言を裏付ける重要な資料に、本作が位置しているコトを忘れてはならない。
敬意と愛、だよなあ。
普段はシニカルでクールなAUTECHRE、熱き血潮を見せ付ける、若き頃の肖像。
M-01 Parts 1
M-02 Parts 2
M-03 Parts 3
M-04 Parts 4
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