2012年10月12日金曜日

BIBIO 「Vignetting The Compost」


ステファン・ジェイムズ・ウィルキンソンによる三枚目はカリフォルニアのMush Recordsより。2009年作品。
なにげに彼の日本デビュー作になる。その配給は& Records

まずは彼にとっての2009年を、時系列に沿って追って行かねばなるまい。

二月、前作から三年ぶりに本作をリリース。
三月、Mushより六曲入り未発表ファイル音源「Ovals And Emeralds」リリース。
---------------------------------------アメリカとイギリスの壁-------------------------------------
六月、四枚目「Ambivalence Avenue」Warpデビュー。
(この間、二枚のシングル音源を挿む)
十一月、未発表+リミックスの編集盤「The Apple And The Tooth」をWarpでリリース。

何という登板過多であろうか。あかん、ビビ夫死んでまう!
いやいや、コレをそのまま時系列通りに進めたとは考えづらい。

何せMush時代とWarp時代のBIBIOは、作風に大きな進展がある。
サイケでロウな〝ぜんまい仕掛けのインストフォーク〟の前者と、それにブレイクビーツや自身の歌や電子音を効果的に絡めてメジャー感を出した後者――
コレをたった三ヶ月で劇的に移行させてしまえるなんてビビ夫、あんたほんと何て凄いアーティストなんざましょ! 神か悪魔か!
いやいや〝前作から三年もブランクを空けた〟ことから察するに、本作リリース時にはもうWarp期の音世界は彼の中で確立していたかも知れない。むしろ本作と「Ovals~」はこのブランク期に創られた敗戦処理未発表の蔵出し音源なのかも知れない。
あくまでコレは筆者の邪推だ。

では本作の内容。
にも書いたが、Mush期の彼の音世界はほぼ一貫している。二枚目で一曲だけ用いられた歌入りトラックが、M-01、02、05と三曲に増えた。もっと散りばめれば良いのに、前半に固めてあるのは何とも意味深長に感ずる。コレもあくまで筆者の邪推だ。
なお〝音世界が一貫している〟ということは、彼の類稀なる才能からして本作はBIBIO印の良品であることが保障されたようなものだ。契約履行ただの蔵出し音源とは言わせない!
だがその裏返しに、それが三枚目ともなると音世界が袋小路に陥りつつあることを暗に示唆している。

『何事にも挑戦するのが好き』と語るウィルキンソン。ならば、その変革期に遺したMush期総決算清算アルバムと本作は目する方が、より自然だ。
なお、こんな虫の良い邪推などない。

M-01 Flesh Rots, Pip Sown
M-02 Mr. & Mrs. Compost
M-03 Everglad Everglade
M-04 Dopplerton
M-05 Great Are The Piths
M-06 Odd Paws
M-07 Under The Pier
M-08 Weekend Wildfire
M-09 The Clothesline And The Silver Birch
M-10 Torn Under The Window Light
M-11 The Ephemeral Bluebell
M-12 Over The Far And Hills Away
M-13 Amongst The Bark And Fungus
M-14 Top Soil
M-15 Thatched
M-16 The Garden Shelter

日本盤はM-17にボートラ〝Chasing The Snowbird〟を収録。完全未発表曲の模様。


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