2012年10月24日水曜日

ZACH HILL 「Face Tat」


サクラメントのクレイジービーター、ザック・ヒル(HELLA)のソロアルバム、単独名義では二枚目。2010年作品。
レーベルはHELLA共々厄介になっている、L.A.のSargent House

バンドが分身し、左右の耳孔内で一斉に鳴り始めるかのような音像がいきなり飛んで来て、聴き手は度肝を抜かれることだろう。
ただそれだけなら、単なるこけおどし。
だがそんな極端な音像に慣れてくると、両鼓膜を突き破り、脳髄を抉って来るような快感を与えてくれることだろう。
ただそれだけなら、単なる子供騙し。
一聴、ブロークン過ぎて滅茶苦茶なこのアルバム最大の特長とは、ザック・ヒルというアート志向の強いはっちゃけ野郎の脳内が、このアルバムから垣間見えるコト。
普通ならこの手の輩のかっ飛んだ思考など、凡人の我々には理解不能なのに。

フィルを挿みたがったり、裏を取りたがったりと、相変わらず落ち着きを見せないヒルの闊達なドラミングは母体のHELLA同様。
また大方の予想通り、遠慮なくたぷたぷと様々な鳴りの音色が注ぎ込まれるも、それほど聴き手の頭上にクエスチョンマークは浮かばない。むしろ理解しやすいと思う。
それは、エフェクターを通したヒル自身の親しみやすいヘタウマヴォーカルが、大半の曲で被さっているのもある。上モノを押し退けようとしてまで鳴らされる、ヒル自身の特徴的なビートもある。実にソロ作らしい。
それだけではなく上モノ自体がおしなべて、どこか飄々と愛らしくて、極端で、良い意味で作為的で、意外と爽快で、しかもここしかない絶妙な部分で鳴らされているとしたら?
また、なぜかこの界隈でよく顔を見せやがスコット・ヘレン参加のM-10では、ヒルなりのビートチョップが冴え渡ったり。続くM-11ではヒルなりの突貫ハードコアも披露したり。

でも、どこか歪んでいる。一定の法則性を持って。

アレとアレの紙一重なヒルが外部のインプットを元に脳内で組み上げ、耳や鼻にプラグを挿してそのファイルをアップロードしたようなアルバム。
ポップな創りだが、まるまるポップアルバムではない。ブレイクビーツを演ろうが、ハードコアを演ろうが、まるまる借りてきたような音は出さない。
つまり同じ景色を見るにしても、我々凡人と彼のような感性の優った出来人とでは映り方が明らかに異なっている、というコト。
それを踏まえれば、このはちゃめちゃさが理路整然として聴こえるはず。

M-01 Memo To The Man
M-02 The Primitives Talk
M-03 Ex-Ravers
M-04 The Sacto Smile
M-05 Green Bricks
M-06 House Of Hits
M-07 Jackers
M-08 Burner In The Video
M-09 Dizzy From The Twins
M-10 Gross Sales
M-11 Total Recall
M-12 Face Tat
M-13 Second Life

日本盤のみボートラ、M-14〝Fake ID〟収録。


0 件のコメント:

コメントを投稿