『あなたガ ススむ ぼうけんヲ えらンデくだサイ』
Skamのチップチューン系ニカデュオ、2004年作の二枚目。
RPGかSTGかAVGか。本作はメンバー曰く、仮想ゲーム音楽だそうな。なぬ、クッソ生意気にコンセプトアルバムかよ!
一応、物語設定みたいな文はあるのだが、別に読んでどうこうなる訳でもないので割愛。
確かにチップチューンは電子音楽界のローファイミュージック。PCM音源やらを用いていた、ファミコン期のレトロゲーと抜群の相性を見せる。
だが、アルとクリスの土曜日隊が、本当にコレがゲーム化されることを想定してトラックを組んだかどうかは別問題。
まあ確かに前半のトラックで、それっぽい雰囲気を醸し出してなくはない。
ただ、ゲーム音楽特有の、メロディ主導による突き抜けた分かりやすさがない。とっつきやすい音色を用いて、なおかつ崩す――その〝分かりやすさ〟を斜に構えて見下した、ポップと難解の狭間を綱渡りするいやらしい創りで物語は進行してゆく。
安くて可愛い音色がこれでもか! と詰め込まれ、巧みにテクスチャ化される一方、逆に音数を切り詰めて、違う情景を音で描いてみせたりもする小癪な創りだ。
こんな気が散るゲーム音楽は嫌だが、これはこれで楽しく戴ける。
問題はアルバム後半。
物語があっと驚くどんでん返しの展開で、アルバムが思わぬ曲調へと変化していく――ならば、筆者も本作を万人のリスナーに薦めよう。
だが、トラックを経るごとに親しみやすい音色が陰を潜め……ノイズやビープ音が幅を利かせ、どんどん物語ならぬ曲調が崩壊していく有様。
それを『話が佳境に迫りつつあるんだな』と解釈してもらえるだけ御の字。コレを文で語り継いでいくならば、鬱展開が相応しいでしょうよと。
M-07のひび割れた音色でのダークアンビエント曲が本作の転機。以降、耳障りな長音と敷き詰められたノイズと不吉な音色が耳を苛め、我々聴き手が困難な地に降り立ったことを悟らせてくれる。
以後、大げさなまでの勇壮さもなければ、熱くなれるカタルシスもない。M-10で大団円っぽい雰囲気に展開するものの、終いは結局あっちゃこっちゃに音色を放り散らかして閉じる、置いてけぼり状態。
え? コレでクリアなの? と、コントローラーを握る手が硬直。
果たしてこの文は本作を褒めているのだろうか? コレを読んで、凄え! 面白そう! なんて感じてもらえるのだろうか? シュールであほっぽいクソゲーみたいなノリではだめなのだろうか?
いやいや、むしろ本作は途中でバグってるのではなかろうか?
――そうも思えてくる、可愛いナリして一見殺しな怪作。
M-01 Chouax Bomber
M-02 Radial Fold
M-03 Choose Your Own Adventure
M-04 Radar Garden
M-05 Square It
M-06 Mod Truckin'
M-07 Soft Ocean Extract
M-08 Weaken Not, For You Are The Magma
M-09 Summit Melody
M-10 Naked To The Stars
M-11 Sky Legends Of The Worlds Pt. 2
M-12 The Era Of Hopeful Mutants (Extra Track For CD)
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