グロコミの片割れによる初の本名名義でのソロ作、2007年発表。
一言で表すと〝爽やか(リスニング)テクノ〟だろうか。
主はすこぶる音質の良い打ち込み。そこへたまに顔を見せる、生々しいビートとベースラインに荘厳なストリングスは、M-01、04、06、08で生演奏が用いられているから。ミドルトンはベースがクラシックの人らしい。
その他、オール打ち込みのトラックも、メロディを立てた情緒的な創りとなっている。
となれば、彼の本職であるクラブDJとしての見地では〝チルアウトミュージック〟に相応するのかも知れない。明らかにアゲ目的の創りをしていない。
ではクラブ音楽界の端っこで面々と根を張ってきた、我らがエレクトロニカ界隈なのかと問えば首を傾げざるを得ない。
広義で括ればフロアをロックしない≒家で聴く人向け≒エレクトロニカなのだろうが、神経質なまでの創り込みや、グリッチやブリープなどの人為的なあざとさが一切ない。音楽として直球ど真ん中の音像は、テクノ界の日陰者スタンスとは一線を画している――その立ち位置は、グロコミの頃から一切ブレていない。
無論、本作が手抜きと妥協の産物では断じてない。セオリーに忠実、かつシンプルに創ってあるだけで。
よって創り込み大正義の現在では、本作の音は多少古臭く感じられるかも知れない。
そこら辺を『今更、何世代も前の音を~』と断ずるのは些か偏狭な考えかと思う。
基本は〝普遍〟であり、〝特殊〟は普遍を踏まえて崩すところから始まるのだから。普遍的な作風はそれが高品質ならば正当な評価を受け、シーンの中心とはいかないまでも、堂々とその名を残して然るべきだと筆者は考えている。
それもこれも近頃、このように流麗な純テクノ派生のニカが減ってきてね……。ニカは厨二魂盛んな連中が多いからさあ……。
とっつきやすいし、打ち込み音楽の入り口としては最適だと思うのになあ。
M-01 Prana
M-02 Beginning Of The Middle
M-03 Shinkansen
M-04 Serendipity
M-05 Sea Of Glass
M-06 Yearning
M-07 Optimystic
M-08 St Ives Bay
M-09 Margherita
M-10 Moonbathing
M-11 Astral Projection
M-12 Enchanting
Disc-2 (Bonus Disc For Japan)
M-01 Lament
M-01 Lament
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