アンドリュー・ブロダー率いるバンドの2007年・四枚目は、Warp派生のLex Recordsより。
ジャケをご覧の通り、〝アメリカ〟はミシガン州ミネアポリスの〝ロックバンド〟だ。
――わざわざこう曰くありげに記したのも訳がある。
からっと明るくもなく、湿り気を帯びてはいるがエモくもない、時折ニューウェーヴっぽさを垣間見せる、この煮え切らない曲調からしてUK出身かと思っていた(稀にカントリー風のフレーズを織り交ぜるので、そこでアメちゃんっぽいな、と察することは出来る)なんて大よそどうでも良い。
問題はこのFOGなるユニット、元々はNinja Tuneでターンテーブルを軸に多彩な楽器を用いた生演奏とサンプリング素材を縒り合わせる〝バトルDJ系〟と言えなくもない、ブロダーのソロユニットだったはず。
今や二人のメンバーを加え、クラブよりもライヴハウスの方が似合う、立派なロックバンドとなりましたとさ。
どうしてこうなった。
いやいや、ユニット名を引き続いている以上、
そこら辺がきちっとDeN――いや、DNAとして残っている点に注目して欲しい。
例えばサンプリングやループを生演奏に絡ませる手法。生に拘る
だが彼らは、そんなロック畑では見られない音色使いを施す。
まずのっけ(M-01)からギターのフィードバックではなく、パルス音から鳴り始める。その後、メンバーでジャーン! と合わせるのに。
極め付けはM-06。一聴、ダルでメロウなフツーのロック曲。ただ、中盤で平然とグリッチっぽいノイズ音色を織り交ぜてくるのだ。しかもそれは右へ左へ散らばったり、音を変えて右から時間を掛けて左へとじわじわ移動したりする。
またM-09では、強い風でアンテナが軋んでいるような生々しい音をさり気なく挿んでいる。ムジーク・コンクレートという奴だ。
このように聴き手さえ気付けば上手く引っ掛かって楽しめる、地味で奇矯で不必要と言えば不必要な装飾音を遊び心で入れてくる余裕が、ロックバンドにはあまりない。せっかくだからと副音で機能させてしまいがちだ。
そこに音の快楽があるというのに。
クラブ系上がりのロックバンドが打ち込みの奥深さを教えてくれる、趣深いアルバム。
無論、ギターロックとしても高品質。切れ味鋭いカッティングからアコースティックな爪弾き、エフェクターで歪ませまくったへヴィリフまで、ロックの代名詞たる弦楽器の魅力がふんだんに詰まっている。
ただ、基本は生演奏なんだしさあ、どの曲で誰が何をプレイしているかくらいクレジットしてよ。頼むよ。ブロダーはマルチプレイヤーなんだから、残り二人のメンバーがお飾りに見えて不憫なんだよ。
M-01 We Will Have Vanished
M-02 Inflatable Ape
M-03 I Have Been Wronged
M-04 Hallelujah Daddy
M-05 What Gives?
M-06 You Did What You Thought
M-07 The Last I Knew Of You
M-08 Ditherer
M-09 Your Beef Is Mine
M-10 On The Gallows
M-11 What's Up Freaks?
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