2014年4月12日土曜日

GARAGE A TROIS 「Outre Mer」


ドラムのスタントン・ムーアのソロから端を発した、よくよく考えればスーパーバンドの二枚目。2005年作。

引き続き、例の似非モノラル録音。
左耳から固定で、チャーリー・ハンターが爪弾くギター。主に右耳から、鉄琴好きパーカッション叩きのマイク・ディロンと、場合によっては定位置の真ん中から割り入って来るスケリックのサックス。で、ド真ん中にはムーアのドラム……と、ベース音っ!?
メンバーは四名。ゲストはゼロ。だが、同時に鳴っている音は五つ。オーヴァーダブはあるが、サックスを被せたのみ。打ち込みはなし。
どォゆうコト!?
実はハンターのパートは〝八弦ギター〟。ギター五弦とベース三弦が同フレットにまとまった特注ギターを、フィンガーピッキングで同時に弾いてしまう謎テクジャズギタリストなのでした。(頭こんがらがらないのかしら)
念のために要らんコト書くと、ベースラインはそこまで複雑ではない。

音世界は予想通り、Pre-GARAGE A TROISに鉄琴かパーカッションが加わった感じ。ジャズのような、ファンクのような、ロックのような、インストのアレ。
ただ、バンドなので、あの時のようにムーアのドラムありきではない。彼もある程度抑えて、あの特徴的なバカテクビートを叩き出している。
一方、スケさんとディロンのコンビは相変わらずのアクの強さ。金管楽器は鳴れば一瞬で主役を取れる、その傲慢さを十二分に生かして幅を利かす。ディロンはディロンでお得意の二楽器を横に並べて併用し、副音の分際でぐいぐい迫る。たまにハンターの領域である左耳まで音が出張する。
で、ハンターはギターさえ鳴らせればご機嫌な、典型的バイプレイヤータイプの奏者なのだが(ソロプレイヤーに向かってなんてコトを言うのか)、思ったより自己アピールが出来ている。つまり曲を左右するくらい印象的なフレーズが弾けている。M-05のトロピカルな雰囲気は彼のギターがなければ出せなかったはず。スケさんがミュートしている時、主音は彼が担っていると言って良い(ディロン、お前じゃないからな!)。

以上が生々しく、輪郭のはっきりした、非常に良好な音像で鳴っているので、聴き心地はとても爽やか。彼らにとって定番かつ安定の音創りなれど、きっちり四者四様の音がせめぎ合うスリリングさも持ち合わせている。
そんな本作、同タイトルのフランス製未発表映画のサントラだそうな。

M-01 Outre Mer
M-02 Bear No Hair
M-03 The Machine
M-04 Etienne
M-05 Merpati
M-06 The Dream
M-07 Antoine
M-08 Circus
M-09 Needles
M-10 The Dwarf
M-11 Amanjiwo


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