2014年4月6日日曜日

DELL + FLUGEL 「Superstructure」


ドイツはフランクフルトのメガネ系DJ:ローマン・フリューゲル(ALTER EGO)が、同国・ダルムシュタット出身の鉄琴奏者:クリストファー・デルと組んだ2006年作。

ジャズ畑なデルが鉄琴と、たまにローズピアノ担当。クラブ系のフリューゲルがボトムや背景音、装飾音の打ち込み担当。それらにちょぼちょぼ、金管楽器系や弦楽器系の音がピンポイントで挿入される。ノークレジットなのでサンプリングかと思われる。
実はこの二人、ほぼ初対面だそうな。
そんな急造コンビから生まれし音は、エレクトロニクスを巧みに利用したジャズ。即興っぽい部分も多いことから、フリージャズの要素が強い。そのためか、ニカニカしさよりもダビーで音の隙間がある、アブストラクトっぽい音像だ。

音符を型にはめることで成り立っている打ち込み音楽が、音符を型にはめないよう善処するフリージャズと融合するなんて画期的じゃないですか!

とは言うものの、双方の音楽の構造上、妥協点が生じるのは致し方ない。制作の基本線はフリューゲルのトラックに、デルが鉄琴なりエレピなりを乗せる形を取っている。両者がリアルタイムで好き勝手に持てる音を鳴らせるのは、M-03のような小曲で限界だろう。
ゆえに、フリューゲルがデルに合わせたトラックを組んでやる必要が出て来る。即興性を高めるためには、気分良くデルに演奏させねばならないからだ。
ただしフリューゲルも然る者。M-02のような変則ブレイクビーツや、M-04のような三拍子や、M-05やM-07のような完全にクラブ仕様のキックが強い四つ打ち(しかもシンプルに四つ打たない)などをにやにやしながら差し出す挑戦的な態度が堪らない。そこで従順なベーシックトラックを渡しては、デルの作家性が失われてしまうからだ。
ならばと、ここでデルが対抗意識むき出しで叩き倒してしまっては、この共演が台なしになってしまう。まさしく、デルのソロに手を貸したフリューゲル、になってしまう。
そこら辺の立場をわきまえて、自我を制御するプレイはさすがジャズの人。時にはトラック構成上の一パーツに徹し、相手の音を立てることで、信頼関係を楽曲から醸し出すことに成功している。

フリューゲルの背景から想像するよりもデジデジしくなく、デルの出所を踏まえてみたよりも難解ではない。
それもこれも、飽きの来ないシンプルな音像のお蔭。いやいや、お互い敬意を持ち、思いやる、ミュージシャンシップの賜物。

M-01 Superstructure
M-02 Urban Practise
M-03 Miniaturisation
M-04 Wolkenbügel
M-05 4 Door Body Cell
M-06 Perspective, Moscow
M-07 Study For A Skyscraper
M-08 Habitation
M-09 Dirty Realism


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