2011年4月20日水曜日

CLARK 「Body Riddle」


2006年作品の三枚目。

一言で書けば『化けた』。
本作から名義を本名のCHRIS CLARKから、味もシャリシャリもないファミリーネームだけのCLARKに替えたのだが、そのCHRIS CLARK時代から才の片鱗を見せていたのだから『本格化した』の方が適切かも知れない。

2001年のデビュー当時から〝APHEXチャイルド〟なる枕詞が添えられてきた彼、完全にThis Is CLARK!! と言い切れるようになったのは、音世界をアッパーかつアグレッシヴにシフトさせた次作「Turning Dragon」から。WARPレーベルの主力アーティストとして君臨するようになったのもそれから。
本作もM-10のような、如何にもリチャDっぽいトラックが収められている時点で〝APHEXチャイルド〟などという忌まわしきレッテルを払拭出来ていない。

以上により、本作はCLARK過渡期にリリースされた佳作? いえいえとんでもない!
筆者は文句なく、このアルバムを傑作に推す。
なぜなら彼は何と、全盛期の本家に匹敵する高い質の楽曲をこのアルバムで叩き付け、我々リスナーの度肝を抜いたのだ。フォロワーはオリジネイターには敵わない、という定説に真っ向から対峙し、自らの実力で壁をぶち破ったのだ。
コレは凄いコトだと思う。並の創造者では出来ない荒業である。

音が不安定に揺らぎ、外し、重ねられるが、それはすべてCLARKの想定内。どう音を加工すれば聴き手の心を操れるか熟知しているかのようだ。何度聴いても悔しいかな、彼の術中にはめられてしまう。聴き流せなくなってしまう。音色の選択とその噛み合わせもばっちり。気持ち良く聴こえる音を、気持ち良い場所にくれる。
お陰で、捨て曲などナシ。一分弱の小曲も、インターリュードとしてだけではなく、一つの曲としてきちんと完結している。日本限定のボーナストラックであるM-12でさえ、寒風吹き荒ぶ中で立ち尽くしているかのような秀曲だ。
しかもこんなに質の高い楽曲を取り揃えているのに、及第点を堅持する優等生の臭いがちっともしないのも特筆すべき点だろう。エレクトロニカの基本線を踏まえてながらも、どこか微妙に外して構成する。音使いがやんちゃなのだ。

本当に隙のないアルバムを創った、隙のないアーティストである、このクリストファー・ステファン・クラークという男は。

M-01 Herr Bar
M-02 Frau Wav
M-03 Springtime Epigram
M-04 Herzog
M-05 Ted
M-06 Roulette Thrift Run
M-07 Vengeance Drools
M-08 Dew On The Mouth
M-09 Matthew Unburdened
M-10 Night Knuckles
M-11 The Autumnal Crush
M-12 Observe Harvest (Bonus Track For Japan)


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