2011年4月23日土曜日

TRICKY 「Pre-Millennium Tension」


で、TRICKY。1996年発表の2nd。TRICKYが一番ギラギラしていた頃。

はっきり言って、TRICKYは永遠の厨二病患者でいいと思う。
世の中に拗ねて、薄ら笑い浮かべて近付いて来る連中を悪罵して、「みんな俺のコトが嫌いなのさ」と斜に構えていて欲しかった、一生。
そうすれば自ずと、量産されるトラックの質も高まるだろうから。

はっきり言って、TRICKYは次作「Angel With Dirty Faces」までだと思う。
マルティナ・トプリー・バードという名バイプレイヤーを失って、一気に失速した感がある。
別離が見えていた「Angel With Dirty Faces」は悲壮感が音にまで伝わってきた。だからアルバムとして感じ入るものがあった。
以後アメリカに移住して、いろんな人と交流して、いろいろやってみても散漫で、「意外と器用貧乏なんだね」としか印象が沸かないアルバムを並べてくれた。

はっきり言って、TRICKYは元から音楽素養の後ろ盾がない初期衝動アーティストなのだから、角を削るより磨いて尖らせた方が良かったんじゃないかと思う。
それこそ「怨みはパワー、憎しみはやる気」と言った具合に。
頭で考えて良し悪しを決めるタイプのリスナーなら、4th以降の作品の成熟度を評価するんだろうなあ。

身体で感じて良し悪しを決めるタイプのリスナーは嗜好に一貫性がなく、面倒臭い。

さて本作、のっけのM-01から殺伐モード全開。こめかみに銃口を押し付けられているようなひりひりした切迫感。
以後、彼とマルティナがクライドとボニーに見えるくらいギスギス。トラック構成がシンプルな分、悪意くっきり。聴いていて、目つきが悪くなる悪くなる。
加えて、TRICKYと言えばサンプリングソース選びの節操のなさ(今回はM-03でTHE COMMODORES、M-05でERIC B & RAKIMと、比較的真面目)と、底なしに暗い声質で呟くラップだが、この頃は本当に“呪詛”という言葉がしっくりくる不気味さ。

もう、全て負の方向性でベクトルが振り切れている。
これなんだよなあ、TRICKYの魅力は。

暗黒音楽は何もハードコアやメタルの専売特許ではない。ハッピーな印象の強いクラブカルチャーからでも、こうして撒き散らすことが出来る。
厨二病の魂さえあれば。

M-01 Vent
M-02 Christiansands
M-03 Tricky Kid
M-04 Bad Dream
M-05 Makes Me Wanna Die
M-06 Ghetto Youth
M-07 Sex Drive
M-08 Bad Things
M-09 Lyrics Of Fury
M-10 My Evil Is Strong
M-11 Piano


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