2011年4月22日金曜日
MARTINA TOPLEY-BIRD 「Quixotic」
マルティナ姐さんの多様性は類を見ない。
TRICKYの相方として1995年「Maxinquaye」でアルバムデビューを果した姐さんだが、1998年の「Angels With Dirty Faces」をもってコンビ解消(同時に婚姻関係も解消)してからこの2003年ソロデビュー作まで、五年の月日が流れている。
その間、彼女は何をしていたのだろうか。
当アルバム制作へ向けてこつこつと人脈作りをしていたのではなかろうか。でなければ誰が、UKブレイクビーツ界の才人デイヴィッド・ホルムスと、ロック界の口入屋ジョシュ・オーミ(QUEENS OF THE STONE AGE)と、映画音楽の大家デイヴィッド・アーノルドが肩を並べて参加するアルバムなど企画出来ようか。
その上、姐さん自身の客演履歴も凄い。前述のホルムスや、TRICKYの元親分にあたるMASSIVE ATTACKはもちろん、ヒップホップ界の良心COMMON。ストーナー人脈結集バンドEARTHLINGS?。超ド変態オルタナバンドPRIMUS。グランジ世代のスーパー(極渋)タッグTHE GUTTER TWINS。イカレロケンロー魂JON SPENCER。バレバレ覆面アニメバンドGORILLAZ、etc...と、もう滅茶苦茶である。
その間(はざま)を、姐さんは狭い声域と線の細い淡白な声質で渡り歩いているのだ。
なぜ姐さんがこうも多種多様なアーティストからもてるのか。
偏にその淡白で我の弱い歌声にあるのではなかろうか。
この声はどんな曲調にも、嫌味なくすっと張り付く。決して曲の和を乱さない。曲のアクセントとしてひっそりと輝いてくれる。雇い主からしてこんなありがたいゲストは居ない。
では姐さん、曲調や共演者に併せて歌い方を変えているのかと言えば、答えはイイエ。いつも通り、淡々と自分の狭いトーンを守り続ける、不器用なタイプの歌い手である。
もしかしてそんなに巧くないのかも知れない。だからこそ、自分の分を弁えているのかも知れない。
なのに、聴き手にとって心地良い空間を与えてくれる。
マルティナ姐さんこそが、最高の癒し系シンガーだ。
本作はじっくりと企画やら楽曲やらを練ったお陰で、バラエティに富んでいる。
バックコーラスを立てたゴージャスなR&B風のM-04から、元パートナー(兼元夫)を呼び寄せたそのまんまTRICKYなM-08、ギターのカッティングが格好良いロックなM-10まで、雑多な内容を姐さんの淡白な歌声がきちっと締めている。締められている。
もちろんこれらの楽曲を書いているのは姐さん自身。
意外と姐さんは我の強い人なのかも知れない。
M-01 Intro
M-02 Need One
M-03 Anything
M-04 Soul Food
M-05 Lullaby
M-06 Too Tough To Die
M-07 Sandpaper Kisses
M-08 Ragga
M-09 Lying
M-10 I Wanna Be There
M-11 Ilya
M-12 Stevie's (Day's Of A Gun)
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