2012年11月6日火曜日
KHANATE 「Clean Hands Go Foul」
いきなり絞首刑囚(絞首刑+死刑囚)の断末魔。自らのパートを〝Vokill〟と定めていたアラン・ドゥービン(元O.L.D.)によって。十三階段を登る過程をすっ飛ばす唐突さで。
それに負けず劣らず極悪な、あと三種の音。
負の意味で印象的な〝音色〟を、リフという名の単位に縛られることなく捻り出そうと躍起になっているステファン・オマリー(SUNN O)))など)のギター。
生命反応のあるブースト装置として、フレーズを作為的に揺らがせながら淡々とド低音を持続させるジェイムズ・プロトキン(元O.L.D.ほか。マスタリング技師としても著名)のベース。
地味にビートを堅持することに飽き、持ち前のパワーヒッティングで第四の音色としての存在感を誇示するティム・ワイスキーダ(元BLIND IDIOT GOD)のドラム。
この超個性な四色が、閉塞的かつ退廃的な空間から絞り出す暗黒音楽――という作風は前々作で既に確立済み。
本作では更に溶解が進み、ワイスキーダの拍を度外視した鳴り方重視の打楽器志向も相俟って、よりパワーアンビエントな作風となった。オマリーがメインプロジェクトとして動かしている、SUNN O)))の音像に近付いたとも言えるかも知れない。
その雰囲気に合わせてドゥービンの呪詛も、廃屋という閉塞空間に残存する地縛霊の如き幽玄さが浮き彫りとなった。実はこのバンドのリーダーである、プロトキンによる録音加工の賜物と言えるかも知れない。
コレらから導き出される本作の音世界は、憎悪の塊のようなインパクトを誇った彼らとは思えないほど地味で、しかもじわじわ蝕んでくるモノだった。
その象徴たるトラックは、32分52秒にも渡るM-04に。
ほぼ無音――いや、無調。
確かに微かに鳴っている。音符にならない音が、右から左へ。
そっと持続音を継ぎ足し続けるベース。弦を指の腹で撫でるように鳴らすギターを、プラグをガリったノイズと共に。リムショットですらない撥をリムに転がす音から、シンバルやタムを気付かれないよう挿むドラム。吐息の延長で出す、声にならない音のヴォーカル。
それらがだんだんと、暗がりのあちこちからじーっと聴き手を見つめ続け、存在を露わにしていく様はもう、何とも言えない気分にさせられる。電気を消した室内にてヘッドフォン着用で聴きたくないくらい。
そんな2008年発表の本作の原型は、2005年に録られていた。三枚目と同時期らしい。
その翌年、自然消滅に近い解散宣言。
後、2008年。プロトキンが遺されたマテリアルを拾い上げ、ドゥービンの声を追録し、前作同様Hydrahead Recordsよりリリース。その活動にけじめを付けた訳だ。
That's All Folks!
M-01 Wings From Spine
M-02 In That Corner
M-03 Clean My Heart
M-04 Every God Damn Thing
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