2012年12月14日金曜日

MOLOKO 「Things To Make And Do」


トリップホップ(嘲笑)隆盛期に現れた、シェフィールド発・男性トラックメイカー:マーク・ブライドンと女性シンガー:ロイシン・マーフィーのデュオ、三枚目の2000年作品。
ユニット名は映画「時計じかけのオレンジ」で、主人公率いる悪童どもが愛飲していたドラッグ入りの牛乳から。

ありがちな編成や、フォロワー扱いを受けがちなデビュー時期など、何かと色眼鏡で見られがちな彼らだが、実はガチの個性派。
そもそも音世界がトリップホップですらない。その筋特有の陰鬱さなどなく(さりとて、からっからに明るくもないのが如何にも英国)、むしろポップな創りなのだから。
トラックは奇妙なベースラインと人を食ったような上モノ使いを得意とするが、奥でさり気なく鳴っている装飾音のはっとさせられる用い方は出色。加えて、ファンキーなブレイクビーツからジャングル風味、BPMを上げたドラムンベースに加え、四つ打ちも能くする守備範囲の広さまである。
そこへ、おませな幼女に小悪魔少女、更には小粋な淑女まで多彩な声色をあくまで安っぽく使い分けられる歌が乗る。

要は食えない奴らだ。型にはめない方が面白そうな連中だ。

それなのにクラブでヘヴィロテされたからと、原曲が前作からの、外部の人間が手掛けたハウスリミックスをわざわざオリジナルアルバムである本作の本編・M-18に引っ張って来る時点でもう、どうかと。
せっかく、ブラックミュージック色の強い一枚目や、当時の流行に合わせてジャングル/ドラムンベースを大々的に導入した前作を踏まえてきっちり発展させる、総決算的構成で勝負を賭けてきたのにも関わらずだ。
それがメジャー(Chrysalis傘下のEcho Label)の厳しさ、したたかさだ、と言われればそれまでなのだが。

器用なんだから便利に使うのではなく、好きに演らせて欲しかったなあ。
本作はそう言い切りたいくらい、可愛らしくてへんちくりんでカッコ良いクラブミュージックが詰まっている。まだまだ古さを感じさせないはずだよ!

M-01 Radio Moscow
M-02 Pure Pleasure Seeker
M-03 Absent Minded Friends
M-04 Indigo
M-05 Being Is Bewildering
M-06 Remain The Same
M-07 A Drop In The Ocean
M-08 Dumb Inc
M-09 The Time Is Now
M-10 Mother
M-11 It's Your Problem
M-12 It's Nothing
M-13 Bingo Massacre
M-14 Somebody Somewhere
M-15 Just You And Me Dancing
M-16 If You Have A Cross To Bear You May As Well Use
M-17 Keep Stepping
M-18 Sing It Back (Boris Musical Mix)


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