2013年1月16日水曜日

HINT 「Driven From Distraction」


英国・サセックスのブレイクビーツのび太くん:ジョナサン・ジェイムズによる、2008年の二枚目。おそらくBONOBOの推薦を受けて、であろうブライトンのTru Thoughts移籍作。

まずは音世界の劇的変化に絶句していただきたい。
もちろんデスメタル始めました、な訳はない。ちゃんとクラブミュージックの範囲内での路線変更だ。いやいや、むしろ〝範囲内〟どころかど真ん中に居座ったと言うか……。
率直に書けば、デビュー盤Ninja的アブストラクトブレイクビーツが、がんがんオーディエンスを踊らせるノリノリのフロア仕様に大変貌を遂げているのだ。

これはもう、童貞を喪失して以後、急速度にやりちん化したのび太が、地元で真面目に慎ましく生活しているしずかちゃんの名を聞いて『源サン? 居たねェ、そんなコ……』とかスカしやがっているくらいの衝撃だ。

エレクトロ(ニカじゃないよ!)御用達の安く野太くうねるベースラインが幅を利かせ、パーカッションやカリンバなどがトロピカルなトライバル感をほのかに演出し、女性シンガーの堂々たる歌唱をフィーチャーし、男性ラッパーやカットインした声ネタでヒップホップのサグな雰囲気を醸し出す。アッパーだけでなく、M-03のようなR&Bっぽいオサレなしっとり感も出せるところが、聴き手にこれまたクラブユース化を意識させる。
何でココまで変貌する必要が? そりゃあ五年もの歳月でしょう。
HINTはこの五年で大きく進化した。怪しかったビート構成も堂々たる熟れ方だし。音楽志向が西から東に引っ越したくらい変化したのに、出て来る音は付け焼刃感がまるでないし。ところどころ顔を見せる安っぽさも拙さからではなく、きちんと味に昇華されているし。

問題らしい問題は、我々聴き手がこの急変化に対応出来ていないコトくらい。

ただ、たった過去一作だけで、しかもそれほど特徴的な作風をしていなかったのに『思てたんと違ーう!』とそっぽ向くのもどうかと、筆者は言いたい。
確かにもっと演りかたはあったと思う。中間点の音でワンクッション置いて、三枚目にこれを切るとか。HINTならではの音の軸を持つとか。
でも、五年でココまで成長した男の表現欲を留めておくのは忍びない。この実の伴い方なら、しずかちゃんも様変わりした彼を久しぶりに見て『のび太さん……カッコイイ……v』なんて思わずじゅん……とさせてしまうだろうさ。
ドコを? 瞳に決まっているじゃない!

M-01 Keep Your Shirt On (feat. Laura Vane)
M-02 The Mist Lifts
M-03 Afro Love Forest (feat. Kinny)
M-04 At The Dance
M-05 Got A Pulse
M-06 One Woman Army (feat. Laura Vane)
M-07 Snake Patrol (feat. Gavin Stenhouse)
M-08 Mutes And Drops
M-09 Muddled Morning (Feat. Rizzle)
M-10 Scrawny's Beat
M-11 I, Silverfish (Feat. Rup)
M-12 The Tremmuh

M-03のKINNYはレーベルメイトの女性シンガー。コレと同テイクが翌年発表の彼女のデビュー盤にも収録されている。
また、M-07はインストトラックで、香港生まれの英国俳優:ギャヴィン・ステンハウスがちょこっと中間部、ギターを奏でている。


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