2013年1月14日月曜日

CHRIST. 「Pylonesque EP」


スコットランド出身、元BOARDS OF CANADAのクリストファー・ホーム、正式(コレ以前に自主レーベルから二枚のアルバムを発表済)デビュー盤。2002年作。
EP扱いだが、ランタイムは三十分少々ある。

内容は翌年の「Metamorphic Reproduction Miracle LP」を見越した音世界。現にM-05は「Metamorphic~」アルバムでも収録されている。
だから、と言う以前に元から彼の作風――デジデジしいボトムラインに幽玄な背景トラックと、ヴィンテージ機材からひねり出したような懐古的な主音――は固定されており、後は主に本人の技術向上による進歩くらいしか作品毎に差異はない。
無論、それは悪いことではない。
金太郎飴にもさまざまな模様や色使いがある通り、同じ作風を保ったままどう変化を付けていくか――それも、音楽を創り続ける上で一つの命題だったりする。
実はこの一徹ぶり、自由に演れる気風のニカ界に於いて貴重な存在だったりする。

そんな〝ブレなさ〟よりも、彼の最大の長所はテクスチャの組み方が抜群に巧いコトだと筆者は考えている。
音色使いが悪いという訳ではないが、かなり地味な選択をしている点は否めない。一聴で心を奪う吸着力は音色使いが担っている部分が大きいのだから。
そこで、地味なれど随所に淡い輝きを放つ音色を組織し、それらが齟齬を起こさぬよう、どれかが埋没してしまわぬよう、トラックを統括していくこの才が光る。目立たないスキルだが、シーン屈指の巧みさを持っていると思う。
主音らしい主音を設定せずに音色の加減算の妙でゆうゆうと五分弱を乗り切ってしまう、ビートを絡めたアンビエント風のM-03。主音級の音をマイクリレーのように、立てたり裏に回したり戻したり新たに投入したりと、抜き差しならぬせめぎ合いを繰り広げさせるM-06は彼の特長を生かした好トラックだ。

本作は幼児の「ばいばい♪」という無邪気な声ネタと共に締まる。
BOCちっく? どっちが卵でどっちが鶏なのさ?

M-01 Dream Of The Endless
M-02 Arctica
M-03 Spengly Bengly
M-04 Pylonesque
M-05 Fantastic Light
M-06 Perlandine Friday
M-07 Absolom (For Lucy)


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