遅っそ! 今更かよ!
HELMETのジョン・スタニアー、DON CABALLEROのイアン・ウィリアムス、LYNXのデイヴ・コノプカ、ソロ活動をしていたタイヨンダイ・ブラクストンによるスーパーマスロックカルテット、2006年作・二枚組編集盤。
詳細は、Monitor Recordsより発売された「EP C」とDim Mak Recordsの「B EP」へそれぞれ、Cold Sweat Recordsの「Tras」を割り振り、例のWarpで発売したもの。
BATTLESは珍奇なバンドだと思う。
〝反復の快楽〟なる魔物が、音楽には棲んでいる。演奏者ならリフ/聴き手ならループ、という反復音をひたすら演り/聴き続けるとあらどうでしょう、頭から脳汁ドバーときもちよくなっちゃうアレ。
彼らはプレイヤーなのだから演奏でそれを演れば良いのに、しない。例えば八小節くらいの演奏をシーケンサーか何かでリアルタイムで録り込んで、後はキーをぽちっとな。酷い時になるとたった音符一音だけのために録り込む。
フロント三人がそう楽(!?)するのとは逆に、シーン屈指のドラマー:スタニアーはひたすら人力で、細密かつ絶妙なタイム感と粒の揃った恐ろしい手数のビートを
何とまどろっこしい、非効率なシステムだろうか。
だがコレ、よくよく考えると逆転の発想からくる妙手である。
ビートをループさせると演奏中に手心が加えづらく、応用が利かない。一方、上モノをリアルタイムでサンプリングすることで、気持ち良いフレーズをプレイヤーが感性の趣くままに抜き・挿し・重ねるコトが出来る。
このシステムは
ただし、ドラムには御柱となれるほどの強烈なビート感覚が要されるわ、フロントメンバーには臨機応変に他のメンバーとの調和を取っていく紙一重の鋭いセンスが試されるわで、安易に真似ると痛い目に遭うこと受け合い。
さて本作は、これでもまだ〝前夜〟的な雰囲気。後に獲得する奇妙なポップセンスはまだそれほど表れていない。
だが上記の〝リアルタイムサンプリングと超絶ビートのアンサンブル〟から繰り出される何でもアリ精神は既に完成されており、如何にも彼らっぽい曲に、成り行き任せで牙を剥くドローン曲やヒューマンビートボックスに一味加える曲などを、平然とアルバム中で共存させて聴き手を煙に巻いていく。
それはもう、『俺たちが一音出したとたんにBATTLES!』と言わんばかりに。
Disc-1 「EP C」
M-01 B + T
M-02 Uw
M-03 Hi / Lo
M-04 Ipt-2
M-05 Tras 2
M-06 Fantasy *
M-07~M-15 Untitled *
Disc-2 「B EP」
M-01 Sz2
M-02 Tras 3M-03 Ipt2
M-04 Bttls
M-05 Dance
M-06 Tras *
*印のトラックが、件の「Tras」収録曲。
蛇足ながらDisc-1のM-07から15は無音――かと思いきや、打ち込みのキックを一発ずつ録ったもの。何だか変な余韻。
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